●8.社会・報道・ドキュメント

2017年10月26日 (木)

■【調べてみた】詩織さん強姦不起訴処分。強姦って警察特有の体質によって事件化、起訴されないって本当なの?

ジャーナリストの伊藤詩織さんが10月24日、外国人特派員協会で会見し、日本における性暴力被害の課題を訴え、「タブーを破りたくて顔も名前も出した。日本の司法、社会システムは性犯罪被害者のためには、ちゃんと機能していない」と語った。(ハフポスト日本)

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■伊藤詩織さんの件は被疑者の山口敬之氏が元TBSワシントン支局長で、安倍晋三首相にもっとも近い政治ジャーナリストともいわれていることもあり、圧倒的に強い立場を利用したと思われること、権力との関係という点から、不起訴となったことに強い物語性を生んでしまい、本来彼女が主張している【強姦という罪が起訴されにくいどころか事件化すらされない不条理】ということが、すっかり隠されてしまっている。

そこで、実際にどうなっているのかを平成27年版 犯罪白書で調べてみた。

【Q:強姦罪は本当にそれほど検挙、起訴されてないのか?】

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まずは、認知件数と検挙件数の推移。

平成に入って1,700件程度に落ち着いた認知件数が、平成9年から増え始め平成15年頃には2,500件にまで1.5倍に急増。その後なぜか平成23年頃に向けて1,250件にまで急降下。

それに呼応するように、検挙率は90%程度だったものが、平成15年頃に60%にまで低下。それがまた88%にまで戻している。

検挙件数自体に着目すると、上記乱高下に関係なく1,500件程度で推移、認知件数の低下に合わせて低下していく。

どうやら検挙率の急変動の原因は検挙数が上昇しないことにあるようにみえる。

それの原因は、警察官の絶対数の問題とか、検挙数の目標が達成されたらもういいや、とか、いろいろ考えられるけど、そのあたりは推測の域をでない。

いずれにせよ、検挙率の低下は警察が知っていながら検挙しなかった件数が、それまでの200件ほどから平成15年頃には1,000件ほどにも膨れ上がり、泣き寝入りした女性がずいぶんいたということが推察される。

伊藤詩織さんの指摘にもあるが、警察が強姦を事件化することを拒むこと、巷には、警察での被害者の事情聴取が犯人の取り調べのような形で行われることがあるとするならば、それはどうもこの時期に起き始めたことのように思われる。

そのあたりは検証が難しく、警察内部からの告発を待つしかないのかもしれない。

また、平成9年から急増したそもそもの認知件数の理由についてもよくわからず、そこはさらに踏み込んでみていく必要がありそうだ。

■次に、起訴率を見てみよう。

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上で見た検挙数は平成19年ごろまで1,500件くらいで一定に推移し、その後ゆっくり低1,100件程度に低下したことと合わせて上のグラフを見てみよう。

起訴率は70%程度で推移していたものが、平成18年から急激に低下を開始し、平成26年では37%と、実に半分くらいに低下してしまっている。

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一番下の黄緑が起訴猶予、水色が起訴不十分、黄色が起訴の取り消し、紫が時効完成である。

起訴猶予が大幅に減少し、嫌疑不十分が倍増している。

そもそも起訴猶予とは何か、

【起訴猶予】
犯罪の疑いが十分にあり、起訴して裁判で有罪に向けて立証することも可能だが、特別な事情に配慮して検察が起訴しないこと。 比較的軽い犯罪で、本人が深く反省していたり、被害者と示談したりした場合に選択する。 同じ不起訴でも、証拠が足りず犯罪の疑いが弱いと判断して起訴を見送る「嫌疑不十分」とは異なる。

要するに、なあなあはやめて、疑わしきは罰せず、と言い換えたということか。

けれど、二つを合わせるとほぼ一定の割合なので、今回の検討の目的とずれるから、気にはなるけれどもここは置いておく。

で、割合が増えているのは時効完成で、5%程度だったものが、平成18年に10%へと倍増し、平成26年には18%にもなっている。

検挙件数、不起訴率×時効完成の割合でみると

平成17年 1,600件×35%×10% =56件

平成26年 1,200件×63%×18% =136件

と80件の増加。

一方、不起訴件数は

平成17年 600件

平成26年 750件

と、150件の増加であり、検挙数が25%も減ってるのに、なんで不起訴が増えてるの?という疑問は置いておいてくと、時効完成の増加によるものが80件だから、実に不起訴件数急増の半分以上は時効完成によるものだと分かる。

殺人や懲役15年以上の場合を除き、強姦の時効は7年。

平成11年以降に発生した強姦罪は時効になる確率が上がってきているということだ。

突如警察や検察の捜査能力が低下するはずもなく、認知件数は増えたが検挙の件数は一定なのだから、検察が放置している可能性もぬぐい切れない。

平成11年は、強姦の認知件数が急増した平成9年の2年後。

ここでつじつまが合ってくる。

先の「起訴猶予」から「嫌疑不十分」への転換が始まったのも平成11年。

ここで検察が方針転換を図った可能性が極めて高い。

では、なぜ平成9年から強姦の認知件数が急増したのか。

少し視野を広げて重要犯罪全般について俯瞰してみよう。

重要犯罪(殺人、強盗、放火、強姦、略取・誘拐及び強制わいせつ)の認知件数の推移をみてみる。

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少し遅れはあるが、平成11年から重要犯罪は急増している。

検挙率も90%から50%に大幅低下。

ほぼ強姦の状況と合致する。

平成11年の強姦の認知件数は1,300件で、全体の14,700件のほぼ10%。

時期の多少のずれは、その寄与度から考えれば誤差と言えるだろう。

では、この時期に何があったのか。

平成9年と言えば1997年、バブル崩壊の影響が明確になってきた年である。

就職氷河期のピークが1998年。

バブル崩壊直後の後のリストラの第1回目のピークが1999年。

まさにそういう年だ。

前回調べた実質賃金指数(受け取る賃金の実感を表す指数、賃金を消費者物価で割ったもの)の推移を示す。

ITバブルを挟んで日経平均は暴落し、実質賃金は下がり続けた。

そして、2003年の不動産バブルの開始をもって、重要犯罪認知件数も、強姦罪の認知件数も頭打ちとなり、減少に転じている。

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つまり、不況が重要犯罪増加の原因となっていた状況証拠ということになる。

特に性犯罪は、性欲そのものというよりも、ストレスのはけ口として行われるという説も濃厚で、膨れ上がった社会不安が、強姦の増加の要因となる理屈も成り立つのである。

その後、犯罪認知率が再び低下したのは、人がストレスに慣れてしまった、という見方もできる。

■さて、検挙率、起訴率である。

強姦を含む重要犯罪が激増した結果、警察や検察が対応できなくなってきた。

その結果、警察や検察が最重要案件に限られた資源を投入するため、そのほかの案件については検挙や起訴を見送ったとしても不思議ではない。

その方針の結果として、強姦の訴えに対してそれを拒む態度が従来からあったかどうかは不明だけれども、それが加速したとみるのが、この見立てから導かれる結論だろう。

かつての検挙率90%、起訴率70%は、決して小さな数字ではなく、その後の検挙率60%、起訴率37%は明らかに低すぎる。

門前払いで認知数まで下げてしまったのではという疑いもぬぐえないものの、少なくとも現在では認知件数が元に戻り、検挙率も90%を回復したというのに起訴率がさらに下がり続ける、というのは何かがおかしい。

可能性は役所としての方針の固定化だ。

結論というには推測が多く、仮説の域をでないのだけれども、敢えて結論としよう。

【結論】:警察、検察の強姦罪不起訴の傾向は昔からあるものではなく、バブル崩壊後の不況によって重要犯罪が急増したことによる方針転換によるもので、発生率が低下した現在もその方針が続いている可能性が高い。

 

終わりに。

いま強姦などの性犯罪の被害を受け、それなのに警察や検察から人権を保護されるどころか、圧迫されるような状況にいる女性がいるとして、その原因となるものは取り除かれていて、それなのに役所としての警察、検察は一向にその状況を改善しようとしない。

しかも世間は、恒常性保持力ともいえるような【出る杭は打つ】式の思考で、彼女たちにさらなる圧力を加えてくる。

この認識が正しいのであれば、世の中はあまりにも理不尽だ。

 
こういう話は、それぞれの状況だとか、そのひとの受けたことに対する感情だとか、そういうところに寄り添った見方をするのが本流だと思うのだけれど、今回は敢えて、少なくとも考察の材料だけは公的な資料をもとに冷静な客観性を持たせようと試みた。

ロングスパンでの冷静な見方から見えてくるものがあるのではないかと考えたからだ。

自分では、それなりに問題の構造を把握できたのではないかと思っている。

しかしながらその仮説の検証は、一般個人では不可能であり、どこかの骨のあるジャーナリストや司法関係者が明らかにしてくれるのを待つばかりだ。

とにもかくにも、実名も顔も表に出して、売名行為だなんだと叩かれることをわかった上で、個人的には何のメリットもない決死の問題提起し、ジャーナリストとしての矜持を貫いた伊藤詩織さんに、少しでもお役に立てればと切に願うものである。

                     <2017.10.26 記>


■Black Box 単行本 – 2017/10/18 伊藤 詩織 (著)

 

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― データで読み解く疑問の真相 ―

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2017年10月22日 (日)

■もくじ 【調べてみた♪】 データで読み解く疑問の真相

経済、社会、科学、その他もろもろの日頃の疑問を、公開情報をもとに分析し、読み解く試みです。

●●● もくじ 【調べてみた♪】  ●●●
 ― データで読み解く疑問の真相 ―


<No.5> 強姦罪をなかなか警察、検察が起訴しないのは体質の問題なの?
2017.10.26

■【詩織さん事件】強姦って警察特有の体質によって事件化、起訴されないって本当なの?

