●【ハゲタカ】関連記事

2009年6月17日 (水)

■【映画評】『ハゲタカ』 一体どうしたっていうんだ。劇場まで足を運んで見たかったのはNスペじゃないんだぜ?

説明するまでもなく、名作ドラマ「ハゲタカ」の劇場版。

今一番ホットな自動車業界を舞台にどんなドラマを展開するのかワクワクして見たのだけれど、どうにも複雑な気分になってしまったのである。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.29  『ハゲタカ
          監督: 大友啓史 公開:2009年6月
       出演: 大森南朋 玉山鉄二 他

01

■ストーリー■
世界金融危機 前夜。日本のマーケットに絶望し、表舞台から姿を消した天才ファンドマネージャー・鷲津の元に、かつての盟友・芝野が現れる。中国系巨大ファンドが買収に乗り出した、大手自動車メーカー「アカマ自動車」を危機から救ってほしい、というのだ。日本を代表する大企業「アカマ」の前に突如現れたのは、“赤いハゲタカ”こと劉一華(リュウ・イーファ)。豊富な資金を背景に、鷲津を圧倒し続ける劉ら中国ファンドの真の目的とは!?
<goo映画より>

Photo_2 Photo_5 Photo_3

■鷲津が、三島由香が、西野が、そして芝野が帰ってきた。

それだけで満足するべきなのかもしれない。

あの音楽も、青いトーンも健在で、セリフに頼らない表情と仕草による抑えた演技・演出も素晴らしい。

けれど、どうしても乗り切れなかったのである。

可愛さ余って、

などと言い訳をしながら、そこのところを考えてみたいと思う。

■’赤いハゲタカ’劉一華(リュウ・イーファ、玉山鉄二)が大手自動車メーカーに襲い掛かる前半部分は文句なしにいい。

リュウ・イーファと鷲津の手に汗握るTOB合戦が実にいい。そこで敵の正体が’赤い国家’であることが判るあたり、その絶望感が素晴らしい。

この絶望的な状況をどう切り抜けるのか、それとも!!というドキドキ感が否が応にも盛り上がる。

と、ここまではいつものハゲタカ節炸裂で安心して見ていられたのである。

■ここから先がどうにも落ち着かない。

キャラクターの描きこみと動機付けが急に希薄になってしまうのである。

何故、西野(松田龍平)は猫を撫でるのをやめて、ファンドの世界に舞い戻ったのか。

何故、派遣社員の守山は働く者の権利を主張する情熱を捨てて床に散らばった銭を拾うのか。

そして何故、リュウ・イーファは本当の心を押し殺してまでハゲタカを演じるのか。

■もちろん、いろいろな推測はつくだろう。

し、語らないことで語るということだってあるだろう。

けれど、それがうまく機能しているようには思えないのだ。

なんだか詰め込みすぎ、という気がするのである。

■後半は、鷲津が反撃に出る話なのだけれども、どうもそのあたりの集中力に欠けている。

イスラム金融、リーマンショック、サブプライムローン、市場原理主義の終焉。

そういった、ここ半年のトピックスが無理に押し込まれてドラマとして破綻しかけているのである。

いや、イイタイコトはよく分かるんだけど、それは左の脳みそでの話であって、右脳直撃!!のドラマチックさが無いのだ。

■そこのところ、ドラマのハゲタカは上手かった。

当時、問題になっていた企業買収の問題をわかりやすく解説しながらも、同時に濃密に描かれたキャラクターと映像、音楽の素晴らしさで我々の右脳を揺さぶったのである。

ところがどうだ。

今回の新しいキャラクターでシッカリ人物が描けていたのは、アカマ自動車社長の古谷(遠藤憲一)くらいなものだろう。

■たぶん、テレビと劇場映画というメディアの違いが大きいのだろう。

ある程度リラックスしてみるテレビドラマと違い、劇場映画は観る者を引き込んでナンボのものである。

最近の経済の動きにおもねることで散漫になってしまった部分もあるだろうし、スポットを当てる登場人物が多すぎたきらいもある。

欲張ってはいけない。

松田龍平は猫を撫でていればいいのであるし、派遣の青年は札束には目もくれず啖呵を切って出て行けばいいのである。

主人公はリュウ・イーファでしょ?

