●3.名画座【キネマ電気羊】

2017年5月20日 (土)

■【映画評】『メッセージ』、「言語」の持つ力と「物語」が出会うとき。

異星人とのコミュニケーションの物語なのだけれど、ラスト、原作の『あなたの人生の物語』という名前の意味を衝撃とともに理解し、落涙する。

ああ、これぞSF!!

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.105  『メッセージ』
           原題: Arrival
          監督: ドゥニ・ヴィルヌーヴ 公開:2017年5月 
     原作:テッド・チャン 「あなたの人生の物語」
       出演: エイミー・アダムス   ジェレミー・レナー 他

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■あらすじ■
突如、世界各地12か所に巨大な浮遊物体が現れる。言語学者のルイーズは軍の要請で異星人とのコンタクトに挑戦するのだが。。。。

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■スタニスワフ・レムの『ソラリスの陽のもとに』をソ連の映像詩人、アンドレイ・タルコフスキーが映画化した『惑星ソラリス』。「理解の外にあるものとの関わり合い」という極めてSF的で、哲学的で、詩的な空気を漂わせた作品だが、この『メッセージ』という映画は、その不朽の名作と同じ匂いがする。この商業主義全盛の時代において、実に得難いことだと思う。

いわゆるSF映画に登場するエイリアンは敵対的で、恐ろしい姿で、驚異的力で人間に襲い掛かってくるわけであるが、本作においてはエイリアンの目的が分からず敵かどうかすら分からない。わかっているのは我々の理解する物理法則をはるかに超える枠組みで彼らは存在するということ。しかし、その不可解を不可解のままにせずに科学的思考で解きほぐしていく、そこにSFの本質があって、格闘や空中戦といったアクションがないにも関わらず、われわれの興味をぐいぐいと引き込んでいくそのさまが、真にSF的なのである。

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■SFとは’Science Fiction(空想科学小説)’というだけでなく、’Speculative Fiction(思弁小説)’でもあるという地平を開いたのはP・K・ディックだが、困ったことにそれが映画になった途端、思弁的なSF映画である『2001年宇宙の旅』にしても、先の『惑星ソラリス』にしても、その難点は観ているうちに眠くなってしまうことである。(ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るのか?』を原作としたリドリー・スコット監督の『ブレードランナー』は、原作の思弁的部分を大きく切り捨てたことによってエンターテイメント足りえたといえるだろう。)

ところが、この映画は(その知的展開に乗り遅れることさえなければ)眠くならない。これは画期的なことである。原作は読んでいないけれども、思弁性を「映画」というエンターテイメントのフォーマットにうまく転換していると思われる。

それを牽引するのは、主人公の言語学者ルイーズ、そのパートナーの理論物理学者イアン、調査の責任者のウェーバー大佐といったキャラクター、時折さしはさまれるルイーズの娘を襲った不幸、といったドラマ的な部分の助けも大いにあるのだが、何よりも、エイリアンとのコミュニケーションが立ち上がっていく過程という本論の部分での面白さが際立っていることにあり、それ故に作品の軸がぶれず、骨太になっていて、そこが何より素晴らしい。

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■何しろ七本脚のタコがスミを吐いて、どうやらそれが彼らの会話のツールなのだという不可思議な世界。それでもルイーズが必死にくらいつくさまに、エイリアンも共感するような感じが伝わってきて、もう’ふたり’は、普通名詞の「エイリアン」ではなく、「アボット」と「コステロ」という固有名詞の存在へと変化していく。

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この場面、「コミュニケーション」が成り立っていく感動を描く場面ではあるものの、実は、「普通名詞」の’人間’と’異星人’から、「固有名詞」の’ルイーズ’、’イアン’、’アボット’、’コステロ’への「言語学的質的変化」が彼らの関係を大きく変えた、そこに本質的な意味がある。

彼らが使う言語は、「表音文字」ではなく、「表意文字」であり、発音の順番にとらわれないが故に、「時間」という概念から自由である。

序盤に示されたその伏線が、ラストで素晴らしく展開していく。

■詳しくはネタバレ以降に語ることにするけれど、この作品は単なるエイリアンとのコミュニケーションの話ではない。

終盤のスリリングな展開と、ラストで観る者がすべてを理解した瞬間に覚える心の震えは、必見である。

知的であるだけでは「物語」足りえない。

「知性」と「物語」が構造として組みあがり、想定以上の感動を与えてくれる、そこがこの映画の最大の魅力なのだ。

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■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■さて、ルイーズの娘アンナである。

オープニングから、重要な場面でルイーズの記憶のなかにアンナが紛れ込む。

観ているものは、当然それは過去の話だという前提で理解するのだけれども、実は、、、、というラストの展開。完全にやられてしまった。

物語の中ではアンナが何度も、「動物とお話をするパパとママ」なんて言ってるのに気が付かない。

思い込みって本当に強固なものである。

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■エイリアンの言語であるヘプタポッドB(墨絵文字)をマスターしたルイーズは、その言語が「時間の流れ」という概念を取り去ってしまうがために、未来と現在と過去を同じように感じることが出来るようになってしまう。

アンナは難病にかかって死んでしまう。

それが分かっていて、これからイアンと結婚をする。

イアンは、その時間感覚を持っていないけれども、ルイーズを通して、「定まった未来」を受け入れて生きていくことになる。

それは一体なにを意味しているのだろうか。

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■「時間の流れ」に縛られている私には、ルイーズの見えるその世界も、そこに巻き込まれるイアンの見る世界も、わからない。

けれども、わからないながらも、何か深いものが胸に込み上げてきて、いつの間にか頬に涙が伝っていた。

エイリアンが3000年後の未来のために人間に授けた能力によって、これからの人類が見る世界はいままでとは別の次元のものへと変質していくのだろう。

しかし、信頼できる相手と一緒に生きていること、とか、愛する子供の笑顔をにこやかに眺めること、とか、その瞬間の’いま’は決して変わらない。

ルイーズはその’いま’を愛おしく抱きしめようと思う。

世界が変わってしまったときに、それでも変わらないものがあって、雑多なものに隠されてしまった「大切」なものがそこに立ち現れてくる。

SFとは、日常を捻じ曲げてみせ、そうすることで逆に「現実」をあぶりだしてみせる手法なのだ。

その意味で、ラストを見たときの涙こそが、この映画がSFの本質を突いていることの証拠なのかもしれない。

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                      <2017.05.19 記>

 

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■STAFF■
監督    ドゥニ・ヴィルヌーヴ 
脚本    エリック・ハイセラー 
原作    テッド・チャン 
       「あなたの人生の物語」 
製作    ダン・レヴィン 
音楽    ヨハン・ヨハンソン 
撮影    ブラッドフォード・ヤング 
編集    ジョー・ウォーカー 

■CAST■
ルイーズ・バンクス博士   - エイミー・アダムス 
イアン・ドネリー        - ジェレミー・レナー   
ウェバー大佐          - フォレスト・ウィテカー 
ハルペーン捜査官      - マイケル・スタールバーグ 
シャン将軍           - ツィ・マー 

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2017年5月 8日 (月)

