●3.名画座【キネマ電気羊】

2009年11月29日 (日)

■【映画評】エイリアン4部作。オリジナルは唯一無二の傑作だが、続編も3者3様の面白さ。

今回は4本立てで行きましょう。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.37 『 エイリアン4部作 』
          

■『エイリアン ALIEN』(1979年公開)
 監督 リドリー・スコット 脚本 ダン・オバノン
 クリーチャーデザイン H・R・ギーガー
 出演 シガニー・ウィーバー トム・スケリット 他

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■エイリアン (ベストヒット・セレクション) [DVD]

■一番好きな映画は何?

なんて聞かれることがあるが、そういう時は迷った挙句、『ニューシネマパラダイス』とか『生きる』とか無難に答えるのだけれど、実は本当に大好きなのは『エイリアン』なのだ。

これほどにハラハラする映画は無くて、何度見ても同じところでビックリするのだから、驚くべきホラー映画なのである。

ケインがフェイスハガーに襲われる時でしょ、ブレットがビッグチャップに襲われる時でしょ、ダラスが通気口の中でやられるシーンでしょ、アッシュが・・・な時でしょ、それに最高のラストシーン。

■この映画は、CMディレクターだったリドリー・スコットのメジャー映画デビュー作品なんだけど、巨匠といわれる現在と同じか、いやそれ以上に’リドリー・スコットらしい’映画なのである。

滴る水、水蒸気、陰影が強調された画面。

特にブレッドが猫(ジョンジーだっけ?)を探しているときに、上の吹き抜けから水が滴り落ちてきて上を見上げる、あのシーンが最高だ。

■ビッグチャップ(エイリアンの成体)をほとんど見せない手法も、怖さを盛り上げる効果抜群。

初めて見たときにはその姿はほとんど判別できなかったもんな。

’見えない’、けどもしかしたら恐ろしいものがそこにいるかも知れない、という恐怖は原初の昔からDNAによって伝わってきた本能的反応なのだろう。

■ディレクターズカットでは、最後の脱出の場面の途中で、ダラスが繭にされているシーンが差し挟まれてこれも魅力的なのだが、やはりここは劇場公開版の方が私は好きだ。

危機感が盛り上がっていく場面で水がさされる感じがするからである。

そこをカットしたのはプロデューサーらしいのだが、その辺り、映画は監督だけで作るものではないなあ、と思う。

■あと忘れちゃいけないのがH・R・ギーガーのデザイン。

ビッグチャップを筆頭に、異星人の遺棄された宇宙船、その内部、エイリアンエッグと今までには全くなかったエロティックかつグロテスクな世界を作り出している。

■そんなこんなで語りだすとキリが無いのだけれども、ともかくこのオリジナルの『エイリアン』は企画、脚本、演出、デザイン、音楽、もちろん役者の演技を含めて最高の組み合わせであって、いつまでも記憶されていくだろう素晴らしい映画なのである。

      

■『エイリアン2 ALIENS』(1986年公開)
 監督・脚本 ジェームズ・キャメロン
 デザイン シド・ミード 他
 出演 シガニー・ウィーバー ジェニット・ゴールドスタイン他

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■エイリアン2 完全版 [DVD]

■今度は戦争だ!というのがキャッチコピー。

『エイリアン』は一匹のビッグチャップの強さが圧倒的であったが、エイリアン2では圧倒的なのはウォーリアー(兵隊エイリアン?)の数。

■海兵隊の重火器にによって次々にエイリアンが殺られるのだけれど、次から次から現れるからどんどんと追い詰められていく。

まさに戦争。

オリジナルの『エイリアン』はあまりに完成度が高いので同じ土俵で戦わなかったジェームズ・キャメロンは正解だったと思う。

■もうひとつの特徴はエイリアン・クイーンを生み出したところ。

リプリーと孤児ニュートの関係とクイーンとウォリアーとの関係がオーバーラップして、’母の強さ’というサブテーマをうまく作り出している。

個人的には前作の’捉われた人間が繭となり、新しい卵になる’というイメージが好きだったのでちょっと残念なのだけれど。

■この映画、劇場公開版は137分、ディレクターズカットでは154分。

大体において私の好みは簡潔な劇場公開版なのだけれども、この映画だけは違う。

その長い上映時間を飽きさせず濃密に話を展開させていくのがジェームズ・キャメロンの本領なのだろう。

   

■『エイリアン3 ALIEN3(1992年公開)
 監督 デヴィッド・フィンチャー
 出演 シガニー・ウィーバー ランス・ヘンリクセン 他

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■エイリアン3 完全版 (2枚組 プレミアム) [DVD]

■失敗映画の代表作と評価されてしまう可哀想な映画。

撮影が開始されているにも関わらず脚本の骨格すら定まっていなかったという酷い状態だったらしい。

各所に見られる’何となく落ち着かない感じ’も仕方なし、要するに映画として仕上がっていないまま公開されてしまった、というところか。

■それでも、決して悪い映画ではないと思う。

デヴィッド・フィンチャーが作り出した監獄惑星という独特の世界観は、その雰囲気だけでも味わう価値はあるだろう。

■エイリアン2に登場したアンドロイド、ビショップがこの作品にも登場するのだけれども、終盤、そのオリジナルとおぼしき科学者が登場するあたりからは「物語」としても面白い。

エンディングについては劇場版と完全版で異なるが、好みとしてはリプリーがクイーン・チェストバスターを抱きしめて落ちていく劇場版の方がいいかな。

  

■『エイリアン4 ALIEN:Resurrection』(1997年公開)
監督 ジャン=ピエール・ジュネ
出演 シガニー・ウィーバー ウィノナ・ライダー 他
 

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■エイリアン4 完全版 [DVD]