なんでそこに集中できないのか、ということである。

■もちろん、それは釈迦に説法。

監督も脚本家もスタッフも皆、そんなことは百も承知であって、涙をのんで選択した何らかの事情があるのだろう。

けれどもファンとしては、そこをなんとか突っ張って欲しかった。

これは短期的に消費されるテレビドラマではなく、歴史に刻まれていく劇場映画なのだ。

100年に一度の経済危機がどうしたというのだ。

そんなことは些細なこと。

本質は中国とかインドとかロシアとかの新興国が圧倒的な資金力で日本の技術力を札束で奪いに来たとき、我々はいったいどうするのか、ということでしょう?

真正面からそれを受け止めなくて何の「ハゲタカ」か、と強く主張したい!!

というのが、愛すればこその苦言なのである。
  

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                           <2009.06.16 記>

■追記■
DVDでディレクターズカットが見れないかな・・・。
  

 
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レッドゾーン(上) レッドゾーン(下) 真山 仁 著 講談社

   
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■STAFF■
監督: 大友啓史
脚本: 林 宏司
原作: 真山 仁 『ハゲタカⅠ』、『ハゲタカⅡ』、『レッドゾーン』(講談社)
音楽: 佐藤直紀
撮影: 清久素延
美術: 花谷秀文
照明: 川辺隆之
編集: 大庭弘之
製作: NHKエンタープライズ、東宝


■CAST■
鷲津政彦 -鷲津ファンド代表     大森南朋
劉一華 -ブルーウォールパートナーズ代表  玉山鉄二
* * * * * * * * * *
三島由香-東洋テレビ記者        栗山千明
西野治 -西野屋旅館社長        松田龍平
飯島亮介-MGS銀行頭取        中尾彬
芝野健夫 -アカマ自動車取締役  柴田恭兵
* * * * * * * * * *
守山翔 -アカマ自動車派遣工     高良健吾
古谷隆史-アカマ自動車代表取締役社長  遠藤憲一
* * * * * * * * * *
中延五郎 -鷲津ファンド社員    志賀廣太郎
村田丈志 -鷲津ファンド社員    嶋田久作

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■アカマGTカッコよかったね。ベースはなんじゃろか。 


■映画 ハゲタカ 公式サイト■

    
■過去記事■

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2008年11月18日 (火)

■NHKドラマ 『ハゲタカ』映画化!大友監督おめでとうございます。

■『ハゲタカ』が映画化されるようだ。

しかも、大森南朋、柴田恭兵、松田龍平、栗山千明、中尾彬といったメインキャストはそのままで、そのうえハゲタカ独特のあの世界を演出した大友啓史が引き続き監督をやるという。

今回は東宝がメインの企画のようだけれど、何しろNHKの現役ディレクターが劇場映画の監督をやるっていうのだから、もうびっくり仰天。

ホント、快挙だと思う。

■自分自身、就職活動のときに映像の世界に足を踏み出そうとしたのだけれど、結局情けなくも二の足を踏み、メーカーのサラリーマンに日和ったという忸怩たる想いが心の片隅に常にある。

実際NHKのディレクターになりたいと試験を受けるも2次の英語の試験であえなく沈没。

結局、本気じゃなかったってことさ、

と折り合いをつけて今日に至る。

■ああ、あの頃思い描いていた道筋を実際に歩んで行き、そこに到達した人がいるんだなあ、という感慨である。

やっかみなんて全然ない。

ただただスゴイと思う、偉いと思う。

他人事なのに、もの凄くうれしいのである。

■公開は来年の6月。

まさか、ドラマ版の焼き直しなんてことは無いだろう。

スタッフを含めたあのメンバーで何を見せてくれるのか。

非常に楽しみだ。

                           <2008.11.18 記>

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■関連記事■
■人間の再生。 NHK土曜ドラマ「ハゲタカ」 <2007.04.04>

