プロフェッショナル・仕事の流儀

2009年4月29日 (水)

■現実を受け止め、本気で実行することこそが人を目覚めさせるのだ。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 武装解除・瀬谷ルミ子。

今回は武装解除活動DDRのプロフェッショナル、瀬谷ルミ子さん。

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■銃よ、憎しみよ、さようなら ・武装解除・瀬谷ルミ子
<2009.4.21放送> (番組HPより)

■32歳。笑顔がかわいらしい人である。

そんな彼女がアフリカや中東の紛争地帯での武装解除のスペシャリストだなんて、もう想像の域を遥かに越えてしまっている。

■国家規模の武装解除活動であるDDRとは、武装解除(Disarmament)・動員解除(Demobilization)・社会復帰(Reintegration)の3つの活動によって構成される。

政治的な和平合意が成されても、紛争地帯の現場ではなかなか平和が訪れるものではない。

銃が普通に行き渡っていて、軍や民兵組織も解体させず、たとえ解散したとしても職は無く生活、生きていくことが出来ない。

そういう難しく絡み合った現実・実態をひとつひとつ解きほぐしていくのが瀬谷ルミ子さんの仕事なのである。

■肌の色も、風習も、考え方も異なる異国の、しかも極限までの緊張状態が続く紛争地帯だ。

日本女性の柔らかさが、かえって相手のこころを開かせる、

とはいっても、少しでも踏み込む方向を間違えれば自分の命が危険にさらされることになることに違いは無い。

決して甘い世界ではないのだ。

■何が彼女を突き動かすのか、

その問いは私自身にとって未だに大きな謎であって、今回はそこは問うまい。

これは理屈でどうこう言えるものではないだろう。
   

■瀬谷さんのもつ人間としての強さとやさしさは、画面を通してしっかりと伝わってきた。

そのなかでも一番心を打たれたのは、両親を失い、叔父を殺され、少年兵として軍に入った19歳の青年の話だ。

■紛争は終結し、軍は警察の役割を担うようになったのだけれども、学校に戻って勉強をしたいという青年の除隊を上官は全く受け入れない。

瀬谷さんは彼のほんとうの気持ちを分かろうと試みるのだが、すっかり人生をあきらめてしまったかに見える青年はうなだれるばかり。

■すぐさま青年の所属する隊に向かうもまったく話がかみ合わない。これはダメだと、その方面を総括する准将に面会を求め、除隊が可能であるという発言を引き出した。

結局、除隊は無理だったのだが、軍に所属しながら学校で学ぶという道筋を作り出すことに成功する。

■デスクでパソコンと電話にしがみつき、早朝から深夜まで、ねじりハチマキで統計データを分析する。

いくら懸命にはたらいていたとしても、それでは本質的な問題解決にたどり着くことは出来ない。

極めて個人的な現実を見つめ、相手のこころの深いところに接することで見えてくるものは、実は全体としての問題解決の大きな糸口になるものなのである。

瀬谷さんが青年と真剣に向き合ったことで立ち現れてきたことは彼一人の悩みではなくて、その地域の軍全体がかかえている矛盾につながるものであり、ひとりの問題の解決は、多くの青年たちの苦しみを解放することにもつながるのである。

■が、感動を覚えたのは、そこではない。

自分の為に、雲の上の存在である准将と直接掛け合ってくれ、学ぶことにむけての道筋を示してくれた、その瀬谷さんの’本気’に目覚めた青年の瞳に感動したのである。

  ここから先は自分の力で進んでいくんだよ、

という瀬谷さんに対して、

  I know to do, now.

   It's my life !

と、希望を取り戻したその瞳に感動したのだ。

   
そして、瀬谷さんの生き方の端っこの方にちょっとダケ触れることが出来たような気がして、じんわりと幸せな気分に浸ることが出来たのである。

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                            <2009.04.29 記>

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■【新書】 武装解除 -紛争屋が見た世界
伊勢崎 賢治 著 (講談社現代新書 2004/12/18)


 
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2009年2月20日 (金)

■背中が伝えるものなのだ。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 航空管制官・堀井不二夫。

久々のプロフェッショナルは、航空管制官の堀井不二夫さん。

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■空を守る、不動の男・航空管制官・堀井不二夫
<2009.02.17放送> (番組HPより)

■空港の管制官ほどストレスのかかる仕事はないだろう。

何しろ何百人も乗客を乗せた何機もの旅客機を相手に、刻一刻と変化する状況に対して常に適切な指示を出す。

そこに失敗は許されない。

■しかもパイロットは管制官のいうことを信じ、その指示に従うワケで、極めて重い責任がのしかかる。

少し前の話だったか、経路が交差する2機の旅客機に対して管制官が間違って互いに近づくような指示を出してしまい、あわや空中衝突、という危機的状況を作ってしまったというアクシデントがあった。

その時、それぞれの旅客機に搭載された接近警報装置は「正しい」回避行動を指示していたのだけれども、実際にはパイロットは管制官の指示を優先してしまった、ということがあって、そこから考えても如何に管制官の指示が絶対的なものなのかが分かるだろう。

■そんな管制官が手に汗握りながら次々と指示を出していく管制室というのは、さぞやピリピリと張り詰めているだろうと思っていたのだが、意外にフランクな空気が流れているのに驚いた。

どうやら、そういう空気を作り出すのが堀井さんの流儀らしい。

■連帯感を感じる、安心できる、頼れる。

というのがパイロットたちが抱く堀井さんの印象だ。

堀井さんは常に、それぞれのパイロットの気持ちに寄り添って、共に飛ぶ。

それが伝わるから、着陸に向けて緊張を強いられる進入のシークエンスでもパイロットの気持ちを和らげることが出来るのだ。

■けれど、それは並大抵のことではなくて、共に飛ぶ、というからには百戦錬磨のパイロットたちの判断力と同じ高みに身を置かねばならないということだし、しかも同時に何機もの機体の動き、それぞれに気持ちを向けなければならない。

何故、そんなことが出来るのか。

実地訓練をはじめたばかりの若い管制官に対する堀井さんの指導を見ていて、何となくそのヒントがつかめそうな気がした。

■「パイロットの気持ちになって、」と指導するのではなく、

実際にパイロットの気持ちに立った管制をしてみせる。

短く簡潔な交信の中にパイロットと堀井さんとの確かな「つながり」が見えて、ああ、こうありたいと思える背中を見せること。

そのコトバでは表現できない、「こうありたい」という姿をしっかりと自分のものとしてイメージできること。

それさえあれば、技術的な問題は経験を積めば自然と身についてくる。

■逆に「こうありたい」という理想の構え、骨格を持たずに、自分の能力にまかせて状況を処理するテクニックばかりを研ぎ澄ませてしまうと、いつかどこかで破綻をきたしてしまう。

そういうものではないだろうか。

そして、それはどんな仕事についても言えるのではないか。

■実にフランクな羽田の管制室も、いざというときには別の顔をみせる。

バードストライクしたかもしれない、と離陸した機体のパイロットから連絡、急ぎ、滑走路を閉鎖して異物の排除に取り掛かる。

管制室のいろいろな立場のメンバーそれぞれが、今すぐにやるべきことを自分で判断し、堀井さんの了解を得る。

その、あうんの呼吸が見事でゾクゾクしてしまった。

ああ、こういうチームが作れたら、という理想の姿がそこにある。

■自分を権力者にしない、

どの立場のメンバーも常に自分の考えを臆することなく言える空気を作り出す。

と、口で言うのはたやすいが、なかなか実際にそういうチームを作れるものではない。

■ここでも、やっぱり「背中」なのだと思う。

「おまえら、自分で主体的に動けよ」なんて気持ちが裏に透けて見えたら、その「命令」を意識して、逆に、ボスの顔色を覗うようになってしまう。

そうではなくて、本気でメンバーひとりひとりの言葉を真摯に受け止める、その日頃、皆にみせている背中が生み出す安心感、

それが、自分で考え行動していいのだ、という主体性の原動力になるのだと思う。

                         <2009.02.20 記>

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■機長の一万日―コックピットの恐さと快感!
田口 美貴夫 著 (講談社プラスアルファ文庫)

      
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2008年11月29日 (土)

■今。 『プロフェッショナル・仕事の流儀』 落語家・柳家小三治。

録っておいたまま放置すること一月半、

見てよかった。

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■笑いの奥に、人生がある・落語家・柳家小三治
<2008.10.14放送> (番組HPより)

■小三治さんのはなしを聞いていて

肩に入った力が抜けていくのを感じて

楽になった。
  

■前に出ようとする自分を

小さく、小さく、

と、おしとどめる。

  
「今日の自分」を感じ、できること、

それが立ち上がってくるのを待つ。

  
■観るものが思わず笑ってしまうのは

己も、自然に湧き上がってくる

その内にあるからだ。

                       <2008.11.29 記>

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2008年9月14日 (日)

■あんた、「一期一会」って言いますやろ。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 京菓子司、山口富蔵。

今回のプロフェッショナルは、京菓子司の山口富蔵さん。

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■古都の雅、菓子のこころ・京菓子司・山口富蔵
<2008.09.09 放送> (番組HPより)

■一期一会。

いちげんさんでも、お得意さんでも、一回の仕事は一回きりのもの。

お客さんが何を求めているか。

それに答えるには、自分の懐が深くないと応えられない。

職人としての菓子の技術だけでなく「遊び」が必要になる。

向き合ったお客さんに「面白い」と思わせる人間の厚みが問われるのだ。

■一方、お客さんによろこんでもらうためには、

これこれこういうものがいいでしょ、と正解を提示するものではない。

お客さんに選択の余地を残さなければ、面白くない。

お客さんに向き合ったときに、

その一期一会の関係性のなかで初めて生まれてくる。

それが「面白さ」なのだ。

■オーダーメードの和菓子作りと自動車のような大量生産の商品作りとは、もちろん相容れないところもあるけれども、

買う側のお客さんにしてみれば、はやりそれは「一期一会」なのであって、大量生産は言い訳にはならない。

そこで「一期一会」にどう応えていくか。

難しいけれど、面白い課題だとおもう。

                      <2008.09.13 記>

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■『京・末富 菓子ごよみ』
■山口 富蔵 著 淡交社 (2001/10)

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2008年9月 8日 (月)

■勇気を持ってゆっくり行け。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 競泳コーチ・平井伯昌。

今回のプロフェッショナルは、競泳コーチの平井伯昌さん。

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■北京五輪スペシャル・「攻めの泳ぎが、世界を制した」
競泳コーチ・平井伯昌。<2008.09.02放送> (番組HPより)

■今回の北京五輪で一番印象に残ったのは、北島康介が100m平泳ぎを世界新で勝利したときのインタビューだ。

「すいません、・・・なんも言えねぇ。」

ああ、随分分苦しんだんだな、と胸にグッときた。

その北島と共に歩み、ここまで引っ張ってきたのが今回の主役、平井伯昌さんだ。

■北京五輪3ヶ月前から平井さんの姿を追った番組をみていて、コーチとしてのあり方についていろいろと参考になるポイントがあった。

①選手の「攻めの気持ち」を支える。

②指導は「ワンポイント」に絞って伝える。

③選手の一歩先をいく。
  先に悩んでおいて「その時」に選手を迷わせない。

④精神はカラダで鍛える。
  ここまでやったんだという自信をつけさせる。

■けれど、そういった「ポイント」の以前に、北島と平井コーチの間の絶対的な信頼感というものがあって、それが北島の心を支えたのだと思う。

当時、中学生だった北島の「目つき」に惚れ込み、シドニー、アテネ、北京と、世界の頂点で共に苦労して歩んできたその年月がすべての礎となっているのだろう。

自信とか信頼とかいったものは短期間で出来上がるものではなく、ましてや「コーチング・マニュアル」だけで作られるものではない。

■一般の生活において、これだけ濃密な関係を築くことはなかなか出来ないはなしであろう。

けれど、少なくともお互いに信じあえる関係を作り上げることは可能なのじゃないだろうか。

そのためにはどうしたらいいのか。

それはたぶん言葉で表現できるようなことじゃなくて、でも実は、とても単純で基本的なことなのかもしれない。

その単純なことが出来ないのが人間だったりするのだけれど。

                         <2008.09.07 記>

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■「世界でただ一人の君へ―新人類 北島康介の育て方』
平井伯昌 著 (2004年7月)
    

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2008年8月10日 (日)

■すべては自分の内から生まれてくる。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 映画監督・宮崎駿。

今回のプロフェッショナルは夏休みスペシャル拡大版。

宮崎駿さんが『崖の上のポニョ』を生み出す過程をカメラが追った。

080805
■宮崎駿のすべて ~「ポニョ」密着300日~・映画監督・宮崎駿
<2008.08.05放送> (番組HPより)

■「映画の奴隷になる」、宮崎さんはそう語った。

’この映画はこうでなきゃいけない’という「宿命」がある。

作品とは自らの意思で創りあげるものではないのだ。

■主人公のイメージを決めたら、いきなりシナリオを書き始めるのではなく、イメージボード(スケッチ)を描き、毎日の散歩でみた身近な風景や、スタッフとのたわいない会話から、さらにそのイメージが膨らんでいく。

物語は、今、この瞬間に感じるものが、これまで今まで生きてきた自分自身の足跡と重なり、共鳴することで立ち上がってくるものなのだ。

■「生まれてこなければよかった」。

母親が病身で思い切り甘えることが出来ず、ムリに「いい子」であろうとして屈折していった幼少期。

それが67歳にしてなお創作の源泉であり続ける。

「楽しんでもらうこと」。

それが「自分が生きていていい唯一の存在理由だ」とつぶやくのだ。

■幼少期に刻まれた母親の笑顔を手に入れようという切なる思いは、アニメーション作家になって以降の宮崎さんにとって作品を見てくれる子供たちの笑顔に直結する。

宮崎さんの作家活動は自らの心の奥でうずき続ける屈折した幼児期の自分を救済する為に存在するのだろう。

だから「本当の笑顔」を得るために決して妥協はしない。

それは理屈によって生み出せるものではなく、鬱屈したこころの奥底に沈む「なにか」から浮かび上がってくるものなのだ。

■絵コンテの締め切りを過ぎても「それ」が浮かび上がってこない限り先に進むことは出来ない。

「崖の上のポニョ」の終盤のシーン。

歩けないはずの老婆「トキ」が宗佑に歩み寄り、抱きしめる。

その絵コンテを書き上げた宮崎さんの目には涙が浮かんでいた。

それは、決して悲しみによるものではない。

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                            <2008.08.10 記>

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■【DVD】プロフェッショナル 仕事の流儀スペシャル 宮崎 駿の仕事

  

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■【DVD】 ルパン三世 - カリオストロの城
■宮崎駿・初監督作品。79年の公開時点では全く売れずに、その後「アニメージュ」誌上で人気が出た「風の谷のナウシカ」映画化までの5年間(38歳~43歳)は不遇の時代だったのだそうだ。
この映画が「マンガ映画」ではない「映画作品」として存在したことで日本のアニメーション全体が底上げされたように思うのだが、やはり先頭バッターはツライ、ということか。
   

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■【マンガ】 『 風の谷のナウシカ 』 全7巻セット
■『ナウシカ』の完全版をいつか映像で見てみたいものだ。

   

■関連記事■
■感情に正直であること。 宮崎駿

                         

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2008年7月12日 (土)

■出口の見えない徒労の時間の意味について。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 映画監督、演出家・堤 幸彦

しばらく録りためていた「プロフェッショナル・仕事の流儀」をぼちぼちと見始めた。

今回のプロフェッショナルは、映画監督の堤 幸彦さん。

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■気負わず、おごらず、立ち止まらず。映画監督、演出家・堤 幸彦
<2008.5.13放送> (番組HPより)

■『ケイゾク』、『池袋ウエストゲートパーク』、『TRICK』などのドラマの演出で有名な堤 幸彦監督だけれども、花開いたのは40歳頃で、そこまでの演出家としての人生は決して恵まれたものではなかった。

かっこいいミュージック・クリップをつくるという夢を抱いて飛び込んだこの世界。

だがAD時代にはその要領の悪さから、何も考えない、動かない、突っ立っているだけの「電信柱」とあざけられながらも、妻が不治の病に倒れてからはその治療代を稼ぎ出すために、朝から晩まで現場のハシゴをしながら働き続けた。

■この時期の、先の見えない結果の出ない、徒労ともいえるような苦労の日々が、『金田一少年の事件簿』というチャンスにおいて、周囲が瞠目するような大輪の花を咲かせる源泉であったのだ。

と、それはよくある人生の「筋書き」であって、そういう話が好きならば福留さんの『波乱万丈』でも見てなさい、ということなのだけれども、

それでも、意味がまったく見出せない徒労の中で、ただひたすらに歩み続けることの大切さを最近しみじみと感じていて、そういう風に軽く受け流すことが出来ないのだ。

■泥沼のなかで、もがいてももがいても先に進んでいる気がしない。

今、まさに、そういう現在進行形の中に自分があって、まったく他人事ではないのである。

世にいう【 ミッドライフ クライシス 】というやつであろうか。

いや、「名前」なんてどうでもいい、私の人生の問題を「あ、それは、【 ミッドライフ・クライシス 】ですね」なんて、そんな簡単に片付けられてしまっても困るのである。

空回りするばかりの焦燥感。

気、ばかりがはやる。

■客観的に「他人事」として考えるならば、

明けない夜は無い、

などといった言葉を添えて、ゆっくりでいいから進んでいこうと励ましたりもするのだが、

こと、自分のことになるとそんな冷静な考えはまったく働かず、「先に進んでいるかどうかさえ分からない漆黒の暗闇のなかの不安感」に呆然と立ち尽くしてしまいそうになるのである。

■ただ、ひたすらに歩み続けた結果、堤 監督のように花開くひともいる。

けれど堤 監督にしたところで、40歳でいい作品にめぐり合い一気に表舞台に躍り出る、なんてことはつらく厳しい30代には予想もつかなかったことであって、

それは50歳かもしれないし、60歳かもしれないし、もしかすると、アンパンマンで一躍脚光を浴びたやなせたかしのように70歳近い時期になるかもしれない。

先がまったく読めないからこそ苦しいのだ。

■その苦しみの中でもがきながら一生を終える人も大勢いるだろう。

明けない夜は無い、なんていう言葉は気休めで、いつか花開くなんていう保証はどこにもないのだ。

■だからといって、あきらめてしまっては「それまで」である。

あなたにとっての「プロフェッショナル」とは?