■【映画評】 『ブラス!』確かに彼らは演奏が上手い。けれど、それがどうしたというのだ。

音楽映画もイギリス人が作ると、こういうことになるのね。       

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 No.104  『ブラス!』
           原題: Brassed Off
          監督: マーク・ハーマン 公開:1996年11月
       出演: ユアン・マクレガー   ピート・ポスルスウェイト 他

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■あらすじ■
1990年。ヨークシャーの炭鉱町。サッチャー首相の新自由主義的政策のもと、炭鉱は閉山の危機に瀕していた。組合と経営サイドの話し合いにより、存続か、閉山で退職金をもらうかの投票を組合員で行うことになる。

そんな騒ぎの中、この町の歴史のあるブラスバンドにある若い女グロリアが訪れる。彼女の腕前に驚いたメンバーは、全英ブラスバンド選手権の決勝に進めるのではないかと期待しはじめるのだった。

■社会派である。

炭鉱は完全な斜陽産業であり、その陰りが町全体を覆いつくしている。バンドの男たちもすっかりやる気を失っている。消えゆく仕事だということは分かっていて、でも20年も30年も命を懸けて続けてきたこの仕事をすてることが出来ない。ずるずると貧しくなっていき、それがまた、彼らの自信を消し去っていくのだ。

そこに現れた救世主のグロリア。

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彼女の存在により、自信を取り戻したバンドのメンバーはついに決勝へと進む。

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だが、グロリアの仕事は彼らに敵対する会社側のアナリストだったのだ。

男たちのこころはばらばらになり、投票によって炭鉱の閉鎖も決まってしまう。そんな中でもぶれることなく音楽に対する姿勢を貫いてきた指揮者のダニー。しかし、彼の息子も借金のせいで家財道具をすべて奪われ、家族も彼のもとを去って行ってしまう。

そんなとき、ダニーがついに倒れる。炭鉱で粉塵を吸い込み続けたことによりダニーの肺はボロボロになっていたのだった。

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■サッチャリズムがイギリス経済を立て直したのは事実だが、その陰で膨大な失業者があふれかえった。

それは、この20年の金融業を中心とした経済成長によって潤うアメリカの影で、海外移転によって職を失ったデトロイトをはじめとした工場労働者たちを思わせる。

トランプに投票した彼らは、そこからの復活を期待している。

けれど、この映画の登場人物たちのように、決して救われることはないだろう。

もう、「終わっている」のだ。

大切なのは、生きる勇気と希望だ。

それは決して新しい仕事を与えられるとか保障をうけるとか、そういうことではなく、自ら誇れる何かを持てるかどうか、なのだと思う。

■ラストで優勝コメントをするダニーは、

優勝カップを拒絶し、演奏が上手くても、生きる希望が持てないならば、何の意味があるんだ!

と、訴える。

絶望した息子が死のうとした、そんな世の中で、一体どういう誇りが持てるのか。

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■このダニーの演説は、いかにもイギリス映画らしい直截的なメッセージである。

その言葉は、ここまでの物語をたどってきた我々の胸に強く響く。

けれど、演説のあとで、いらない、とダニーが断った優勝トロフィーをメンバーが奪い去り、楽しみながら「威風堂々」をパレードで演奏する姿もまた、いや、むしろその姿こそが彼らの真実であって、清々しいラストとなっている。

まさに、そこに「誇り」があるのだ。

それは安定した暮らしができること、とはまったく別のことなのである。

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                      <2017.05.08 記>

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■STAFF■
監督   マーク・ハーマン
脚本   マーク・ハーマン
製作   スティーブ・アボット
音楽   トレヴァー・ジョーンズ
撮影   アンディ・コリンズ
編集   マイケル・エリス


■CAST■
ダニー   ピート・ポスルスウェイト 
アンディ  ユアン・マクレガー 
グロリア  タラ・フィッツジェラルド
フィル   スティーブン・トンプキンソン
ハリー    ジム・カーター

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2017年4月25日 (火)

■【映画評】『沈黙 -サイレンス-』 神はどこに居ますのか。

映画とは、ここまで強い力を放つものなのか。

スコセッシは天才である。

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No.103  『沈黙 -サイレンス-』
           原題: Silence
          監督: マーティン・スコセッシ 公開:2017年1月
       出演:  アンドリュー・ガーフィールド   窪塚洋介  他

Title

■あらすじ■
17世紀、江戸時代初期― ポルトガルで、イエズス会の宣教師であるセバスチャン・ロドリゴ神父とフランシス・ガルペ神父のもとに、日本でのキリスト教の布教を使命としていたクリストヴァン・フェレイラ神父が日本で棄教したという噂が届いた。尊敬していた師が棄教したことを信じられず、2人は日本へ渡ることを決意する。

日本に渡り、隠れキリシタンたちにかくまわれた二人だったが、代官の手により村人たちはとらえられ、ふたりの目の前でなすすべもなく残酷な手段で処刑される。

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■マーティン・スコセッシって日本人だったっけ?

ってくらいに、見事に当時の日本を再現している。

自然や風景、日本人の立ち居振る舞いや衣装、言葉遣い、といったもの全体から生まれる空気感はただ事ではない。

スタジオ中心の日本の時代劇ではとうていたどり着けないクオリティだ。

スコセッシがどれほどこだわり抜いたかが迫力をもって伝わってくるのである。

しらけずに映画を見るために、これはとても大事なことだと思う。

■さて、本編。

前半、隠れキリシタンたちが受けるあまりにも過酷な試練を通じて、信仰とは何か、というテーマが語られる。

海の向こうからたどり着いたパードレ(神父)をありがたがる隠れキリシタンたちも、集落にキリシタンがいるという嫌疑をかけられ、取り調べの代表4名を差し出せと言われれば、醜いまでに生に縋りつき、誰か他の者にそれを押し付けようとする。

これは、喜んで殉教する、というにはあまりにも過酷であるさまを彼らが見続けたためであり、そのあと、我々もそれを目の当たりにする。

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その頂点をなすのが、リーダー格のモキチが海の中で磔にされるシーンだ。

モキチは讃美歌をうたいながら3日間耐え抜き、そして息絶える。

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モキチを演じたのは、『鉄男』でコメディと狂気とバイオレンスの極地を見せつけた塚本晋也監督。

スコセッシの大ファンなのだそうで、スコセッシのための殉教者を地で行った、死の影を覗き込むような限界の撮影に身を投じた。

このシーンだけは、むしろそっちに気を取られてしまって、恐ろしさに身がすくむ、というよりむしろ、塚本監督がんばれ!という何だか妙な感じになってしまった。

正直、このまま映画に入り込めずにおいて行かれるのではという不安にかられてしまった。けれど、それはまったくの杞憂で、159分の長丁場をまったく意識することなく、ここから先はスコッセシの作りだす世界にどっぷりとはまり込んでいった。

■過酷さでいえば、ロドリゴ神父たちを案内したキチジローの過去だろう。

キチジローは踏み絵を踏んで生き延びるのだけれど、キチジローの家族はそれを拒否。彼は生きながらにして焼かれていく家族の声を聴くことになるのだ。

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神を冒涜することを拒み、地獄を覚悟したキチジローの家族は確かに殉教者である。