■『ハゲタカ』 再放送。組織で働くということ。 <2007.08.25>

            

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Photo ■ ハゲタカ オリジナルサウンドトラック

Photo_2 ■ ハゲタカ DVD-BOX

Photo_3 ■原作 ハゲタカ(上) 真山 仁 著 (講談社文庫)

       

■映画 ハゲタカ 公式サイト
■今度は自動車業界が舞台になるらしい。
HOTですね~。
   

●NHK土曜ドラマ 「ハゲタカ」 番組HP●

●NHK「ハゲタカ」チーム製作日記●

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2007年8月25日 (土)

■『ハゲタカ』 再放送。組織で働くということ。

■『ハゲタカ』、地上波再放送が終了した。
何度見ても引き込まれてしまうドラマである。

心理状態を描写する見事な構図、照明のあて方
心を揺さぶる音楽、
細部にまでこだわった美術。
(持ち主の読み込み方が一目でわかる文庫版『大木流経営論』の
 「汚し」の見せ方!)

そして、もちろん説明を極力廃し、
「語らずして、語る」 脚本と
それを可能にした演出、役者の素晴らしさ・・・。

ああ、語ればキリがない。

■今回、再放送で見ていて、改めてしみじみしたのが
第3話 「終わりなき入札」だ。

100円を入れても入れても戻ってきてしまう
コーヒーの自動販売機。
その虚しい繰り返し。

「アナタは何をやっているんですか!?」
三島由香の厳しく問いかける声が蘇ってくる。

そして、芝野はサンデートイズの入札合戦に
自ら終止符を打つ。

それは同時に、銀行マンとしてのキャリアに
終止符を打つことも意味していた。

■三葉銀行の役員会議室(?)で
芝野が辞表を出すシーンでの
飯島専務(中尾 彬)のセリフがいい。
 

かっこええな、お前はいつもかっこええ。
(ふっ) だからダメなんだ。

  
最終回では、うまく大団円を迎えることになるわけだが、
その裏で飯島専務が技術流出反対の
ロビー活動をやっていたことを忘れてはいけない。

芝野のような、かっこ良さの影には
いつも汚れ役が必要なのだ。

飯島専務が会議室を出た後に
芝野の同期、広報部長の沼田(佐戸井けん太)が
別れ際に言うセリフが、また心に沁みる。
   

お前は何も見えていない。いや、見ようとしていない。
這いつくばって、罵られて、
それでも与えられた仕事をひとつひとつこなしていく。
そうやって生き続けたとき、次が見えてくる。

俺は最後まで三葉に残る。
やめないのも、勇気だよ。芝野。

   

この沼田や大空電機の塚本社長(大杉 蓮)といった
脇を固める人物について、
組織人としての愚直さを否定せず、
悩みながらも誠実に生きていく姿として描ききったところに
このドラマのしみじみとした奥深さがあるように思う。

我々ひとりひとりが芝野のように
かっこ良くなれるわけではないのだから。

                    <2007.08.25 記>

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■何度見ても引き込まれます。

■関連記事■
■人間の再生。 NHK土曜ドラマ「ハゲタカ」

■「企業とは何か」ペンタックス経営統合問題終結。

■『クライスラー売却』ハゲタカは救世主たりうるのか?