という問いに、堤監督はこう答えた。

『どんな逆境でも楽しめること』

■その言葉は、生半可ではない逆境をその背後に感じさせる。

そうなのだ。

今の「成果」の出ない泥沼を「徒労」とは考えないこと。

そこに何らかの意味を求めるのではなく、

それ自体を楽しむこと。

逆境は逆境であって、めちゃくちゃ厳しい状況であることに変わりは無いのだけれども、その状況をネガティヴな「徒労」として自分の外に排出するのではなく、自分の中に取り込んで真っ直ぐ向かい合うこと。

それが、一生、芽が出ないかもしれないという思いのなかで走り続けた堤監督が身につけざるを得なかった流儀なのだろう。

■その為には自分の持っている夢を実現したいという強い思いとその思いにおいては誰にも負けはしないという自信が必要なのだと思う。

それが出口の見えない暗闇の中を進んでいく人間がその苦闘のなかでもがきながらも勝ち取った欠くことの出来ない「能力」なのだと思う。

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■撮影の現場ではなく控えの場所でモニターを見ながら演出をつける堤監督。目の前で演技を見てしまうと、それにのめりこんでしまって客観的に見ることが出来なくなってしまうからなのだという。深く、物事を考えているひとなのである。

■そういうストイックな生き方がある一方で、

まあ、いいじゃん。

とお気楽に生きていきたい自分もいたりする。

思いつめれば周りが見えなくなって客観性を失うのも理屈であって、

何事もバランスなのかな、とも思う。

と、深く悩んでいる振りをして、どこまでも自分に甘いのであった。

・・・、ってダメじゃん(笑)。

                           <2008.07.12 記>

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■ケイゾク DVD BOX ■トリック(1)        ■明日の記憶

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2008年3月24日 (月)

■筋を曲げない。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 サッカークラブGM・祖母井 秀隆。

今回のプロフェッショナルは、サッカークラブ ゼネラルマネージャーの祖母井(うばがい) 秀隆さん。

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■信頼の上にこそ、組織は輝く・サッカークラブGM・祖母井秀隆
<2008.3.4 放送> (番組HPより)

■「男はタフでなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない」と言ったのはフィリップ・マーローだが、祖母井さんはそういった男の風格を感じさせる人だ。

■サッカークラブのゼネラル・マネージャーという仕事についてはあまりよく知らなかったのであるが、選手・監督・コーチの人事権を持つ権力者であると同時にチームの運営、練習場の手配、選手の育成計画や日々の躾からチームの広報戦略に至るまで。要するに何でもこなすスーパーマンなのである。

祖母井さんのデスクの脇のスグそばに置かれたシュレッダーがその業務の膨大さを物語る。

判断すべきことは山積み、しかも刻一刻と状況は変化していく。

終わったことはバリバリとシュレッダーにぶち込んで忘れていかないと、とてもやっていけないのだろう。

冷徹、というよりはむしろ熱血で、人一倍ものごとにコダワルからこそ無理やりにでも次へ前へと進むために必要で象徴的なツールであるようにみえた。

■その熱さは生まれながらのものなのだろうけれど、ジェフのGM時代にオシム監督と過ごした時間がその’熱さ’をさらに強いものとしたに違いない。

ジェフとの契約書にサインしようとしないオシムはこう言ったという。

「契約で仕事をするんじゃない。お前を信用するから仕事をするんだ。」

こんなことを言われれば誰だって燃えてくるだろう。

■・引いたところから温かく見守る。

・「競争」を持ち込むことで組織を強くする。

・言葉だけじゃなく、現場と行動をともにする。

・信じることが選んだものの責任。

そういった「流儀」のひとつひとつが胸に響くが、特に

・筋を曲げない。

という信条が強くこころに残った。

■選手ひとりひとりに心を開き、信じる。

そのこと自体はリーダーとして一番大切な部分だと思うのだけれども、幾多の選手、さらには監督、オーナー等などと世界を拡げていったとき、そこには必ずといって強い不整合が発生するものである。

しかも具合が悪いことに、それぞれがいちいちもっともな主張だったりするわけで、そうなるとまとめ役は右へ左へと振り回される。

祖母井さんのような大きな組織をまとめる立場でなくても、それは、そこここの現場でしょっちゅう起きていることだし、自分自身、よく巻き込まれる事態である。

■そんなときに「筋を曲げない」が必要となる。

自分の基準をしっかり持ち、それに従う。ということである。

右へいくべきか左へ行くべきか、どちらももっともなのだけれど、今すぐに決断しなければならない。

そこで、うだうだと判断を先延ばししたり、しょっちゅう意見を翻したりしない。

当たり前のようでいて、これがなかなか難しいことだと思う。

つまりは「責任を負う」ということ。その「覚悟」をもっている、ということだ。

たとえ、それが結果としてうまくないものであったにせよ、あの人には信条があってたやすくなびかない、という見方は、まわりの人間からの信頼を生み、育んでいく。

■けれども、そのためには「タフ」であるだけでは駄目で、まわりの人間ひとりひとりに対する「尊重」が必須の条件となる。

「優しくなければ生きていく資格はない。」

のである。

■祖母井さんの「流儀」が組織をまとめ、強くしていく上で常に最上のものかどうかは分からない。

ものごとに正解が無いように、最上の流儀などというものは存在しないのだろう。

けれど、男の背中として、ひとつの理想型であることに間違いはない。

果たして自分に背骨はあるのか。

                           <2008.03.24 記>

■『 祖母力 うばぢから 』 オシムが心酔した男の行動哲学
■祖母井 秀隆 著■
<Amazon評価>
★★★★☆(7件のレヴュー)
 

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2008年3月 3日 (月)

■50%でいいから自分にしかできないものを。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 音楽プロデューサー・武部聡志。

今回のプロフェッショナルは音楽プロデューサーの武部聡志さん。

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■心揺さぶる歌は、こうして生まれる・音楽プロデューサー・武部聡志
<2008.2.12放送> (番組HPより)

■武部さんは30年、ポップスと向き合い、2000曲以上もの歌と関わってきた。

その仕事は音楽プロデュースだけでなく、作曲、編曲、コンサートの音楽監督にまで及ぶ。

その長い経歴の初期からの付き合いである松任谷由美に『最高の相棒』、とまで言わさしめる、まさに「大物」なのだ。

■けれども大物だからといってメジャーな仕事だけにこだわることはなく、分刻みの忙しさの中でも、新しい才能の発掘をおろそかにしない。

そうして発掘された「才能」のひとりが、『もらい泣き』で大きな一歩目を印した一青窈である。

■番組では一青窈の新しいアルバム『Key』を作り上げていく過程の一部として、クレージーケンバンドの横山剣が作った「いかにも」なクセの強い曲に一青窈が詞をあわせ、作りこんでいく姿を追っていった。

はじめは横山剣の強烈な個性に引きづられ、やはり、なかなか「一青窈」が出てこない。

けれど、何度も、何度も、曲に詞をあわせても、武部さんの表情の曇りは晴れることはない。

他の曲が順調に出来上がっていく中で、この曲だけが取り残される。

どんどんと追い詰められていく、一青窈。

「カタチ」が見えないままに、日にちだけが過ぎていく。

■松任谷由美の曲の編曲を皮切りに、編曲家としての道を順調に歩み始めた武部さんは、歌詞をていねいにていねいに読み込んで曲を練り上げるという地道な作業を積み重ねた。その結果、久保田利伸、斉藤由紀などのデビュー曲にかかわり、情景が浮かんでくるようなリアリティのあるアレンジで次第に頭角を現していった。

けれど時代は動き、打ち込みやダンスミュージックが隆盛を極め、こういう仕事もこなさなければプロではないと思い込んだところから迷い路へとはまっていく。

■そのときユーミンに言われたひとことが、武部さんの目を覚ます。

「流行っている要素を取り入れる度に、自分の色が薄まっていくんだよ。」

自分にしか出来ないものを。

たとえ50%であってもいいから、自分にしか出来ないものを。

流行に日和るのではなく、自分の個性をもっと上のレベルまで高めるしかないのだな、と悟ったのである。

■そこからの武部さんに迷いは無い。

・人の心を動かす歌は流行からは生まれない。

・アーティストの中にその答えはある。

・そのアーティストの人生、挫折といったすべてをひっくるめた『血』を大切にし、その言葉が世の中に届くように「カタチ」にする。

そういった自分なりの流儀が出来上がった。

そうして43歳になった武部さんは、当時23歳の一青窈に出会い、名曲、『もらい泣き』が生まれたのである。

■で、現在進行形の一青窈の苦闘はどうなったか。

とうとう日程ギリギリ、もう後が無い。というところまで追い込まれ、それでもTAKE2,TAKE3とすっきりしない。

その時、ふっと一青窈はアドリブでセリフを加えてみた。

その瞬間、まわりからはじけるように笑いが起きた。

ああ、これが「生まれる」っていうことなんだな、としみじみ思った瞬間である。

理屈をこねくり回していても「生まれ」ては来ない。

その対象と悪戦苦闘し、苦しみぬいて自分の中でこなれたときに、やっと「自分のうた」が「ふっ」と生まれてくるのである。

■恒例の「プロフェッショナル」とは?という問いに武部さんはこう答えた。

自分がイメージしたこと、思ったこと。それを確実にカタチにすること。その為の情熱と行動力を持ち続けること。

それは音楽のような芸術に限らず、クルマのような工業製品を「商品」として生み出していく仕事をするうえでも大切なことだと思う。

自分の想いをあきらめない情熱と行動力。

あらためて胸に刻み込もう。

                         <2008.03.01 記>

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一青窈Newアルバム『Key』(DVD付)
■一青窈×武部聡志■
【初回盤収録DVD】■一青窈 初のsingle collection live DVD■
1.もらい泣き 2.大家 3.金魚すくい 4.江戸ポルカ 5.ハナミズキ 6.影踏み
7.かざぐるま 8.指切り 9.つないで手(PV) 10.「ただいま」(PV) 11.受け入れて(PV)

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2008年2月29日 (金)

■何の為に。『プロフェッショナル・仕事の流儀』中小企業経営者・片山象三。

今回のプロフェッショナルは、織物機械を製造する中小企業の経営者・片山象三さん。

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■「あきらめなければ、失敗ではない」 中小企業経営者・片山象三
<2008.2.19放送> (番組HPより)

■織物業界は今、危機に瀕している。中国産の安い織物が市場を席巻しているのだ。

兵庫県、西脇。古くから織物で栄えてきたこの町も例外ではない。

中小の織物メーカーが寄り合うこの町では、20年前に1300社あった織物メーカーが300社を数えるほどにまで激減してしまった。

■そんな中、縦糸を取り替える段取りに大きな手間がかかっていることに着目し、織物のコストと納期を5分の1にまで低減させる画期的な織物機械を生み出した男がいる。それが、今回の主人公、片山象三さんである。

機械に関しては素人だと謙遜する片山さんなのだが、むしろ素人であることを強みとして、前例が無かったり、一般に困難だといわれることでも恐れ知らずに挑んでいく。

■そこで片山さんが素晴らしいのは、「一人では実現できない」ということを心の底から認識していて、西脇の町にあるいろいろな業界のプロのところへ訪ねまわり、頭を下げて教えを請い続けるところにある。

画期的なアイデアを実現して西脇の織物産業をなんとか生き延びさせたい。その情熱が周りの人たちの心を揺さぶり、巻き込んでいく。

■けれど人情としては片山さんに共鳴したとしても、現実問題として、日々、苦境に立たされている人たちの中からは、付き合いきれない、という声も上がってくる。

それでも片山さんがあきらめずに、何か自分にできることはないかと本気を見せることによって、その人たちを「輪」のなかにつなぎとめることができるのは、片山さんに誰よりも強い使命感があるからだ。

■「ちゃんと仕事をしている人が、ちゃんと生きていけるようにするには、どうしたらいいんかね?」

西脇の織物産業が置かれた苦境をなんとか打開しなければならない。その使命感からおこなった大きな投資に失敗し、最終的に自殺に追い込まれてしまった染物工場の社長さん。

片山さんが尊敬していたその社長さんの無念を思うとき、先の言葉が重く染み渡っていく。

■あきらめなければ失敗ではない。

希望があれば頑張れる。だから希望の灯は絶対に消さない。

そして、それを自分が本気で信じていれば、それは仲間にも伝わっていき、ベクトルも揃っていく。人の輪がつながっていく。

■理想論。

という言葉が頭に浮かぶ。

「あきらめない」、「自分が本気で信じる」。

そういう言葉は何度も聞いた、何度も読んだ。

■だけれども、そこで片山さんが違うのは『何の為に』、という揺るぎない土台がしっかりとあることだ。

西脇の地場産業が生き残っていけること。ちゃんと働けば、ちゃんと生きていけること。

ただ、それだけ。だから強い。仲間がまとまる。

■「一社では決して生きていけない。・・・、生きていけないんですよね。」

片山さんの心の底からこぼれ出たようなその言葉が全てをいいあらわしているように思う。

強い使命感が孤立したとき、それが強ければ強いほど、その代償として自らをすり減らし、その人を重く押しつぶしていく。

だから、謙虚に、ひたすら謙虚に、その言葉を噛み締めたい。

                         <2008.02.29 記>

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■ ドラッカー名著集1 経営者の条件
■ピーター・ドラッカーは『何の為に』というところを、「(その組織の目的に対する)『貢献』に焦点を合わせる」と表現しいている。
 

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2008年2月 9日 (土)

■「私」の外側でにこやかに笑うもの。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 石油化学プラント建設現場所長・高橋直夫。

今回のプロフェッショナルは、大規模な石油化学プラント建設の現場を率いるリーダー、高橋直夫さん。

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■「リーダーは、太陽であれ」・石油化学プラント建設現場所長・高橋直夫
<2008.01.29放送> (番組HPより)