その家族さえ見捨て、自らの死を恐れ、神の御影を踏みにじったキチジローに信仰の影は見えない。

あまつさえキチジローはロドリゴ神父に懺悔をし、その罪を許されようとすらするのだ。

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その姿にロドリゴは戸惑いといら立ちを隠せない。

弱く、ずるがしこくうそをつき、裏切る。

しかし、そのキチジローにこそ、信仰の真の姿が隠されていて、ロドリゴはキチジローと同じ場面に立ち会ったとき、本当の神の姿を見ることになるのだ。

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■こんな理不尽な地獄に放り込まれて、それなのになぜ神は救いの手を差し伸べてくれないのか。

これほどまでに神を信じ、信仰を捧げているのに、なぜ神は沈黙し続けるのか。

ロドリゴの信仰は揺らぎ始める。

キチジローは、その迷いの象徴だ。

後半、ロドリゴはある選択をし、その最期にわれわれは、この映画の真のテーマを目の当たりにして震えることになる。

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■その一方で、幕府の論理についてもしっかりと描かれる。

代官である井上筑後守がその象徴である。

イッセー尾形が実にいい演技をしていて、迫力と真実味に厚みを与えている。

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幕府の論理は明確だ。

日本にキリスト教は不要であり、むしろ害悪である。

西洋の倫理観は日本の風土では育たない。問題はそれだけではなく、日本を侵略する尖兵としての役割をになう性質をもっている。だから排除する。

現代の日本人の歴史認識と完全に一致する。

それは、遠藤周作の原作にあるからというだけではない。スコセッシ自身がそのことを理解していないと、映像からこういう説得力は伝わってこないだろう。

底の底まで『沈黙』という原作と向き合ったのだろう。

むしろ、キリスト教徒であるスコセッシが描くからこそ、 この説得力がでるのかもしれない。

一神教の信徒でありながら、真実がひとつではなく、世界は多面的であるということを心の底から理解している。

それでもなお、その多面的な世界のなかでも、神は確かに在る。

師であるフェレイラは、ロドリゴをそこに導き、ロドリゴは神の沈黙の意味を知る。

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【原作】遠藤周作『沈黙』

 

   
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■ロドリゴは「転び」、キリスト教を棄てて、師のフェレイラとともに、それを取り締まる側にまわる。

神は沈黙しているわけではない。

常に、理不尽な地獄を味わっているロドリゴとともにあり、同じ苦しみを背負っているのだ。

そして、キチジローが嘘をつき、裏切る、その苦しみを自ら背負うのと同じく、ロドリゴがキリスト教を棄てた、その苦しみを背負う。

苦しみや罪を背負う、それがキリスト教の救いなのだという教科書的な理解は、この159分の物語を経て、実感を伴った理解へと昇華する。

行為として神を裏切ったとしても、その苦しみを神にゆだねる限りにおいて、信仰は生きている。

ラストシーンの瞬間、キリスト教というものが体に染みわたってきたような気がした。

それは一神教は自分にはまったく合わない、理解できないと思い込んでいた自分にとって衝撃的な瞬間であって、スコセッシが25年間温めてきた念願は、そこに確かに完成していたのである。

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                      <2017.04.25 記>

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■STAFF■
監督   マーティン・スコセッシ
脚本   ジェイ・コックス
      マーティン・スコセッシ
原作   遠藤周作 『沈黙』
音楽   キム・アレン・クルーゲ
      キャスリン・クルーゲ
撮影   ロドリゴ・プリエト
編集   セルマ・スクーンメイカー


■CAST■
セバスチャン・ロドリゴ神父 - アンドリュー・ガーフィールド
フランシス・ガルペ神父 - アダム・ドライヴァー
通辞 - 浅野忠信
キチジロー - 窪塚洋介
井上筑後守 - イッセー尾形
モキチ - 塚本晋也
モニカ - 小松菜奈
ジュアン - 加瀬亮
イチゾウ - 笈田ヨシ
クリストヴァン・フェレイラ神父 - リーアム・ニーソン 
ヴァリニャーノ院長 - キーラン・ハインズ 
遠藤かおる
井川哲也
PANTA
松永拓野
播田美保
片桐はいり
山田将之
Tomogi Wife - 美知枝
伊佐山ひろ子

 

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2017年4月19日 (水)

■【映画評】『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』 「事実」は必ずしも「真実」を映さない。

もちろん、泣きましたよ。でもね、ちょっと薄っぺらいんだよなあ。

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No.102  『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』
           原題: LION 
          監督: ガース・デイヴィス 公開:2017年4月
       出演: デーヴ・パテール  ルーニー・マーラ 他

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■あらすじ■
インドの貧しい町に住む5歳の少年は駅で兄にはぐれ、迷い込んだ回送列車で遠く離れた町で迷子になってしまう。孤児院に収容された少年はオーストラリアの夫婦に引き取られ、立派な大人に成長する。しかし、あるきっかけで故郷でいまだに自分を探しているはずの母と兄の記憶がよみがえり、Google Earthを使って生まれ育った町を探し始める。

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■迷い込んだカルカッタの街は、サル―のような孤児が山のようにいて、人さらいも横行、孤児院も孤児であふれかえりひどいありさま。

このあたりが、どこまで1990年頃のインドの真実のどこまでを表しているのか分からないけれど、かなりの迫力と説得力をもったパートだ。

インドの空気に触れたいというのが、この映画を見た理由のひとつだったので、その意味では満足である。

後半は、青年になったサル―が、25年前の別れを思い出し、故郷にたどり着くまでを描くのだけれど、Google Earthを使ってそこに迫る4年の月日と、それに寄り添う彼女の甲斐甲斐しさがアクセントとなり、ストーリーとしては申し分ない。

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本作は実際にあったことをもとにしたストーリーである。

その事実もあいまって、終盤、サルーがGoogle Earthで幼いころの記憶を取り戻していくシーンや、母親との再会のシーンは、否が応でも感情は盛り上がり、ほとんどの観客は頬を涙で濡らすことになる。

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■うまくできた話だし、実話だし、感動するし。

だから評判も実にいい。

けれど、私は思ったほどには心を動かされなかった。思いっきり心の準備をしていたにも関わらずである。

何故か。

要するに薄っぺらなのである。

泣いておいて何を、というところだが、涙を流すことと話の厚みによる深い感動はまったく別の話なのだ。

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■ポイントは、サルーを引き取ったオーストラリア人の夫婦との関係にある。

使命感に突き動かされて生きるこの夫婦は、インドの孤児が置かれている状況に心を痛め、実際に自分の子供をつくることができるにも関わらず、それをあきらめ、サルーと、もうひとり、自閉症気味のマントッシュを引き取った。

そして二人にあふれるような愛を注ぎ、大人になるまで育て上げたのだ。

実にいい話なのだけれど、まともな生活を送ることができないままマントッシュは今、幸せなのか、一見、立派に育ったサルーも、結局、自分の過去に引きずられてしまうのだけれど、奇跡的に故郷にたどり着いたにせよ、そこに至るまでの彼は幸せだったのか。