   
<No.4> 景気が回復したのに何で実感が湧かないの?
2017.10.22

■アベノミクスで景気が回復したのに実感がないのは何故なのか?実質賃金指数から読み解く、失われた20年の実態。回復のヒントは円相場と労働分配率か?

   
<No.3> ベーシンクインカムって、最近話題だけど現実的なの?
2017.10.08

■希望の党の提案するベーシックインカムって何?で、それって実際にありえるの?

 
<No.2> 格差拡大って本当に悪いことなの? 

2017.10.05

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 2017.10.04

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<No.01> 平均寿命100歳時代って、本当?? 
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<No.02> 喫煙者が減ってるのにCOPDの患者さんが増えてるのは何故?
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■タバコの健康被害。COPDはなぜ急増したのか?低タール化とフィルターへの疑惑のマナコとiQOSのリスク。

 

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■【社会】<調べてみた♪その4>アベノミクスで景気が回復したのに実感がないのは何故なのか?実質賃金指数から読み解く、失われた20年の実態。回復のヒントは円相場と労働分配率か?

高度成長期の1960年以来の14連騰に湧く日経平均株価。
アベノミクスは成功し、バブル期を超える戦後3番目に長い好景気が続く。
けれど、われわれにその実感はない。なぜか?
それを調べてみた。

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何故われわれは好景気を実感できないのか

昨日、10/20(金)引け間際。

一旦、マイナスに転じた日経平均はプラスに転じ、数度の綱引きの末、最終的に9円のプラスで引けた。

もう、何かの力が働いているとしか見えず、苦笑するしかないのだけれど、週末の衆議院選挙まえに株価を落とすな!とでもいうような、こういうなりふり構わない介入なんてのは報道はされず、この構図を利用して売りで儲けた機関投資家だけが密かな勝利者だ。

まあ、そんな些末なことはどうでもいい。

問題は、

【Q】何故われわれは好景気を実感できないのか

ということだ。

先まわりしてキーワードを述べるならば、

1.円相場

2.労働分配率

である。

少し長くなるが、お付き合いいただければと思う。

バブル以降の実質賃金の推移と日経平均との相関

さて今回は、実質賃金指数を中心に見ていこうと思う。

実質賃金指数とは

モノの値段に対して、賃金が本当に上がっているかどうかを示す指標。基本給に残業代やボーナスなどを含めた給与総額の指数を、物価で割って計算する。

具体的には、各月の賃金を基準に対して指数化し、消費者物価指数(CPI)で割ったものである。

早速、日経平均株価との比較で見ていこう。構造的に理解するために期間は長めにとってある。

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いわゆるバブル期の終わり、1994年から2016年までの日経平均株価(赤線、左軸、円)と実質賃金指数(青線、右軸)である。

まず日経平均に関しては、確かに2013年のアベノミクススタートによって、跳ね上がり、バブル期以降の最高値まで戻している。

一方、実質賃金指数は、ITバブル(1999年)、不動産バブル(2005年~)、リーマンショックの反動(2009年)の株価ピークに一年ほど遅れて小さな山を作るものの、押しなべて見れば、1997年以降、一定の割合で低下し続けている。(20年間で15%減少)

失われた20年とは、このことか!!

と改めて驚く。

2016年にはアベノミクスの効果で実質賃金指数も上昇に転じたように見えるけれども、この20年の流れをみれば、これから上昇し続けて、失われた20年を取り戻すというような安易な予想はなかなかできない。

未来予想は不可能だけれども、何かの構造的原因があってそれが解消されていないならば、普通に考えてトレンドを維持してこのまま実質賃金指数も下がり続けるだろう。

失われた20年どころか30年、40年と続いても不思議ではない。

一体何が起きているのか。そしてこれからどうなるのか、統計データをもとに考察を加えたい。

■GDPとの相関関係

日経平均株価が実質賃金と相関がない、つまり生活実感と合わないことは分かった。ではGDPは?ということで調べてみた。

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GDPとしては、実質賃金指数と同じくインフレ要素を除いた実質GDPを使うべきだけれど、今回起点とする1997年に対し、名目GDPと実質GDPから求められるGDPデフレーターは15%もデフレになっているのに対して、消費者物価指数は+0.5%のインフレとかい離があり、消費者物価指数がほぼゼロであることから、今回は名目GDPを用いた。

上のグラフは名目GDP(青線、兆円、左目盛)と実質賃金指数(オレンジ、右目盛)の比較。

一目見て、これも相関は見られない。

名目GDPはアベノミクス開始と共に急激に上昇し、ピークの1997年に対して2016年時点で+1%となっている。

一方、実質賃金指数は先ほど見た通り、下げ一辺倒で、同期間で-13%になっている。

このGAPはアベノミクスの期間に特徴的で、異次元の金融緩和、日銀による国債やETFの大量購入などを考えると、金融市場に溢れたマネーがわれわれの懐に還流してこないということから、これは日銀主導による金融バブルではないか?という仮説も成り立つだろう。

ただ、これはアベノミクス期間に限った動きなので、とりあえず、【利益確定はお早めに!】と、リスクテイクをされては困るくじらさん(特に年金機構!!)に念押しをして失われた20年の謎を解くべく先に進もう。

■実質賃金指数を探ってしみじみする

どうも実質賃金指数と相関のとれるデータが見つからない。

そこで、実質賃金指数自体をもう少し詳しく見ていこう。

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上のグラフは、1990年からの月別の生データを何も考えずに並べたものである。

一年の中の月別に大きな変動があり、ピークは12月、2番目のピークは6月、7月、他の月は底を這う、という感じになっている。

12月は冬のボーナス。6,7月と夏のボーナス支給日がばらけるので、12月が突出しているということだろう。

ここでわかるのは、冬のボーナスの下げ方が恐ろしく大きいことだ。

そこで、年平均(以下青線、左目盛)、通常の賃金として4月(赤線、左目盛)、ボーナス月として12月(グレー、右目盛り)を抽出して並べてみた。

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まあ、なんということでしょう!

赤線の通常月(基本給+残業代)がほぼ平行に推移し、ピーク-6%程度に収まっているのに対して、ボーナス月はバブル終盤の1991年をピークに途中のバブルをものともせずに下がり続け、2016年時点でー28%も減少しているのだ。

私は90年代前半の入社なので、これを見るともう、かなり強くうなづいてしまう。

基本給は、組合の手前下げるわけにはいかない。企業は残業時間くらいで調整するしかない。

けれど、ボーナスは不況を理由にどんどん下げていく。景気が良くなったのでボーナス上げますね!なんていうけれど、それまで下げた分から考えれば微々たるもの。そしたらまた円高で苦しい!とか始まって、ボーナスの削減が続いたのだ。

さらにはボーナスが支給されない、或いは微々たるものしかもらえない派遣さんの急増の影響もあるはずで、社会全体としてボーナスによる収入が猛烈に(-28%という規模で)下がり続けてきた、ということだ。

ああ、納得いったよ。失われた20年。

これでは消費意欲が上がるわけがないのだ。

だって毎月の給与は生活費で使われるんだから、強烈なローンを組んでいない限り、主たる余剰所得はボーナスなんだから!!

【A】われわれが好景気を実感できないのは、ボーナスがこの20年で猛烈な勢いで下がり続けているから。

そういうことだ。

実感と合わない企業収益と人件費の上昇

さてさて。

じゃあ、なんで景気回復に関係なく実質所得指数、特にボーナスが減っていくのか。

そこで労働分配率に着目し、企業収益(経常利益)と人件費の推移をプロットしてみた(内閣府資料より)。

※労働分配率=人件費/(人件費+営業利益+減価償却費+受取利息)

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水色の線が企業収益(兆円、左目盛)、緑の線が人件費(兆円、左目盛)、赤のラインが労働分配率(右目盛、%)。

1997年から2015年までの間に労働分配率は10%低下している。1997年基準の比率で言えば14%減である。

これが実質賃金低下の原因なのか??

何言ってるの!

絶対値で言ったら上がってるじゃん!!

嘘つき!!