■珠玉のことばが鈴なりで、しみじみ響く良質のビジネス書を読み終えた気分だ。

「決めないリスクより、決めるリスクをとる。」

「今日決めることを明日決めるのは『悪』である。」

「しつこく言う。部下の反感を買ってでも、言う。」

■「現場を支えているのは、溶接をし、一本一本のボルトを締める作業をする人。相手は血の通っている人間だ。」

「相手の得は、自分の得。相手がこの場限りの出稼ぎ労働者であろうと、その人の成長のための投資は惜しまない。」

■「小さな問題こそ全力で当たれ。たった一本のボルトの折損対策に躊躇していると問題は何万本ものボルトに波及し、何十倍、何百倍にも拡大する。」

「小さなことの大切さを知るには、落とし穴に嵌ってみるのが一番いい。」

「失敗を許す組織には技術が蓄積される。」

「何故ダメかをストレートに言う。けれど、それで評価はしない。」

■それらの言葉ひとつひとつに、いちいち肯いてしまう。もし世の中のリーダーが皆こういう姿勢で生きているなら、もっと信頼感、安心感のある社会になっているだろう。

■こういった「名言」は、実は、少し気の利いたビジネス書には既に書かれていることである。

それでも実際には高橋さんのようなリーダーが稀有なのは、その「資質」が、自らが地獄のどん底にまで突き落とされることではじめて「血肉」となるものだからなのだろう。

■7ヶ月の工期遅れによる数十億円の損失。

44歳。サウジアラビア国営ガスプラントを立ち上げる大プロジェクトで、現場のすべてを取り仕切る所長に初めて抜擢された、その「結果」である。

当然のこととして失敗の責めを負い、所長の座を失う。

「プライドがこなごな」、

などという言葉ではとても言いあらわせない。

能力があって責任感が強ければ強いだけ、自らの逃げ場が無くなってしまい、なおさら厳しい状況に追い込まれていく。

■そんな時、そのプラントの顧客であるプロジェクトマネージャーが高橋さんにこう言った。

「高橋、いい仕事をしたね。7ヶ月遅れ?そんなスケジュールなんて誰も覚えちゃいないよ。お前らは100%、お客の要望に合ったプラントを作ったんだ。作ったものはそのまま残る。これを使う人は毎日使うんだ。お前たちの評判は絶対上がるから心配するな。」

無間地獄の中に差し伸べられたその手に『救われた』、と語る高橋さんの表情が、その時に受けとめたの光明のあたたかさを感じさせる。

たぶん地獄そのものではなく、『救われた』という、そのことが、今の高橋さんを形作る強い骨格となっているのだろう。

■自らの失敗の原因を徹底的に分析し、事実を認め、再び訪れるチャンスを待つ。そして今では「どんなプロジェクトでも高橋さんに任せれば大丈夫」といわれるまでになった、その原点がそこにある。

そう考えたとき、高橋さんの言葉ひとつひとつが生身の感情として心に深く再生されてくる。

「不安を表情に出さない。皆の太陽であれ。」

そう自分に言い聞かせる高橋さんの胸の中には、手を差し伸べてくれたプロジェクト・マネージャーの笑顔があたたかく浮かんでいるのだろう。

だから、「太陽」で在り続けられる。

■脳科学者としての茂木健一郎さんは「笑って仕事しろ」ということばに素早く反応した。

怒ったり、焦ったりしているとき、脳は一つのことしか見えなくなる。

だから「笑って仕事しろ」なんでしょうね。でも、そんなときに笑えるものですか?

出来ると思ってます。

■「そうですかぁ。」という茂木さんの下がり調子が面白かったが、

そんなときに笑えるものですか?

という問いを改めて自分に投げかけ、うまくない状況に自分を浮かべてみると、やっぱり、「そうですかぁ。」と、高橋さんのいる高みを見上げることしかできない呆然とした私がいる。

■”We can do it!”、「出来る」と、確信をもって笑って言うこと。

その「笑って言うこと」、が難しい。

そして我ら凡夫が、それを「難しい」と思った瞬間に、「難しい」は眉間にしわを寄せ、視野狭窄の穴倉へと限りなく堕ちていく。

■「必要だと決めたことは絶対にあきらめない。」

そう、力みかえると、かえって「出来る」は遠ざかる。
 

「出来る」と相手に伝えることをあきらめない。

その為には、誰よりも強く「出来る」と信じること。

それがリーダーの資質なのだ、

  
と言ってしまえる高橋さんの秘密はその「にこやかさ」にあって、わたしの外側から降ってくるそのやわらかな笑顔が弱い私をその気にさせる。

リーダーであろうとするならば、それは「わたし」が「私の外側」に立って、「困難」をにこやかに眺めることが出来るかどうかにかかっている。

そういうことなのかもしれない。

                         <2007.02.09 記>

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2008年1月18日 (金)

■歌舞伎役者・坂東玉三郎。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 明日だけを見つめ、今日を生きる。

今回のプロフェッショナルは、歌舞伎役者の坂東玉三郎さん。

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■妥協なき日々に、美は宿る 歌舞伎役者・坂東玉三郎
<2008.1.15放送> (番組HPより)

■50年。

歌舞伎座にゆき、芝居をし、どこにも寄らずにまっすぐ帰る。その毎日毎日の繰り返しが、いつの間にか50年という歳月を刻んでいた。

明日を見つめ、いま出来る最善を尽くす。などといった教科書的なものではない。もっと、もっと厳しい、「明日、自分は舞台に立てるのか」というギリギリの状況の中での、『明日』。

それは、静かな笑みを漂わせるその端正な外見からは窺うことができない、地獄の縁に立つ、そんな、その日その日なのか。

■歌舞伎は型。その動き、立ち方は細部に至るまですべてが決められている。

若い女はからだをすぼめ、脳天を客席にみせるように首をかしげる。年増おんなは、重心を後ろに引いた立ち姿。

互いに魅かれ合う男女は意識的に胸を寄せ合い、深いつながりのある男女は離れているようでいて、腰がしっかりと寄り添っている。

長い年月をかけて少しずつ築き上げられてきた「文脈」には一寸の余地も無く完成されている。

■役者は、その決められた型のなかに生命を吹き込む。

「魂とか心という糸で縫い付ける。」

そう、玉三郎さんは表現した。

少しの「ほつれ」がお客さまを舞台への没入から目覚めさせてしまう。だから、どんなに細かいことにも妥協しない。

その真摯な気持ち、向上心をもって、ちゃんとしたいと思って生きている、その気持ちが、「華のある」演技を生むのだろう。

■24歳の頃。

一日に5つの舞台に立つという極限のスケジュールの中で、

突然、ポキリと折れた。

肉体も、精神も、とうの昔に限界を超えていた。

■何もすることが出来ない。立っていることすら出来ないウツの症状のなかで、それでも、踊りから離れることのできない『わたし』。

病弱で、舞台に立つべきカラダではないと小さいときから感じていた、感覚と矛盾した舞台への想いと、

その無間地獄のなかで獲得した冷静な視線。

妥協せずに明日の舞台に立つために、その一瞬一瞬の真剣勝負の中に、生真面目で熱い自分を天から見ている存在を意識する。

世阿弥のいう【離見の見】とは正にこのことか。

■無意識の美。

いま、玉三郎さんはあたらしい境地に挑もうとしているという。

海の匂いが漂ってくることで、こころから何かが「すこーん」、と抜ける感じ。

自然は、静かであるがままでそのままで美しい。

見せようと意識していない美しさ。

何だか【私】というものが無くなって溶けていく、それでいてその美しさにわくわくしている【自分】がはっきりと感じられる。

そういう感覚なのかもしれない。

その遥か高みからの景色はいったいどういったものなのだろうか。

■安心して舞台に立ったら、

それくらいつまらないものはないですよね。

という玉三郎さんの言葉がかえって安心を呼び込み、

私を現実へと落ち着かせる。

                         <2007.01.18 記>

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■写真集 『ザ歌舞伎座』
■坂東玉三郎×篠山紀信■
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★★★★☆(2件のレヴュー)
 

■関連記事■
世阿弥、【離見の見(りけんのけん)】について。
■「縦の笑い」と「横の笑い」。自分を縛り付けるレッテルへの反逆。

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2008年1月 9日 (水)

■本気であることのかっこ良さ。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 「天才打者・イチロー」こと、鈴木一朗。

今回のプロフェッショナルは、新春・イチロースペシャル。

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■『プロフェッショナル・仕事の流儀』 イチロー・スペシャル
野球選手・鈴木一朗<2007.01.02放送> (番組HPより)

■【天才】というのはこんなにまで凄いものなのかと驚いた。

「ホームランを狙って打つ技術はある」と断言、しかもそれは「あっ、ここで打ってやろうかなー」という「遊び」の領域なのだという。

そういえば、外野の守備で「背面キャッチ」とかしますよね、と水を向けられると、実はそれは真面目な訓練で、凡フライに油断して打球を視界からそらしちゃった時の為のトレーニングなんです、と悪戯っぽく微笑むのだ。

■自宅から球場に向かうとき「鈴木一朗」は「イチロー」に変化する。

球場に入り、試合前のトレーニングへ。

その一挙一動はすべて決まっており、変わることはない。今日はどうするかな、などと考えることはなく、無意識のうちに決まった動きをトレースしていく。

すべて「カラダ」にゆだねているのだ。

■その「カラダ」のうちには、特製の軽量スパイクや極端に削り込まれた専用バットも含まれる。そこには確実にイチローの神経がつながっている。

当然のことながら、スパイクやバットも含めた「カラダ」が本領を発揮するのは実戦だ。

マウンドからバッターボックスまでの0.4秒。その150km/hのボールに反応し、捉えるのは、3歳の頃からバットを振り続けたイチローの「カラダ」なのである。

■特に注目されることもなくオリックスに入団した鈴木一朗は、その3年目に仰木監督から与えられた「イチロー」という名前とともにその驚異の才能を一気に開花させ、一躍、「野球界のスター」へと駆け上がる。

そこからは多くの人が知るとおり、「プロ野球」には収まりきれないその能力が『メジャー・リーグでも通用する』どころか、首位打者争いに常に加わり、連続安打記録更新までやってのけた。

「天才」、という言葉はイチローの為に存在する。

■が、「イチロー」という名前の裏で、鈴木一朗は「成績を維持し続けなければならない」という使命感からくる重圧に常に晒され、苦しみ悶えていたのだ。

本来の自分を世間からの視線から隠し、とがりまくって自分を守ることに汲々とする。

遂にはグラウンドに出ることさえ憂鬱になり、ふと、野球が楽しめなくなっている自分に気がつく。

■「イチロー」という選手には非常にクレバーな印象を持っていたし、実際に今回の取材映像を見ていても、その分析力の凄さに驚く。

けれど、それは理論とか理屈とかいうものではなく、非常に『感覚』的なものなのではないかと思えるのだ。

確かに茂木健一郎さんの「好奇心」からくる論理的な質問に対しては、いつもの【イチロー】からすらすらと答えが返ってくる。頭の回転がとても速いのだ。

だが、住吉美紀アナのナイーブな問いかけに対しては、【イチロー】ではなく、【鈴木一朗】が深く、本質的な部分を探りながら答えていたように見える。

そこに彼の、『情』に共鳴する部分を強く感じたのだ。

■2007年。イチローは新しいフェーズに入ったようだ。

30年以上の時間をかけて培ってきた「身体感覚」を常に磨き上げ続けていくという今までの道から、「ボール球」に手を出さない、つまり「身体」を「意思の力」でコントロールしようとする道だ。

それは同時に、「プレッシャーを回避する」という本能的なこころの動きを、

「プレッシャーはある。だからそれを正面から受け止める」

という、強い意思による『こころの制御』を手にする道である。

■あのイチローをもってしても今シーズンは、それをものにすることは出来なかった。

簡単に出来るわけはない。

我々の見ている景色からは想像もつかない高みにおける【神(=自然、身体、感覚)】との厳しい闘いなのだ。

■けれど、鈴木一朗=イチローの顔には微笑がある。

やっと「野球を楽しめる」入り口が見つかった気がします。随分と遠回りでしたけど。

それは本気で、必死に戦い抜いてきた男にしか口にすることができないセリフだ。

そうだ、頑張れイチロー!!

                          <2008.01.09 記>

【追記】
■イチロー・トークスペシャル■(2008.1.22放送)

■『自分流』をつらぬくということは、いちばん険しい道である。

誰よりも自分に対して厳しい評価をすることが絶対条件、

そして『結果』を残すこと。それをキチンと言葉で説明できること。

そうやって自分で自分を教育していくことによってしか、自分の可能性は拡がっていかない。そう思う。

■去年まではひたすら「自分との戦い」。「敵は自分の中にいる」そう感じてこれまでやってきた。

07年のシーズンに入り、ようやく相手との勝負ができるレベルに入ってきた。だから、勝ちたかった。

自分と戦っているだけでいいなら、楽でいいですね。

だけど2007年、僕はそこを超えてきたと思う。

自分だけでなく、相手を倒したかった。

それが潰えたとき、口惜しさ以外のなにかが確かにあった。

一生分からないでしょうね、なんで泣いたかなんて。

■自らが成し遂げたことに対して満足すること。満足は重ねていいんだと思う。

「こんなことに甘んじていてはいけない、まだまだ先へ行くんだ。」なんて戒めること、よくありますよね。

でも、それは自分を苦しめるだけなんだと思う。

何かを達成したら大いに満足したらいい。

満足しなきゃモチベーションも維持できないし、満足のあとに必ず見えてくるものがある。

次に進むためにも満足したいんですよ、僕は。
   

■2008年は「不動の何か」をつかむシーズンになるかもしれない、とイチローはいう。刮目せねばなるまい。

                       <2008.01.30 記>

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■イチロー 262のメッセージ
★★★★☆(40件のレヴュー)
■続編、『未来をかえる イチロー262のNextメッセージ』もあり。
   

■僕の夢 / 鈴木一朗(【KatsuhitoWeb】さんのブログより)
豊山小学校 6年2組 鈴木一朗くんの作文。
・・・「栴檀は双葉より芳し」とは、まさにこのこと。

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2007年12月22日 (土)

■人に見られてこそアートは力を発揮する。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 キュレーター・長谷川祐子。

今回のプロフェッショナルは、キュレーターの長谷川祐子さん。

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■アートは人を”自由”にする・キュレーター・長谷川祐子
<2007.12.18 放送> (番組HPより)

■キュレーターという職業を初めて知った。美術館・美術展のプロデューサーのようなものだろうか。

長谷川さんは東京都現代美術館に在籍するかたわら、エルリッヒの「プール」で有名な金沢21世紀美術館の開館に参画したり、海外での現代美術イベントの企画なども手がけるこの道のエキスパートなのだという。

■アートは既にあるものではなく、展示されることによって生まれてくるものである。

初めての「観客」として、その「びっくり」が立ち上がってくる現場に立ち会うことがキュレーター要求される大切な役割だ。

そして、そこに生まれる感動という「状況」は生き物のように存在し、それは必ず観客にも伝わるものなのだ。

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■重さ1tのアルミのカタマリがヘリウムを注入することによって浮かび上がる。

■芸術家に常識は通用しない。

作品の展示に向けたひり付くような混乱のなかで、アーティストはとても出来そうもない要求を突きつけてくる。

そこで「対立」のポジションをとらないことが、長谷川さんのやり方だ。

アーティストと同じ方向をむいて考える。

その上で、できること、できないことを決めていく。

言うことは容易いが、本当にダメだ、という困難な状況に直面したときに、そのスタンスを貫くことは並大抵のことではない。

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■無理難題を克服するからこそ、そこに「感動」が生まれる。

■長谷川さんは「アートの力」を信じている。

それは芸術家について語るなかでのその「言い切り」調に強くあらわれる。

そうでなくてはやっていけないのだろう。その背景にある苦難と困難がいかに大変なものであるかが伝わってくる。

■その「信じる力」の原動力は

『アートに関わらないひとにも「幸せな気持ち」を渡したい』

という強い願いである。

■アートは人に変化をもたらす強い力をもっている。

人のこころを、今までと違った形で世界に向けて開かせる力。

自分のこころの中にある、自分が気付かなかった「もの」に気付かせる力。

その『出会い』と『変化』を作り出すことが長谷川さんの使命としての「仕事」なのである。

それは、現代アートだけに限った話ではなく、「何かを生み出すこと」を生業にしている人に共通した使命であり、よろこびなのだと思う。

                         <2007.12.22 記>

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■『東京美術館案内―名画から現代アートまで』
―比べてわかりやすい東京の美術館徹底ガイド本―

東京生活別冊 エイ出版社 (2007/04
<Amazon評価>
★★★★★(レヴュー数 2件)
■「東京都内にある必見の52館を徹底的に紹介。痒いところに手が届くガイド本」、だそうです。そういえばムンク展、早く行かないと終わってしまう・・・。

■金沢21世紀美術館
■レアンドロ・エルリッヒ 「プール」(2004)
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■[MOT]東京都現代美術館・HP
http://www.mot-art-museum.jp/index/

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2007年11月26日 (月)