妻はアル中の父親との過去があり、心に深い傷をもっている。

それゆえの使命感。

でも、それはみんなを幸せにしたのだろうか。

■インドには何万人もの孤児がいて、その中から二人を救い出し、不自由のない生活と愛を与える。

やれることからやっていこう、という行動主義的観点からみれば、「正しい」ことだろう。

決して、意味がないとか、自己満足だとは言うまい。

けれども、サルーにとってみればマントッシュへの愛着と、その自閉症的なコントロール不能な部分に対する苛立ち、そして自我か確立していくなかでの育ての親に対する過剰な反発。そんな、とっても大事な部分がほぼすっ飛ばされている。

そこに直面した両親の心の葛藤は通常の親よりもかなり複雑なものであるはずで、そこを描かないで、どうする、ということだ。

■確かに、成人したマントッシュの存在は、そういった家族の過去を映し出す役割を果たしてはいるが、そういった葛藤をマントッシュに押し付けてしまい、サルーは、きわめて「よいこ」で、彼の危機は過去の自分に集約されてしまう。

この単純化が、物語をきわめて底の浅いものにしてしまうのだ。

育ての父も、母も、サルーも、いい人過ぎるのである。

要するに「お行儀がいい」。

たぶん、これが「事実」に基づいた物語であり、関係者が今まさに生きている、そのことによる限界なのだろう。

「事実」を連ねても、「真実」は見えない。

この家族の「真実」を見ようと思えば、触れられたくない部分に分け入っていかなければならない。

その「真実」が、人の心を動かすのだ。

■そういう意味で、実の兄のグドゥは、「事実」しか並べられていないにも関わらず、深く、その「真実」が伝わってくる。

実の母との対面で知った、グドゥの「真実」は、観る者の心に深く突き刺さる。

たぶん、この映画で一番心を動かされたのは、このシーンだ。

「真実」は、人生のリアルを感じたときに、観る者それぞれの心の中に生まれるものなのである。

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                      <2017.04.19 記>

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■STAFF■
監督 ガース・デイヴィス 
脚本 ルーク・デイヴィーズ
原作 サルー・ブライアリー、ラリー・バットローズ
 『25年目の「ただいま」 5歳で迷子になった僕と家族の物語』
音楽 フォルカー・ベルテルマン、ダスティン・オハロラン
主題歌 「Never Give Up」(シーア)
撮影 グリーグ・フレイザー
編集 アレクサンドル・デ・フランチェスキ


■CAST■
デーヴ・パテール    - サルー・ブライアリー
サニー・パワール   - 幼少期のサルー
ニコール・キッドマン  - スー・ブライアリー
ルーニー・マーラ     - ルーシー
デビッド・ウェナム     - ジョン・ブライアリー
ディープティ・ナヴァル
ディヴィアン・ラドワ

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■【映画評】『スウィングガールズ』 リアルとつながっている成長物語が生み出す一体感は、清々しく健康的で、気持ちいい。

音楽部で管楽器をやりたいって言いだした中一の娘と見るべくスウィングガールズを借りてきたんだけど、親父の方がノリノリになってしまって・・・(笑)。

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No.101  『スウィングガールズ』
          監督: 矢口史靖
       公開:2004年9月
       出演: 上野樹里 貫地谷しほり
          本仮屋ユイカ 豊島由佳梨 平岡祐太 他

Title

■あらすじ■
東北の田舎の高校。夏季補講を受けていた女子生徒たちが高校野球の応援に行った吹奏楽部にお弁当を届けるという口実で出かけたが電車を乗り過ごしてしまい、猛暑のなかで腐敗した弁当を食べた吹奏楽部は全員食中毒になってしまった。次の試合の応援のために急遽吹奏楽団のメンバーをつのったのだが。。。

■面白い。

ジャズビッグバンド結成からラストの演奏会までのマンガのような展開には、何度も腹をかかえて笑ってしまう。

上野樹里は本作で映画デビューなのだが、もうすでに上野樹里としてすっかり出来上がっていて、演奏会のビデオのくだりなんかはもう、上野樹里でしかありえない面白さがにじみ出ている。

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彼女だけでなく、矢口史靖の脚本はすべてのメンバーを笑いのなかであたたかく輝かす。

青春映画の天才なのかもしれない。

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もとバンド兄弟のシーンは完全につぼにはまって腹がよじれるかと思った。。。

■さて、ジャズである。

公開当時に話題になったのは覚えているのだけど、ほぼ全員が素人で、各リーダーについてはまったくの未経験者だったとは知らなかった。

それなのに、5月に特訓を始め、8月にはラストシーンのセッションを取り終えたというのだからびっくりしてしまう。

それくらいにうまい!

みんなノリノリで演奏していて、見ていて楽しいし、かっこいい。

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■矢口史靖監督は、素人を集めて全員に実際に演奏してもらう、ということを初めから決めていいたのだという。本物かどうかは、見ている人にはすぐにわかる。本物でなければ観客を惹きつけることはできない、と考えたのだそうだ。

まさにそれ。

まったく違和感なく彼らの成長に寄り添うことで、観る者はいつの間にか彼らを応援する気持ちになってしまう。

この映画の周囲の大人たちや仲間たちが演奏会の会場に集まって彼女たちのセッションを楽しむ姿は、われわれ観客と地続きであり、そして、あのスウィングに身も心も踊ってしまうのである。

『幕が上がる』で「ももクロ」の成長が描かれたように、あるいは『ラブライブ!』のように、この構造は今やヒット作品のひとつの型となっているが、その先鞭をつけたのは『ウォーターボーイズ』と本作を手掛けたこの矢口史靖監督なのである。

このリアルとつながっている成長物語が生み出す一体感は、清々しく健康的で、実に気持ちいい。

その一体感こそ、音楽の「楽しさ」であり、それ故に、そういったあらゆる面での相乗効果によってこの映画は観るものを「スウィング」させる。それは同じジャズを扱った映画『セッション』の「凄み」とは対局に位置するものだといえるだろう。(もちろん『セッション』も大好きだけれど。)

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■演奏会。

メガネ女子の関口によって焦りと緊張から我を取り戻したメンバーの演奏は観客の心をつかむ。

音楽って、楽しい。

どの音楽も楽しいのだけれど、ジャズって、本当に楽しい。

ついつい体をゆすってしまい、どぅんどぅどぅん、ぱっ、ぱ――!なんて口ずさんで、一緒にのってしまいたくなる。笑顔にさせる。

理屈じゃあない。 

そして最後の曲のシング・シング・シング。

もうこれがすこぶる、かっこいい!

こういう映画はただひたすらラストシーンのセッションを楽しむに限るのである。映画の本編はそのためだけにあったと言っていい。

娘よ!お父さんはあなたが寝た後、何度も何度も巻き戻して見てしまったよ!

いやー、ホント楽しい!!