そうなのだ。

人件費自体を見てみると、倍近くに上昇してる。

賃金は人件費の半分くらいを構成するにすぎないと考えても、実質賃金が13%下がっている、という感覚とはまったく合わない。

しかし、企業収益(経常利益)も2倍以上に膨らんでいて、そんなんならば失われた20年なんてなかったことになる。何かがおかしい。

■名目GDPか、実質GDPか

そこで企業収益(経常利益)のグラフの意味を理解すべく、GDPと比較してみた。

Gdp

赤いラインが名目GDP、緑のラインが実質GDP(ともに兆円、左目盛)、そして青いラインが企業収益(兆円、右目盛)。

もう、みごとに実質GDPと企業収益が相似形を描いている。

一般に、生の数字を使った名目GDPよりも、インフレ補正を行った実質GDPが実態に即しているといわれるが、まさにそのとおりの結果となった。

では、実質賃金の推移とのギャップはどう理解すればいいのだろうか。

GDPは海外生産品をカウントしない

そこでインフレ補正の考え方について、実質賃金指数算出の要素となる消費者物価指数(CPI)と、名目GDPを各構成要素補正から算出される実質GDPで割ったGDPデフレータ―について整理してみた。

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簡単に言えば、

消費者物価指数は消費者が購入するものを扱い、

GDPは、最終的に国内で生産された活動について扱う

よって、海外で生産された物については消費者物価は扱い、GDPでは考慮しない。

そこが重要なポイントになる。

例えば家電部品を安い(当時の)中国から輸入した場合、

消費者物価では、その家電の値段が下がればデフレとして考慮するし、値段が変わらず国内で販売する企業の儲けに転嫁されれば物価は変わらないとする。

一方で、GDPでは国内での付加価値にしか着目しない。

その家電の値段が上がろうが下がろうが、国内企業の付加価値にしか着目しない。

その意味で、実質GDPは国内企業の活動を示す指標としては意味があるけれども、われわれが個人の消費者の立場になったときにはあまり意味がない。

むしろ、実質GDPでの補正は消費者の購入実態にはそぐわないのである。

Gdp_2

実際にGDPデフレータ―(緑色)と消費者物価指数(赤色)を並べてみると上のグラフのようになる。

安倍政権発足までGDPデフレータ―は一本調子で下がり続け、企業が商品につける付加価値が低下し続けてきたことがわかる。

その一方で、消費者物価指数はほぼ一定で、機能差などはあるだろうけれども、商品価格については大きな変動がなかったということが分かる。

■GDPデフレータ―は何故下がり続けたか

そこで、上のグラフに円相場(グレー、米ドル、左目盛)と対中貿易額(黄色棒グラフ、兆円、右目盛)を加えてみた。

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GDPデフレータ―は円高の進行に沿って低下していき、中国輸入部品の増加(品目としては電子部品が急増)を相殺しても追いつかず、価格に転嫁できない分、国内での付加価値が圧迫されていった様子が見て取れる。

そして安倍政権の2013年からアベノミクスの効果で円安方向にもどり、GDPデフレータ―も安定から回復方向へ動き始める。

実際にその流れを示すのは実質GDPではなく、むしろ名目GDPだ。

Gdp

企業サイドで収益のみに視点を合わせれば実質GDPが適切だけれども、輸入も考慮した全体像を把握するならば名目GDPが適切なように見える。

■実質賃金指数の低下は名目GDPの労働力分配率補正で再現可能!

そこで名目GDPを起点とし、先に議論した労働力分配率で補正(付加価値の賃金への分配率として)をかけて、実質賃金指数と重ねてみた。

Gdp_3

赤いラインが実質賃金指数(右目盛)、青いラインが名目GDPの労働分配率による補正(左目盛)である。

この青いライン補正値は正しい組み合わせの計算ではなく絶対値に何ら意味はないけれど、傾向の目安としては使えるはずだ。

結果、二つのラインの傾向はほぼ一致する。

2004年から2007年のあたりにGAPがあるが、この時期はリーマンショック前のバブル期なのでメカニズムはよくわからないけれどもその影響かもしれない。

いずれにせよ、名目GDPに労働分配率を掛けた値が、いままで見てきたデータの中で唯一、実質賃金指数と相関がみられる指標である。

そこから導き出される有効策について考えてみたい。

■アベノミクスの継続で、われわれは生活の改善を実感できるのか?

これまで見てきたことから、実質賃金指数を低下させた要因は

1.GDPデフレータ―を低下方向に導く円高傾向

2.労働配分率の低下

の二つであると推測できる。

アベノミクスによる異次元の金融緩和と、その結果なのか介入なのかはたぶん両方なのだろうけれど、

1.GDPデフレータ―を低下方向に導く円高傾向

を改善させる効果はあって、それゆえの実質賃金指数の下げ止まりなのだろう。

しかし、この

「給与の額面はそんなに悪くないのになんだか生活が楽になった実感が湧かないなあ」

という感覚は、いつまで経っても横ばいを続けるだろう。

やはり、

2.労働配分率の低下

の改善が必要で、トランプ政権下では1ドル120円で安定することはあまり期待できず、当局も110円台で安定させることが精一杯だろう。

ああ、楽になったなあ、とみんなが思うためには、

労働分配率を現状の60%程度から70%程度まで回復させることだ。

企業の内部留保を問題視する向きがあるが、資本主義経済でそれを制限したらも、もはや資本主義ではない。

しかし、公共の福祉の観点から、何らかの方法で労働分配率70%を努力目標として改善に向けて動くことは可能だろう。

やることさえはっきりすれば頭のいい日本の官僚は何とかしてくれる。

結論としては、アベノミクスは一勝一敗。

長期的目標としてのイノベーションは継続して努力していただくとして、直近の課題は労働分配率70%の確保だ。

どうやら、今回の衆議院選、自民党圧勝で安倍さんも安泰のようである。(22日21時時点)

今まで企業に求め続けた給与への還元を、もっと強力に推し進めていただくことを強くお願いする。

                      <2017.10.22 記>

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おまけ

■各国GDP成長率比較を行った。

Gdp_4

Gdp_5

Gdp_6

Gdp_7

Gdp_8

GDPデフレータが-なんて日本だけです。

下に示したように為替はそんなに他の国の変動と大差ない。

根本的には、輸出に頼り過ぎる経済だからなんだろうね。

だから、われわれ消費者、給与所得者の視点で生活実感を改善して内需を復活させ、他の国のような健全な経済を取り戻さなければ!

■各国為替相場推移

【円相場推移】
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【ユーロ相場推移】
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【豪ドル相場推移】
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2017年10月11日 (水)

■【社会】福島原発訴訟(生業訴訟)地裁判決、住民側が国と東京電力に勝訴。オメラスの呪いを超えて。

2017年10月10日、衆議院選挙公示日。

福島原発訴訟、いわゆる生業訴訟の判決が福島地裁から下され、住民側が被告である国と東京電力に勝訴した。

■上の動画は、ジャーナリストの堀 潤さんによる勝訴当日のレポートである。

原告側に深く寄り添った立場がにじみ出ていて、もはや報道ではなく、ドキュメンタリー作品と言っていいだろう。

私自身、堀さんの論破禁止とか、一つのテーマに深く根を下ろしていく姿勢に賛同し、ここ最近ウォッチし始めたのだけれども、NHKを退社された経緯までは良く知らず、この動画を見た後に少し調べてみた。

彼がどういう想いでカメラを回し、マイクを向けていたか、勝訴の文字をどういう気持ちで目にしたかを想像すると目頭が熱くなる。

【記事】止まらない住民たちの涙 「生業訴訟」住民側が勝訴 国の責任と賠償福島地裁認める 堀潤  | ジャーナリスト/NPO法人8bitNews代表


■変身 Metamorphosis メルトダウン後の世界 (ノンフィクション単行本)  – 2013/11/27

■で判決文の骨子を見てみると、平成14年7月の地震活動長期評価から、東日本大震災における津波のレベルは予見可能であり、国は規制の行使を怠り、その結果、対応可能であった予備電源の水密化が行われなかったと指摘している。

この判決理由は本当にすっきりするものであるが、もし、予備電源の水密化が行われていたら。。。と考えると胸が苦しく、いたたまれないものがある。

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(判決文は こちらに)

■福島原発訴訟や、各地の原発再稼働審査について、気にしていたつもりだったのだけれども、全然理解していなかった。

ただ原発再稼働の動きに不信感をもっていただけで、しっかりと調べて理解しようとしてこなかったのだ。

それでごちゃごちゃと語っていた自分が実に恥ずかしい。

そこで少し調べて目に留まったのが以下のNHKの記事だ。

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【記事】詳報 東電刑事裁判 「原発事故の真相は」
東京電力の旧経営陣3人が福島第一原子力発電所の事故を防げなかったとして検察審査会の議決によって強制的に起訴された裁判。未曽有の被害をもたらした原発事故の真相は明らかになるのでしょうか。初公判から判決まで、毎回、法廷でのやりとりを詳しくお伝えします。

■この記事で驚くのは、東電は津波被害のシミュレーションを実施し、浸水被害まで予測をしていたのに、対策の実施を行わなかったという、東京電力内部の会議資料の存在が明らかになったとされていることである。(まだよくわからないが、今回の「生業訴訟」の証拠資料か?)