■副題のResurrectionは死者の復活、よみがえりの意。

その名の通り、前作で死んだはずのリプリーがクローンとして蘇る。

それも体内に宿していたエイリアンの遺伝子が組み込まれていて、驚異の運動能力と超酸性の血液をもった悲しきハイブリッドとして。

■登場するエイリアンの方も今までの’全くの異物’ではなく、怒りの感情を持っていたり、人間たちを罠にかける知恵まで兼ね備えていて共感の余地がある。

そのあたりも新鮮な感覚があって面白い。

あとはリプリーの娘(?)とも言えるニューボーン。彼女の最期は本当に可哀想だったなあ。

■この作品は前作とまったく逆で設定がシッカリしている。

ゆえに安心して見ていられるエンターテイメントなのである。

重要な役割りを担うウィノナ・ライダーも可愛くて華があるしね。

■ラストは劇場公開版と完全版でまったく異なるものになっている。

爽やかな劇場公開版もいいが、新しい物語が後に続きそうな完全版もいい。

完全版の衝撃のラストについては、オープニングに伏線らしきものがあって、そこも面白い。

     

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■エイリアン アルティメット・コレクション [DVD]
■エイリアン1~4の完全版。
エイリアン1と4は劇場公開版も収録。

 

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                           <2009.11.29 記>

    
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2009年11月 7日 (土)

■【映画評】『沈まぬ太陽』。人間の生き様。ラストシーンの感動が止まらない。

上映時間3時間22分の大作である。

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No.36  『 沈まぬ太陽
          監督: 若松節朗 公開:2009年10月
       出演: 渡辺謙  三浦友和  他 

          001

■休憩10分をはさんだ3時間半もの長大な映画。集中して見ることができるかどうか、正直あんまり自信が無くて見に行くのをためらっていたのだけれども、そんな心配はまったくの無用。

恩地元というあまりにも真っ直ぐな男の生き様にあっという間に取り込まれてしまったのであった。

  
■ストーリー■

昭和30年代。巨大企業・国民航空社員の恩地元は、労働組合委員長を務めた結果、会社から10年におよぶ僻地での海外勤務を命じられた。かつて共に闘った同期の行天四郎が組合を抜けてエリートコースを歩みはじめる一方で、恩地は家族との長年にわたる離れ離れの生活で焦燥感と孤独に追いつめられ、本社への復帰を果たすも不遇な日々は続くのだった。そんな中、航空史上最大のジャンボ機墜落事故が起こり…。<goo映画より>

 
■この作品は、己の信念を曲げないがために僻地をたらいまわしにされる恩地の話と、日航ジャンボ墜落事故とその遺族の話、そして航空会社の腐敗体質にまつわる話が交差しながら進んでいく。

それぞれの話がそれぞれに深くて物語が発散してしまいそうに思えるのだが、それが逆にうまく共鳴しあい、さらに深みを増している。

■そのなかでもやはり御巣鷹山の墜落事故の遺族たちの話がやるせない。

あれから24年も経つというのにあのときのショックが鮮明に蘇る。

特に墜落中に家族に向けたメモを残した父親と、それを読む息子の話は胸がつぶれる思い。

丹念に遺族に取材したのであろう事実がしっかりと背景にあって、だからこそのリアリティであって、だからこその重みなのである。

■その一方で、この映画は実直な恩地元(渡辺謙)と、出世の鬼と化した行天四郎(三浦友和)の歴史を縦糸として物語を織っていく。

明と暗、陰と陽のそのコントラストが素晴らしく、またそのコントラストの強さに関わらず陳腐に落ちないのがまた素晴らしい。

それはもちろん原作と脚本によるものであるけれども、渡辺謙と三浦友和の魂を揺さぶる好演によるところが大。

また、そのコントラストを際立たせる俳優陣の力にもよるのだろう。

何しろそれぞれが主役を張れるような豪華な顔ぶれで、ため息が出るくらいなのだ。

■ラストシーン。

妻に先立たれ、日航機の事故で息子家族を一度に失い、ただひとり残された老人(宇津井健)が四国のお遍路の旅にいる。

その老人に宛てた恩地の手紙が胸を激しく揺さぶる。

こころの奥の底のところでズンと打ち震えるような感動だ。

救いようの無い絶望。

そこにはどんな慰めの言葉も届かない。

それでも生きていこうと思わせるのは、広大な自然に向かって立ち、ちっぽけな自分をいつまでも照らしている夕陽、その瞬間にあるのだ。

 

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                           <2009.11.07 記>

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■【原作】沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上)
山崎 豊子 著 新潮文庫 (2001/11)
  

■STAFF■
原作:山崎豊子『沈まぬ太陽』
監督:若松節朗  
製作総指揮:角川歴彦
企画:小林俊一
製作:井上泰一
脚本:西岡琢也
音楽:住友紀人
エンディング・テーマ:福原美穂『Cry No More』
製作:「沈まぬ太陽」製作委員会
製作プロダクション:角川映画
配給:東宝

■航空会社やスポンサーに首根っこを抑えられたテレビ会社の協力を得ずにこれだけの大作を真っ直ぐ作り上げた製作委員会と角川に深い敬意を感じます。
   



■CAST■
恩地元:渡辺謙
行天四郎:三浦友和
三井美樹:松雪泰子
恩地りつ子:鈴木京香
 * * * * * * * *
国見正之:石坂浩二
八馬忠次:西村雅彦
桧山社長:神山繁
小暮社長:横内正
堂本社長:柴俊夫
和光監査役:大杉漣
八木和夫:香川照之
 * * * * * * * *
利根川総理:加藤剛
龍崎一清:品川徹
竹丸副総理:小林稔侍
道塚運輸大臣:小野武彦
 * * * * * * * *
阪口清一郎:宇津井健
鈴木夏子:木村多江
小山田修子:清水美沙
布施晴美:鶴田真由
 * * * * * * * *
恩地純子:戸田恵梨香
恩地克己:柏原崇
恩地将江:草笛光子
 * * * * * * * *
国民航空123便操縦士:小日向文世
航空管制官:長谷川初範

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2009年10月25日 (日)

■【映画評】『私の中のあなた』。私は何の為に生まれてきたのか、生きるとはどういうことなのか。

これは泣けました。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.35  『私の中のあなた
           原題: My Sister's Keeper
    原作:ジョディ・ピコー「わたしのなかのあなた」
     監督:ニック・カサベテス 公開:2009年6月(米国)
  出演: キャメロン・ディアス アビゲイル・ブレスリン ソフィア・ヴァジリーヴァ 他