■出直しますか。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 ヘアデザイナー・加茂克也。

今回のプロフェッショナルは、ヘアデザイナーの加茂克也さん。

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■あきらめないから、美しい ヘアデザイナー・加茂克也
<2007.11.20放送> (番組HPより)

■ファッションをアピールする舞台で、そのデザインを引き立て、盛り上げるのがヘアデザイナー・加茂克也さんの仕事だ。

手を動かしながら 

ふっ、とひらめいたアイデアを試していく。

あきらめずに追求し、

「ちょっと、違うな。」という感覚を残さない。

それが、加茂さんの流儀だ。

だから何でも出来るように、いろんなものをスーツケースに詰め込んで持ち歩く。

そのスーツケースの中の雑然とした小宇宙は、加茂さんの創造力を生み出す無意識の世界を映し出しているのかもしれない。

■加茂さんがヘアデザイナーとして、殻をひとつ突き破る切っ掛けになったのは、ファッションデザイナー渡辺淳弥(わたなべじゅんや)さんとのパリ・コレクションの仕事だ。

細かいことが気になって、本当にやりたいことが見えていなかった。

結局、中途半端なカタチで仕事をまとめることになった。

「デザイナーですよね、加茂さんも。」

渡辺さんの、その言葉が鋭く突き刺さる。

■やりたいことを持っていないと、人と一緒に仕事が出来ない。

加茂さんは、それを痛感したと言っていたが、

その「やりたいこと」とは既にあるものではなく、能力を持っている人と一緒に仕事をすることで仄かに湧き上がってくるものなのだろう。

だから、面白い。

■一皮剥けた加茂さんに、再び渡辺さんから声がかかるようになる。

けれど、渡辺さんとの仕事は単純には進まない。

そこには、試される。認められる。という、馴れ合いを排した師弟関係が存在する。

出直しますか。

そのあっさりとした渡辺さんの一言は、

まだ「やりたいこと」が生まれてもいないのだと加茂さんを厳しく突き放す。

想像力の枠組みをぶち壊す、【驚き】

それが欲しいのだ。

■『自分を表現しようと思わない方が表現できる。』

その加茂さんの言葉は、矛盾しているようでいて実は創造性の根源的性質を言い表しているように思える。

アタマで考えられること、それを突き詰めていってもたどり着くのは、やはりアタマで考えられる世界の枠のなか。

極限まで追い込まれたとき、ふっ、と浮かぶもの。

それが、現場で本気に突き抜けたとき、やっとその姿をあらわす無意識からの贈り物なのである。

                         <2007.11.26 記>

■『パリ・コレクション・インディヴィジュアルズ〈2〉』
林 央子 著 リトルモア (2000/03)
<Amazon評価>
★★★★★(レヴュー数 2件)
■アマゾンで関係ありそうな本を探していて見つけました。ファッション・ジャーナリストの林央子さん、結構奥が深くて面白そうな方です。
■林央子さんのインタビュー記事

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2007年11月22日 (木)

■否定しないで長所を伸ばす。『プロフェッショナル・仕事の流儀』校長・荒瀬克己。

今回のプロフェショナルは、

京都市立堀川高校 校長、荒瀬克己さん。

Photo
■背伸びが、人を育てる 校長・荒瀬克己(番組HPより)
<07.10.16放送>

■「公立高校は4年制」

公立高校の大学受験現役合格率の低迷は、「公立にいったらアカン」という信用低下をもたらした。

その改革の任にあたったのが荒瀬さんだ。

■改革というと、つい今までのやり方を否定しがちである。

けれど、荒瀬さんは違った。

現役合格率は低くとも、今の学校自体は決してダメではない。公立高校のもつ自由な空気は良いところであり、それを伸ばすことで変革を起こすことが出来るのではないか。

そして、生徒たちの好奇心を刺激する「探求科」を創出した。

本当にやりたいことは何か。

それを自ら考える力を養うのが「探求科」だ。

生徒たちの取り組む課題をみると、大学生の卒論のようなタイトルが並ぶ。

「知りたい」ことにトコトン取り組めば、自然と学力は伸びてくる。

「先生、しんどいけど勉強って面白い。」

という声もうまれてくる。

■それは、学校行事などの企画・運営を生徒たちに任せるなど、学問だけにとどまらない。

「自分が何をしたいのか、

それを相手に伝えることが出来ること。」

そういった、社会に出て役に立つ能力を身につけさせる。それが教育にあたる思いなのだ。

■合格率は上がっても、現役で落ち、浪人して落ちて、という生徒はいるわけで、そういう生徒についてはどのように考えているのか?

と、茂木さんが鋭い質問を放つ。

それに対して荒瀬さんはこう答えた。

「ダメだったとき、

その時どうするかを自分で考えられる生徒であって欲しい。」

荒瀬さんの思いは、太く、揺らぐことはない。

■生徒たちの為に、校長として何が出来るか。

荒瀬さんが自らのスタンスを語る言葉にぐっと来た。

  
やるべき時に

やるべきところにいて

やるべきことをやる。

言うべき時に

言うべきところにいて

言うべきことを言う。

  
力まず、にこやかに

生徒たちの雰囲気や表情を大きく捉えながら、

己に言い訳を許さず、

常に刀の抜きどころを考える真剣勝負。

なかなか出来ることではない。

                   <2007.11.22 記>

■関連書籍■
Photo_2
■奇跡と呼ばれた学校―国公立大合格者30倍のひみつ
荒瀬克己 著 朝日新聞社出版局 (2007/01)
<Amazon評価>
★★★★ (レヴュー数 5件)
■「すべては君の『知りたい』から始まる」というモットーを掲げ、2002年、国公立大学合格者をひとケタから一挙100人以上に。「教育はサービス業、生徒はお客さん」と公言する、その実践例を公開。(紹介文より)

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2007年11月17日 (土)

■できるさー。『プロフェショナル・仕事の流儀』 義肢装具士・佐喜眞 保。

今回のプロフェッショナルは、義肢装具士・佐喜眞(さきま) 保さん。

_
■魂の職人 希望の道具(07.11.13放送)、番組HPより
義肢装具士・佐喜眞 保

■自分が作った装具や義足をつけた相手の表情がみるみる明るく変わっていく。

それがうれしいのだと佐喜眞さんはいう。

だから妥協しない。あきらめない。

相手の表情にかすかに浮かぶ「しょうがないさ」という妥協を鋭く感じ取り、さらに心地いい装具・義足になるように調整を繰り返し、新しいやり方にもチャレンジする。

■佐喜眞さん自身、子供の頃に脊椎を損傷、障害を負ってしまった。

子供の遊びの輪に入れない自分。それがコンプレックスとなり、障害に負けたくない、認めたくないと無理をしながら生きてきた。

紆余曲折があり、装具士として仕事をはじめたのだが実績のない佐喜眞さんには仕事がこない。

あっという間に借金がかさみ、現実を逃れ、ひとを怨み、上手くいかないのを人のせいにばかりして、友達にすら疑心暗鬼になっていく。

そんな、苦しく、惨めな日々が続く。

■そんなとき、人づてに装具の仕事を頼まれた。

ところが、いくら工夫をしてもヒザが安定しない。

「これ以上、無理だ」

そう口にした瞬間、

付き添ってきていた旦那さんの顔が悲しそうに曇った。

それがつらかった。

■あきらめず、必死に新しい工夫を考え、試す。

そうして出来上がった装具で、相手の表情が明るく変わっていく。

そこに、佐喜眞さんの流儀が誕生した。

それは、佐喜眞さん自身の「再生」でもあったのだ。

■今までしょうがないとあきらめていた不自由な足が、佐喜眞さんの装具でちゃんと動くなるようになる。痛みが軽くなり、足が前に出るようになる。

そうするとそのひとにとっての人生は本来の明るさを取り戻し、失ってしまっていた笑顔を取り戻す。

その笑顔を取り戻すために、希望を取り戻すために、佐喜眞さんはどこまでもあきらめない。

子供の時から抱えるコンプレックスや苦しく惨めだった日々。

それは消え去るものではない。乗り越えるものでもない。

絶対に逃げない、やりつづける。

そんな佐喜眞さんを支える、大切な原動力なのだ。

                            <2007.11.17 記>

■関連書籍■

「手足が治ると性格まで変わる」、意識と身体の不思議について探求した本です。興味のある方には強くお奨め。

Photo_2
■『脳のなかの幽霊』
V.S.ラマチャンドラン 著 角川21世紀叢書 (1999/08)
<Amazon評価>
 ★★★★★(レヴュー数 20件) 
■この本を読んだときの衝撃は忘れられない。幻肢、錯覚、脳の中のゾンビ(無意識の行動)。実際に臨床で経験した奇妙な症例から、仮説をたて、再現可能な実験として組み立て、確認する。そして、それらの具体例をもとに『意識とは何か』という問いに挑みかかる。
絶版というのは非常にもったいない。古書では入手可能。

      
■『脳のなかの幽霊、ふたたび』 ―見えてきた心のしくみ
V.S.ラマチャンドラン 著 角川書店 (2005/7/30)
<Amazon評価>
 ★★★★☆(レヴュー数 6件) 
■ラマチャンドラン博士の講演録。一般の人向けの内容なので分かりやすい。前著「脳のなかの幽霊」を別の角度から語り、芸術、哲学へと拡がっていく。

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2007年11月14日 (水)

■漫画一本、真剣勝負。『プロフェショナル・仕事の流儀』漫画編集者・原作者 長崎尚志。

今回のプロフェッショナルは、フリーの漫画編集者・原作者の長崎尚志さん。

Photo_3
■愛と覚悟のヒットメーカー(07.11.06放送)、番組HPより
漫画編集者・原作者 長崎尚志(奥、手前は、すぎむらしんいち氏)

■漫画の編集者の仕事というのは、締め切り前にあおり倒して漫画家に原稿を仕上げさせるものだと思っていたのだが、それが大間違いであることが分かった。

長崎さんのフリーの編集者としての仕事は、企画、資料集め、シナリオ、そういった「漫画を描く」という以外のあらゆることをこなす、実に創造的でかつタフなものなのである。

映画でいえば脚本家を兼ねたプロデューサーというところだろうか。

■漫画家・浦沢直樹と長年組んで仕事をしている長崎さんは、『MONSTER』、『20世紀少年』、『PLUTO』などといったヒット作を次々と生み出してきた。

そのスタイルは、「こうしたい、こうすべきだ」という編集者としての押し付けではなく、漫画家と対話をし、語りつくす、というところから新しい展開を生み出していくというやり方だ。

漫画家と編集者が同じ志をもち、同じ方向を見る。

世界中を敵にまわしても、僕らふたりはこの漫画を信じる。

それは、その漫画にかける『愛と覚悟』を問われることなのだ。

と長崎さんはいう。

「愛と覚悟」?!少し大げさ過ぎやしないか?

このときは正直、そう感じた。

■20年ほど前のはなしである。

新人漫画家・浦沢直樹(23歳)と駆け出し編集者・長崎尚志(27歳)は、一つの連載漫画を立ち上げようとしていた。

『パイナップルARMY』

傭兵あがりの軍事インストラクター、ジェド・豪士が、クライアントに生き残りのすべを叩き込みつつ、結局は相手が抱えるさまざまな事件に巻き込まれ、実戦で培われた優れた知識と技術で切り抜ける。そういう筋書きの漫画である。

ところが、これが出版社の役員にこき下ろされ、会議の席で破り捨て去られる。

絵が幼稚だ、というのだ。

このままでは連載打ち切りになってしまう。

■漫画を破り捨てるなんて許せない。意地にかけても絶対に守ってやる。

このとき、そう言ってくれたのが、当時のビッグコミック・オリジナル編集長 林洋一郎さんである。

数々のヒット作を立ち上げてきた林さんの的確なアドバイスで作品は深みを増していき、ついには8巻を数える人気作品となった。

■長崎さんは林編集長を尊敬した。

けれど、あそこまで漫画に全てをかけることが出来ない。と、少し引いた感情も抱いていた。もともと、児童文学を志していたという気持ちもある。

それから一年が経ち、林さんはガンで倒れ、亡くなる。

「長崎が面白いものを作ってくれるのが楽しみだ」

いつも病床でそう語っていたと息子さんから聞かされた、

そのときの長崎さんの気持ち。

■このとき初めて漫画と正面から対峙することが出来たのだろうか。

『愛と覚悟』

その言葉の重みが、ずしりとくる。

■執着すること。

身を削り、いのちを削って、作品を生み出していくこと。

そうやって生まれてくるものには、それだけの迫力がある。怨念がある。

「悟りきったような、ぬるいことばかり言っている輩には分かるまい。

俺はその一瞬に人生を刻んでいるんだ。」

そう、ガツンとやられた気分である。

■真剣勝負、この修羅場で粘りきれるかどうか。

それが、漫画家として一本立ちしていけるかどうかの分岐点だ。

自信をもって、

これが俺だ!文句あるか!

と言い切れるか。

その『本気』が、ひとのこころを惹きつける。

久しぶりに熱いものに触れた。

                          <2007.11.13 記>

パイナップルARMY (Operation 1)
Photo
浦沢直樹・工藤かずや 著 小学館文庫 (1995/11、初版 1986/04)
<Amazon評価>
 ★★★★★(レヴュー数 5件)
■この漫画は好きで何度読み返したことか。豪士の戦友で、いつもユーモアを忘れなかった男、キース。その子供時代の話が泣ける。ハリデー准将の「今日はワシのラッキーデイじゃ!(だったかな)」も好きだった。ところで、原作の工藤かずやって人は凄い知識だなと感心していたのだが、長崎さんだったのかな?

  
浦沢直樹の作品
■ PLUTO 第5巻 やっと出るらしいですよ!
番組の中でネタばれしちゃうもんだから、こっちはヒヤヒヤものだったよ。

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2007年11月 5日 (月)

■分かってくれるひとがそこにいるよ、と伝えたい。『プロフェッショナル・仕事の流儀』自閉症支援・服巻智子。

今回のプロフェッショナルは、

自閉症の自立支援活動を行っている服巻(はらまき)智子さん。

Photo_4
■見えない心に、よりそって
自閉症支援・服巻(はらまき)智子 10/30放送(番組HPより)

■自閉症とは、脳のはたらきの一部が一般のひとと異なることによりコミュニケーションに支障をきたす症状をいう。

自閉症と思われる人は現在日本に120万人。

100人に1人は自閉症に苦しんでいるということになる。

■自閉症のかたちはいろいろあるようであるが、一般に自閉症の人は相手がどう思っているかを表情から感じ取ることが出来ないのだという。

まわりにいる人みんながマネキンのように無表情だったらそれがどれだけ怖いことか。

だから、怯える。だから、孤立する。

その苦しみから救ってあげたい、というのが服巻さんの気持ちなのである。

■服巻さんが自閉症に苦しむこどもに伝えたいことはただひとつ。

分かってくれるひとがそこにいるよ。

だから安心していいんだよ。

その小さな安心が、小さな自信につながり、育っていく。

■それが目に見えてくるのは明日かもしれないし2年後かもしれない。

それを信じる。

ちょっとしたことにパニックになり声を荒げるその子を「かわいいなー」、と心底思える人間の大きさが服巻さんにはあるのだ。

■自閉症児を支援する活動を始めた当初、服巻さんは苦い思いを経験している。

自分が学んだ自閉症児への接し方を一所懸命、親に教え込む。

自閉症児の親はただでさえ自責の念を抱いていたりする。その「教え込む」という一方的な働きかけが如何に相手を追い込んでいたか。

そこに気付くことが出来なかったのだ。

■相手はひとりひとり違った事情をかかえ、ひとりひとり違った悩みを抱えている。

そういったひとりひとりに合わせることができるひと。それがプロフェッショナルだと服巻さんはいう。

多様性を受け止めること、違う価値観を受け止めること。それが大切なのだ。

「多様なことって、本当にいい」と明るく微笑む服巻さんは非常に素敵である。

その笑顔で、どれだけの個性たちを受け止めてきたのだろう。

■There’s always another way.