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シミュレーションでは津波による浸水を予測。

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予備電源のある建屋も浸水。


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「津波対策は不可避」、「機微情報のため資料は回収」の文字

■そのうえで、

事故調査・検証委員会の報告書から、武藤元副社長は平成20年6月の社内会議で最大で15.7メートルとする津波の試算の報告を受けたものの、7月、新しい防潮堤を建設する場合、数百億円規模の費用とおよそ4年の期間がかかると説明を受け、津波の試算はあくまで仮定に基づくもので、実際にこうした津波は来ないと考え、最大で5.7メートルとしていた従来の津波の想定を当面は変えない方針を決めた

となると、もう人災としか言いようがない。

原発の技術者が、FMEAによる不具合解析や、フェールセーフを考えないはずはなく、そういった話が出てこないのは実に不思議であった。

この情報によれば、彼らはそれを当然のようにやっていたし、現状では危険であると指摘をしていたのだ。

「何か」がそれを押しとどめていたのである。

■誰が悪いのか、その責任の所在を明らかにすることは重要だ。

しかし、何よりも重要なのは、何が起きたのか、現状のシステムのどこが脆弱であったのかを分析し、今後に生かすことだ。

アメリカでは、航空機事故調査において、その責任を追及しないことがある。その代わり、事実を確実に把握し、それを今後の事故防止に生かし、空の安全を保っている。

一方、いま日本では、各地で原発の再稼働が進んでいて、今回の選挙では「原発維持」、「原発ゼロ」が争点の一つになっている。

とても気になるのは、

必要だ!

いや危険だから駄目だ!

という感情的な論議がなされがちだということだ。

私は、経済性と安全性を同じ土俵で考える再稼働に反対するのと同じく、

議論を前提としない今後一切の原発ゼロには反対だ。

少し前にオスプレイの記事でも述べたが、危なそうだからダメ、ほら事故が起きただろう! というのはあまりにも論理性に欠けていて、それでは議論が進まないのである。

プロフェッショナルによるデータの分析と、システム評価があって、

それを一般に公開し、

しっかりと公の場で議論をすること。

その作業を抜きにして再稼働はあり得ないし、同様に、将来における原発政策を中止するかどうかも決められないのである。

■こういう話がある。確か、こんな話だ。

どこかの国の都の話。その都は繁栄を極め、人々は幸せな人生を謳歌している。しかし、その都にある塔の地下に、子供が幽閉されていて出してくれよ、と泣き叫んで懇願するのに出してもらえない。この都の繁栄は、その子供の犠牲の上に成り立っていることを人々は薄々感じているのだが、見て見ぬふりをして、こころの奥に押し込めて生きている。

マイケル・サンデルの『これからの「正義」の話をしよう』で知ったのか、確か、アーシュラ・K・ルグインの『オメラスから歩み去る人々』 だったかと思う。


『風の十二方位』アーシュラ・K・ルグイン 「オメラスから歩み去る人々」収録

われわれは、「オメラスの人々」で居ていいのだろうか。

すべてが解決するなんて思ってはいない。

けれども、科学と論理的議論によって解決できる部分は必ずあると信じている。

われわれの生活のためにはエネルギーの安定確保は絶対に必要だ。

3.11の前には、そこを原子力に大きく依存していたのは事実なのだ。

だからといって、どこでいつ巨大地震が発生するかわからない現実を理解したわれわれは、致命的に危険かもしれないものを手放しで元に戻すほどに、愚かではない。

どこかに道はあると思う。

ともかく、感情的になって短絡的な道を選ぶことには反対だ。

多分、蓄電技術による電力の平準化が鍵を握っているのではないかと考えているので、そこについて、また追って調べて考察を加えてみたいと思う。

ああ、もう朝か。。。

                         <2017.10.11 記>

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2017年10月 8日 (日)

■【社会】<調べてみた♪その3>希望の党の提案するベーシックインカムって何?で、それって実際にありえるの?

小池百合子さんの希望の党が選挙公約を発表した。

Photo

花粉症ゼロ!とかで揚げ足を取られてるけれど、まあ細かいことだ(笑)。

経済に関しては、金融緩和と財政出動に過度に依存せず、民間活力を引き出す「ユリノミクス」を断行する、とのこと。  

・10%への消費税引き上げは凍結。

・消費増税の代替財源として、約300兆円もの大企業の内部留保への課税を検討。

・ベーシックインカム導入で低所得層の可処分所得を増やす。

・20年度までに基礎的財政収支を黒字化する目標は現実的な目標に訂正する。

 
とのことだけれど、このベーシックインカム。

最近よく聞く言葉だけど、いったい何なのか。

その内容と現実性について調べてみた。

【Q. ベーシックインカムって何?それって実際にありえるの?】

■まずは定義。

ベーシックインカムとは

就労や資産の有無にかかわらず、すべての個人に対して生活に最低限必要な所得を無条件に給付するという社会政策の構想。<知恵蔵>

そうか、全員に給付というのがポイントなのね。

でも、生活保護で一人当たり11万円/月を払うのと同等の給付とすると、年間、一人当たり132万円。

日本の人口は1億2558万3658人(2017.1.1時点)だから、年間166兆円規模の予算が必要ということになる。

国家予算が100兆円規模、うち社会保障費が30兆円ということを考えると、現実的には桁が一つ多いな、という感じ。

仮に一桁減らすと、給付額は月1万円で、これでは基本的な生活を保障します、というレベルではない。

或いは消費税で対応しようとすれば、社会保障費をやめたとしても

(166兆円-30兆円)÷2兆円(消費税1%相当)=68%の消費税アップ!

つまり、少なくとも日本では無理。ということだ。

え?企業がため込んだ内部留保300兆円?

希望の党の公約、’ユリノミクス’の目玉だが。。。

Photo_2

いやいや、それは無い。

内部留保って会社がこれからの成長のための貯金と投資資金である。毎年の収入(フロー)ではなく、これまでの余剰利益をためた貯蓄(ストック)であることに注意。これを2年で食いつぶそうという勢いだから、企業というか、資本主義経済そのものの否定している。

いや、健全な国民みんなが幸せになる資本主義経済は、最後の巨大市場中国が過剰投資になった瞬間に終わったようなもんだから、いつまでもこのままの姿ではありえず、強者の中間層への搾取が続くか、資本主義自体が衰退するか、なのだと思うのだけれど、かといって即死させてはいけないよね。ゆっくりと変化しないと苦しむ人が増えるから。

まあ、本稿のテーマからは外れるので、その件はまた別で。

【結論】ベーシックインカムは現実的ではない。

 

■でも、これでは終わらない。終われない。

 
日本国憲法 第二十五条

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 
の理念に照らせば、ベーシックインカムの概念自体は日本にとって有用な概念だと思うからだ。

生活保護制度があるじゃないか、というけれど

・収入なし

・扶養者なし

・資産なし

が大前提で、一度破産しなさい、といっているようなもの。

実際に世帯収入がその対象であっても、受給していない人が多く、捕捉率(利用率)は18%程度ともいわれている。

生活が苦しい人が最低限の暮らしをしていける、

というのが主旨であれば、お上に申請して恵んでいただく、というような制度ではなく、当然の権利として社会的に認められた形で、かつ不公平感のないように、条件を満たせば一律給付、というのが理想のカタチなのだろう。

その意味で、ベーシックインカムの定義とはずれるけれども、そういう

生活が苦しい家庭に給付する制度としての日本型ベーシックインカムが可能かどうか

を検証していこう。

結論から言えば、消費税を5%程度(+11兆円)上げれば生活保護レベルの世帯に対する100%の受給が実現可能だ。(つまり10%を起点にすれば消費税15%ということになる。)

■分析するネタは

国民生活基礎調査(平成25年)の結果から グラフで見る世帯の状況 厚生労働省 

とする。

日本の全世帯数は5011万世帯、

その年間所得金額の層別分布がこれだ。

ちなみに稼働所得、財産所得、年金、社会保障給付金などすべてを含む所得の合計である。

Photo_3

平均世帯収入は537万円、中央値は432万円。

中央値とは前回の<【調べてみた♪】その2 格差拡大ってほんとうに悪いことなの?>で勉強した、全員に順番に並んでもらって前からちょうど真ん中の人の値のことをいう。

実感として、432万円の方がしっくりくる値となる。

■さて、問題は何をもって「生活が苦しい」と定義するか。

そこで登場するのが、相対的貧困率 という概念。

等価可処分所得(世帯の可処分所得をその家族の人数の平方根で割ったもの:可処分所得/√(人数))での所得分布を作成し、その中央値の半分の値を出し、それ以下の人たちが全体に占める割合を、相対的貧困率という。(世帯所得ではないことに注意)

Photo_4

実際の日本の相対的貧困率は16%、境界となる貧困線は一人当たりの等価可処分所得で122万円(H25,2014年)。

生活保護の生活扶助7万円、住宅手当4万円の計11万円を年換算すれば132万円となり、住宅手当は世帯ごとの支給であることを考えれば、貧困線の122万円と大きな乖離はない。