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                      <2017.04.19 記>

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【DVD】 スウィングガールズ
013

■STAFF■

監督、脚本: 矢口史靖
製作:亀山千広、島谷能成、森隆一
企画:関一由、藤原正道、千野毅彦
プロデューサー:関口大輔、堀川慎太郎
脚本協力:矢口純子(矢口監督の妻)
音楽:ミッキー吉野、岸本ひろし
バンドディレクション:山口れお
撮影:柴主高秀
照明:長田達也
録音:郡弘道
美術:磯田典宏
編集:宮島竜治


■CAST■

スウィングガールズ&ア・ボーイ
鈴木友子(テナーサックス):上野樹里 
斉藤良江(トランペット):貫地谷しほり 
関口香織(トロンボーン):本仮屋ユイカ 
田中直美(ドラムス):豊島由佳梨 
中村拓雄(ピアノ):平岡祐太 
渡辺弘美(ギター):関根香菜 
山本由香(ベース):水田芙美子 
久保千佳(アルトサックス):あすか 
岡村恵子(アルトサックス):中村知世 
大津明美(テナーサックス):根本直枝 
清水弓子(バリトンサックス):松田まどか 
石川理絵(トランペット):金崎睦美 
下田玲子(トランペット):あべなぎさ 
宮崎美郷(トランペット):長嶋美紗 
吉田加世(トロンボーン):前原絵理 
木下美保(トロンボーン):中沢なつき 
小林陽子(トロンボーン):辰巳奈都子 
  
友子の父・鈴木泰三:小日向文世 
友子の母・鈴木早苗:渡辺えり子 
友子の妹・鈴木亜紀:金子莉奈  
友子の祖母・鈴木みえ:桜むつ子 
  
数学教師・小澤忠彦:竹中直人   
音楽教師・伊丹弥生:白石美帆  
吹奏楽部の男子生徒・部長:高橋一生  
野球部の男子生徒・井上:福士誠治  
音楽教室の先生(トロンボーン)・森下:谷啓  
  
楽器店の店員:江口のりこ  
スーパー店長・高橋:木野花  
スーパーフロアチーフ・岡村:大倉孝二  
兄弟デュオの兄・高志:眞島秀和    
   山形県米沢市出身。方言指導も担当。  
兄弟デュオの弟・雄介:三上真史  
パチンコ屋店長:田中要次  
バス運転手:佐藤二朗  

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2017年4月16日 (日)

■【映画評】『ムーンライト』 月の光に照らされて黒人は美しいブルーに染まる。

美しい詩のような映画である。

物語そのものではなく、登場人物の表情とまなざしが、こころの髄に染みわたる。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.100  『ムーンライト』
           原題: Moonlight
          監督: バリー・ジェンキンス 公開:2017年3月
       出演: トレヴァンテ・ローズ  マハーシャラ・アリ 他

Title

■あらすじ■
マイアミのスラム街に育った少年の人生を、幼少期(リトル)、高校生時代(シャロン)、青年期(ブラック)、の3部構成で描く。

華奢で内またのシャロンは友達からオカマだとひどいイジメを受けていた。その姿をみたヤクの売人の元締めのフアンは彼を助ける。シャロンの母親はシングルマザーで薬物中毒であり、まともにシャロンを育てることができず、フアンは愛人のテレサとともにシャロンの面倒を見るようになる。はじめは心を閉ざしていたシャロンだが、フアンとテレサの愛情に心を開くようになっていく。

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■静かで、朴訥な映画である。

しかし、その敢えて被写体深度を浅くして焦点がぼやけた画面とカメラワークの見事さ、そして何よりマイアミの風景とそこに写り込む黒人の美しさ!それだけで十分にすばらしい映画である。その美しさが、あまり詳しく語られない黒人たちの内面を表出させ、観る者のこころに何かを深く刻み込むのだ。

はっきり言ってしまえば、結論めいたものが提示されるストーリーではない。

けれど、実際のところ、それが人生なのである。

そういう自己主張が希薄であるからこそ伝わってくる深さが、本命の「ラ・ラ・ランド」を押しのけてアカデミー賞の作品賞に選ばれた理由であろう。

■人生の輝きという意味で、ヤクの売人のフアン(マハーシャラ・アリ)が最高にかっこいい。

決して誇れた仕事をしているわけではないが、キューバからアメリカに亡命してきて、それでもつらい過去として忘れるべき故郷の母親や近所のばあさんへの想いはおき火のようにこころの深いところで燃え続けている。

近所のばあさんが、夜中に海で走り回る少年時代のフアンをつかまえて、満月の光に照らされると黒人は青い美しい色に染まるんだよ、という。

それは黒人であることへの誇り。社会的に貧しい地位に押し込められていても、黒人は本来的に美しい、という自己承認なのだ。

現実のシャロンはヤク中のどうしようもない母親と、ゲイであるかもしれないという自分への不安を抱えて、浮き上がる筋道も見えない。

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けれど、それでも黒人として自信をもって生きて行っていい。

人生は他人に決めさせてはいけない、自分で選び取り、作り出すものだとフアンは教え込む。

それが後のシャロンの背骨となり、生きていく力を与えることになるのだ。

■高校生になった第二部で、そのフアンはすでに過去の人となっている。何が起きたかについては最後まで語られない。

高校生になってもシャロンはさえないヤツで、ドレッドヘアのジャマイカかぶれの同級生にいつもいじめられている。

そんな中で幼馴染のケヴィンだけは、彼に普通に接してくれる。

友達思いのケヴィン。

しかし、それは「男同士」の微妙さを含むもので、海辺で二人きりになったときにその思いが行動として示される。

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■これを単なるゲイと言っていいのか。

ケヴィンは女も大好きなので、いわゆるバイセクシャルというべきところなんだけれども、この微妙さは、そういうカテゴライズする考え方とはまったくそりが合わない。

まさに「男同士」。

中高と男子校で育ったために、その微妙なニュアンスが分かってしまう気がして、逆にこわい。

通常は、その気持ちを押しとどめてしまうものなのだけれど、 しっかりと描いてしまう。

でも、これがないとそれに続くケヴィンの裏切りのシーンの深みも表層的なものとなってしまうから、ここで普通の男は避けて通るこの「思い」を正面からとらえたのは正解なのだと思う。

■ゲイとか、バイとか、人間は名前をつけてそれらを自分と違う別のものとして排除し、そこにも権利があるとか口では聖人ぶったことを言うのだけれど、要するに差別を区別に切り替えただけで本質的な違いはない。

実はノーマルだと思っている我々にもそういう心の動きがあって、男同士の友情があるときに、実はそれと切り離せない関係にある。

それを認める根源的な恐ろしさからの逃避なのだ。

その恐ろしさゆえに、それを真正面から認めないままに、男同士の友情には独特の深さがあるのだと思う。

だからここではっきり言ってしまおう。

この映画のテーマは決して「ゲイ」を描くことではない。もっと、もっと普遍的なものだ。

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■さて、ケヴィンの裏切りのあと、シャロンはある事件を起こして少年院に送られる。

その後の青年期のを描いた驚きの第3部についてはネタバレ以降で。

 

   
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

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■げーっ!

シャロンがマイク・タイソンになってる!!