どんな時でも思いこんだものと違うやり方がある。違う価値観がある。そう考えることのできる人。それがプロフェッショナルかな。

その言葉はその言葉の持つ意味以上に、深い。

                            <2007.11.05 記>

■服巻 智子さんの著作
   

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2007年10月19日 (金)

■自分にしか出来ないこと。『プロフェッショナル・仕事の流儀』環境金融コンサルタント・吉高まり。

地球温暖化ガス排出権ビジネスのパイオニア、吉高まりさんが今回のゲストである。

Photo
■あえて、困難な道を行け 
環境金融コンサルタント・吉高まり 10/9放送 (番組HPより)

■吉高さんは、ひと月のうち一週間は海外を飛び回っているという。

発展途上国の非効率な社会システムの中に排出権ビジネスの種を探しているのだ。

工場の動力源をディーゼルから今まで捨てていた籾殻に変更する。ジープニーに搭載されている古いエンジンを新しいエンジンに交換する。住宅街の白熱電灯を蛍光灯に変える。ゴミ捨て場から出るメタンガスを回収し発電する。・・・

削減目標の達成が難しい先進国からの「買い」はあるのだが、難しいのは途上国側にうまく馴染ませることだ。

■排出権プランの説明会で吉高さんは極力ビジネス色が出るのを避け、声をかけられるのを待つのだという。ひたすら反応がくるのを待つのだ。

排出権ビジネスといっても三方丸く収まる魔法のビジネスではない。特に初期投資の金策が問題になるようだ。

ビジネスで壁にぶつかったときに大切なのは当人たちの当事者意識である。自分達でつくりあげたという実感がないビジネスは続かないのだ。

■一般職で入社し、コピーばかりやらされる日々。私にしか出来ないことを探そうと外資金融企業に転職。やるべきことをやり、実績を積み上げ昇進していく。

一方、これは私の仕事ではない、という思いとの乖離がどんどんと大きくなる。

このあたりの話をする吉高さんの表情がその時のつらさを物語っていた。

そして15年のキャリアを投げ打ち、環境ビジネスという新しい分野を学ぼうとジャンプを試みた。それが現在につながっているのだ。

■求めて探さなければ「やりたいこと」は見つからない。無駄だと思ってもやってみること。と吉高さんは語る。

「自分自身にしか出来ないことをやりたい。」と思い続けてここまできた。

そして長い旅路の果てにようやく「自分の仕事だ」と自信をもっていえる幸せをつかんだのだ。

■そういう体験を経たからこそ、環境ビジネスに対する発展途上国の人たちのスタンスが前向きで当事者意識が高いものかどうかを常に気にしているのだ。

人は、指導とか強制では決して動かない。動いたとしても壁に突き当たればすぐに妥協する。逃げ腰になる。

しかし、自らのこころの中から、やりたい。やろう。という意識が芽生えてくれば、あとは何とでもなるものなのだ、と吉高さんは知っているのだ。

だからこそ、彼らから声が上がるのをひたすら待つのである。

人間が大きくないと、なかなか出来ないことである。

                            <2007.10.19 記>

Photo_2
■ 図解 よくわかる排出権取引ビジネス
<Amazon評価>★★★★★(レヴュー数 2件)
■この手の本で一番売れているようです。

*   *   *   *   *   *   *   *   *   *

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2007年9月23日 (日)

■「突き抜けた」ひと。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 辺境生物学・長沼毅。

今回のプロフェッショナルは生物学者の長沼毅さん。

__2
2007年9月18日放送
「地の果てにこそ、真実がある」 生物学者・長沼 毅 (番組HPより)

■長沼さんのテーマは生命誕生の謎に迫ることだ。

その手がかりをつかむために、光の届かない深海や火山の噴火口、砂漠、極地などの辺境の地を訪ね歩く。極限の環境に生きる生命からヒントを得ようというのだ。一年の半分を辺境のフィールドで過ごす、人呼んで、「科学界のインディ・ジョーンズ」。

■「やらない後悔より、やった後悔の方がいい」

「思い込みを捨て、思いつきを拾う」

「とにかくやってみる」

力みのない、明るい笑顔からしみじみする言葉が次々と飛び出してくる。

■「仕事があそびで、あそびが仕事」と、にこやかに言い切る長沼さんも、仕事に追いかけられ過労に倒れたときがあった。

山のような仕事を抱え込み、ひたすら頑張る。頑張れば頑張っただけの成果が出るから、自分の命をすり減らせるように頑張り続ける。

けれど、年も40に近くなってくると、その頑張りが利かなくなって遂には破綻を来たす時がやってくる。

少なからぬ人たちが陥り、味わってきたであろう、その絶望感。

■ ホラホラ、これが僕の骨 ――

長沼さんの場合は、中原中也の再発見が脱皮への切っ掛けになったようだ。絶望の果てに「骨」となってしまった現実の自分を、魂となった自分が眺めてゐる。

果たしてこれが俺なのか。

その気付きが、ひとを「原点」に立ち戻らせる。

■などとカッコいいことをいう私は、自分の「原点」すら見つけられずに迷ってばかり。

長沼さんのように「うまく突き抜けた」ひとを見るたびに眩く感じてしまうのである。生きざまを背中で語る男に憧れてしまうのである。

・・・こう僻みっぽくなってしまうのも、年のせいだろうか。他人(ひと)の背中ばかり眺めていても仕方がないというのに。

__3
番組HPより

                        <2007.09.23 記>

Photo
■ 生命の星・エウロパ
長沼 毅 著 NHK出版 (2004/3/28)
<Amazon評価> ★★★★☆(レヴュー数 5件)
■これが面白そう!

■中原中也詩集 (岩波文庫)
<Amazon評価> ★★★★★(レヴュー数 5件)
■番組で長沼さんが語っていたのは「在りし日の歌」にある「骨」という詩だと思われます。久しぶりに本棚から引っ張り出だしてみたのですが、確かに「骨」は心を揺さぶる詩です。高校時代には、さほど魅かれなかったのだけれども・・・。


■「プロフェッショナル・仕事の流儀」番組HP
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/070918/index.html

■茂木健一郎さんのクオリア日記にT/Bします。
http://kenmogi.cocolog-nifty.com/qualia/2007/09/post_ff17.html

      
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■ 日本映画 ■
■ 外国映画 ■
■ アニメーション ■
■DVD売上上昇率ランキング■
   
 

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2007年9月15日 (土)

■ もくじ ■ プロフェッショナル・仕事の流儀

■■■ INDEX ■■■
NHK『プロフェッショナル・仕事の流儀』の記事一覧です。
※リンク切れ等、不具合がありましたら、コメントをいただけると助かります。

■■■ 2009年 ■■■

■■■  4月 ■■■

■現実を受け止め、本気で実行することこそが人を目覚めさせるのだ。 武装解除・瀬谷ルミ子。
【最新記事】

■■■  2月 ■■■

■背中が伝えるものなのだ。航空管制官・堀井不二夫。

■■■ 2008年 ■■■

■■■  11月 ■■■

■今。 落語家・柳家小三治。

■■■  10月 ■■■

■■■  9月 ■■■

■あんた、「一期一会」って言いますやろ。 京菓子司、山口富蔵。

■勇気を持ってゆっくり行け。 競泳コーチ・平井伯昌。

■■■  8月 ■■■

■すべては自分の内から生まれてくる。 映画監督・宮崎駿。

■■■  5月 ■■■

■出口の見えない徒労の時間の意味について。 映画監督、演出家・堤 幸彦

■■■  3月 ■■■

■筋を曲げない。 サッカークラブGM・祖母井 秀隆。

■■■  2月 ■■■

■何の為に。中小企業経営者・片山象三。

■50%でいいから自分にしかできないものを。音楽プロデューサー・武部聡志。

■「私」の外側でにこやかに笑うもの。石油化学プラント建設現場所長・高橋直夫。

■■■  1月 ■■■

■明日だけを見つめ、今日を生きる。歌舞伎役者・坂東玉三郎。

■本気であることのかっこ良さ。「天才打者・イチロー」こと、鈴木一朗。

■■■ 2007年 ■■■
■■■ 12月 ■■■

■人に見られてこそアートは力を発揮する。キュレーター・長谷川祐子。

■■■ 11月 ■■■

■出直しますか。ヘアデザイナー・加茂克也。

■できるさー。義肢装具士・佐喜眞 保。

■漫画一本、真剣勝負。漫画編集者・原作者 長崎尚志。


■■■ 10月 ■■■

■分かってくれるひとがそこにいるよ、と伝えたい。自閉症支援・服巻智子。

■否定しないで長所を伸ばす。校長・荒瀬克己。

■自分にしか出来ないこと。環境金融コンサルタント・吉高まり

   
■■■ 9月 ■■■

■「突き抜けた」ひと。辺境生物学・長沼毅

■必ず、助ける。ヘリ・パイロット・森公博

■挑戦的継続。靴職人・山口千尋

 
■■■ 8月 ■■■

■寄り添い、見守る。助産師・神谷整子

■感覚を磨くということ。職人スペシャル

 
■■■ 7月 ■■■
 

■試行錯誤が仕事の楽しみ。アイガモ農法・古野隆雄

■結局、立ち戻るところは自分自身。帝国ホテル総料理長・田中健一郎

■この仔の未来を信じ抜くこと。競馬調教師・藤澤和雄

■祈り。外科医・幕内雅敏

 
■■■ 6月 ■■■

■歩み続けること。ソムリエ・佐藤陽一

■【気持ち】をデザインする。工業デザイナー・吉岡徳仁

■『仕事の流儀 スペシャル』リーダーの資質とは/グーグルの秘密

 
■■■ 5月 ■■■

■「正解」はある。装丁家・鈴木成一

■現実を見つめ、出来ることをやる。経営者・坂本幸雄

■『明日から使える”仕事術”』というのは、伊達ではなかったのだ。

 
■■■ 4月 ■■■

■主人公は育てられる方なのだ。『盲導犬クイール』を育てた男、多和田悟

■『対話』が創造の源、隈研吾 「負ける建築」 その2

■「負ける建築」に見る身体論。建築家・隈研吾

■感情に正直であること。アニメーション監督・宮崎駿

 
■■■ 3月 ■■■

■成功体験からしか人は成長しない。DeNA社長・南場智子

   

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2007年9月12日 (水)

■必ず、助ける。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 ヘリ・パイロット森公博。

今回のプロフェッショナルは海上保安庁ヘリコプター・パイロットの森公博さん。

01
2007年9月11日放送
「空の伝説 試練の海へ」 ヘリコプター・パイロット 森公博(番組HPより)

■2004年10月20日、練習船「海王丸」は台風23号の影響で走錨し、座礁。

そのとき、15m/sの強風の中、障害物を避け、特殊救難隊員を非常に狭いマストの見張り台へピンポイント降下させたのが、森公博さんなのである。

航空機は基本的に風に流されるものであり、対地目標に対してヘリコプターを一定の位置に保つ「ホバリング」は微妙な操縦を要求される。

それを、風向、風力がめまぐるしく変化する強風の中で行なってしまうのだから、まさに『神業』といえよう。

Photo Photo_2
■座礁した海王丸。前方マストに張られたロープには、波に洗われる3人の人影が見える。(海上保安庁HPより)

■「ここまで出来ればいいや」と自分で「限界」を決めない。さらに上の技術を追い求め、常に新しいことにチャレンジし、鍛錬を重ねる姿勢。それが森さんの高等技術を支えている。

だが、それだけで自らの身も危険にさらされる救難活動が出来るわけではない。

■茂木さんの「なぜ、救助をするのか?」という問いに対して、森さんはこう答える。

「救助を求める人にも家族がいる。」と思うから。

そのことばは、森さん自身が一度家族を失いかけたという実体験から発している。

荒波に翻弄される船の上で救助を求める人だけを見るのではなく、その人の家族の姿を思い浮かべたときに胸に込み上げる共感、それが「必ず、助ける。」という強い意志とその実行を生むのだ。

■森公博さんにとってプロフェッショナルとは・・・

『 現場での実力というのは、「やれるのか、やれないのか」、なんですよね。百の言葉より一の行動で仲間の信頼を得られる実力を持った人、それがプロフェッショナルだと思います。』

厳しく、かつ、響くことばである。

_02
番組HPより

                        <2007.09.12 記>

■海上保安庁レポート 2005年版/台風23号

■NHK『プロフェッショナル・仕事の流儀』番組HP

■茂木健一郎さんの『クオリア日記』にT/Bします。

 
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2007年9月 7日 (金)

■挑戦的継続。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 靴職人・山口千尋

今回のプロフェッショナルは靴職人の山口千尋さん。

__
2007年9月4日放送
「挑み続ける者だけが、頂に立つ。靴職人・山口千尋」

■英国で靴作りを学び、帰国後、自分のデザインした靴で店を開くも値段が高すぎると客がつかない。蓄えを切り崩しながら売れない靴を黙々と作る日々が続く。

それから9年。

あるとき、自分に合う靴が無いという客と出会い、オーダーメードの靴を作って非常に喜ばれる。それが口コミでじわじわと広まり、オーダーメードの靴職人としての今の成功にいたる。

_

■継続すること。

山口さんは『継続』というコトバにこだわる。

いつ来るか分からないチャンスを待ち続けて9年。チャンスをつかんだ時にはじめて気付く。今までチャンスは雨のように降り注いでいた。けれど、そのチャンスに対して傘をさしてしまっていたのだ。

挑戦的継続。

自らの目指すところを信じて、一歩一歩、工夫を加えながら継続していくこと。それは、かなりキツイことだけれど、手を差し出し続けることではじめてチャンスという雨を手のひらで受け止めることができるのだ。

才能は無いかもしれない。けれど10年、20年、一歩先を見ながら愚直なまでに継続し続けることで、いつかきっと才能をも凌駕するときがくる。

その道の険しさは、いびつにゆがんだ山口さんの親指が物語る。

だが、人それぞれ目指す山は違えども、歩き続けることでしか、それを乗り越えることは出来ないのだ。

                       <2007.09.07 記>

■「プロフェッショナル・仕事の流儀」番組HP
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2007年8月29日 (水)

■寄り添い、見守る。『プロフェッショナル・仕事の流儀』助産師・神谷整子

今回のプロフェッショナルは、助産師・神谷整子さん。

Photo

■うちのチビ助が、おなかの中にいた頃を思い出した。

性別は教えてもらわなかったので、ポン太と呼んでいた。

神谷さんは、妊婦さんのおなかやからだを触ることで

いろいろなことが解るのだという。

たしかに産婦人科で見せてもらったエコーより、

「ポン太~」と呼びかけながら女房のおなかをなでた時のほうが、

生きてるな、という実感があった。

男にはそれ以上の実感は持てないのだけれど・・・。

 
■出産の大変さはもちろんであるが、

その後の育児がまた大変だ。

ウチの女房の場合は母乳がなかなか出ず、困っていたのだが、

近くの助産院で見てもらったら、すぐに出るようになった。

神谷さんのように、600人も赤ちゃんをとりあげてきて

さらにその後も、お母さんに寄り添って見守っていく。

その「寄り添い、見守る」、という助産師のあたたかい姿勢が、

不安で緊張した母親の気持ちを楽にさせる

という効果もあるのだろう。

頑張らなくても、だいじょうぶ。

ほっておいても子供は、意外とニコニコ笑っているもので

『うまく手を抜く』ということの大切さを、お母さんたちに

伝えたいのだと、神谷さんは語っていた。

 
■何事においても、緊張し、張り詰めた状況というのは

ままあるもので、そうしたときに

面と向かって、「指導する」のではなく、

「寄り添い、見守る」、というあたたかい姿勢を

保つことができる人間の大きさを持ちたいものである。

  
■理想のお産は?

と問われたときの神谷さんの答えにしみじみきた。

「お母さんが、本当の自分をさらけだせる。

まわりに気兼ねすることなく、

『どんな自分でもいいんだ』、と

そのままの自分を受け入れた時に 

初めて生まれる。

お母さんにとっては、そういうお産が理想でしょうね。」  

                        <2007.08.29 記>                   

 
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2007年8月 1日 (水)

■感覚を磨くということ。『プロフェショナル・仕事の流儀』 職人スペシャル。

今回は、「腕に覚えあり」の職人さんトーク集。
(見よ、この面構え!)