ざっくり自分の家計を紐解くと、公共料金2万円、通信費0.5万円、食費4万円と、着た切り雀の自分でいうと一人7万円というのはそれほど外れてはいないし、神奈川の地方都市部沿線の自宅近くの2Kアパートの家賃は4万円程度であり、都心を除けばギリギリ最低限は確保されているといえるだろう。(持ち家も維持費がかかるし固定資産税もバカにならないが、まあ月額4万円あれば何とかなると思う。もちろん、生活費も住宅補助も地域での補正は必要。)

細かいことは置いておいて、ざっくりと感覚に合うかどうかが重要だ。

■では、どういう世帯によって全体が構成されているかを見ていこう。

Photo_5

いろいろ層別されているけれど、シンプルに見るために単独世帯と家族世帯に分けてみる。

・単独世帯 全体の26.5%  1328万世帯 

・家族世帯 全体の73.5%  3683万世帯 

ちなみに貧困率は単独世帯で54.6%、実に一人暮らしの人の半数が貧困と定義されていることになる。

Photo_6

では、それぞれの世帯のどれくらいが貧困線を下回っているのか。

上の貧困率は一人あたりの可処分所得なので、収入ベースの分布図を作成する。

なお、年収ベースの貧困線は税・社会保険控除額(推定67万円)をラフに計算して、貧困線122万円に足して計算。家族世帯は平均3.1人相当なので、122万円に人数の平方根を掛けてから控除額を足して算出した。

<世帯別・収入分布図>

Photo_3

単独世帯の保障収入189万円以下の世帯は約650万世帯

家族世帯の保障収入282万円以下の世帯は約590万世帯

それぞれの世帯の保障収入に足りない金額を支給することとすると、その総計は約11兆円。消費税換算で5%の金額となる。

ところで保障対象の合計1240万世帯は全体の5011万世帯の約25%。

大変苦しい!と言っている世帯が27.7%なので、実際の声ともほぼ合致している。

Photo_4

以上、かなりのざっくり計算だけれど、それほど大外しはしてないと思う。何か致命的な間違いがあれば指摘していただけるとありがたい。

■ところで税収の年次推移は以下の通り

_hp_2

ピンクの線が所得税、青が法人税。ともに強く景気変動の影響を受けていることが分かる。

比べて黒の消費税はリーマンショックの影響もなく、ほぼ安定して推移。増税の直後の変動もさほど大きくはない。

ベーシックインカムは景気が悪い時にはより多くの財源を必要とするので、消費税アップで対応するのが、やはり適切であると考える。

なお、企業の内部留保だが、300兆円のうちの現預金180兆円に課税する案も無くはない。けれど、われわれの家計に例えるならタンス預金に課税されるようなもので、年間10兆円規模で持っていかれたら、10年もたたないうちに余力は半減、企業は悪の権化だからつぶしてしまえ!という思想でなければやはり現実的ではないだろう。

■さて、これを世の中が受け入れるのか。

消費税15%は相当の負担である。

それを受け入れられるかは、どこまで貧困世帯の現実を我々が想像できるかにかかっている。

消費税は上げない。

社会保障はしっかり進める。

では、まったく成り立たないのだから、その想像力で得られた思いやりを、’社会が’ではなく、’自分が’背負えるかどうか。

東日本大震災以来、日本人のなかに、困った立場にいる人に対する想像力が強くなってきたように思う。

あの時の気持ちがあれば、出来なくはないと思う。あの時の気持ちをいかに維持するかだ。

それはたぶん、直接関わることなのだ。

べつに家計の苦しい人でなくてもいい。

インスタやフェースブックでいいね!、をもらいたいのであれば、インスタ映えのするカフェを探す、その同じエネルギーを、今日、駅の階段でおばあちゃんの荷物もったったで!で、いいね!にかけよう、ということだ。

何も、目を吊り上げて叫ぶ必要はない。

自然なやさしさを、自然に楽しめればいいと思う。

自分も含めて、変わっていければ。

                     <2017.10.08 記>

ちなみに、働く気が無い人がどんどん増えるのでは?

という意見もあるだろう。

しかし、上で見たように【大変苦しい】という世帯が27%存在する。

今回検討した前提は、この層と、少なくとも数値的には一致する。

働いたら負けだと思う

という層が、本当にいるかどうかは分からないけれども、もしいるとしても、想像でしかないが【大変苦しい】の限界ラインの上で、家族の収入或いは貯金に支えられて生きている人たちだろう。

そこを疑うネガよりも、全体を救うポジを考えたい。

 
【過去記事】

●●● もくじ 【調べてみた♪】  ●●●  
― データで読み解く疑問の真相 ―

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■【社会】<調べてみた♪その3>希望の党の提案するベーシックインカムって何?で、それって実際にありえるの?

小池百合子さんの希望の党が選挙公約を発表した。

Photo

花粉症ゼロ!とかで揚げ足を取られてるけれど、まあ細かいことだ(笑)。

経済に関しては、金融緩和と財政出動に過度に依存せず、民間活力を引き出す「ユリノミクス」を断行する、とのこと。  

・10%への消費税引き上げは凍結。

・消費増税の代替財源として、約300兆円もの大企業の内部留保への課税を検討。

・ベーシックインカム導入で低所得層の可処分所得を増やす。

・20年度までに基礎的財政収支を黒字化する目標は現実的な目標に訂正する。

 
とのことだけれど、このベーシックインカム。

最近よく聞く言葉だけど、いったい何なのか。

その内容と現実性について調べてみた。

【Q. ベーシックインカムって何?それって実際にありえるの?】

■まずは定義。

ベーシックインカムとは

就労や資産の有無にかかわらず、すべての個人に対して生活に最低限必要な所得を無条件に給付するという社会政策の構想。<知恵蔵>

そうか、全員に給付というのがポイントなのね。

でも、生活保護で一人当たり11万円/月を払うのと同等の給付とすると、年間、一人当たり132万円。

日本の人口は1億2558万3658人(2017.1.1時点)だから、年間166兆円規模の予算が必要ということになる。

国家予算が100兆円規模、うち社会保障費が30兆円ということを考えると、現実的には桁が一つ多いな、という感じ。

仮に一桁減らすと、給付額は月1万円で、これでは基本的な生活を保障します、というレベルではない。

或いは消費税で対応しようとすれば、社会保障費をやめたとしても

(166兆円-30兆円)÷2兆円(消費税1%相当)=68%の消費税アップ!

つまり、少なくとも日本では無理。ということだ。

え?企業がため込んだ内部留保300兆円?

希望の党の公約、’ユリノミクス’の目玉だが。。。

Photo_2

いやいや、それは無い。

内部留保って会社がこれからの成長のための貯金と投資資金である。毎年の収入(フロー)ではなく、これまでの余剰利益をためた貯蓄(ストック)であることに注意。これを2年で食いつぶそうという勢いだから、企業というか、資本主義経済そのものの否定している。

いや、健全な国民みんなが幸せになる資本主義経済は、最後の巨大市場中国が過剰投資になった瞬間に終わったようなもんだから、いつまでもこのままの姿ではありえず、強者の中間層への搾取が続くか、資本主義自体が衰退するか、なのだと思うのだけれど、かといって即死させてはいけないよね。ゆっくりと変化しないと苦しむ人が増えるから。

まあ、本稿のテーマからは外れるので、その件はまた別で。

【結論】ベーシックインカムは現実的ではない。

 

■でも、これでは終わらない。終われない。

 
日本国憲法 第二十五条

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 
の理念に照らせば、ベーシックインカムの概念自体は日本にとって有用な概念だと思うからだ。

生活保護制度があるじゃないか、というけれど

・収入なし

・扶養者なし

・資産なし

が大前提で、一度破産しなさい、といっているようなもの。

実際に世帯収入がその対象であっても、受給していない人が多く、捕捉率(利用率)は18%程度ともいわれている。

生活が苦しい人が最低限の暮らしをしていける、

というのが主旨であれば、お上に申請して恵んでいただく、というような制度ではなく、当然の権利として社会的に認められた形で、かつ不公平感のないように、条件を満たせば一律給付、というのが理想のカタチなのだろう。

その意味で、ベーシックインカムの定義とはずれるけれども、そういう

生活が苦しい家庭に給付する制度としての日本型ベーシックインカムが可能かどうか

を検証していこう。

結論から言えば、消費税を5%程度(+11兆円)上げれば生活保護レベルの世帯に対する100%の受給が実現可能だ。(つまり10%を起点にすれば消費税15%ということになる。)

■分析するネタは

国民生活基礎調査(平成25年)の結果から グラフで見る世帯の状況 厚生労働省 

とする。

日本の全世帯数は5011万世帯、

その年間所得金額の層別分布がこれだ。

ちなみに稼働所得、財産所得、年金、社会保障給付金などすべてを含む所得の合計である。

Photo_3

平均世帯収入は537万円、中央値は432万円。

中央値とは前回の<【調べてみた♪】その2 格差拡大ってほんとうに悪いことなの?>で勉強した、全員に順番に並んでもらって前からちょうど真ん中の人の値のことをいう。

実感として、432万円の方がしっくりくる値となる。

■さて、問題は何をもって「生活が苦しい」と定義するか。

そこで登場するのが、相対的貧困率 という概念。

等価可処分所得(世帯の可処分所得をその家族の人数の平方根で割ったもの:可処分所得/√(人数))での所得分布を作成し、その中央値の半分の値を出し、それ以下の人たちが全体に占める割合を、相対的貧困率という。(世帯所得ではないことに注意)