たくましい肉体。金歯。バリバリにやばい黒人である。

耳たぶに輝くダイヤのピアスはシャロンは、憧れのフアンになりたいという強い思い証しである。

弱々しかったいじめられっ子が肉体改造によって自信をつけるのは、マイク・タイソンやアーノルド・シュワルツェネガーに見ることが出来る変身の王道だが、それでフアンやテレサのような強い、包み込むような愛を獲得できたかといえば、まだ道半ばなのである。

少年院の仲間に誘われてフアンと同じヤクの売人の道に入り、そこでのし上がった。

けれど心は空虚なままだ。

■そこに、テレサから電話番号を聞いたというケヴィンから突然の連絡が入る。

アトランタからマイアミに帰るシャロン。

途中で母親が収容されている施設に寄るのだが、このシーンもグッとくる。

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ヤク中でボロボロになり、クスリ欲しさに子供のカネさえむしり取る、ひどい母親であったこと。その母親を避け、見放したシャロン。

親子の間のこのどうしようもない現実は、けれども親子それぞれにとって血のつながりが決して切れない、その思いもまたどうしようのなく強いが故に、あまりにも切ない。

それを痛いほどに感じさせるシーンである。

きれいな結論はない。

どうしようもないことを、どうしようもなく描くこと、そこが人生に対する誠実さとして表れているのだと思う。

■どうしようもない想い。

それは、かつて高校の狭い社会のなかで自分の身を守るためにシャロンを裏切ったケヴィンと、それを痛いほどに理解していて、それでもその裏切りに傷ついたシャロンの二人についてもいえる。

再び出会った二人は、最終的に体を預け合って抱き合うことしかできない。

ふたりの関係は、言葉がなんとかしてくれるようなものではなくなってしまっているのだ。

まとわりつく二人の視線は、同じ「男同士」であっても、『ブロークバック・マウンテン』で描かれたような肉体で求めあい、確かめるものではない。

さらに深く、根源的な、生き別れの、そしてもう決してもとには戻ることの出来ない自分の片割れにすがりつくような、そういう切ない悲しみが、その男同士が抱き合う姿には流れているのだ。

 

■この映画には、種明かしもなければ、カタルシスに導くようなエンディングも用意されていない。

人生には、そのようなものは用意されていない。

シャロンも、ケヴィンも決して満たされているわけでも、幸せな人生に包まれているわけでもない。

けれど、他人に決められたものではない、自分で選んだ道をそれぞれに歩んでいる。

この事実ひとつが、この映画の導入でフアンが語った「美しさ」そのものなのだと思う。

世界中の万人に共通することかどうかなんて知ったことではない。

ただスラムに生きる黒人にとって、黒人は美しい、と確信をもって、それを礎にストリートでの決まりきった人生から脱却して自分の道を自らの足で歩んでいく。

そこに月の光を浴びた、本来の黒人の美しさが現れてくるのだと、このあまりにも美しい映画は語っているのだ。

ただ一言、

Black is beautiful!

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                      <2017.04.16 記>

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■STAFF■
監督   バリー・ジェンキンス
原案   タレル・アルヴィン・マクレイニー
原作   タレル・アルヴィン・マクレイニー
      ;In Moonlight Black Boys Look Blue"
音楽   ニコラス・ブリテル  
撮影   ジェームズ・ラクストン  
編集   ナット・サンダース    
      ジョイ・マクミロン  

■CAST■
大人のシャロン / 「ブラック」 - トレヴァンテ・ローズ
ティーンエイジャーのシャロン - アシュトン・サンダース
子どものシャロン / 「リトル」 - アレックス・ヒバート
  
大人のケヴィン - アンドレ・ホランド
ティーンエイジャーのケヴィン - ジャレル・ジェローム
子どものケヴィン - ジェイデン・パイナー
  
ポーラ - ナオミ・ハリス
テレサ - ジャネール・モネイ
フアン - マハーシャラ・アリ
テレル - パトリック・デシル

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■【映画評】『天然コケッコー』、みんな忘れているかもしれないけれど世界はこんなにも音と光に満ちているんだ。

これほど幸せに包まれる映画は久しぶりだ。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●

       No.99  『天然コケッコー』
          監督: 山下敦弘  公開:2007年7月
       出演: 夏帆  岡田将生 他

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■あらすじ■
島根の田舎の小中学校全生徒6名の分校に東京から主人公の右田そよと同じ学年の中二の男子生徒が転校してくる。その小さな分校と小さな町での卒業までの日々を描く。

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■純朴な、かわいらしい女の子。

その子とキスをしたくて仕方がない男の子。

恥ずかしくてむずがゆく、居心地が悪くなるような、中学生の恋の物語、、、ではない。

穏やかな自然とゆったりとした人たちと分校の家族のような仲間のなかで、そよが日々を過ごしていく。ただ、それだけの物語りである。

カットに派手な演出はなく、BGMすらほとんどない。

けれど、退屈することはなく、すーっと引き付けられ、見入ってしまう。

不思議な映画だ。

■いや、むしろ、映像の演出や音楽がないことがこの映画の力強さなのかもしれない。

そよそよと流れる風。

あふれる光。

映画の音楽は、状況や心情を煽るように映像に重ねられ、観るものの心を動かすものだが、それらを一切封印して電源を落として目をつぶり、すーっと一息ついて耳をすます。

その時に広がる光景こそが、この映画のすべてなのだと思う。

田舎の日常を描いたほのぼのとした映画の顔をしているが、実はきわめて革新的な作品だ。

それも革新のための革新ではなく、みんな忘れているかもしれないけれど世界はこんな音と光に満ちているんだという強いメッセージを、そよのやさしいまなざしを使って控えめに、けれどしっかりとくりかえしくりかえし語り掛けてくる。

それにわたしは、すっかり、やられてしまったのである。

■序盤、分校の子供たちが山を抜けて海へと歩いて向かうシーン。

  
 耳に手を当ててみんさい、

 ほれ、山の音がごーごー聞こえるけえ。

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そこに、このメッセージのヒントが提示されている。

そしてさらに、そよが修学旅行で東京へ行って、人混みにあてられ、巨大な建造物群に圧倒されながらも、耳に手をあててみると、同じようにごーごーと音が聞こえてくる。

もしかしたら、ここでもやっていけるかの知れない。

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こういう映画を見て、ああ田舎はいいなあ、なんてつい思ってしまうのだけれども、そうではなくて、新宿の喧騒の中にいても、すーっと一息いれて、耳を澄ませてみれば、そこにも心を満たしてくれる音や光にあふれているのだ。

この世にあふれる素晴らしいものを聞いていないのは、見ていないのは自分自身だ、ということだ。

■終盤、卒業間際になって、そよは思う。

  
もうすぐ消えてなくなってしまうとおもやぁ、

些細なことが急に輝いて見えてきてしまう。

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■いままで自分を包んでいた幸せの一つ一つが輝きを放ち、いとおしさが増してくる瞬間。それは中学生から高校生になる、そこで失われてしまうものがあってそれが突きつけられる卒業、という場面にシンクロして最高のシーンを作り上げる。

卒業おめでとうのキスをして、ひとり教室に残る、そよ。

そして思い出のつまった教室の備品のひとつひとつに指を触れていき、最後に黒板に向かってひと際思いのこもったキスをする。

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■そよが去ったあと、カメラはゆっくりと教室をまわっていき、窓辺の暖かい光の差し込むカーテンの裾からはさくらの花びらがやわらかく吹き込んでくる。

なつかしさとやさしさとあたたかさに包まれる幸福感。

音楽の一切を廃した映像の強さはこれほどのものなのか。

今まで見たどんな芸術映画よりも、今まで見たどんなドラマチックな映画よりも、こころをに何かを満たしてくれるシーンだと思う。

いい映画を拾ったな、と、今、とても幸せな気分なのである。

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                      <2017.04.16 記>