Photo
花火師・野村陽一さん

Photo_2
宮大工・菊池恭二さん

Photo_3
左官・挾土秀平さん

Photo_4
庭師・北山安夫さん

彼らの技術を支えているのは、身体で感じる生の「感覚」だ。

それは、「星」と呼ばれる火薬を0.5mmづつ成長させる技術であったり、屋根が一番美しい曲線を描くための部材選定であったり、土を壁に塗るときの水分の蒸発具合であったり、選定する石と庭全体との調和であったり、する。

「正しい」かどうかは身体が判断してくれる。

「感覚」は、意外と正確なものである、
と脳科学者の茂木健一郎さんはいう。

但し、これら一流の職人の「感覚」は、我々の持つ感覚とは異なる。

当然である。

職人の研ぎ澄まされた「感覚」は、ひとつのこだわりに執着しながら、20年、30年と愚直に同じ作業を繰り返す、気の遠くなるような鍛錬の上に始めて得られるものなのだ。

と、自らを振り返れば、
執着すべき「こだわり」さえ見つけられない未熟もの。
ただただ、伏し目がちに頭をかくばかりである。

                        <2007.08.01 記>

■プロフェショナル・仕事の流儀<2007.07.31放送>
トークスペシャルPart4 職人たちの流儀スペシャル

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2007年7月26日 (木)

■試行錯誤が仕事の楽しみ。『プロフェッショナル・仕事の流儀』アイガモ農法・古野隆雄

今回のプロフェッショナルは、
アイガモ農法を実践する、農家・古野隆雄さん。

_

   
日照りの時期、イネは懸命に地面に根を張り

次の雨で大きく育つための準備をするのだそうだ。

   
「失敗は、当たり前。」

失敗に対して試行錯誤を繰り返す行為そのものが

偶然によるチャンスをつかむ為の条件であり、

「根を張る」ということなのだ。

  
その上で

「大きな力に逆らうのではなく

身を任せる」

という言葉が生きてくる。
  

「人間にとって、一番辛いのは孤独です。」

あえて失敗に飛び込む

開拓者の言葉と考えると、重いセリフである。

   
「大変だ、大変だ」と ぼやきながら

行動を起さず 日常に流されている者としては

とても 耳が痛い。

     

■追記
Photo

アイガモ農法の映像を見るに付け

愛らしいと思うのだけれど

このかわいらしい 子ガモちゃんたちは、

田を守る仕事を終えたら どうなるのか。

前から気になっていたのだけれど、

やはり つぶされてしまう、

ということのようだ。

  
残酷な話だと思う反面、

寒い季節にいただく、脂ののった

カモ南蛮が大好きな自分がいる。

  
人間は、矛盾をかかえた存在である。

その矛盾を ことさら明らかにせず

ぼやかして あいまいにしてしまうことも

実は大切なことなのではないか、と思う。

                    <2007.07.26 記>

 
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2007年7月19日 (木)

■結局、立ち戻るところは自分自身。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 帝国ホテル総料理長・田中健一郎

今回のプロフェッショナルは帝国ホテル総料理長の田中健一郎さん。

__47
プロフェッショナル・仕事の流儀
帝国ホテル総料理長・田中健一郎 <2007.07.17放映>

朝、出社した田中さんは他の従業員と同じロッカールームで着替えをし、その足で調理場や仕入れ部、パン焼き工房などを巡って一人一人に声をかける。

「皆が元気じゃないとおいしい料理はできませんからね。」という田中さん。それは「現場を気遣う良きリーダー」という単なるポーズではない。その証拠は、挨拶を返してくる現場の皆さんの素直な笑顔だ。
いい空気だ、と思う。
   

26年間、「ムッシュ」として帝国ホテルの厨房に君臨した村上信夫さん。その跡を継いで総料理長となったのが田中さんである。バブル崩壊後、厨房の改革を期待されての大抜擢だった。

だが、改革になかなか手がつけられない。現場の気持ちが分かりすぎて口に出せないのだ。そうするうちに、自信は失われ、気持ちは内に沈み込んでいく。
   

「人生にはサナギの時期がある。」と茂木健一郎さん。

「動かないその時期に溜め込んだ力によって、あらたな自分が生まれてくる。そういうことってありませんか?」

なかなか上手いたとえである。
    

家族の励ましを切っ掛けに、愚直で、口下手で、でも、思いやりにあふれた自分自身の背中を見せることで厨房を引っ張っていく、今のスタイルにたどり着く。

村上信夫さんのカリスマを身につけようとしたって、「ムッシュ」自身でない限りは「ムッシュ」にはなりえない。

「料理に真心を込めよう。」なんて、口に出すような柄じゃない。

結局は「自分らしさ」に立ち戻る。
「自分らしさ」以外に寄って立つところは無いのだ。
  

「自信」というコトバの意味を改めて考えさせられた。

                        <2007.07.19 記>    

 
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2007年7月12日 (木)

■この仔の未来を信じ抜くこと。『プロフェショナル・仕事の流儀』 競馬調教師・藤澤和雄

今回のプロフェッショナルは競馬調教師の藤澤和雄さん。
放映から2ヶ月も経ってしまったが、
寝かせていた記事を急に文章に起こしたくなった。

そういうこともある。
<第51回 2007年5月15日 放送>

Photo_142

1993年3月28日 天候 雨

中山7R 芝2000 4歳500万下

5枠 5番 ヤマトダマシイ 

競争中止

ルドルフの仔 ヤマトダマシイは、

1月末のデビュー戦で圧勝した後

2ヶ月を空けて2戦目に臨んだ。

4月の皐月賞は手遅れにしても

なんとかダービーには間に合わせたい。

スケジュール的に厳しい中、

負けられない一戦であった。
  

結果、競争中止 予後不良・・・。
  

藤澤さんは スタジオで

ヤマトダマシイについて語りながら、

目に涙を浮かべていた。

        

予定通りに行かないのが普通。

ただ、勝つことに未来は無い。

未来に続く 負けもある。
  

藤澤さんの調教師としての原点は

ここにある。
  

はじめから 能力で勝ってしまうG1ホースよりも、

6歳まで負け続けた馬でG1ホースを負かす

それが調教師としての腕の見せ所だという。
   

その為には、その仔の能力を信じて

見捨てないこと。

能力が無いのではなく、発揮できないだけなのだ

と信じ抜くこと。

急かせれば ダメになる。

いつも そばにいてあげて

その仔の才能に気付いてあげること。
           

もともと教師になりたかった、という 藤澤さん。

その優しくあたたかな視線は

最高の教師のまなざしだ。
    

愛情こそが、教育の原点なのだと思う。

   
■馬敗れて草原あり 寺山修司 著 (角川文庫)
「裏町詩人」寺山修司による、人生を競馬に重ねる試み。

                 <2007.07.12 記>  

■番組HP・過去の放送記録より
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/070515/index.html

 
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2007年7月 4日 (水)

■祈り。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 外科医・幕内雅敏

365日 24時間 医者であること。

自分が最後の砦であると思うこと。

__48
プロフェッショナル・仕事の流儀 外科医・幕内雅敏 2007.07.03 放映

年間200例の手術をこなす。

なかには10時間にも及ぶ手術もある。

少し気を緩めれば、目の前の命が消えてしまう。

その緊迫感。
 

実践、実践、実践。

毎日続けることで集中力は持続するようになるというが、

その水準は、想像を遥かに超えている。
 

一体、何が彼を突き動かすのだろうか。
  

宿命であり、しょうがない。と幕内さんはいう。

やらなければならない。だから頑張る。

「使命感」というコトバで括りきれない何かがそこにある。
  

長時間、極度の集中を要求される難手術。

集中力の限界との戦いの中で、

幕内さんは、持ってくれよと

「祈る気持ち」になるのだという。
   

その領域は、私にはまだ見えない。

                   <2007.07.04 記>

 
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2007年6月20日 (水)

■歩み続けること。『プロフェショナル・仕事の流儀』 ソムリエ・佐藤陽一

今回のプロフェッショナルはソムリエ・佐藤陽一さん。

Photo_136

目指す理想像について問われ、

「自分の『熟成』した姿は分からない。

死ぬときに、こういうものだったのかな、

と感じるのだと思う」

と語った佐藤さん。

    
好きな言葉は フランスのことわざ、

というところも 様になる。
   

  Qui va lentement va loin.

 ゆっくり歩むものは 遠くへ行く
  

Photo_139

一歩ずつ 一歩ずつ

味わいながら 前に進もう。

                   <2007.06.20 記>
 

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2007年6月 8日 (金)

■【気持ち】をデザインする。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 工業デザイナー 吉岡徳仁

今回のプロフェッショナルは、工業デザイナーの吉岡徳仁さん。

Photo_124  

■「今、既にあるデザインをアレンジするのではなく、『未来の定番』を創りたい。」

それが、吉岡さんのスタンスだ。

「例えば、木の椅子が普通であった時代に、鉄のパイプで作られた椅子を見せられたらビックリするでしょう?そういう感じです。」

いくら形をアレンジしてみても、新鮮味は無い。
人が座ったときの音、におい、感触・・・そういった感覚での新しさを創造する。つまり、相手の『気持ちをデザインする』。ということなのだそうだ。

■そういった感覚を刺激する面白い素材を常にストックしておき、その中からデザインの核となるようなアイデアを引き出す。そのアイデアは、「カタチ」でなはく、イメージからスタートする。

「クリスタルの知的な透明感」(イメージ)→
水を張ったビンの中にクリスタルを入れてみる(現物)→
香水:「クリスタルを浴びる」というアイデア(イメージ)→
箱、カタチ、大きさを実際に作って試してみる(現物)

「アタマの中のイメージ」と「現物がカラダに訴えてくる感覚」を行ったり来たりする。そうやって、自分の感覚でしっかり確かめながらデザインとして成長させていく。その繰り返しは作品の完成まで、もっといいアイデアは無いかと「ジタバタ」続く。

■吉岡さんのデザイナーとしてのスタートは、新しい素材から新しいものを作り出す、あこがれの工業デザイナー倉俣史朗さんを目指すところから始まった。

三宅一生のもとでディスプレイのアシスタントをしながら作品を手がけていった。だが、世の中の反響は無い。評価してくれるのは一部の関係者だけ。という日々が続く。

31才の時に、「三宅一生展」のデザインを任された。

『こどもでも楽しめるものを作れ』

その師匠のことばと向き合うことで、気が付いた。
デザインで大切なのは表面的な新しさではない。人の気持ちを動かすことなのだ。

「三宅一生展」のデザインは成功した。
上下に振られて踊るように動く衣装。
吉岡さんの作品のまわりで、こどもたちが喜んでいる。

きっと、その瞬間が吉岡さんにとっての『原点』なのだと思う。

■「古いデザインは消えていくものがほとんど。今残っているものは、夢がある、こころに残るデザインだけ。」

「未来を切り開くきっかけをつくりたい。」

それが吉岡さんの願いだ。
  

■以前、広告関係の仕事をしている人から『シズる。』というコトバを教えてもらった。

『シズラー』というステーキ屋のCMは、「じゅぅーーー。」という油が小さくはぜる音だとか、ステーキのやわらかそうなピンク色の断面から肉汁がじわじわ滲みだす様子だとかで、もう見てるだけで焼けた肉のうまそうな匂いまで感じてしまい、思わず生唾が出てくるようなものだった。

そこから、「脳みそ」を飛び越えて、お客さんの感覚を直接刺激するような映像を「シズってるね~。」などと呼ぶようになったそうである。
(今の文章で、よだれ出ましたか?え、出ない?・・・修行し直します。)

■吉岡さんのアプローチを見ていて、この『シズる。』を思い出した。アタマでひねり出すものよりも、自分の感覚が「いいねぇ」と言ってくれるものの方が、人のこころを揺さぶるものなのだろう。

けれど、「いいねぇ」という「感覚」から出発するものの、「モノ」に仕立て上げる中で、どうしても空想と理屈が先走ってしまう。次第に何かがポロポロこぼれ落ちていく。そうして、はじめには非常にヴィヴィッドに感じられていたものが、「面白いのだけど、こころに来ない」ものになってしまう。

それが、創作活動にありがちなパターンなのだと思う。

吉岡さんのアプローチは、

「アタマの中のイメージ」と「現物がカラダに訴えてくる感覚」を行ったり来たりする。

これを細かいサイクルでまわしていくことで、「感覚に訴えるもの」が劣化していくのではなく、逆に成長していくという画期的な手法なのだ。

その時大切なのは、『現物』が本物の素材であること、本物の大きさであること。違う素材や小さい模型では人間の感覚は計れない。それが吉岡さんが素材にこだわる理由なのだと思う。

そして、デザインルームのアイドル、チワワの「ポチくん」という存在も侮ってはイケナイ。

おめめをクリクリさせながら、ぽてぽてカワイく歩き回るポチくんの前には、どんな「空想」も「理屈」も無力なのだ。

居ながらにして、かわいい!という「感覚」を身体に思い出させてくれるポチくん。
やはり、「こども」と「動物」は常に最強なのだ。
                        <2007.06.07 記>

■Tokujin Yoshioka Design■  
Tokujin_yosioka_design_1
Tokujin_yoshioka_design__1【Amazonで見る】     
MoMAのパーマネントコレクションに選定された<ToFU>や<HONEY-POP>のデザインで知られる吉岡徳仁の作品集。初期の作品からスワロフスキーのシャンデリア<STARDUST>(2005年)まで全40以上にわたるプロジェクトを、豊富な写真やドローイングで紹介。インゴ・マウラーや三宅一生など多彩なゲストによるエッセイも魅力。吉岡徳仁デザインによるオリジナルバックの付いた数量限定特別セットです。<紹介文より>
●W250×H290mm ●224ページ ●バッグ素材:ビニール  

 

■吉岡徳仁さんのHP
http://www.tokujin.com/

■茂木健一郎さんの『クオリア日記』にT/Bします。
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2007年6月 1日 (金)

■『プロフェショナル・仕事の流儀 スペシャル』 リーダーの資質とは。/ グーグルの秘密。

■今回の プロフェッショナル 仕事の流儀は、トークスペシャル Part3 と題して、いままでに登場した6人のプロフェッショナル方々のインタビューの未放送部分から「リーダーに必要とされる資質」というテーマを浮かび上がらせる、という趣向。またグーグルのCEOであるエリック・シュミットさんのインタビューまであって、非常に豪華な内容であった。

■ 坂本幸雄さん (エルピーダメモリー社長)
__27●社長、部長と肩書きで呼ばせていい気になっていたらもうだめだね。「社長」と呼んだ瞬間に社員は萎縮してしまう。社長も社員も同じ目線で仕事をしないと。
ネガティブな意見が出てくるような環境を作ることが大切。そりゃ、ムカッとはするけどね。
●ビクビクした姿は見せない。何のメリットもないからね。頑張って自信満々に見せる。間違いは認めても、自分が正しいと思ったことに対して軸をぶらさないことが大事だね。
●部下のプラスの部分を評価して、もっとプラスにする。マイナス面を引き上げるようなアベレージを指向するやりかたでは、全体としてプラスが出てこない。
●リーダーは部下のために働く。リーダーに大切な資質とは「自分の部下に夢を与えることが出来ること。この会社にいたら自分の生活がもっと良くなると思わせるようにすること。」『エルピーダは半導体で世界一になる!』、『世の中の人たちにスゴイと褒めてもらおうよ!』

■ 鈴木敏夫さん (スタジオジブリ プロデューサー)
__26●立場の違いのある人たちを一つにまとめる。そのコツは、一度、「自分の仕事」を忘れてもらう」こと。そして、まとまったところで自分の立場で見直してもらえばいいと考えてもらうこと。そうすることで自分の仕事を忘れ、自由に議論してもらうことができる。
●信念は全員が参加してくれること。一人でも落伍者を出したくない。それには夢を語ること、お祭りにしてしまうこと。
問題児を追い出さない。追い出したところで、、また次の問題児がでてくるものだ。
●大切なのは皆が毎日楽しく働けること。敢えて言えば、それが、私自身がうれしい環境を作るということだ。

■ 佐藤 章さん (キリンビバレッジ元商品企画部長)
__25●「正・反・合」を大切にしている。
あえて反対意見をぶつけてみる。そうすることで、化学反応が起こり、新しい概念が生まれてくる。そのアイデアにまた対立する意見をつくり、さらに高めていく。

■ 南場智子さん (DeNA社長)
__24トップが一番元気であること!組織のエネルギーの上限はトップの元気度で決まる。だから、迷いとか不安を背中に見せないようにしている。
 

新浪剛史さん (ローソン社長)
__23 ●トップダウンのやり方にポイントがある。方向性はトップが決める。そこで、その方向性の理由を理解してもらった上で、やり方は任せる。
簡単に平易に語る。同じことを何度も繰り返して語る。アホと思われても同じことを語る。そうすることで初めて、あの人は本当に信じているのだと分かってもらえる。
●同じ事を語り続け、皆が信じてくれるまで、2年でも3年でも待つ。