     

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真山仁 著
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【渋谷で働くドラマディレクターの日記】
-土曜ドラマ「ハゲタカ」製作現場から-

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2007年5月22日 (火)

■「企業とは何か」ペンタックス経営統合問題終結。

精密機器大手のペンタックスと光学レンズ大手のHOYAは21日、3回目のトップ会談を行い、HOYAが6月初旬に友好的株式公開買い付け(TOB)を実施し、ペンタックスを子会社化することに合意した。
ペンタックスは取締役8人のうち7人は6月22日に退任するが、綿貫宜司社長は半年から1年程度、経営陣にとどまる見通しだ。
これにより、HOYAが敵対的TOBに踏み切る事態は回避され、ペンタックスが4月に合併を白紙撤回して以来、迷走を続けた両社の経営統合問題は事実上決着した。<5月22日 読売新聞記事より抜粋>

■HOYAによるペンタックス買収をめぐる一連の騒動が収束した。

終結に向けた主導権を握ったのは、終始友好的TOBにこだわったHOYAの社外取締役であったように見える。結局は、全体としての「あるべき姿」をしっかりと描けたHOYAの筋書き通りに収まった、ということなのだろう。

投資ファンドのスパークスは事態を引っ掻き回すトリックスターとして一定の役割を演じたが、保有株の価値向上のみに終始するその姿は長期的な展望とは無縁のものであった(当たり前の話かもしれないが)。

■さて、ペンタックス現経営陣、右往左往の件である。これには流石に見ていて傍らイタイものがあった。「自己防衛」が手段ではなく目的化していて、一体彼らは何を守ろうとしたのか、非常に疑問の残るところである。

これを愚かと嗤うべきなのだろうか。

だが、シニカルな批評は何も産み出さない。ここは真摯に受け止めて、経営トップになるような人材であっても、追い詰められて視野狭窄に陥れば正常な判断が下せなくなるのだ、という反面教師として捉えるべきなのだと思う。

追い詰められたときの視野狭窄は命取り、ということだ。これは何も経営だけに限った話でなく、自分が生きていく上で非常に良いヒントを貰えたと感じている。

■今回の件では、「企業とは何か、誰のものなのか」と、深く考えさせられた。

そして今、「『ペンタックス』頑張れよ!」と感じる自分の素直な気持ちについて考えるとき、そこでいう『ペンタックス』とは一体誰のことなのだろうか?

経営陣のことなのか、社員のことなのか、株主(資本、マネー)のことなのか。

実は、その質問自体がナンセンスなものではないか、と思い始めている。
私が応援する『ペンタックス』とは、経営陣でもなければ、社員でもなく、ましてや株主やマネーでも無い。どれが欠けても『ペンタックス』は存在し得ないのだけれど、「そのもの」ではないのだ。

私が応援するのは「素晴らしいカメラ」を産み出す『何か』である。その『何か』は、時に元気に活躍し、時に凹んでウジウジする。まるで豊かな感情を持った生き物だ。だから、私は、その情感あふれる可愛げのある生き物に「共感」することが出来るのだ。

この生き物の名前は『ペンタックス』。それ以上でも、それ以下でもない。それが答えだ。

企業をそのように捉えたとき、「企業は誰のものか?」という問いに対する答えも、自ずと解ってくるはずである。

もしかしたら近い将来、名前を変えることになるかもしれないが、それでも私は『彼』を応援する。

 

『ペンタックス』頑張れよ!

                       <2007.05.22>

■関連記事■
●人間の再生。 NHK土曜ドラマ「ハゲタカ」
http://soko-tama.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_f45b.html
   
■前回の記事■
●『ハゲタカ』さながらのドラマが進行中

http://soko-tama.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_fa3a.html
 

■ペンタックスK10D 【カメラグランプリ2007】受賞
http://www.pentax.co.jp/japan/news/2007/200737.html
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■NHK『ハゲタカ』製作チームの日記
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2007年5月15日 (火)

■『クライスラー売却』 ハゲタカは救世主たりうるのか?