           001

■ストーリー■
11歳の少女アナは白血病の姉に臓器を提供するドナーとして遺伝子操作によってこの世に生まれた。母サラは愛する家族のためなら当然と信じ、アナはこれまで何度も姉の治療のために犠牲を強いられてきた。そんなある日、「もうケイトのために手術を受けるのは嫌。私の体は、自分で守りたい」と、アナは突然、両親を相手に訴訟を起こす。しかし、その決断にはある隠された理由があった…。(goo映画より)

   
■私は何の為に生まれてきたのか、という問いは、10代前半には芽生えてくる問いのように思える。

主人公のアナは、姉のケイトが生きていく為のドナーとして人工的に生を受けたわけで、客観的に考えるならば、その問いの答えはかなり厳しいものとなるだろう。

■物語はアナの独白ではじまり、アナの独白で終わる。

その間にある出来事を通して、彼女自身、その問いに対するひとつの答え、というより想いに至る。

そのとき、邦題の「私の中のあなた」というタイトルの意味が深く心に沁みてくるのである。

011

   
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■どうも「隠された理由」にこだわりすぎたのか、臓器移植を拒否するアナと、その一方でケイトに対する思いやりに溢れる日常のアナとのギャップに違和感を覚えてしまう。

きっと母親のサラ(キャメロン・ディアス)も同じことを感じていたに違いなく、見る者はその意味でサラと同じ目線で子供たちを見ていることになるのだろう。

■けれど、ケイトの命を助けることで気持ちがいっぱいになっているサラに対し、それ以外の大人たちの視点がしっかり描かれていて、観客はサラだけに没入することはない。

ふたりの娘のどちらの気持ちも汲み取ろうとする父親(ジェイソン・パトリック)、アナの訴えを叶えようと全力をつくす敏腕弁護士(アレック・ボールドウィン)、自らも最愛の娘を亡くしたばかりの裁判官(ジョーン・キューザック)、そして、ケイトにとって最良のことを常に考えている彼女の主治医(デヴィッド・ソートン)。

■その視線の多様さが、アナとケイトの造形に深みを与えてくれている。

と、同時に、「子供たちが自分たちで決めたこと」を理解する道筋を与えているのである。

■本来ならば、明るい青春を謳歌しているはずの年頃のケイトにとって、入退院を繰り返し、抗がん剤の副作用に苦しむ人生とはいったい何なのか。

そして、そんな姉にとって、これから明るい青春を謳歌するはずの妹を腎臓移植による苦しみの道に引きずり込むこととは、いったいどういう意味をもつのだろうか。

■同じ白血病をかかえるボーイフレンドの死に直面したケイトはそれを真剣に考え、兄と妹もその考えを尊重することを決め、行動に移す。

彼らにとって、それがどれだけ苦しい選択であったことか。

アナが移植を拒否した理由が明らかになるに従って、ケイトの、そしてアナの気持ちに落涙を禁じえないのである。

■「私の中のあなた」という邦題は、ケイトの中で生きるアナの臓器を想起させつつ、実はアナの心の中で生き続けるケイトの記憶のことを意味する。

もちろん、ケイトが生き続けられれば、それにまさることはない。

けれども、自然のままに生きられない、となったとき、果たして「生き続けること」が本当に最良の道なのか。

尊厳死、などという難しい言葉の前に、

生きる、とは一体どういうことなのか。

物語の中とはいえ、子供たちにそれを教えられる、それが感動をさらに深くするのだ。

   

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                           <2009.10.25 記>

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■【原作】わたしのなかのあなた
ジョディ ピコー 著 ・ 川副 智子 訳 早川書房
 

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■STAFF■
監督:ニック・カサベテス
原作:ジョディ・ピコー
脚本:ジェレミー・レベン、ニック・カサベテス
撮影:キャレブ・デシャネル
美術:ジョン・ハットマン
編集:アラン・ハイム、ジム・フリン
音楽:アーロン・ジグマン



■CAST■
キャメロン・ディアス    :母親 サラ・フィッツジェラルド
アビゲイル・ブレスリン  :次女 アナ・フィッツジェラルド
ソフィア・ヴァジリーヴァ  :長女 ケイト・フィッツジェラルド
ジェイソン・パトリック   :父  ブライアン・フィッツジェラルド
エヴァン・エリングソン  :長男 ジェシー・フィッツジェラルド
ヘザー・ウォールクィスト :ケリー叔母さん
 
アレック・ボールドウィン :アレクサンダー弁護士
トーマス・デッガー    :テイラー(ケイトのボーイフレンド)
ジョーン・キューザック   :デ・サルヴォ判事
デヴィッド・ソートン      :チャンス医師

     
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2009年10月 8日 (木)

■【映画評】『カムイ外伝』、活劇であるならば何よりも大切なのはラストのカタルシスに至る下準備なのだ。

♪忍びが通る~けものみち~。

風~がカムイの影を斬ぃる~。(ワクワク)

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No.34  『カムイ外伝
           公開:2009年9月
           監督・脚本: 崔洋一  脚本: 宮藤官九郎 原作:白土三平
       出演: 松山ケンイチ 小雪 伊藤英明 他

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■ストーリー■
抜忍であるカムイは追われる身として厳しい追忍の刃を切り抜け、生き抜いていく。そんな逃亡の旅のなかで、カムイは奇縁によって漁師の半兵衛一家のもとに身を寄せることになるが、その半兵衛の妻もまた身を潜めて生きてきた抜忍なのであった・・・。
  

■監督:崔洋一、脚本:宮藤官九郎、主演:松山ケンイチなんてメンバーであの名作を実写化しようってんだから期待がぐんぐんと高まるのも当然。

一部の映画サイトでの評判の悪さはその反動なのだろう。

確かに、ワイヤーアクションがチープすぎるとか、山崎努の説明過多なナレーションに違和感を感じるだとか、いろいろと難点はある。

が、そのあたりに片目をつぶれば、なかなかの傑作。

■’飯綱落とし’、’変移抜刀霞切り’といったカムイの必殺技をうまく見せていたし、松ケンの忍者走りも決まっていたし、小林薫や伊藤英明を中心とした俳優陣の熱演と山崎努のシブい声によってでドラマの中にも没入出来た。