Photo_4

実際の日本の相対的貧困率は16%、境界となる貧困線は一人当たりの等価可処分所得で122万円(H25,2014年)。

生活保護の生活扶助7万円、住宅手当4万円の計11万円を年換算すれば132万円となり、住宅手当は世帯ごとの支給であることを考えれば、貧困線の122万円と大きな乖離はない。

ざっくり自分の家計を紐解くと、公共料金2万円、通信費0.5万円、食費4万円と、着た切り雀の自分でいうと一人7万円というのはそれほど外れてはいないし、神奈川の地方都市部沿線の自宅近くの2Kアパートの家賃は4万円程度であり、都心を除けばギリギリ最低限は確保されているといえるだろう。(持ち家も維持費がかかるし固定資産税もバカにならないが、まあ月額4万円あれば何とかなると思う。もちろん、生活費も住宅補助も地域での補正は必要。)

細かいことは置いておいて、ざっくりと感覚に合うかどうかが重要だ。

■では、どういう世帯によって全体が構成されているかを見ていこう。

Photo_5

いろいろ層別されているけれど、シンプルに見るために単独世帯と家族世帯に分けてみる。

・単独世帯 全体の26.5%  1328万世帯 

・家族世帯 全体の73.5%  3683万世帯 

ちなみに貧困率は単独世帯で54.6%、実に一人暮らしの人の半数が貧困と定義されていることになる。

Photo_6

では、それぞれの世帯のどれくらいが貧困線を下回っているのか。

上の貧困率は一人あたりの可処分所得なので、収入ベースの分布図を作成する。

なお、年収ベースの貧困線は税・社会保険控除額(推定67万円)をラフに計算して、貧困線122万円に足して計算。家族世帯は平均3.1人相当なので、122万円に人数の平方根を掛けてから控除額を足して算出した。

<世帯別・収入分布図>

Photo_3

単独世帯の保障収入189万円以下の世帯は約650万世帯

家族世帯の保障収入282万円以下の世帯は約590万世帯

それぞれの世帯の保障収入に足りない金額を支給することとすると、その総計は約11兆円。消費税換算で5%の金額となる。

ところで保障対象の合計1240万世帯は全体の5011万世帯の約25%。

大変苦しい!と言っている世帯が27.7%なので、実際の声ともほぼ合致している。

Photo_4

以上、かなりのざっくり計算だけれど、それほど大外しはしてないと思う。何か致命的な間違いがあれば指摘していただけるとありがたい。

■ところで税収の年次推移は以下の通り

_hp_2

ピンクの線が所得税、青が法人税。ともに強く景気変動の影響を受けていることが分かる。

比べて黒の消費税はリーマンショックの影響もなく、ほぼ安定して推移。増税の直後の変動もさほど大きくはない。

ベーシックインカムは景気が悪い時にはより多くの財源を必要とするので、消費税アップで対応するのが、やはり適切であると考える。

なお、企業の内部留保だが、300兆円のうちの現預金180兆円に課税する案も無くはない。けれど、われわれの家計に例えるならタンス預金に課税されるようなもので、年間10兆円規模で持っていかれたら、10年もたたないうちに余力は半減、企業は悪の権化だからつぶしてしまえ!という思想でなければやはり現実的ではないだろう。

■さて、これを世の中が受け入れるのか。

消費税15%は相当の負担である。

それを受け入れられるかは、どこまで貧困世帯の現実を我々が想像できるかにかかっている。

消費税は上げない。

社会保障はしっかり進める。

では、まったく成り立たないのだから、その想像力で得られた思いやりを、’社会が’ではなく、’自分が’背負えるかどうか。

東日本大震災以来、日本人のなかに、困った立場にいる人に対する想像力が強くなってきたように思う。

あの時の気持ちがあれば、出来なくはないと思う。あの時の気持ちをいかに維持するかだ。

それはたぶん、直接関わることなのだ。

べつに家計の苦しい人でなくてもいい。

インスタやフェースブックでいいね!、をもらいたいのであれば、インスタ映えのするカフェを探す、その同じエネルギーを、今日、駅の階段でおばあちゃんの荷物もったったで!で、いいね!にかけよう、ということだ。

何も、目を吊り上げて叫ぶ必要はない。

自然なやさしさを、自然に楽しめればいいと思う。

自分も含めて、変わっていければ。

                     <2017.10.08 記>

ちなみに、働く気が無い人がどんどん増えるのでは?

という意見もあるだろう。

しかし、上で見たように【大変苦しい】という世帯が27%存在する。

今回検討した前提は、この層と、少なくとも数値的には一致する。

働いたら負けだと思う

という層が、本当にいるかどうかは分からないけれども、もしいるとしても、想像でしかないが【大変苦しい】の限界ラインの上で、家族の収入或いは貯金に支えられて生きている人たちだろう。

そこを疑うネガよりも、全体を救うポジを考えたい。

 
【過去記事】

●●● もくじ 【調べてみた♪】  ●●●  
― データで読み解く疑問の真相 ―

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2017年10月 5日 (木)

■【社会】<調べてみた♪その2>格差拡大って本当に悪いことなの?

『21世紀の資本』でピケティが訴えた格差拡大の問題。

新自由主義のもと、1%の富める者が増々儲け、そのなかで中間層が搾取され低所得者層に転落していく。

リーマンショックを経て、日本はどうなの?という実態の一面について前回の調査で少し可視化することが出来たと思う。

Photo

<前回の記事>

■【社会】<調べてみた!その1>平均年収421万円って高いの?低いの?格差って本当に広がってるの?

結論は全給与所得者4800万人の0.2%を占める年収2500万円以上の層を除き、リーマンショックの痛手から脱却できていないということだ。

低所得者は増えたままだし、いわゆる高給取りのサラリーマンも厳しい状態が続いている。

よく言われる上位1%が一人勝ち、よりもさらに極端な構図になっている。

格差が―

という人は、それみろ!ということだろう。

私もその一人だったと思う。


21世紀の資本 トマ・ピケティ (著), 山形浩生 , 守岡桜 , 森本正史 (翻訳)

しかし、本当に格差拡大って悪いことなのだろうか?

税収の観点でさらに調べてみた。

引き続きソースは以下の国税庁資料。

平成 28 年分   民間給与実態統計調査  (平成 29 年9月 国税庁 長官官房 企画課)

■【Q:格差拡大って本当に悪いことなの?】

こういうことをいうと思考停止して怒り狂う人もいるだろう。

けれど調べた上での結論を先に言えば、そんなに悪いことばかりじゃないのでは?

ということだ。

もちろん、「ずるい」という感情を一旦よこに置いての話である。

さっそくみていこう。

Photo_2

このグラフは年収額の層別で、人数(千人、水色棒グラフ)、税収(億円、赤棒グラフ)、人数の割合(%、赤折れ線)、給与額計の割合(%、黄色折れ線)、所得税税収の割合(%、緑折れ線)を示したものである。(H24(2012年)、H28(2016年)比較)

人数構成、給与総額は年収500万円以下のあたりに集中し、税収は年収1000万円以上の層に集中していることがわかる。

これを表で整理してみるとこんなかんじ

Photo_6

人数構成の約一割を占める年収800万円以上の層でまとめると、

H28(2016年)では

人数構成比 9%

給与総額構成比 25%

所得税構成比 62%

要するに1割の人たちが、25%の金額を稼いでいて、全体の6割の税金を納めているということだ。

ちなみに所得税率はこんな感じ
(消費税導入1989年からの推移、区切りが変わっているので過去の値は参考値)

Photo_3

思っていたほど高額所得者の税率は下がっていなくて、その効果によって9%の人たちが62%の納税額を負担する、という構図になっていることが理解できる。

■だからどうした!いっぱい貰ってるんだから当たり前だろ!