星野佳路さん (星野リゾート社長)
__22●「正しい」ことより、コンセプトや戦略に「共感してもらう」ことが人を動かす。
●社員に楽しく仕事をしてもらうことが大切。どんなに「正しい」ことでも、嫌なことでは力は出ない。
「そこに行きたい」と思わせるビジョンを示す。そこに共感を持ってもらう。
●私の喜びは、会社を辞めるときに、「私と仕事が出来てよかった」と思ってもらえる人が一人でも多くいること。

■感じたこと・考えたこと■
今の立場や経歴の違いによるものか、6人6様の個性が面白かった。
坂本さんは、皆と肩を組みながら、一緒に頑張ろうぜ!という爽やかな体育教師のようなリーダーシップ。
鈴木さんは、「まぁまぁ、みんな聞きなさいや。ほれほれ、そこの若い衆も恥ずかしがらずにこっちに来なさい。」という、村の長老のイメージ。
佐藤さんは、非常に知的で、鋭利な刃物のようなキレの良さ。
南場さんは、自分が頑張ってる姿を見せることで、みんなが自立的に後押ししてくれる感じ。(迷いや不安を見せないといっているが周りから見るとスグに分かるに違いない。そんなところも含めて後押してしまいたくなるのだろう。失礼だけれど本当にかわいらしい人である。)
新沼さんは、その不動の安心感が人を惹きつける。
星野さんは、魅入らせることで皆を笑顔にさせることを生きがいにするエンターティナー。といったところだろうか。
断片的なインタビューで、人を判断できる訳は無いのだけれども、こういう印象をもった。

リーダーシップはノウハウで得られるものではない。と改めて感じた。大切なのは、自分自身の個性を大切にして最大限に引き出すこと。そして仲間を信じきること。そうすれば、きっと自分なりのリーダーシップの形が出来てくるのではないだろうか。

自分自身は、まだその型に自信が無いのだけれど、まずは自分が出来ることをやる。ということなのだろう。その為には、逆に肩の力を抜いて、気を楽に持った、じぶんの自然体を良しとする。そういう姿勢を身につけたいと思う。

■エリック・シュミットさん (Google社 CEO)
__21 ●社員には勤務時間の20%を自由な研究開発に充ててもらっている。そこからいろいろなアイデアが出てくる。
●愛犬同伴もOK、自由でオープンな雰囲気
●重要な情報をインターンの学生にも教える。「こういうアイデアがあるんだけど、どう?」という感じで。
「You ! Must be Creative ! 」などとやっても新しいアイデアは出てこない。
間違いを許容することが大切。2回目は1回目より格段に良くなる。間違えに気が付いたらスグに修正すればよいのだ。
●リーダーにとっては、「話すこと」よりも「聞くこと」のほうが大切。日々ものごとは変化してゆく。リーダーが全てを把握できるわけではない。「どうだい?」と自分から声をかけること。
●会議では、何が起きているかを聞いて、自分の意見を出す。そして、その意見に対する反対意見が出るまで待つ。そこに議論が生まれ、その議論の過程でリーダーは認識を深めていく。
●そこで、皆が自分の意見に反対だということになれば、その反対意見を採用する。集団の方が個人よりも優れた判断が出来ると信じているからだ。
●クリエイティブな会社では、皆が意見を出す。そして気軽に「素晴らしい、やってみたら?」と背中を押してあげる。そして、そのアイデアを覚えておいて、しばらく経ってからあの件はどうなった?とメールで聞く。大切なのは、「聞くこと」と「アイデア」を結びつけること。創造的な人たちが話し合える雰囲気を作ること。
●グーグルはユーザーの1クリックで成り立っている会社であり、ユーザーに信頼されることが何よりも大切だ。

■感じたこと・考えたこと■
Googleは、『世界を整理しつくす』という非常にシンプルで、かつ壮大なビジョンを持っている。今回はあまり強調されていなかったが、そこがまず大前提にあって、今回のインタビューが生きてくる。

「日本人は自分の意見を表明するのが下手クソだ。それは、欧米と異なり、自分の意見をもって議論するという教育を受けていないからだ。」とよく言われる。だが、それは本当だろうか。

本田技研は、ワイガヤ文化で有名だし、それ故に個性的な商品を生み出してくる。
Googleのような組織は、意外と日本人に合っているのかもしれない。要は組織内の環境とか文化なのだと思う。独自の「創造性」が求められている今の日本企業に働くものにとって、非常に意義深いインタビューだったのではないだろうか。
   

■ 推薦本 ■

すごい会議 --短期間で会社が劇的に変わる!
Photo_86

 

 

 

 

  
   
   

■ 関連図書 ■

Google誕生 ガレージで生まれたサーチ・モンスター
Google

 

 

 

 

   
     

【プロフェッショナル仕事の流儀 単行本】
放送で紹介されていなかった部分も描かれているそうです。
プロフェッショナル 仕事の流儀 1
●リゾート再生請負人 星野佳路
●小児心臓外科医 佐野俊二
●パティシエ 杉野英実

プロフェッショナル仕事の流儀 4
●映画プロデューサー 鈴木敏夫
●建築家 中村好文
●飲料メーカー商品企画部長 佐藤章

プロフェッショナル仕事の流儀 10
●編集者 石原正康
●コンビニチェーン経営者 新浪剛史
●玩具企画開発 横井昭裕

                      <2007.05.31 記>

   
   
■ 関連記事 ■

■成功体験からしか人は成長しない 南場智子さん
http://soko-tama.cocolog-nifty.com/blog/2007/03/post_f667.html
■『プロフェッショナル 仕事の流儀』 現実を見つめ、出来ることをやる。経営者 坂本幸雄
http://soko-tama.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_556d.html
■『明日から使える”仕事術”』というのは、伊達ではなかったのだ。
http://soko-tama.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_fe56.html
 

■茂木健一郎さんの「クオリア日記」にT/Bします。
http://kenmogi.cocolog-nifty.com/qualia/2007/05/post_0461.html

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2007年5月23日 (水)

■『プロフェッショナル 仕事の流儀』 「正解」はある。装丁家 鈴木成一。

02_3 ■今回のプロフェッショナルは、装丁家 鈴木成一さんである。
「ヒットさせたければ装丁は鈴木成一に頼め」とまでいわれる装丁の大御所、鈴木成一さん。その仕事は年間およそ700冊にも及ぶ。だが、それぞれの本の装丁は多彩な個性を極め、とても同一人物がデザインしたものとは思えない。番組ではその秘密に迫った。
<2007.05.22放送>

Photo_39 Photo_47 Photo_49 Photo_51  Photo_50

■「鈴木の作った表紙は、なぜか目に飛び込んでくる」と編集者は口をそろえるという。書店に平積みされる本にとって、いかにお客さんの目を引き、手にとらせるかが販売上の生命線だ。何故、鈴木の装丁はヒトの目を引くのだろうか。

「答えは本の中にしかない」と鈴木は言い切る。目を引くためのテクニックなどは無く、ましてや成功した装丁を他の本でトレースしてもヒトの心に響きはしない。

本の中身を読み込み、その本にしかない新しい個性をつかみ削り込む作業。その為に鈴木は自身の自己表現、自己実現を極力押さえ込み、その本の個性に耳を澄ませることに徹する。そのことで多様性に富んだ魅力的な装丁が次々と生まれてくるのだ。
 

■だが、自己を押さえ込んだ作品を大量に産み出すエネルギーは何処から来るのか?それは「期待に応えること」なのだという。自分の仕事に期待し、「頼まれる」。だから、やる。下積み時代の苦闘の上にたどり着いた答えだ。そこに自分の才能があり、それを他の人に期待される。そして期待を上回る装丁を仕上げる。それがモチベーションの源泉だ。
 

「『自分』というものは独立したものとしてあるのではなく、周りの人たちとの関係によって形作られていくものだ。」
 

大学時代に第三舞台の「朝日のような夕日をつれて」のポスターを手がけ、評価を得る。そして、その書籍化にあたっての装丁をまかされ、「これで食っていこう」と独立。

だが世の中は甘くは無く、フリーという立場の弱さに苦しめられる。そんな辛い状況を支えてくれたのは自分の才能を評価してくれた人たちだ。
そういった経緯を踏まえると、先のコトバの深さが心に染みてくる。
「期待に応えること」が自己実現そのものなのだ。 

だから、仕事には徹底的にこだわる。
 

■けれど、装丁のイメージが常に泉のように湧いて出てくる訳ではない。出来かけの作品を眺めても納得がいかない。「違う」のだ。

01 そんな時、鈴木は出来かけの作品を目の前に立てかけておきながら、おもむろに別の仕事に取り掛かる。別の仕事に集中しながら「その作品」に対して無意識の状態を作り出す。ふと、視線を上げると、やりかけの仕事が目に映る。そのとき何を感じるか。
 

「要するに、出来損ないの表紙など見たくないのです。それを何度も見て違和感を自分に植え付けることで、そこから逃れたいという欲を育てる、そんな感じです。」
 

何かふとした拍子にイメージが、「ぽっ」と浮かぶことがある。幾多の苦闘から、それを創造的仕事の手法として確立したのだろう。
まさにプロフェッショナルだ。
 

「『正解』はある。」
 

確かに。
「これだ。」と直感的に思うときは、すらすらとイメージが加速、そして作業を進めるうちに一点に収斂していく。そういう感覚は確かにある。鈴木のいう『正解』とは、そういうもののことを言っているのであろう。

だが大抵の場合、「創ろう」という思いが先走り、遅々として作業が進まない。苦労して作り上げたモノも、どこか釈然としない。だが、そこで妥協してしまう。

せめて、ココゾ!という時には締め切りを過ぎようとも(笑)、妥協しない強さを持ちたい。そう思った。
                           <2007.5.23 記>


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2007年5月 9日 (水)

■『プロフェッショナル 仕事の流儀』 現実を見つめ、出来ることをやる。経営者 坂本幸雄 

Photo_26 ■今回は、エルピーダメモリ社長 
坂本幸雄さん。
サムスン電子を初めとした新勢力に追い落とされ、NECと日立製作所がDRAM製造部門を切り離し、統合・設立されたのがエルピーダメモリ。
その厳しい状況の下、経営危機に瀕したこの会社を立て直したのが、坂本さんである。
                          <2007.5.8放送>

■『現実を見つめ、出来ることをやる』。それが、坂本さんのポリシー。そのポリシーにしたがって素早い決断を下し、次々と成功を収めて来た。

■かつて、30代の前半の頃の坂本さんは、『上司の指示に決して出来ないと言わない』という姿勢で、がむしゃらに仕事を進めてきた。そして、結果が出ないことを何よりも恐れていた。その重圧の連続は、胃潰瘍により胃を2/3切除するという結果を招く。

■1ヶ月の入院の後、坂本さんは変わった。『出来ないことを頑張ってやる』のではなく、『出来ることをやる』。
「出来ないこと」というネガティブな部分から「出来ること」というポジティブな部分にフォーカスを切り替えたのだ。
『俺には、出来ることしか出来ない。では、今、自分に出来ることは何か?』と見方を変えることで、自分の周りが見えてくる。
ただ、がむしゃらに自分だけで問題を抱え込んでいては見えてこなかったモノが見えてくるのだ。
そして、目の前の現実を現実として見つめなおすことが出来る。

『現実を見つめ、出来ることをやる』

それが、成果につながるのだ。

■だが、坂本さんの凄いところは、それにとどまらない。
『目の前の現実を見つめ』、その上で、即座に勝負に出るのだ。
結果を考えすぎない。間違ったら、次のこのステップでやり直せばいい。その気楽さ故に、勝負に出ることが出来る。
(実際には、それでもかなりの重圧のはずだが・・・・それが社長の仕事だというのだろうか。)

『メンバーが共感できる夢』を語ること。それがリーダーの大切な資質なのだと思う。
今回の取材の中でも、坂本さんは、かなりの無理難題を提示している。
だが、そこの場に出てくるのは、「困ったな、誰か早く、『出来ない』って言えよ」という『沈黙の声』ではなく、『ココが問題で、それが何とかなれば出来る』という、現場の実情に即した建設的な声だ。
それは、現場が責任を背負いこみ、経営者がそれを追求するような文化の会社では、決して聞かれない言葉だ。

■現場の担当者達が優秀で責任感が強い時、かえって、かつての坂本さんのような状況に陥りがちになるのだと思う。(実感として・・・。)
坂本さんは、その重圧を上手く取り去ってくれるのだと思う。それは、電車通勤し、社員と同じフロアで仕事をし、挨拶をかわす。そういうことで作り出される「雰囲気」とか「場」によって作り出される’文化’なのだと思う。
そうして、現場の状況がトップに伝わるようになっていくのだ。
(「肩の凝る組織」と「血行の良い組織」なんてフレーズはどうでしょう?)
 

理想は『社員が楽しく、安心して働ける会社』と言う坂本さん。
その理想は、ギリシャ語の「希望」を語源にしているという『エルピーダ』という社名に表されている。

■プロフェッショナルとは■
『やっぱり仕事をこうやってて、で、仕事がちゃんとできるだけじゃなくて、プラスアルファのことを考えられること。自分流の何かを乗っけて、その仕事を完成させていくことができる人がプロフェッショナルなんじゃないでしょうか』 坂本幸雄

                           <2007.05.09 記>

■参考図書■
今回の坂本さんの話を聞いていて、この本を思い出したので、参考として紹介させていただきます。

『経営者の条件』
Photo_33 ピーター・ドラッカー著

  

   
  
  
  

■関連図書■

『エルピーダは蘇った』
Photo_34 松浦晋也 著

  

  

  
    

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2007年5月 2日 (水)

■『明日から使える”仕事術”』というのは、伊達ではなかったのだ。

「プロフェショナル 仕事の流儀」。今週は『仕事術スペシャルpart3』、単なる総集編ではなく、今まで紹介されてきたプロフェッショナルの方々の実践的な「仕事術」を探るというもの。

01_9 ■ベンチャー経営者の南場さん、「部下一人ひとりと、ちゃんと向き合うことが良いコミュニ ケーションの為の秘訣だ」という真摯な姿勢は、先に放送された盲導犬訓練士の多和田さんの姿ともダブり、そうだよなぁと深く共感。やっぱり、ノウハウとかテクニックじゃないんだよな。どれだけ相手の立場に共感して、本気で向き合えるか。ということに尽きる。・・・主人公は、部下の一人ひとりなんだよな。

01_10 ■同じくベンチャー経営者の秋山さんが実践している、「高さ1メートル10センチ以上のものをオフィスに置かない」というルール。『どこにいても社内全体の空気を肌で感じられる空間』を狙い。オフィスのあちこちで散発的に『やったー!成功!』なんて声が、聞こえてくるさまが眼に浮かび、勢いのある活性化した組織を想像させる。
背の高いパーティションで自分の部署を囲いたがる、どこかの会社とは大違い。でも、実はそれ以前に、自分も含めて、すぐ目の前の人とも見えない壁を作ってしまうようなところもあって、その見えない壁を取り除くのが本質的な課題なのだ。
『見える壁』と『見えない壁』。2つの壁は独立したものではなく、お互いに影響しあっている。一方を一つの効果的な演出として取り払うことで、厄介なもう一方の壁も取り払われる。そんな、楽観的なイメージが浮かんだ。これは、スグに実践できることかもしれない。

3_3 ■建築家 隈研吾さん。本放送を見ながら、こんなに仕事を請け負って、でも一つ一つ自分の身体で感じながら創造していく。・・・どうやって仕事をこなしているんだろう?と思っていたのだが、今回その秘密の一端を紹介して貰えた。なんと、打ち合わせに15分程度しかかけないのだという。
ポイントは以下の3点
①打ち合わせをする相手を事前に刺激する。
 ・そのことにより、打ち合わせを行う前までに『活性化』。勢いよく打ち合わせに入れる。
②資料や図面、写真を必ず用意させる。
 ・話が具体的になり、議論が空回りすることが無くなる。
③打ち合わせは、物事を決める場。悩んで時間を浪費しない。
 1.今、決める。
 2.相手に任せる。
 3.今度考える。
 ・この3つの分類のどれかを瞬時に決める。
これは、使える!
自分のデスクに張り出しちゃおうか、と思うくらい、しみじみ来てしまった。

■今回は、実はあんまり期待せずに見ていたのだけれど、充実してたな。見てよかった。
ところで、住吉アナが涙を流すほど、おいしいゴハンって、気になるなぁ。早速試してみようか。