要するにエンターテイメントとして楽しめた。

決して1800円の価値のない駄作などではない。

それだけに、ラストの描き方がどうにももったいなく、解せないのである。

■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■
   

■■■              ■■■

■渡り衆の頭である不動(伊藤英明)が島の民たちだけでなく、仲間であるはずの渡り衆まで皆殺しにした、そこの背景を、

「うぬがイヌだったのか!」

というカムイのセリフで全部を了解せよ、というのは原作を知らない観客に対して酷である。

果たして本当に伝わったのか、というそこである。

■もともと、「スガルの島」編は、半兵衛一家を中心とした島の人たちだけでなく、殿様とか、抜け忍集団の渡り衆だとか、追忍たちとかの関係が絡み合う複雑な話である。

それを2時間ほどの映画にまとめる苦労もわかる。

けれども、この話の何が大事だったかというと、関係のない者達をも巻き込んで無益な死に追いやっていく忍者社会の非道さ、その象徴である不動の裏切り。

そこを描くのがあまりにも早足過ぎるのではないか、ということだ。

抜け忍スガルと事情を知りすぎた半兵衛を始末するために島民を皆殺しにする理由もよくわからないし、抜け忍組織を作っておいてまとめて始末しようという不動のたくらみも分かりにくい。

そこがよく分からないまま、不動との対決に入っていくフラストレーション。

■なにもすべてが原作に忠実である必要はない。

けれども、不動が新たな抜け忍を助けに行くという名目でカムイを誘い出し、罠に嵌め、その間に半兵衛一家の水がめに毒を盛り、渡り衆を「組織を裏切った愚か者」呼ばわりしつつ船ごと全滅させる。

その一連の裏切りの流れが、不動に対するカムイの怒りの原動力になるわけで、そこを丁寧に描かなければラストシーンのカタルシスにつながらないのである。

物語りにとって、ラストに向けた流れの加速の丁寧さがいかに大切かを改めて認識した次第である。

  

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                           <2009.10.08 記>

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■カムイ外伝-スガルの島- (ビッグコミックススペシャル)
■【原作】白土三平 小学館 (2009/8/28)
■カムイ外伝全集、全11巻のうち、スガルの島編を抜き出した本だと思われる。話は独立しているからコレだけを読んでもまったく問題ないだろう。
  

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■決定版カムイ伝全集 カムイ伝 外伝 11巻セット
■2007年に刊行されたカムイ伝全集の外伝編。
映画公開と平行して新作が連載されているがそれは含まない。
  

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■カムイ伝全集―決定版 (第1部1) (ビッグコミックススペシャル)
■士農工商、エタ、非人。

江戸時代のその社会構造の歪みと悲劇、そして本当に生きる、ということを描こうとした壮大な叙事詩。

むごい話の連続なだけに、ラストの「生」に対する力強さに心を揺り動かせられた。

手塚治虫の『火の鳥』と並ぶ日本漫画史上に輝く傑作だとおもう。

(第一部、全15巻)
   

■STAFF■
監督 崔洋一
原作 白土三平
脚本 宮藤官九郎 、崔洋一



■CAST■
松山ケンイチ  : カムイ
小雪       : スガル(お鹿)
伊藤英明    : 不動
佐藤浩市    : 水谷軍兵衛
小林薫     : 半兵衛
大後寿々花   : サヤカ
金井勇太     : 吉人
芦名星      : ミクモ
土屋アンナ    : アユ
イーキン・チェン : 大頭
イ・ハソン  : カムイの少年時代
PANTA  : 絵師
隆大介  : 柏原
坂口征夫  : 渡り衆
* * * * * * * *
語り  : 山崎努

    
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2009年10月 3日 (土)

■【映画評】『惑星ソラリス』、アンドレイ・タルコフスキー監督。胸を締め付ける望郷の想い。

SFというよりは芸術映画といったほうがいいだろう。

文句無く、これは名作である。

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No.33  『惑星ソラリス
           原題: SOLARIS
           監督: アンドレイ・タルコフスキー 公開:1972年 3月(ソ連)
       出演: ドナタス・バニオニス ナタリア・ボンダルチュク  他

     Photo ■【DVD】惑星ソラリス

■ストーリー■
海の惑星、ソラリス。どうやらその海は知性を持っているらしい。軌道上の宇宙ステーションから帰還した研究者はソラリスでの驚くべき体験を語り、その真偽を確かめるべく心理学者のクリスがソラリスへと向かう。

   
■寡黙である。

とても寡黙な作品である。

下手をすると観る者が置いてけぼりにされてしまいかねないくらい、寡黙である。

静かな情景と抑えられた表情、少ないセリフで構成されたこの作品は、消化の良すぎるハリウッド映画に慣れた眼にはあまりに退屈に映るかもしれない。

けれども、『2001年宇宙の旅』と並ぶSF映画の最高峰とまで呼ばれるにはそれだけの理由がある。

『2001年』が人類の更なる進化について語る外向きの映画とするならば、ソラリスはひたすら深く心理の奥に入り込んでいく内向きの作品である。

だから理屈は通用しない。

それを知るには、ただ体験するのみである。

   
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■タルコフスキーの作品はほとんど見たつもりになっているのだけれど、どの作品もちょっとした映像の印象を残して記憶からスッポリと抜け落ちている。

そうか、筋書きそのものがあまり意味を持っていないのかもしれないな。

今回、改めてソラリスをみて、そう思う。

■たぶん《理解しよう》という考え自体が誤っているのだ。

タルコフスキーが表現したかったことは、頭で考えることではなく、感じることなのだ。

それゆえにスタニスワフ・レムの原作の設定である「知性のある海との邂逅」というテーマがそこに共鳴し、おおきく浮き上がってくるのだろう。

その体験は説明するものではなく、クリスの眼を通して体感するものなのだ。

■水辺があって、水草がそこに揺らいでいる。

その水辺をひとり歩くクリス。

胸にはぽっかりと穴が開いている。

10年前に自殺してしまった妻、ハリーに対する自責の念が彼をまだ苦しめている。

■そのクリスの目の前にリアルな存在としてのハリーを蘇らせたソラリスの思いは分からない。

けれども、それはクリスを、そしてハリーをも苦しめるものであった。

クリスが求めていたものは母、故郷、そして父。

それが本当の故郷であるか、ソラリスの作り出した偽りのものであるかはもう問題ではない。

そこには心の苦しみを癒してくれる何かがあるのだから。

そして、その悲しみ、苦しみは誰もがかかえているものであって、だからこそ、タルコフスキーの望郷の思いが我々にも沁みてくるのである。
  

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                           <2009.10.03 記>