という人もいそうだな。

でも給与総額の25%を占める人たちが62%の税額を負担していると考えると、高所得者が2倍以上の負担をしてる、とみることもできる。

ここで突然、抒情的になるのだけれど

小池一夫の『子連れ狼』

大道芸人に身をやつした武芸者の言葉に
 

立って半畳、寝て一畳、天下取っても二合半

 
というのがある。

要するに、どんなに偉くなったり、金持ちになったとしても

生きていくうえで最低限必要なところは変わらない

一皮むけばみな同じ

という話である。

日本人にはこういう感性があって、それが所得税の累進性を許容する風土なのだろう。

■ではデータの世界に戻ってさらに見ていこう。

Photo_5

人数的に全体の9%である年収800万円以上の層が62%の税額負担をしている構図を見てきたが、次はリーマンショックからの回復過程であるH24(2012年)とH28(2016年)の比較である。

給与総額は11%増え、所得税税収は24%、1.7兆円増の9兆円となった。

今回知りたいのは格差拡大の効果だから

24%の税収増から給与総額の変化11%を乱暴に引くと+13%が格差拡大による税収増の効果、約1兆円ということになる。

これは消費税に換算すると約0.4%にあたる規模だ。

財政悪化が続く中で福祉にお金をかけなければならない状況の中でこの利益はとても意味がある。

この年間1兆円の税収は、格差拡大がなければ獲得できなかった社会保障の原資となり得るのだから。

というわけで

【結論】格差拡大もいい面があるお、

ということになる。

■ではそのお金をどうするか。その先の問題だ。

もう一度、前回確認した年収層別の構造を見てみよう(H24-H28比較)

Photo_7

棒グラフは各年収層の人数(千人)、折れ線は増加率(%)、太い横線は全体の増加率7%を示す。

改めて年収800万円以上の層が年収が高ければ高いほど増加し、格差が広がている構図が見て取れる。

さて、格差拡大で儲かった年間1兆円をどうするか、

もちろん低所得者に還元すべきだろう。

問題はそのやり方だ。

その一つの例は一律還元、

所得の中央値である年収360万円を参考に、たとえば年収300万円以下の層に還元したとしよう。

年収300万円以下の層は全体の40%、1928万人にあたる。

1兆円を単純に割り算すると一人当たり5.2万円

月額4、300円だ。

家計の補助であるパートとバイトが占めるだろう年収100万円以下の層を抜いても、1500万人で分けることになり、月額5,500円。

確かに貴重な収入だろうが、厳しい家計のなかであっさりと消えてしまう金額だし、怒られるかもしれないが、投資に対する再生産性はあまりないと言えるだろう。

■良い悪いの問題ではなく、システムはインプットとアウトプットからなり、その増幅効果によって、それが繰り返しまわる回路が出来れば、収益は幾何級数的に増大していく。

それが資本主義経済の仕組みだ。

効率の良い投資が増々のカネを生み出し、増々儲かるがゆえに、上位の金持ちほど成長し格差が拡大する。

それを否定するのは資本主義の否定だ。(それは個人的にはとっても魅力的だし、長期的には資本主義は破綻するとみているが。。。)

しかし構造的問題を短期的に解決することは容易ではない。

それならば、それを逆手に取るのも有効だろう。

要するに高収入の人間を育てて増やせばいい。

で、イイコトオモイツイタ!と

皆がどんどん起業して金持ちになればいい!

 
なんて考えたのだけれど、調べてみると

2012年に起業した人が22万人

一方起業した人のうち年収1000万円以上の人は3.6%

22万人の起業した人のうち8000人しかいないことになる。

今回の調査で増えた年収1000万円以上の層は36万人だから

起業人数×成功率を45倍にしなければならないわけで

これはちょっと桁が違うので現実的ではないだろう。

■やはり、地道な対応が一番で、低所得者層向けの教育援助、特に

・高校教育の無返済の奨学金

・専門学校、大学の出世払いの無利子奨学金

集中投資すべきだというのが、私の意見だ。

キャバクラのお姉さんとお話していて、いつもつくづくそう思う。

大学出がいいかとも思わないが、現実に給与にははっきり出るし、中卒では専門学校にも入ることが難しいのが現実だ。

全体の底上げが出来るなら、高給取りも増えていくだろう。そのうちものすごく成功してがっぽり稼いでしっかり納税する子供たちも生まれるだろう。

大切なのは育てることだ。

決してひがんだり、足を引っ張ることじゃない。

                       <2017.10.05記>

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2017年10月 4日 (水)

■【社会】<調べてみた!その1>平均年収421万円って高いの?低いの?格差って本当に広がってるの?

民間の給与について先週、国税庁から発表があり、平均給与は421万円と前年比+0.3%、1万2000円のアップとなった。

高いのか低いのか、なんだかよく分からないので調べてみた!

Photo

■ソースは以下の国税庁資料。

平成 28 年分   民間給与実態統計調査  (平成 29 年9月 国税庁 長官官房 企画課)

まずは

【Q1: 421万円って高いの?】という疑問について

上のグラフは平均給与の推移。

リーマンショック前の437.2万円に対し、H21(2009年)に最低の405.9万円と-31.3万円まで低下。

H24(2012年)のアベノミクススタート時点まで低迷し、そこから回復。

しかしながら、H28(2016年)、今回発表の421万円という値は、リーマンショック前に対してー15.6万円であり、半分しか回復していない、ということになる。

Q1【結論】まだ回復は5合目で、まだ15万円ほど低いお、

■つぎに正規、非正規について

【Q2: でも非正規は安く抑えられてるんでしょ?】という疑問

Photo_3

正規、非正規の統計データはH24(2012年)からであり、そこからグラフ化してみた。

全体でいうとH28(2016年)の421.6万円は、アベノミクススタート時点のH24(2012年)に対し+13.6万円、+3.3%だったが、正規雇用者は486.9万円で+19.3万円、+4.1%、非正規は172.1万円で+4.1万円、+2.4%であった。

回復率も低いが、ここは絶対値の正規+19.3万円、非正規+4.1万円という点を気にしたい。だってもともと172.1万円(税金とか引く前だよ!)なんだから生活費を考えたら+1万円の絶対値の意味がとてつもなくでかいはずだからだ。

この正規雇用とのギャップはあまりにも激しすぎる。

予想通り、正社員の給料はそこそこ回復してきているが、非正規については下がってはいないけれども上昇代は低く抑えられている、ということだ。

Q2【結論】非正規雇用の給料はあんま上がってないお、

■さて、問題はここから。

【Q3: ところで平均年収って、ちと高くね?】という疑問と

【Q4: 格差って本当に拡大してるの?】というところに踏み込みたい。

Photo_4

上のグラフはH24(2012年)とH28(2016年)の所得層別人数の分布である。

ちょっとビジーになってしまってごめんなさい。

格差の話が気になるけど、まずはQ3をやっつけよう。

ここで統計のマジックの話になるのだけれど、【平均値】ってのがわれわれの思い描く【平均】を意味するかというと、実は違う。

上のグラフを見てわかるように分布のお山は対称じゃない。

こういう場合は【平均値】が高い方に引っ張られることになる。

では【平均的な値は?】という点で何か適切かというと【中央値】というものがある。

100人を背の高い順番に並べて低い方から50人目(真ん中)の人の身長が【中央値】だ。

【平均値】は統計値として変化の比較に使うには適しているけど、絶対的な値としては【中央値】の方がしみじみするだろう。

この場合、H28(2016年)の【平均値】が421.6万円であるのに対し、【中央値】は(えいやの比例計算で)359.4万円となる。

その差、60万円。

パートのお母さんも非正規の人も含んで考えてるとすると、年収360万円の方がしっくりこないだろうか。

Q3 【結論】421万円は実態よりも結構高い数字だお、

ちなみにH24(2012年)とH28(2016年)の比較で言うと、平均年収は+13.6万円であるのに対し、中央値は+9.4万円だ。

真ん中の人は、それほど給料が上がってない、ということになる。

これがまさに次のテーマだ。

【Q4: 格差って本当に拡大してるの?】

もう一度、グラフを見てみよう。

Photo_4

青いい棒グラフがH24(2012年)の、赤い棒グラフがH28(2016年)の各年収層別の人数(千人、左目盛)

折れ線グラフは、この4年間でその年収層でどれだけ人数が増えたかの割合(%、右目盛り)を示す。

全体で給与所得者が7%増えていて、黒い横線はその7%ライン。

ここから読み取れるのは

・年収100万円以下(パートさん?)は、全体の増加率と変わらない。

・年収100万円から400万円(非正規雇用の方が中心?)は、全体に比べて増え方が低い。つまり相対的には減っている。

・年収800万円以上の層は、年収が高い層ほど増え方が大きい。

まとめると、低所得層は相対的には減ってきているけれど、金持ちになるほど所得の増加(所得層の階段を上る)割合が高くなる。

つまり、金持ちほど給与がいっぱい増えてる、ということだ。

うーん、やっぱり。

Q4【結論】所得格差はやっぱり広がってるお、

■アベノミクスで確かに給与所得は上がった。

低所得者層も少しづつ改善してはいる。

けど、高額所得者になるほど給与の回復スピードは高く、低所得者はさほど改善していない。

平均給与が+13.6万円であるのに対し、中央値は+9.4万円であるという謎に対する答えはこれだ。

平均給与で語ると高額所得者(大企業の職位の高い人?)の改善代に引っ張られて、非正規だけじゃない、中小の人や、平社員といった低、中所得者の実感とまったく合わない、ということになるのだ。

この改善がアベノミクスだけによるものかも論点となるけれど、今回はデータがないので語ることはしない。

けれども、少なくともわれわれ庶民においては【大いに改善した】と言えるレベルではなく、政府やマスコミが言うほど、景気が回復した実感がない、ということをデータで裏付けられたのではないかと思う。

■いやいや、高所得者の給与の回復が早いのは分かったが、そもそもリーマンショック後の高所得者層の給与の低下も同じように激しかった、それが戻っただけなんじゃん?という疑問もなくはない。

そこで眠たい目をこすりながらリーマンショック前のH19(2007年)とH28(2016年)を比較し、その回復具合を調べてみた。

Photo_5

分かることは

・年収100万円以下(パートさん)は全体に比べ+9%増えている。

・年収350万円あたり(中央値近辺)は全体に対して+6%増加

・年収600-1000万円あたりは全体に対してー8%程度減少

・年収1500万円(大企業管理職?)あたりは全体に対しー18%減少

・年収2500万円以上は全体に対して2%増加

 

ずいぶんと様相が変わってきて驚いた。

まとめると、リーマンショック前に対し、増加した低所得者層は増えたまま。

平均より上の層は減少したまま、未だ回復せず、

年収1000万超えの高給取りはさらに回復が遅く、

超高給取りだけが、リーマンショック前の比率を超えている。

 

部長さん、ごめんなさい。

あなたたちの層が一番割を食ってそうですね。

どうやら年収2500万円以上の超高給取りの一人勝ちの様相です。

こういうのを格差拡大というのか・・・

 

この不公平に対し怒りを込めて!