Ptcruiser ■ダイムラー・クライスラー社の北米クライスラー部門について、米投資会社サーベラスが買収することで合意された。サーベラスは、クライスラーの株式、80.1%を55億ユーロ(74億ドル、9000億円)で取得する。
<5月15日 各紙報道より>

 サーベラスは1992年に設立された米国の有力な投資グループ。
アメリカの元副大統領ダン・クエールが顧問を務め、現会長はブッシュ政権下の財務長官だったジョン・スノー。
一時期、買収先としては、カナダの大手自動車部品メーカー、マグナ社が有力視されていた。だが、ロシアのコングロマリット、ベーシック・エレメントがマグナに資本参加することが明らかになった翌日、サーベラスが最有力候補になったと米紙が報じた。

 他社の提示額45~49億ドルに対し大幅に高い74億ドルを提示し、一気にかたを付けたあたりも含めて、国家的な企業防衛というような、非常に政治的な匂いを感じてしまうのだが、気のせいだろうか。

  ともかく、買収先は投資会社サーベラスに決まった。

■さて、興味のポイントは、「投資ファンドが、どのようにクライスラーを復活させるのか」にある。
 サーベラスのジョン・スノー会長(前米財務長官)は、14日の会見で、四半期ベースの利益や証券アナリストの評価ではなく、長期的な成果を生み出すことを何よりも重視する」と、時間をかけてクライスラー再建に取り組む考えを強調した。
 一方、「集中的なリストラを断行したうえで、自動車メーカーなどへの売却を検討する方針」という観測もあり、スノー会長の言葉を額面通りとるのもどうか、と思わせる。

Photo_25 ■キーパーソンは、サーベラスが顧問として招き、クライスラーの取締役に加わると目される、ウォルフガング・ベルンハルト氏(Wolfgang Bernhard、47歳)だ。
彼はクライスラー部門のCOOとして、01~04年の業績回復に手腕を発揮し、ダイムラー首脳と袂を分けた後も、05年、VW社に取締役として参画、品質改善とコスト削減で06年度には過去最大の販売台数を打ち立てることに大きく貢献した。

要するに凄腕再生男なのである。

■今回の状況を見ていて、このベルンハルトさん、「ハゲタカ」の柴野と鷲津にちょっとダブるのだ。
 ベルハルトはクライスラー再建の途上で、身を引かざるを得なかった。そして、今回、その再建の続きを始めるのだ。投資会社サーベラスの思惑は明確ではないが、ベルハルトの想いとズレがあるのは確かだろう。
 この状況で、ベルハルトは何を産み出すのだろうか?

■クライスラーの抱える問題は、以下の3点だと考える。
①年金、医療費の債務負担、合計150億ドル(1兆8000億円)
②SUV等、中大型車中心の車種構成の為、原油高騰で販売低迷。
③ダイムラーの支配力が強すぎることによる経営自由度の制限。
最後の③を除き、アメリカのビック3共通の構造的な悩みであり、解決も小手先では儘ならない困難なタスクである。

■「利益の出ない事業で金をムダにはできない」という言葉は、05年にVWの取締役に就いたときのベルハルトの言葉である。
まずは、徹底的な事業の見直し、要するにリストラはあるだろう。また、お互いにWIN-WINの関係が築ける、緩やかな企業提携もあるだろう。

■しかし、構造的な問題を解決したとしても、企業として元気を取り戻すとは限らない。
 事業再生の主役はクライスラーの社員自身にかかっている。もともとクライスラーは、北米での「ミニバン」の先駆者であり、PTクルーザーのようなクルマを作れる商品提案力の高い企業である。ポテンシャルはあるのだ。
 あとは、クライスラー社員のモチベーションを高め続けるヴィジョンを提示できるかどうか、だと思う。

「危機的な状況にある企業にとってはきわめて重要なのは、問題があると全員が認めること。現実から目を背けてはいけない」

これも、VWの取締役就任時のベルハルトの言葉。力強いリーダーシップを感じさせる言葉である。

■これから、クライスラーはどのように生まれ変わるのか。はたまた、リストラでの短期的企業価値向上策をとり、鵜の目鷹の目の同業他社に売り飛ばされるのか。ひとつ、長い目で見守っていきたい。

■事業を救うのは「マネー」なのか、「人」なのか、それが試されているのだ。
                           <2007.05.12 記>

   
■関連記事■

■人間の再生。 NHK土曜ドラマ「ハゲタカ」
http://soko-tama.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_f45b.html