■【DVD】惑星ソラリス

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■【原作】 ソラリスの陽のもとに
■スタニスワフ・レム ハヤカワ文庫SF(1977/04)
■原作の内容もすっかり忘れてしまったなあ。
実家に戻ったときにでも本棚を漁ってみるか。
  

    
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2009年9月 9日 (水)

■【映画評】『20世紀少年 ―最終章― ぼくらの旗』。大切なのは日常のなかのちょっとした勇気なのだ。

いやー、ハラハラしました。いろんな意味で・・・。

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No.32  『20世紀少年 ―最終章― ぼくらの旗』
          監督:堤幸彦  脚本:浦沢直樹  公開:2009年8月
      出演:唐沢寿明 豊川悦司 平愛梨 他
  
   

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■ストーリー■
“ともだち歴3年”の2019年、世界は世界大統領として君臨する“ともだち”に支配され、殺人ウイルスがまん延する東京は壁で分断。都民の行動は完全に制限されていた。そんな中、カンナ(平愛梨)は反政府組織として武装蜂起する一方、“血の大みそか”以降、行方がわからなくなっていたケンヂ(唐沢寿明)が突然現われる。(シネマトゥデイ)

■20世紀少年3部作の最終章。

公開直前にテレビでやった第1章、第2章が面白かったので、その熱が醒めないうちにと映画館に向かった次第。

けどね、ちょっと毛色が違うのでありました。

■1章、2章は、ケンヂたちが小学生のころの昭和60年代の回想を織り込みつつ現在世界で物語が進行していくという形をとる。

そのため、とてもリアルな感覚にあふれた映画となっていた。

2000年末の’血のおおみそか’で暴れまわった張りぼての巨大ロボットを筆頭に、’ともだち’のテロ行為は胡散臭さ故のリアリティがあって、オウム真理教の地下鉄サリン事件、9.11の同時多発テロから地続きの感覚を維持していた。

■ところがこの最終章では舞台が近未来になっていて急速にそのリアリティを失った印象が否めない。

特に空飛ぶ円盤と巨大ロボット。

そこには’現実’のかけらも存在しない。

確かに、1960年代から見た21世紀は、エアカーなんかが空を走りまわっていたりして、われわれの知る’つまらない’現在とはまったく異なった世界であり、作者はそこを描こうとしたのかもしれない。

けれども、なーんか入り込めない、ノリきれない。
   

■とはいえ、ドラマ自体はスリリングで役者も良くってそこはいい。

香川照之にしても、石橋蓮司にしても、黒木瞳にしても、脇を固める俳優陣がドラマに深みを与え、崩壊しかけたリアリティを取り戻すことに成功している。

■そしてラストの大団円へと物語はなだれ込んでいくワケなんだけれども、ここでまた引っかってしまうのだ。

満場の大観衆に囲まれて熱唱するケンヂ。

人類は救われた、ハッピー、ハッピー!!

けどそこでエンドロールが流れ始めたときは、ほんと、もうどうしようかと途惑ってしまった。

おいおい、これで終わりかよっ、何か忘れてやしませんか、ていう感じ・・・。

(以下につづく)

   
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

  

■■■              ■■■

■いやー、やられました。

エンドロールの後の展開、良かったなあ。

感動しました。

ケンヂがいう。

’ともだち’を生んだのは俺たちじゃない、俺なんだ!!

そこでケンヂは、ともだちランドのバーチャルアトラクションを使って過去に戻り、自分自身の過去、今回の悪夢を生む元凶となった出来事に決着をつけに行くのであります。

■小学生のときのエピソードもいいけれど、’ともだち’とケンヂが本当の友達になる、そこのシーンにグッときてしまった。

ここまでの悪夢の根本にケリをつける、これぞ完結編!!

本当の友達ができた’ともだち’は癒され、架空の悪夢は消え去った、というわけだ。

そこまでの話が壮大であっただけに、このちょっとした、当たり前の物語が効いてくる。

大切なのはちょっとした思いやり、素直さとそれを実行に移す勇気であって、それを再確認させてくれたこのラストシーンにこちらもすっかり癒されてしまったのであります。

  

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                           <2009.09.09 記>

Photo_2
■ 20世紀少年(ビッグコミックス)全22巻+21世紀少年 上・下
作・浦沢直樹
■実は読んでいないんです。
大人買いするか、マンガ喫茶通いをするか、考え中・・・。

20th_century_boy
■【CD】 20th Century Boy: Ultimate Coll (Dig) T.REX

   

01

■STAFF■
監督・脚本: 堤幸彦
プロデューサー: 飯沼伸之 / 甘木モリオ / 市山竜次
エグゼクティブプロデューサー: 奥田誠治
原作・脚本: 浦沢直樹
脚本: 長崎尚志
撮影: 唐沢悟
編集: 伊藤伸行
美術: 相馬直樹
音楽: 白井良明



■CAST■
ケンヂ(遠藤健児)    :唐沢寿明
オッチョ(落合長治)   :豊川悦司
ユキジ(瀬戸口雪路)   :常盤貴子
遠藤カンナ          :平愛梨
ヨシツネ(皆本剛)     :香川照之
マルオ(丸尾道浩)     :石塚英彦(ホンジャマカ)
ケロヨン(福田啓太郎)   :宮迫博之(雨上がり決死隊)
フクベエ(服部哲也)     :佐々木蔵之介
コンチ(今野裕一)     :山寺宏一
    
神様             :中村嘉葎雄
蝶野将平          :藤木直人
春波夫           :古田新太
ヤン坊・マー坊       :佐野史郎
漫画家・角田        :森山未來
小泉響子           :木南晴夏
仁谷神父          :六平直政
キリコ(遠藤貴理子)    :黒木瞳
敷島教授          :北村総一郎
  
