アムラックスでトヨタのiQ(アイ キュー)を見てきた。
■2008 トヨタ iQ (アイ・キュー)
■全長3メートル、全高1.5メートル、全幅1.7メートル。
なんじゃそりゃ、という常識はずれの車両寸法なのだけれども実車を見るとやっぱり変だ。
変なんだけれども、妙に納まりのいいカタチなのである。
造形として破綻をきたしていない、というよりむしろ「心地良い」と感じるくらいだ。

■全長 2,985mm × 全幅 1,680mm × 全高 1,500mm
1.0L直列3気筒 68ps 9.2kgf/m 140~160万円
■2008-2009 日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞、グッド・デザイン賞受賞
■いや、いや、スマートがあるじゃないか、
という意見もあるだろうし、確かにスマート フォーツー クーペは全長2.7メートル、全高1.54メートル、全幅1.56メートルでチョッと小さいけれど大体同じ外寸だ。

■スマート フォーツー クーペ
(smart社はSwatchとBenzの共同プロジェクト)
■けれど全体を見たときに「クルマ」として少し軽い印象がある。
それは数センチの外寸の違いから来るものではなく、そもそも目指しているものが違う、そこから来るものであって、似て非なるもの、と言ってもいいだろう。
決してスマートをけなしている訳ではなくて、「本格」をあえて避け、ちょっとチャチなところにセンスの良さを見出そうとする「Swatch」の思想そのものであり、それはそれで別のものということだ。
■それに対してiQは、その寸法の中に「本格」を詰め込む試み、ということである。
それが全幅1.7メートルの意味であるし、4人乗り(3人+α)の意味なのだ。
つまり、大人がふつうに3人乗れて(※)、安心して走行出来ること。それでいて全長3メートル、最小回転半径3.9メートルという見かけを遥かに上回る驚異の取り回しの良さを実現する。
未だかつて無いクルマである、
というのはそういうことだ。
※助手席側は前席をうんと前に出すことが出来るので大人2人が前後に座ることが出来るけれども、運転席の後ろは座席こそあるものの残念ながら実際は猫か手荷物くらいのスペースしかない。
■約20年ほど前のことになるが、やはりトヨタが「未だかつて無いクルマ」を世に出したことがある。
「天才タマゴ」こと、初代エスティマである。
3列シートのクルマは四角いワンボックス、という当時の常識をくつがえした楕円形フォルムは世間をアッと言わせたものだけれども、今回 iQの実車をじっくり眺めていて、そこに同じ「ニオイ」を感じたのである。
■初代エスティマの「カタチ」を可能にしたのはエンジンを横倒しにして床下に搭載し、前輪を思い切り前に出したことによるものだ。
それは車体骨格の設計思想やエンジン、トランスミッションなど駆動系部品を一新することを意味しており、つまりは莫大な投資・開発費を伴う大きな「賭け」なのである。
■今回のiQのカタチを可能にしたのも、やはりスモールカーの設計思想の革新によるものだ。
端的にいえば、FF用トランスミッションの前後逆配置によるフロントミッドシップ化である。
これはFF車(前輪駆動車)の車両を開発しているの者であれば誰もが一度は考えるパッケージだ。
何しろタイヤを前方に出すことが出来るから乗員も前に出すことが出来て、ひいては車両全長の大幅な短縮が見込めるメカミニマム・マンマキシマムな素晴らしいアイデアなのだ。
■けれども、これまでどこの自動車会社もそこに手を付けなかった。
今までに実績が無く、かつ莫大な投資を伴うアイデアに対して、そんな提案が通るはずが無いと担当者が本気にならなかったのかもしれないし、その危ない「賭け」が実際に経営判断によって却下されたのかもしれない。
いずれにせよ小型車のFF化が進んで20年以上が経つけれど根本的な変化は生まれて来なかったのは事実である。
だが、どこかで「賭け」に出なければ次第にジリジリと後退していくだけだ。
■分かっちゃいるけど・・・、
という我慢比べの状況の中で、やっと変化の兆しが生まれてきたのがこの数年の流れだろう。
会社が傾き、土俵際いっぱい起死回生での「うっちゃり」の如く、その賭け(エンジン後方配置)に出たのが三菱の「 i (アイ)」であり、それに負けじと横綱相撲の貫禄を見せたのがトヨタの「iQ(アイ キュー)」の横置きFFミッドシップなワケである。
■技術的に難しいと思われていた横置きFFミッドシップもやってみれば出来るもので、センターテイクオフ式ステアリングなんていう、旧シビックが使った飛び道具も気にするまい。
むしろ、前に出たフロント・ストラットがちょうどエンジンの真横に来た関係で、ペンデュラム(振り子)式エンジンマウント取り付け部の車体構造をガッシリ作ることが出来たという裏ドラに驚くべきで、いやーホント、悩んでないでチャレンジしてみるもんだ、ということである。
■初代エスティマの「画期的構造」は一代限りで消え去った。
きっと根本的な部分での避けがたい技術的課題があったのだろう。
ハッキリいえば「賭け」は失敗に終わった。
けれども、その後の北米でのミニバンブームの火付け役としての初代エスティマ(北米名:プレビア)が果たした役割はゼロではないはずで、10年単位で見たときに、ワンボックスカーがガラリとFFミニバンに切り替わるどころかセダンさえ駆逐してしまった日本の状況を考えると、その意味はとてつもなく大きいのである。
■そういうことを考えたとき、
たとえ「iQ」そのものが商売として上手くいかなかったとしても、その先に必ずや起こるであろうダイナミックな変化を見越している人がいる。
乾いた雑巾を絞って絞って積み上げた大切な資源を、その不確かな「未来」に託す判断をする人がいる。
そういう トヨタという会社は、
やっぱり凄いなぁと、しみじみ思うのである。

■このリアから見た姿が実にキュートである。
これだけで欲しくなっちゃっても、おかしくはないだろう。
<2008.11.27 記>
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■ トヨタiQのすべて ( ニューモデル速報 第417弾)
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