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【DVD】天然コケッコー
   

【原作漫画】『天然コケッコー』 くらもちふさこ
読んでませんが高校進学以降の話もあるようです。
 

■STAFF■
監督:山下敦弘
脚本:渡辺あや
原作:『天然コケッコー』 くらもちふさこ
撮影:近藤龍人
美術:金勝浩一
照明:藤井勇
録音:小川武
編集:宮島竜治
音楽:Rei harakami
主題歌:くるり「言葉はさんかく こころは四角」
音楽プロデュース:安井輝
音響効果:中村佳央
漫画技術指導:あべまやこ
企画監修:鳥嶋和彦
企画:前田直典
プロデューサー:小川真司、根岸洋之


■CAST■
右田そよ:夏帆
大沢広海:岡田将生
お母ちゃん(右田以東子):夏川結衣
お父ちゃん(右田一将):佐藤浩市
田浦伊吹:柳英里沙
山辺篤子:藤村聖子
右田浩太朗:森下翔梧
田浦カツ代:本間るい
田浦早知子:宮澤砂耶
篤子父:斉藤暁
シゲちゃん:廣末哲万
松田先生:黒田大輔
美都子(大沢君のお母ちゃん):大内まり
田浦のじっちゃん:田代忠雄
右田家の祖母:二宮弘子
右田家の祖父:井原幹雄
篤子母:中村朱實
渡辺先生:渡辺香奈
岩崎先生:岩崎理恵

 

 

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2017年4月 8日 (土)

■【映画評】『ゴースト・イン・ザ・シェル』、押井作品では見ることの出来なかった、人間としての草薙素子の物語。

押井守のような小難しい映像体験は期待するだけ無理。そう思って観たのが良かったのか、想定外の満足感を得ることが出来た。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.98  『ゴースト・イン・ザ・シェル』
           原題: Ghost in the Shell
          監督: ルパート・サンダース   公開:2017年4月
       出演: スカーレット・ヨハンソン 他

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■あらすじ■
ミラは、テロによって両親を失い、自らも脳以外の損傷をうけてしまい、義体とよばれる機械の体に脳を移植された。記憶のない彼女は、その超高性能の義体を活かし、対テロ組織である公安9課という組織に配属され、新しい人生を歩み始める。それから1年、公安9課は人形使いと呼ばれる謎のハッカーによるサイバーテロに立ち向かうことになるのだが。

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■ゴースト(自我、魂)とは何か、それはどこに発生するのか、機械やサイバー空間に意識は発生するのか?

それが攻殻機動隊の中心となるテーマである。

押井守は『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』、『イノセンス』でその表現に成功し、全世界の表現者に影響を与えたわけだが、それは非現実を現実として受け入れさせるアニメという表現手段ならではのことである。

それを実写でやろうとすれば、時々日本のダメ映画にあるようなセリフが浮き上がった自己満足映画になるか、『2001年宇宙の旅』のような眠たい思索映画になってしまうのが関の山だ。

そこを分かっていたのかどうかは分からないが、この作品はさっぱりとそこを割り切って「物語」に徹したのが良かったのだろう。

■正直、オープニングで駄作を覚悟した。

導入で映し出される未来都市の映像は『ブレードランナー』の完全なる劣化コピーだったからだ。

だが、それに続くミラ・キリアンの義体化のシーンはCGをうまく使ったクリーンな映像で、ああ、これはいけるかもという期待は、その後裏切られることはなかった。

もちろん、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』、『イノセンス』を混ぜ合わせた今回のストーリーは、先に述べたように攻殻機動隊の核心を突くものではない。悪く言えば、薄っぺらで深みがない。

けれども裏返せば、それはシンプルということであり、エンターテイメントとしては大切な素性なのであり、見終わった後に疑問を残さない清々しさは、さすがハリウッドと思わせる。

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■ただ引っかかるところもある。

一番の問題は、なぜミラ・キリアンの義体には乳首がないのか、ということだ。

エロい視点で言っているのではない。

完璧な人体の模倣である義体の裏に強靭な機械がある。その裏腹な構造が、義体というものをまとった人間が果たして人間と呼べるのか、という重要な問題を観る者の感覚に訴える源泉となるからだ。

契約の問題なのか、年齢指定の問題なのかは知らないが、あのような分厚いスーツにはもはや繊細な肉体を感じさせるものはなく、感覚的に、スーパースーツ的なものと無意識に受け取ってしまう。

この損失はかなり大きい。

■もちろん、スカーレット・ヨハンソンの演技は良かった。

だが、それを感じるのは、「人なのか、機械なのか」、「凄腕の作戦遂行者なのか、己の実存に疑いを抱く悩める女なのか」、という裏腹な存在である「少佐」としての演技ではなく、後半、物語が動き始めてからの人間としてのヨハンソンの演技なのである。

それに拍車をかけたのが彼女の「スーツ」だったということだ。

「ゴースト」とは何か、という攻殻機動隊の本論を捨てて、自我がある前提の上での「私は誰なのか」、「作られた記憶は現実なのか」という、一段浅い部分での問いかけに留めたことによる重大な副作用がここに露呈する。

映画を観るまで知らなかったのだけれど、本作には桃井かおりが出演していて、彼女が登場する後半部分から、この映画はギューっと音を立てて締まってくる。

それはまさに、この映画が「自我とはなにか」という「哲学」の映画ではなく、「物語」の映画であることを指し示している。

その意味も含めてこの映画のMVPは桃井かおりだと思う。

それぐらい桃井かおりは素晴らしかったし、スカーレット・ヨハンソンが一番輝くのも桃井かおりとのからみのシーンなのである。

私がこの映画に価値を見出すのはまさにその一点なのだ。

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■その他の出演者でいうならば、一番の注目は、「世界の」北野武だろう。

たけしが演じる荒巻は公安9課の課長で、暴力装置である課員に対し、政治権力をうまくかわしながら渡り合う頭脳と意志を持ったキャラクターだ。

しかしながら、たけしはたけしだった、というのが結論。

英語のセリフは苦手だから、と日本語で押し通したのが効いて、特別な存在としてうまく描かれているのだけれども、一番輝くのはやはり暴力シーンなのである。やはり、たけしが含む「狂気」こそが、唯一にして最大の魅力ということだ。

良くも悪くも、荒巻ではない、北野公安課長なのであった。

まあ、外国人には受けるのだろうし、悪くはないと思う。

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■公安9課の面々も、及第点だろう。

バト―をロシア人にした感覚もいい。私物の兵器で多脚戦車をやっつけるとか、もう少し活躍してほしかったが、目の義体化の経緯というおまけもあって、まあ満足か。

トグサは、もう少し弱そうでいい気もするが、さほど鼻につかない、というかあまり物語にからんでこないことのほうが残念。

今回は字幕で観たのだけれど、荒巻以外はアニメでの声優が起用されているようで、吹き替え版も楽しめそうだ。

 

   
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

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■悪い企業をやっつけて主人公が自分を取り戻す、という極めて単純なお話なのだけれど、攻殻機動隊としてどうか、という問題を置いてしまえば素直に楽しめる。