万丈目嵐舟        :石橋蓮司
13番(田村マサオ)     :ARATA
高須             :小池栄子
ヤマさん          :光石研
地球防衛軍        :高嶋政伸、田村淳(ロンドンブーツ1号2号)
  
市原節子          :竹内都子
ジジババ          :研ナオコ
漫画家・金子       :手塚とおる
漫画家・氏木       :田鍋謙一郎
ビリー            :高橋幸宏(YMO)
大垣師範代        :武蔵
  
神木隆之介


・・・神木隆之介、相変わらずいい演技だったけど、大きくなったねぇ。

    
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2009年8月25日 (火)

■【映画評】『エンゼル・ハート』。「驚愕のラスト」の元祖なのだ。

好きなサスペンス映画って言われるとコレだなあ。

という一本です。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.31  『エンゼル・ハート
           原題: Angel Heart
          監督: アラン・パーカー 公開:1987年5月 米国
      出演:  ミッキー・ローク ロバート・デ・ニーロ 他

     Dvd

■ストーリー■
1955年のブルックリン、私立探偵ハリー(ミッキー・ローク)は、ある日謎の紳士サイファー(ロバート・デ・ニーロ)から、失踪した歌手ジョニーを探してくれとの依頼を受ける。しかし、その調査の過程で次々と殺人事件が起きていき…。 (Amazonの解説より抜粋)

■まず、役者がいい。

ミッキー・ロークの私立探偵の雰囲気。

失踪した謎の男を追ううちにどんどんと深みにはまっていくハードボイルドな展開に、ミッキーロークのチョイ悪具合がピタリときている。

一方、謎の依頼者のロバート・デ・ニーロもいつにも増してはまっている。

ラストの方の薄ら笑いを浮かべた表情なんて、もう最高。

■もちろんストーリーも見事。

ニューヨークのハーレムでの前半部分のハードボイルドから後半のルイジアナでのオカルトチックな世界への転調がいい。

あれあれ、という間にドンドンひきずり込まれていく感じ。

途中に差し挟まれる暗示的なシーンのカットと編集のテンポがいいんだろうな。

決して後味のいい作品ではないのだけれど、ええっ?!ってのが好きな人にはお薦め出来る作品です。
 

■【DVD】 エンゼル・ハート

   

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                           <2009.08.25 記>

■STAFF■
監督・脚本: アラン・パーカー(『ミッドナイト・エクスプレス』、『ミシシッピー・バーニング』)
製作: マリオ・カサール
原作: ウィリアム・ヒョーツバーグ 『堕ちる天使』
音楽: トレヴァー・ジョーンズ
撮影: マイケル・セレシン
編集: ジェリー・ハンブリング


■CAST■
ハリー・エンゼル : ミッキー・ローク (あ、『レスラー』見なきゃね。)
ルイ・サイファー : ロバート・デニーロ
エピファニー   : リサ・ボネット
マーガレット・クルーズマーク  : シャーロット・ランプリング

    
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2009年8月 7日 (金)

■【ドキュメンタリー】『妖怪 水木しげるのゲゲゲ幸福論』、食って、笑って、クソして寝るのが幸せの根本なのだ。

水木しげるサンは人生の天才なのである。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.30  『妖怪 水木しげるのゲゲゲ幸福論
           ― そりゃアンタ、
        何か根本的に覆さんと
          人類は幸せになりませんヨ ―
         
      主演:水木しげる 朗読:和久井映見 放映:2006年3月
       出演: 荒俣宏、呉智英、南伸坊、京極夏彦 他

     Dvd
           ■ 妖怪水木しげるのゲゲゲ幸福論
           ■ 2006年/日本/テレビマンユニオン・BS JAPAN/120分

■本作は2006年にBS JAPANで放映された水木サンの異色のドキュメンタリーであって、テレビ界の日本アカデミー賞ともいえる、ギャラクシー賞を受賞した作品である。

内容としては、水木サンの日常とニューギニア訪問、水木サンを良く知るひとたちによる座談会で構成されているのだけれど、本編1時間半、まったく飽きることのないうまい作り方をしている。

■タイトルの通り、テーマは「幸福」。

これがなかなか一筋縄ではいかない独特の幸福論で、観る者はその幸福菌に感染してとても幸せな気分に浸れるのである。

■幸福論、なんていう場合、生きる意味だとかなんだとか小難しい話に陥りがちなのだけれども、水木サンの場合は単純至極。

生きること、そのものなのである。

■食うことを楽しみ、面白いものや面白いひとに出くわしては楽しく笑い、銭をもらってはにんまりし、素晴らしくよいカタチのクソをして、こころゆくまで寝るのを楽しむ。

その行動とか発言は極めて自己肯定的であって、他のひとがどうだとかいうことは一切関係ない。

それでいてその天真爛漫さゆえに嫌味がなくて誰からも愛され、その幸福菌を周囲にばら撒き感染させていくのである。

■ニューギニアの戦地で生死のギリギリの場面に幾度も遭遇し、爆撃で左手を失い、戦後は紙芝居や貸しマンガで生計をたてようとするも全く売れず腐りかけのバナナで飢えをしのいだ。

その迫力。

それでいて「不幸」という文字は水木サンの背中には一切感じさせることはない。

自らが生き残る、ということが最重要課題であって、それさえあれば「幸せ」なのである。

■小難しいことは考えない。

そうしたとき、食うということ、寝るということ、それそのものが即ち幸せなのであって、ああ、本当にうらやましい生き方だなあ、と思う。

それもまた水木サンの才能なのだと思うのだけれど、水木さんの生き方を感じることでほんの少しだけおすそ分けを頂けるような気もする。

そういう意味で、繰り返し眺めてみたい作品である。

特に特典映像の座談会特別版は、生き方についての眼からウロコな内容であって、体内の幸せ菌が減ってきて心が疲れてしまったときの特効薬になるだろう。

  

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                           <2009.08.07 記>

■ 妖怪水木しげるのゲゲゲ幸福論
■ 2006年/日本/テレビマンユニオン・BS JAPAN/120分

    
   

■関連記事■
■Nスペ 『鬼太郎が見た玉砕』。戦争の不条理。TVドラマの枠を逸脱した10年に一度の傑作。

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2009年6月17日 (水)

■【映画評】『ハゲタカ』 一体どうしたっていうんだ。劇場まで足を運んで見たかったのはNスペじゃないんだぜ?