01_12 「手間をかけた分だけ、愛情が伝わるのが料理だ」
                  料理人 徳岡邦夫

それは、料理だけに限った話ではない。何事も、手間と愛情が大切なのだ。
                          <2007.05.02 記>

『プロフェッショナル 仕事の流儀〈5〉』 

脳科学者・茂木健一郎が独自の視点で各界のプロに切り込む、NHK総合テレビ人気番組を書籍化。以下の3人のプロフェッショナルが紹介されています。
●ベンチャー企業経営者・秋山咲恵
●テストドライバー・加藤博義
●ライティングデザイナー・内原智史

放送で紹介されていなかった部分も描かれているそうです。
 

■本 『プロフェッショナル 仕事の流儀〈7〉』

以下の3人のプロフェッショナルが紹介されています。
●カーデザイナー・奥山清行
●棋士・羽生善治
●料理人・徳岡邦夫
 

■ 『負ける建築』
Photo_19 隈 研吾 著

   

   

   
   
   

■番組HP、『仕事術スペシャルpart3』
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/070501/index.html
■徳岡さんの涙がちょちょぎれる、おいしいゴハンの炊き方。
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/070501/02.html

■茂木健一郎さんの「クオリア日記」にT/Bします。
http://kenmogi.cocolog-nifty.com/qualia/2007/05/post_70d2.html

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2007年4月26日 (木)

■主人公は育てられる方なのだ。『盲導犬クイール』を育てた男、多和田悟。

Photo_88 ■『プロフェッショナル 仕事の流儀』
 「イヌは人生のパートナー
 盲導犬訓練士・多和田悟」<4/17放送>

■今回は、あの盲導犬クイールを育てた多和田悟さんの話である。
多和田さんの訓練では、イヌが楽しみながら学んでいるように見える。イヌが指示通りの動きをしようとしたところを、「グーッド、グーッド」とすかさず褒めると、イヌも「ほら、出来たよ。」と誇らしげな表情をする。そこには、とても質の良いコミュニケーションが成立している。

■「イヌ語で話す」。それが基本。と多和田さんは言う。
しっかりとイヌを観察する。全体の雰囲気、耳、シッポ、表情。そしてイヌの気持ちになって考える。そのイヌの立場に立って、出来ることから訓練を始める。褒める。その積み重ねが、そのイヌを成長させる。
そして、褒めて育てたイヌは、盲導犬になっても楽しそうに仕事をするようになるのだそうだ。
それは人の教育にも当てはまることだ。

■多和田さんは後進の指導について、こう語る。
彼らが「これは自分がやらなくてもいいや」と思ってしまったら、それまで。
自分の情熱、『志し』を持つのは彼ら、それを燃やし続けさせるのが指導者の役割。
実際、後輩、部下の指導というのは難しい。「コーチング」という言葉が流行って久しいが、ただ闇雲に褒めれば良いという訳では無く、なかなか上手くいかない。
大切なのはノウハウではなくて、コミュニケーションしようとする『気持ち』のあり方だ、という気がする。

■最近、後輩に業務の指導をしていて、ふと気付いたことがある。
「君のやり方は間違っている。俺のやり方はこうだ。こうすれば良いのだ。」と熱を入れて指導しているのだが、何かがおかしい。
少しデフォルメした例え話でいうと、こんな感じ。
「剣道で後輩に稽古をつけているのに、自分が勝って胸を張る。」
バカか?後輩に勝ってどうする!という突っ込みが入るところだ。
もちろん、腰が入っていなければ激しく突き飛ばしたりもする事もあるだろうが、基本的には相手の技量に合わせた隙を、あえて作って上手く打たせる。というのが普通だろう。

■そういう時、真剣に指導しようとすればする程、上手くコミュニケーションがとれなくなる。でも、本人は、なかなかそれに気が付かない。
実は、知らず知らず、それを自分がやってしまっていたのだ。
最前線で戦っている時は自分自身が主人公。それで15年程やってきた。
その感覚が身体に染み付いてしまっていて、『後輩を指導する時は「後輩自身」が主人公なんだ』という『気持ち』がつい、欠落してしまうのである。

■そういう意味で今回の話は非常に為になった。『褒める』とか『相手の立場に立つ』とかそういうコトバは耳にタコが出来るくらい聞いているのだが、なかなか身体に染み付かない。イヌと多和田さんのコミュニケーションを見ていて、そのヒントを貰えたような気がするのだ。
                          <2007.04.26記>

    ■参考■多和田さんの本とクイールの作品を並べてみました。

■新書 『犬と話をつけるには』
Photo_101 多和田悟 著 

   

   

   

   
   

■本 『クイールを育てた訓練士』
Photo_90  多和田悟・矢貫隆 著 
   

   

   

 
 

『クイール流愛犬のしつけ方』 
Photo_91 多和田悟・渡辺格 著 

   

   

   
    

■写真集 『盲導犬クイールの一生』
Photo_92 石黒謙悟・秋元良平 著 

   
   

   

   
    

■DVD 『盲導犬クイールの一生』
Photo_93 NHK月曜ドラマ2003年放映(全7話収録)
原作 秋元良平・石黒謙悟
脚本 寺田敏夫 演出 岡崎栄
出演 玉置浩二、うじきつよし、沢口靖子 他

   
   

■DVD 『クイール』 
Photo_94 監督 崔洋一 2003年作品
出演 小林薫 椎名桔平 他

    
   

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2007年4月12日 (木)

■『対話』が創造の源 【隈研吾 「負ける建築」】その2

放送から1日経って、もう少し違う見方が浮かんだ。

■隈さんの言う「負ける」とは、「対話する」ということではないか?

■機械の設計などという仕事をしていると、制約ばかりである。
商品企画の考え、各部品設計の考え、実験部の考え、予算管理部の考え、プロジェクト管理部の考え・・・。

それを自分のやりたいことに対立するものと捉えてしまうと、トレード・オフ問題として、中間解を求めることになる。そこには創造性は無く、妥協があるのみである。

そうではなくて、自分に制約を加える相手とじっくり対話をすると、意外な糸口から創造的解決(ブレイクスルー)に至る時がある。設計者としては至福の瞬間である。

■隈さんは、施工主と対話をして、立地条件や周辺の環境と対話をして、限られた予算と対話をして、構造的な問題と対話をして、そうして独創的な建築に至っているのではないだろうか?
きっと、その作業は、苦行ではなく、苦しくとも楽しいものなのだろう。制約が厳しければ厳しいほど、対話から生まれる新しいものに対する期待が膨らむ。

だからこそ、隈さんが「’制限なし’で自由に建築できたら、どういうものを創るか?」という問いに対しては、「それでも制約を探す」と答えざるを得なかった。「新しい対話」無しには創造性は生まれないのだから。

■「対話法」。それは古代ギリシャ哲学者の智恵である。
「A」と「B」という違うものがあるから、「C」という新しい考えが生まれる。もし、宇宙に「A」しかなければ、永遠に「A」が続く。秩序はあるが、冷たく、面白くない世界・・・。

ここから先は、進化とか、生命の誕生とか、話題が発散してきそうなので、そのうち、また別の機会に。
                  <2007.04.12 記 >

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2007年4月10日 (火)

■『プロフェッショナル 仕事の流儀』 隈研吾 「負ける建築」に見る身体論

今回は、建築家 隈研吾さんの流儀。

Photo_52隈 研吾(くまけんご、1954-
慶應義塾大学理工学部教授。
初期は古典主義建築を引用したポストモダン建築を手がけていたが、その後、竹の家など自然素材を生かした建築を提案している。 近年、格子を多用したデザインが特徴的な作品が多く見られる。

Photo_53 Photo_54 Photo_55

■<ポイント>
①社会に受け入れられる建築。「負ける建築」で創造性を発揮する。
②何度も現場に足を運び、制約に耳を傾ける。
③だが、発想の『根』は譲らない。

■お客様相手の商品開発を行っている立場からすると、「何を当たり前のことを言ってるんだ」となりそうである。マーケットを調べて、コンセプトをはっきりさせる。当然のことじゃないか。

■しかし、我々は、本当に「自分で現場に足を運び」、「制約に自分の耳を傾け」、「コンセプトが貫かれているか自分の問題として本気で考え」ているだろうか?

■市場調査部の調べた結果からカスタマー像を割り出し、企画部がコンセプトをつくり、設計屋が、そのコンセプトを自分なりにアタマで解釈して製品を作り出す。
そこに今日出てきた老舗醤油屋さんの若旦那が見せたような「共感」があるだろうか。

■番組を見ていて、『現場で感じる』ということの大切さをしみじみと感じた。そこにこそ、『リアリティ』が生まれるのだ。
伝える相手が人間である限り、『リアリティ』は脳みそで演繹的に生まれるものではない。現場を自分の肉体で感じ、施工主の目を見て会話する。そして身体で感じ取った制約条件を自らの中で咀嚼し、自分の問題として、ポジティブな、ありたい姿を想像/創造する。

■そこに、隈研吾さんの仕事の極意を感じた次第である。

■これを「ワンオフの建築だから通用する話」と済ますことは容易いが、大量生産の商品を作る立場で、大組織の一部品である、このちっぽけな自分に一体、何が出来るのか。その答えを見つけることが自分の仕事なのだ、と思う。
                         <2007.04.10  記>

    
    
『負ける建築』 
Photo_7隈 研吾 著
   

   

   

    

 
       

■茂木健一郎さんの『クオリア日記』
「プロフェッショナル 仕事の流儀 隈研吾」にトラックバックさせていただきます!
http://kenmogi.cocolog-nifty.com/qualia/2007/04/post_079d.html

■『プロフェッショナル 仕事の流儀』HP
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/070410/index.html

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2007年4月 9日 (月)

■感情に正直であること。 宮崎駿

■一部、追記しました。<2007.04.20>
プロフェッショナル 仕事の流儀 ー宮崎駿・創作の秘密ー
<2007.3.27放送>

_02_2
宮崎駿が、次回作に向けてゼロから構想を産み出す姿をカメラが
追った。

■今回はドキュメンタリー作品として非常に楽しめた。
ディレクター独りなら、という条件で撮ることを許されたハンディカムが、創作活動のピークに向け日々変わっていく宮崎駿の姿を克明に捉えていく。
テレビで見ているコッチまでドキドキしたヨ。

見るものの心を捉える宮崎作品。その秘密は、
『理屈でつくらないこと。』

アタマで考えたアイデアとか、理屈で考えたものは、すぐに「ああ、
こういう話か」とシッポをつかまれてしまう。

あらすじを文字で書くのではなく、イメージスケッチをいくつもいくつも描き、表現をしたいことの本質をついた一枚にたどり着く、気が遠くなるような作業。そこが基点となって、物語のイメージが広がっていく。

自分の感情に正直であること。

「想い」を「コトバ」にしようとすればするほど、伝えたいことから
遠ざかるものなんだよな・・・こころに染みます。

■なかなか解決できない難問に突き当たる。いくら必死に考えても解決策が浮かばない。ところが、リラックスして風呂にゆっくり入っている時に、ふっ とい解決のイメージが浮かんだりして、慌てて上がって、メモに残す。。。。なんてことが時々ある。

「創造」とか「アイデア」っていうものは、脳みその表面でウンウンうなっただけで捻り出されるものではなく、その「力み」が抜けた時に浮かんでくる、驚き、悲しみ、匂い、手触り、暖かさとか、そいうった身体感覚を伴った、未だ整理されてない思い出とか経験とかが互いに結びついて生まれてくる。そういうものかもしれない。そういう身体感覚を伴ったイメージであるからこそ、相手の感情にダイレクトに伝わり、共感を呼ぶ。

宮崎駿のアニメーションが面白いのは、アタマじゃなくて、ココロとかカラダに訴えてくるものだからなのだろうなぁと、改めて感じ入りました。

Photo_35 ちなみに次回作は『崖の上のポニョ』。人間になりたい金魚姫ポニョと5才の少年の物語。全て手描きだそうです。(CGを使わないことがニュースになる時代なのですね。)・・・もしや、ジブリの原点「やぶにらみの暴君/王と鳥」に立ち返るのか?だとすれば、えらい事になります。色鉛筆で描いたような独特の色調の素朴さからも、並々ならぬものを感じます。期待大!!

               <2007/04/03(火) 記>

      

      

   
■お気に入りの宮崎作品■
●未来少年コナン ★★★★★
Photo_131978年 日本アニメーション作品
原作 アレクサンダー=ケイ「残された人びと」
演出 宮崎駿 作画 大塚康正 
脚本 吉川惣治ほか
絵コンテ 高畑勲、富野喜幸ほか 
声  小原乃梨子、信沢三恵子ほか
♪海は青く眠り~大地に命芽生え~ と歌うだけで幸せになれる。

●紅の豚  ★★★★☆
Photo_14 1992年 スタジオジブリ作品
原作、脚本、監督 宮崎駿
作画 賀川愛
声  森山周一郎(!)、加藤登紀子ほか

●「飛ばねぇ豚は、ただの豚だ。」それを言いたいが為の映画。カッコイイ。

●千と千尋の神隠し ★★★★☆
Photo_15 2001年 スタジオジブリ作品
原作、脚本、監督 宮崎駿
作画 安藤雅司ほか
声  柊 瑠美、入野自由、神木隆之介ほか

●今回放映された宮崎さんの仕事の流儀にピタリと嵌る作品。
このイメージの氾濫はすごい!

■参考■ 「やぶにらみの暴君/王と鳥」 ★★★★★

Photo_78 「王と鳥」1979年 フランス
監督 ポール・グリモー
元の映画「やぶにらみの暴君」は1947年に製作開始、1952年、監督の意に沿わないまま上映された。1979年、グリモーとスタッフが作品を本来の姿にすべく執念で完成させた作品。
●宮崎駿/高畑勲 「ジブリ作品」の原点。私は「やぶにらみの暴君」しか見ていないけれど、ダイナミックなキャラクターの動きが素晴らしく、独特の画風と相まって、空想の世界へグイグイと引きずりこまれる。また、フランス語独特の響きが異世界感を増幅している。

■★究極映像研究所★さんにトラックバックさせていただきます。
http://bp.cocolog-nifty.com/bp/2007/04/nhk_miyazaki_b5e8.html
■茂木健一郎さんのクオリア日記
『プロフェッショナル 「仕事の流儀」 宮崎 駿』にトラックバックさせていただきます。
http://kenmogi.cocolog-nifty.com/qualia/2007/03/post_e5d8.html

■NHK プロフェッショナル「仕事の流儀」#45 宮崎駿 特番
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/070327/index.html

■今回の「ドキュメンタリ」を撮ったディレクターさんのコメント
http://www.nhk.or.jp/professional/note/index.html

<2007/04/20(金) □2 記>「王と鳥」記事追加
<2007/04/08(日) □1 記>

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2007年3月30日 (金)

■成功体験からしか人は成長しない 南場智子さん

プロフェッショナル 仕事の流儀  株)DeNA 社長 南場智子さん 200738日放送

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<ポイント>
●仕事が人を育てる。
 
一つ上の仕事を与える。苦しみを乗り越えてこそ活路は開ける。

●常に前のめりで。
  厳しいときほど前のめりで。そうすれば活路は開ける。

●組織の大黒柱は、あえて、抜く。
その人に頼る組織になってしまう。逆に抜けば育つ木がある。

●提案には、一つでもいいところを見つけて、本人以上に
  盛り上がる。

●成功体験からしか人は成長しない。

<仕事の流儀 HP>
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/070308/index.html

<電気羊のつぶやき>

今回のプロフェッショナルは、携帯サイトビジネスで成功した南場さんのお話。

日経WOMANでウーマン・オブ・ザ・イヤー2007に選ばれてたそうで、うちのカミさんが再放送を見ていたので横目で見ていたら引き込ま
れた。

一つ一つの言葉に共感する。そうだよな、そうだよな。と、うなづきながら見てました。

特に、<成功体験からしか人は成長しない>というコトバに強く
同意。

成功者だからじゃない。自分で起したベンチャー企業が破綻寸前に追い込まれるという修羅場をくぐったからこそ言える深いコトバだ。

でもね。わかっちゃいるけど現実問題、なかなか成功体験なんて
ないものです。

だから、どこかの’目玉のおじさん’じゃないけれど、小さいことから
こつこつと。

小さな小さな、でも確かに実感できた成功体験を大切にするってことじゃないかな。と小市民は思うのだった。

ところで、南場さんって何ていうか「やわらかい」感じ。女性らしくて、それでいて凄い。そういうところがウーマン・オブ・ザ・イヤー2007たる所以かもしれない。

                                                        <2007.03.30 記>

   

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