 

と、思ったけど、実は格差拡大って

別に暮らしていける金がありゃいいじゃん、

金儲けが好きな人は好きなだけもうけりゃいいじゃん♪

でも、そんな金儲けしてどうするの?

と思った瞬間にピケティの呪いは解け、不思議と強い怒りが収まってくる。

 

でだ、この統計の税収の部分を冷静に見てみたら結構面白い構図が分かってきた。

金持ちが増えた方が僕らもラッキー♪

という話なんだけど、そのあたりは次回のお楽しみということで。

                         <2017.10.04 記>

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2017年9月25日 (月)

■【社会】NHKスペシャル「亜由未が教えてくれたこと ~障害者の妹を撮る~ 」、そこにいてくれることが幸せなんだ。

不幸だとか、かわいそう、ということは他人が決めることではない。

20170924nhk

19人の命が奪われた相模原市の障害者殺傷事件を起こした植松被告が語った言葉「障害者は不幸を作ることしかできない」。NHK青森の若手ディレクターは、この言葉が心に突き刺さっていた。3歳年下の妹、亜由未(23)は、事件の犠牲者と同じ重度の障害者。20年以上亜由未と暮らしてきて、不幸だと感じたことはなかった。しかし、小さい頃から介助や世話は親任せ。そんな自分が、障害者の家族は幸せだと胸を張って言えるのか。両親に相談し、介助をしながら亜由未を1か月にわたり撮影することにした。 (NHKスペシャルHPより)

■障害者が頑張る姿、見せる笑顔、支える家族。

そういった分かりやすい感動ものがたりでしか、われわれは障害者の物語を知らない。

しかし、実際はそんな単純なものじゃない。

亜由未ちゃんの双子の姉妹は、亜由未の主治医になるんだと群馬の大学の医学部に進むが、その一方で亜由未ちゃんに自分の人生のすべてをかけることに戸惑いを覚える。そしてそういう戸惑いを感じること自体に、「すべてを障害者である家族にそそぐべきだ」という社会的圧力から強い引け目を感じている。

一方で、介護を23年続けてきた母親は、自身も大病を患っていて自分の死を常に意識している。そうしたら、この子はどうなってしまうのか。

その母親が、その不安から娘に電話をかけて、近くに戻ってきて欲しいと頼むシーンが衝撃的だ。

日中の介護を手伝ってくれるヘルパーさんや、散歩のときに声をかけてくれる近所の人。亜由未ちゃんを囲むそういう穏やかなやさしさとぬくもりの影に、避けられない現実と苦悩が提示される。

ドラマのようにハッピーに解決されることのない重苦しい苦悩が横たわるなかで、でも亜由未ちゃんは確実に生きている。

それは不幸なのか。

それはかわいそうなのか。

■幸せなんて相対的なもので、、、なんて理屈はここではどうしようもなく無力だ。

ただ言えることは、生きている、という事実とどう向き合うか、ということに幸せの本質が隠されているのではないか、ということだ。

自分に笑顔を見せてくれるかどうかにこだわる息子に対し、母親がいう。

別に笑ってくれなくてもいい。

ここにいてくれるだけでいい。

笑ってくれることはうれしいけど、じゃあ、笑ってくれなかったらダメなのか。どんな苦しい状況でも、亜由未ちゃんが苦しみ、泣き叫ぶときも、ずっと付き添ってきた重みがそこにある。

しっかりとわたしの目の前で生きている。

それだけで、そこのことだけで自分のなかから気づかないうちに自然と湧き上がってくるもの。

客観的には幸せに程遠い状況のなかで浮かび上がるその感覚を、幸せと呼ぶことはできないのだろうか。

■亜由未ちゃんがお父さんの歯磨きのやり方が強すぎると怒るシーン。

お母さんから、もう、ずーっと痛かったのよ、今、それが爆発したの!と、たしなめられる。

すごすごと引き下がるお父さんだったが、次の歯磨きのときに、歯磨きの歌をニコニコと歌いながら優しく亜由未ちゃんに歯磨きをしてあげる。

それをうれしそうに受けている亜由未ちゃんとお父さんの姿があまりにも面白くて、つい爆笑してしまった。

そう、これが幸せなのだ。

理屈じゃない。

                       <2017.09.24記>

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2017年8月 4日 (金)

■【社会】戦前の人の寿命って45歳って本当なのか?平均寿命のトリックと人間の寿命について考える。

現在の我々の寿命は80歳で、戦前は50歳以下だった。なんてよく聞くけど本当なんだろうか?だって、昔話だっておじいさん、おばあさんが平気で出てくるじゃん。おかしいよね?と思って厚生労働省の資料をグラフ化してみた。

20170804

■結果、想像以上に面白いことがわかった。

平均寿命の定義は、0歳平均余命。つまり、おぎゃあと生まれた赤ん坊が平均であとどれくらい生きるのか?という平均値なのだ。

当然、抗生物質のない戦前の乳児死亡率は高いわけで、平均寿命は乳児の死亡率に思いっきり引っ張られる。

だから、20歳とか40歳の平均余命の推移が分かれば、無事に成人した人が何歳くらいまで生きたのかがわかるだろう、そう思ってグラフを作成してみたのである。

■上のグラフは明治24年以降の0歳、20歳、40歳、65歳、80歳それぞれが平均で何歳まで生きたか(年齢+平均余命)を示したものである。(男性)

予想通り、20歳まで生き残った人は明治時代においても60歳、40歳まで生き残った人は65歳くらいまで生きている。

つまり無事に成人した人は還暦まで生きるのが普通だったということだ。

思い出してみよう。平均寿命の定義は、0歳平均余命。上のグラフで言うと一番下の青い折れ線だ。確かに戦前の平均寿命は50歳以下で、戦後にぐいぐいと上昇していく。

僕らはこれを見せられていたのだ。。。

うーん、やっぱそうだよね。ここまでは想定内。

だが、びっくりしたのは80歳まで生きた人の寿命である。

■再び上のグラフの一番上の80歳の水色の折れ線を見てみよう。

なんと明治時代から85~90歳と安定して推移しているじゃないですか!

つまり、大きな病気をしないで80歳まで生きた人は85歳まで普通に生きていた。しかも、それは平成の世になっても90歳以上には伸びない、ということだ。

で、江戸時代の有名人をしらべてみたら、葛飾北斎は90才、杉田玄白85才、貝原益軒85才、滝沢馬琴82才、上田秋成76才、良寛74才、伊能忠敬74才、徳川光圀73才、近松門左衛門72才なのだそうで、やっぱり江戸時代でも80歳まで平気で生きていらっしゃる。

平均寿命=0歳平均余命ってことを意識していないと、江戸時代も明治の人も50歳でなくなっていた、だって織田信長も人生50年ってうたってたもんね。なんていうとんでもない勘違いをしてしまうのだ。

昔は病気も治らなかったし、栄養状態も悪かったからね、現代は圧倒的に健康になって、老人の寿命もどんどん延びていくんだね。

という理解は、全体としては正しいのだけれど、【寿命】というものを「人間は健康であれば何歳まで生きるのか?」と定義するならば、それは大きな間違いだ、ということだ。

僕らの寿命は、明治も今も90歳弱。(ちなみに女性の80歳平均余命は今回グラフ化した男性の場合の+0~2歳)

【結論】 大きな病気にかからず健康に老いた場合の人間の寿命は90歳くらい。それは明治時代も今もさほど変わらない。どれだけ医療や栄養状態が良くなっても90歳程度で老いて死ぬ。人間って、そういう風にできているのだ。

 

だから、娘よ。

ずいぶん先の話ではあるけれど、

ぼくが90歳になって死にそうになったとしても、無理な延命処置で管とか突っ込んだりしないで静かに枯れるように死なせてね。

自然がいちばんなんだから。

                        <2017.08.04記>

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