説明するまでもなく、名作ドラマ「ハゲタカ」の劇場版。

今一番ホットな自動車業界を舞台にどんなドラマを展開するのかワクワクして見たのだけれど、どうにも複雑な気分になってしまったのである。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.29  『ハゲタカ
          監督: 大友啓史 公開:2009年6月
       出演: 大森南朋 玉山鉄二 他

01

■ストーリー■
世界金融危機 前夜。日本のマーケットに絶望し、表舞台から姿を消した天才ファンドマネージャー・鷲津の元に、かつての盟友・芝野が現れる。中国系巨大ファンドが買収に乗り出した、大手自動車メーカー「アカマ自動車」を危機から救ってほしい、というのだ。日本を代表する大企業「アカマ」の前に突如現れたのは、“赤いハゲタカ”こと劉一華(リュウ・イーファ)。豊富な資金を背景に、鷲津を圧倒し続ける劉ら中国ファンドの真の目的とは!?
<goo映画より>

Photo_2 Photo_5 Photo_3

■鷲津が、三島由香が、西野が、そして芝野が帰ってきた。

それだけで満足するべきなのかもしれない。

あの音楽も、青いトーンも健在で、セリフに頼らない表情と仕草による抑えた演技・演出も素晴らしい。

けれど、どうしても乗り切れなかったのである。

可愛さ余って、

などと言い訳をしながら、そこのところを考えてみたいと思う。

■’赤いハゲタカ’劉一華(リュウ・イーファ、玉山鉄二)が大手自動車メーカーに襲い掛かる前半部分は文句なしにいい。

リュウ・イーファと鷲津の手に汗握るTOB合戦が実にいい。そこで敵の正体が’赤い国家’であることが判るあたり、その絶望感が素晴らしい。

この絶望的な状況をどう切り抜けるのか、それとも!!というドキドキ感が否が応にも盛り上がる。

と、ここまではいつものハゲタカ節炸裂で安心して見ていられたのである。

■ここから先がどうにも落ち着かない。

キャラクターの描きこみと動機付けが急に希薄になってしまうのである。

何故、西野(松田龍平)は猫を撫でるのをやめて、ファンドの世界に舞い戻ったのか。

何故、派遣社員の守山は働く者の権利を主張する情熱を捨てて床に散らばった銭を拾うのか。

そして何故、リュウ・イーファは本当の心を押し殺してまでハゲタカを演じるのか。

■もちろん、いろいろな推測はつくだろう。

し、語らないことで語るということだってあるだろう。

けれど、それがうまく機能しているようには思えないのだ。

なんだか詰め込みすぎ、という気がするのである。

■後半は、鷲津が反撃に出る話なのだけれども、どうもそのあたりの集中力に欠けている。

イスラム金融、リーマンショック、サブプライムローン、市場原理主義の終焉。

そういった、ここ半年のトピックスが無理に押し込まれてドラマとして破綻しかけているのである。

いや、イイタイコトはよく分かるんだけど、それは左の脳みそでの話であって、右脳直撃!!のドラマチックさが無いのだ。

■そこのところ、ドラマのハゲタカは上手かった。

当時、問題になっていた企業買収の問題をわかりやすく解説しながらも、同時に濃密に描かれたキャラクターと映像、音楽の素晴らしさで我々の右脳を揺さぶったのである。

ところがどうだ。

今回の新しいキャラクターでシッカリ人物が描けていたのは、アカマ自動車社長の古谷(遠藤憲一)くらいなものだろう。

■たぶん、テレビと劇場映画というメディアの違いが大きいのだろう。

ある程度リラックスしてみるテレビドラマと違い、劇場映画は観る者を引き込んでナンボのものである。

最近の経済の動きにおもねることで散漫になってしまった部分もあるだろうし、スポットを当てる登場人物が多すぎたきらいもある。

欲張ってはいけない。

松田龍平は猫を撫でていればいいのであるし、派遣の青年は札束には目もくれず啖呵を切って出て行けばいいのである。

主人公はリュウ・イーファでしょ?

なんでそこに集中できないのか、ということである。

■もちろん、それは釈迦に説法。

監督も脚本家もスタッフも皆、そんなことは百も承知であって、涙をのんで選択した何らかの事情があるのだろう。

けれどもファンとしては、そこをなんとか突っ張って欲しかった。

これは短期的に消費されるテレビドラマではなく、歴史に刻まれていく劇場映画なのだ。

100年に一度の経済危機がどうしたというのだ。

そんなことは些細なこと。

本質は中国とかインドとかロシアとかの新興国が圧倒的な資金力で日本の技術力を札束で奪いに来たとき、我々はいったいどうするのか、ということでしょう?

真正面からそれを受け止めなくて何の「ハゲタカ」か、と強く主張したい!!

というのが、愛すればこその苦言なのである。
  

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                           <2009.06.16 記>

■追記■
DVDでディレクターズカットが見れないかな・・・。
  

 
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Photo Photo_2
レッドゾーン(上) レッドゾーン(下) 真山 仁 著 講談社

   
Photo_3 [ドラマ] ハゲタカ DVD-BOX
    

■STAFF■
監督: 大友啓史
脚本: 林 宏司
原作: 真山 仁 『ハゲタカⅠ』、『ハゲタカⅡ』、『レッドゾーン』(講談社)
音楽: 佐藤直紀
撮影: 清久素延
美術: 花谷秀文
照明: 川辺隆之
編集: 大庭弘之
製作: NHKエンタープライズ、東宝


■CAST■
鷲津政彦 -鷲津ファンド代表     大森南朋
劉一華 -ブルーウォールパートナーズ代表  玉山鉄二
* * * * * * * * * *
三島由香-東洋テレビ記者        栗山千明
西野治 -西野屋旅館社長        松田龍平
飯島亮介-MGS銀行頭取        中尾彬
芝野健夫 -アカマ自動車取締役  柴田恭兵
* * * * * * * * * *
守山翔 -アカマ自動車派遣工     高良健吾
古谷隆史-アカマ自動車代表取締役社長  遠藤憲一
* * * * * * * * * *
中延五郎 -鷲津ファンド社員    志賀廣太郎
村田丈志 -鷲津ファンド社員    嶋田久作

Photo_4
■アカマGTカッコよかったね。ベースはなんじゃろか。 


■映画 ハゲタカ 公式サイト■

    
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2009年6月11日 (木)

■【映画評】『スター・トレック』。挑むこころ。

スター・トレックっていっても、シリーズの続編がどんどん出ていてまったくついていけてないもんだからあんまり興味が湧かなかったんだけど、え? カークとスポックの若き日の話なの?