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<追記>
「ハゲタカ」スタッフの皆様、
ギャラクシー賞入賞、放送人グランプリ特別賞受賞おめでとうございます。
テーマ性、脚本、演出、演技と4拍子そろった「ハゲタカ」で、
ギャラクシー大賞、決まったようなものですよ!5/31楽しみにしております。
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■NHK『ハゲタカ』製作チームの日記
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2007年4月18日 (水)

■『ハゲタカ』さながらのドラマが進行中

Pentax_me_1 この2週間、『ハゲタカ』さながらのドラマが現実の世界で展開されている。

■情報・通信分野の製品が好調だが、更なる成長を求めて、新しい事業に展開したいレンズメーカー。

■技術力は高いが、デジカメ事業の苦戦により単独での生き残りが厳しくなってきた老舗カメラメーカー。

■その苦戦するカメラメーカーの株式の24%を押さえる投資顧問会社。

一度は合併を合意しながら、先日、カメラメーカーの取締役会にて動議が提案され、経営統合の白紙撤回と、社長の解任が決定した。

レンズメーカーは23日にTOBの採否を決定する模様だが、大株主である投資顧問会社の思惑もからみ、カメラメーカー側はTOB予想価格を上回る企業価値向上策を至急策定中。
<以上、ソースは Y社ONLINE NEWS> 

『ハゲタカ』というドラマのおかげで、新聞の経済面の向こうに生々しい人間ドラマが想像できるようになった。

「事業をする」とはどういうことか?「企業」は誰のものか? 
                           <2007.04.18 記>

    
■関連記事■
■人間の再生。 NHK土曜ドラマ「ハゲタカ」
http://soko-tama.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_f45b.html

  
<続編>
 (2007.05.22 記)
■「企業とは何か」ペンタックス経営統合問題終結。
http://soko-tama.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/tob_ed50.html

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<追記>その後の経緯。
■H社とP社トップ会談。P社は企業価値向上検討中と先延ばし策。敵対的TOBを好まないH社が23日に結論を出すかは微妙に。(4月18日21時24分 Y紙ONLINE記事参照)
■H社は23日の取締役会にて6月(株主総会後)に、P社の賛同を前提にTOBを実施することを決定。P社との交渉を継続することとなった。一方P社は24日、5月中旬に経営改革案を発表することを明らかにし
、H社のTOBに対抗する姿勢を示した。(4月24日 Y紙記事参照))
■P社の筆頭株主である投資顧問会社S社は、統合推進の立場から経営陣の入れ替えなどを求める株主提案を行うと発表した。(4月26日 Y紙記事参照))
■11日午後、P社は中核3事業に経営資源を投入する等の企業価値向上案を発表した。しかし筆頭株主S社は、目新しい内容は無い、と姿勢を変えない模様であり、H社との統合の是非をめぐる委任状争奪戦に発展する可能性が高い。P社株主総会は6月22日。(5月12日 Y紙記事参照)
■15日、P社がH社の提案するTOBによる経営統合を受け入れることで調整に入ったことが明らかになった。(5月15日 Y紙ONLINE記事参照)・・・コメントしたいところだけれど、終了まで事態を見守ろうと思う。
■21日、P社とH社のトップ会談で、本件は友好的TOBという形で決着した。(5月22日 Y紙記事参照)

   

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2007年4月 4日 (水)

■人間の再生。 NHK土曜ドラマ「ハゲタカ」

久々に歯ごたえのあるドラマを見た。

   

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あまりに濃密過ぎて消化するのに1週間以上が経ってしまった。
とはいえ、そのまま記憶の彼方に過ぎ去らせてしまうには、あまりに惜しい作品なので、物語に沿って感じたことを書き連ねてみよう
と思う。

少し、長くなるかもしれない。

■バブル崩壊後の失われた10年といわれた時代。
手持ちの不良債権を、気付かれず如何に上手く処理するかにアタマを悩ませる銀行。
昨日の夢を忘れられず、何とか生き延びようとあがく企業経営者。
それは夢だったんだよと厳しい現実を突きつける外資系ファンド。
その3者の思惑が錯綜する中でドラマが進行する。