要はエピソード・ゼロだってんだから、これは見逃せない。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.28  『スター・トレック
           原題: Ster Trek
          監督: J・J・エイブラムス 公開:2009年5月
       出演: クリス・パイン ザカリー・クイント 他

Photo

■と、勇んで劇場に飛び込んだわけだが、結論を言えば大正解!

スター・トレックの世界を存分に満喫できてとっても幸せな気分なのである。

■ストーリー■
テレビドラマや映画でおなじみの「スター・トレック」を再構築し、ジェームズ・T・カークの若き日を描くスペース・アドベンチャー。
ジェームズ・T・カーク(クリス・パイン)が宇宙艦隊に入隊して3年。USSエンタープライズに乗ることに成功したカークだったが、船内のトラブルメーカーになってしまう。それが気に入らないスポック(ザカリー・クイント)は、カークを船から追い出そうとするが……。(シネマトゥデイ)

Photo_2

■’エピソード・ゼロ’とはいっても、スター・トレックを幼少の頃に見ていたようなオジサンだけに向けた内向きのマニアックな作品ではなく、予備知識がまったく無い人でも十二分に楽しめる作品になっている。

それは物語の軸となるスポックとカークのふたりの人物像の描きこみがシッカリ出来てるからこその芸当なのだ。

■バルカン人と地球人のハーフであることで冷静な表情の奥にアイデンティティの問題を抱えるスポック。

片や、勝ち目の無い絶望的状況のなかで自らを犠牲にして大勢の仲間の命を救った英雄を父に持ち、それを受け継いでか、型破りで常に限界を超えようとする性格に育ったジム・カーク。

スポックを静とするなら、カークは動で、それがスター・トレックの物語を面白くしているのだけれども、この作品ではエピソード・ゼロとして、その性格が形作られた背景が語られる。

うまい作りだ。

■もちろん主役のふたりだけでなく、船医のマッコイや、ウーラ、スコット(チャーリー)、スールー(カトウ)、チェコフといったおなじみのメンバーもそれぞれに見せ場が用意されていて、ファンはニッコリ。

特にロシア訛りのチェコフの一所懸命さが、とてもかわいい。

Photo_5

■物語のテーマは、絶望的状況に直面したとき、どのようにその状況と向き合うのか、というところにある。

スポックの論理でいけば、生き延びる可能性がゼロなものはゼロなのであって、あとはそれをどう受け止めるか、となるのだけれども、破天荒なカークはそこで諦めない。

一体カークは何回高いところから落ちそうになってぶら下がれば気が済むのか(笑)、という話なのだけれども、最後には必ずなんとかなるのである。

■ご都合主義というなかれ、

何しろ相手は想像を絶した未知の世界。

常識が通用する世界ではない。

そこで必要とされるのは’求めよされば開かれん’、という挑戦のこころであって、さらにその挑戦の先には新たな驚きの世界が展開する。

それがスター・トレックなのだ。

■監督はM:i:Ⅲ(監督、脚本)、クローバーフィールド(製作)のJ・J・エイブラムス。

迫力と美しさを兼ね備えた映像が見事。

それはスター・トレックとして絶対に外せないところなんだけど、それだけでなく、随所に思わずクスりとさせるユーモアが埋め込まれていて飽きさせない。

そのあたりも、しっかりした人物描写によって作り出された奥行きがあってこそなのであろう。

■さて、この航海でカーク筆頭としたスター・トレックのオリジナルメンバーがそろったわけだ。

もちろん、ここで終わらせるわけはないだろう。

しかもオリジナルから大きく’歪んだ’世界のなかで物語が進行していくことになるから、彼らの前途にはあらたな驚異が待ち構えているのである。

そんなことを考えながら迎えたエンドロール。

そこに流れるテレビシリーズのテーマ曲に否応なく胸が高鳴るのであった。

   

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                           <2009.06.11 記>

[追記]
レナード・ニモイのバルカン式さよならのハンドサイン。つい懐かしくてスクリーンに向かって小さくやってしまいました(笑)。

Photo_4
■映画の第一作。

この話のオチがとても好きなのだ。

  

Photo_3

■STAFF■
監督  : J・J・エイブラムス
製作  : J・J・エイブラムス
         : デイモン・リンデロフ
脚本  : アレックス・カーツマン
           ロベルト・オーチー
音楽  :  マイケル・ジアッチーノ
撮影  :  ダニエル・ミンデル
編集  :  メリアン・ブランドン
        メアリー・ジョー・マーキー
視覚効果 : ロジャー・ガイエット
 

■CAST■
ジェームズ・T・カーク (艦長)  : クリス・パイン
スポック         (副長)  : ザカリー・クイント
                     レナード・ニモイ
レナード・マッコイ (船医)   : カール・アーバン
ウフーラ      (通信担当): ゾーイ・サルダナ
モンゴメリー・スコット (機関士、チャーリー) : サイモン・ペッグ
ヒカル・スールー   (航海士、カトウ)    :  ジョン・チョー
パヴェル・チェコフ   (航海士)        : アントン・イェルチン
  

ネロ             : エリック・バナ
クリストファー・パイク   :  ブルース・グリーンウッド
サレク           :  ベン・クロス
アマンダ・グレイソン   :  ウィノナ・ライダー

 
■映画 スター・トレック 公式サイト■

    
■過去記事■

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