■冷徹な外資ファンドを代表する鷲津(大森南朋)と
日本の現状に疑問を抱きつつも、外資の非情さに対抗する銀行マン芝野(柴田恭平)。
物語の前半は、この対立の構図が骨格にあり、見るものは芝野に共感を覚えるだろう。
だが、鷲津がメガネを外した時にふと見せる表情に、彼の内なる葛藤をみる。

■後半、総合電機メーカー大空電機創業者、大木昇三郎会長が登場。彼は、古き良き日本企業そのものである。
大木会長という触媒を得て、物語は転調、マネーゲームの深刻さと滑稽さの奥底にある「企業とは何か、誰のものか?」という核心部分に迫っていく。

自分自身、ものづくりに携わる技術者として、一気に引き込まれた部分である。

■鷲津は、自らの2面性に決着をつける時が来る。が、その定まった決意をあざ笑うかのようにホライズンからの解雇、負傷という形でゲームから弾き出される。
また、
芝野は、企業再生家として立ち上がった勇気を、大空電機社員の自殺という形で挫かれてしまう。

■最終回、芝野が鷲津に言う。「俺たちは同じだ。」
そして、今まさに大空電機の根幹であるレンズ部門を売却しようとしているホライズンに対し反撃に出る。
EBO、従業員による事業の買収という象徴的な形で。

■鷲津は、ゲームから弾き出され、リハビリ生活を送る中で自分を見つめ直すことができたのだろう。そこには、メガネという仮面で傷つきやすい自分を守る必要のない、しっかりとした表情があった。

「西野さんはお前に旅館を継がせたがってた。誰よりもお前のことを買ってた。それは金持ちになれってことじゃない。
きちんと事業をするということだ。
戻って来い。もう一度。」

このコトバ。決して西野にだけ向けられたものではない。
鷲津自身が人間として再生した、その宣言でもあるのだ。

■番組を見終え、改めて自分自身の胸に手を当てて問うてみる。
 「そこに希望はあるのか?誇りはあるのか?」
 
そして、「私の原点は、何処にあるのか?」

***********************

ストーリーは非常に良かったが、それだけがこのドラマの魅力ではない。
■毎回、その画面作りに、惚れぼれさせられた。
何か平板な、けれど何処かに不安を感じるブルーな画面。
窓から差し込む過剰なまでの眩しい光。
雨の中、道端に放置されたカメラから撮られたような、低く斜めに傾ぐ告別式の画面。
画面が登場人物の心の様子を十分に伝えていた。
そこにコトバはいらない。

そして何といっても、役者が良かった。

■大森南朋さん
本文でも語ったけれど初盤のメガネを外すシーンとか、最終回での雰囲気とか。いろいろな心の在り様をきっちりと、自然に演じ分ける。
役者やのう。

■柴田恭平さん
どうしても、華麗なステップでキュー。という感じの昔のイメージがあったので、あの抑えた渋さに驚いた。(けれど、ご病気の話が気になります。あまり頑張りすぎず、ご自愛ください。)

■松田龍平さん
松田優作の「静かな狂気」の部分を切り取ったかのようだった。1話目、彼が俯いて立っている。その姿だけで背筋が、ぞくっとした。
別のドラマで、はっちゃけた龍平も見てみたい。

■他、ちょい役の方まで全員が本当に上手い役者さんばかり。ホント贅沢。

「いやードラマって本当に素晴らしいですねぇ。」
と、水野晴郎を気取りたくなる、そんなドラマだった。
                                                        
                        <2007.04.04 記>

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20072月―3月 NHK土曜ドラマ
■原作 真山仁 「ハゲタカ」「バイアウト」
■演出 大友啓史 井上剛 堀切園健太郎
■脚本 林宏司
■音楽 佐藤直紀
■出演 大森南朋、柴田恭平、栗山千明、松田龍平ほか

 

    

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