何しろ相手はクゼである。

少佐らしくない恋バナである。

しかも、お母さんである。桃井かおりである。

いい感動をいただきました。

まあ、こういう単純な攻殻機動隊もあっていいかも、と思いつつ、帰ってから『攻殻機動隊』と、『イノセンス』を見返してみて、うーん、深さに関しては2桁くらい違うなあ、としみじみ実感。

押井守の凄さに改めて感心いたしました。

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タチコマ見たかったな~。

                      <2017.04.07 記>

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■STAFF■
監督  ルパート・サンダース
脚本  ジェイミー・モス
     ウィリアム・ウィーラー
     アーレン・クルーガー
原作  士郎正宗 『攻殻機動隊』
製作  アヴィ・アラッド
     アリ・アラッド
     スティーヴン・ポール
     マイケル・コスティガン
製作総指揮  石川光久
          藤村哲哉
          野間省伸
          ジェフリー・シルヴァー
音楽   クリント・マンセル
      ローン・バルフェ
撮影   ジェス・ホール
編集   ニール・スミス
      ビリー・リッチ

■CAST■
少佐 / ミラ・キリアン / 草薙素子 - スカーレット・ヨハンソン(田中敦子)
バトー - ピルー・アスベック(大塚明夫)
荒巻大輔 - 北野武
オウレイ博士 - ジュリエット・ビノシュ(山像かおり)
クゼ・ヒデオ - マイケル・ピット(小山力也)
トグサ - チン・ハン(山寺宏一)
ラドリヤ - ダヌーシャ・サマル(山賀晴代)
イシカワ - ラザラス・ラトゥーリー(仲野裕)
サイトー - 泉原豊
ボーマ - タワンダ・マニーモ
カッター - ピーター・フェルディナンド(てらそままさき)
ダーリン博士 - アナマリア・マリンカ(加納千秋)
素子の母親 - 桃井かおり(大西多摩恵)
素子 - 山本花織
ヒデオ - アンドリュー・モリス
赤い着物の芸者 - 福島リラ
トニー - ピート・テオ
オズモンド博士 - マイケル・ウィンコット(広田みのる)
リー - (坂詰貴之)
大統領 -(乃村健次)

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2017年4月 4日 (火)

■【映画】『パシフィック・リム』 続編、こんなイェーガーやだ!

パシフィック・リムの続編の撮影が終了したようだ。

で、今度のイェーガーがこれ。

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おいおい、勘弁してくれよ。

一昔前のロボットアニメかよ。いや、むしろそれを狙ってるんだろうけど。。。。

パシフィック・リムの魅力は何といっても無骨で重量感あふれるイェーガーのガチバトルだ。

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こんなにスタイリッシュになってしまうと、あの無骨さはどうなってしまうのか。

実際に映画になってみないと分からないけど、うーん、とっても心配になってきた。

                         <2017.04.04記>

■【映画評】『パシフィック・リム』。技術の進化と望郷の念。

 

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2017年4月 3日 (月)

■【映画評】『キングコング: 髑髏島の巨神』 怪獣映画の新基準。ハリウッドもここまで来たかと感慨しきり。

ハリウッドにしては最高の怪獣映画!ストレスなく最後まで存分に楽しめた。でも油断してエンドロールの後も見逃してはいけない。ネタバレ厳禁!まさかここで吹き出すとは思わなかったぞw

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No.97  『キングコング: 髑髏島の巨神』
           原題: Kong: Skull Island
          監督: ジョーダン・ヴォート=ロバーツ 公開:2017年3月
       出演: トム・ヒドルストン  サミュエル・L・ジャクソン  ブリー・ラーソン 他

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■あらすじ■
嵐に閉ざされた謎の島へ調査に訪れた一行は巨大なゴリラの襲撃を受け大打撃を受ける。彼らは無事にこの島から脱出することが出来るのか。

■濃密で贅沢な展開も素晴らしいのだけれど、この映画の一番良いところは人物造形の豊かさだ。

特にパッカード大佐。

部下思いのいい人なのだけれど、ガッツがあり過ぎ!何しろコングに対して一歩も引こうとしないのだから恐れ入る。

その目力は半端なく、地獄の黙示録のマーロン・ブランド顔負けで、大佐を演じたサミュエル・L・ジャクソンは本当においしい役者である。

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物語りとしては太平洋戦争時に髑髏島に不時着し、日本人とともに生き延びたマーロウだろう。この人の存在によってストーリーにリアリティと厚みが出たのだと思う。彼が生きてきた30年を想い、ラストはつい涙ぐんでしまった。

MIYABIが演じた日本人グンペイ・イカリとの交流についてはあまり描かれなかったのが残念だが、その魂がこもった刀はこの映画全体に漂う日本愛の象徴なのだろう。

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主人公のふたりについては深く語られない。

そのメリハリもまたいい。コンラッドはSASで何をやっていたのか、ウィーバーはベトナムの戦場で何を見たのか。気になるところではあるが、それは続編でのお楽しみ。

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■さて巨大生物である。

これもまた迫力で、怪獣マニアも大満足の出来。

コング強し!そして、あまりにも巨大!

従来のコングが保っていた生物学的な常識を完全に振り切った巨大さで、まさに別格。

神としての威厳は、確かにある。

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そのほかの巨大生物もオリジナリティがあっていい。

特にクモとアメリカ兵との戦闘シーン。

あの構図があるからあの緊迫感が作り出せる。いいアイデアだ。

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さて、コングのライバル、スカル・クローラー。

千と千尋の神隠しのカオナシとエヴァンゲリオンの使徒、サキエルからイメージされたこの怪獣も、足がないところが動き的に面白い。

けど、どうしてもトカゲ的になってしまうのがハリウッドの限界か。

もう少しヌルヌルの両生類的な怪獣にしても良かったと思うのだが、それは欲張り過ぎなのかもしれない。

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■このキングコングは深い意図を探るような映画ではないが、エンターテイメントとしては一級品だ。

監督のジョーダン・ヴォート=ロバーツは日本のアニメ、マンガ、ゲーム文化大好き人間のようで、そのこだわりのおかげで、やっとハリウッドでも日本の怪獣映画品質が出来るようになったのかと感慨深い。

しかも怪獣映画でありながら、ちゃんとした戦争映画になっているところが素晴らしく、シン・ゴジラと並ぶ、怪獣映画の新基準といえるだろう。

Title
ポスターのイラストは怪獣画の巨匠、開田裕治!!

 

   
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■さて、ネタバレである。

感動のラストからのエンドロール。

そのあとに驚愕の事実が提示される。

キングはコングだけではない。

映し出された古代の壁画には、ゴジラ、ラドン、モスラ、そしてキングギドラが!

なんかギャオスが混じっていたような気がするくらい動転してしまった。

地球が空洞で、そこには人間以前の地球の支配者が復活の機会を虎視眈々と狙っている。

スカル・クローラーはその尖兵で、本命はキングギドラというところか。

うーん、X星人かなあ。

なんだか急に昭和テイストになってしまいそうで少し怖い(笑)。

                      <2017.04.03 記>

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AKIRAへのオマージュがあるって言ってたけどよくわからんかった。。。。あ、もしかして、大佐!?

 

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■STAFF■
監督 ジョーダン・ヴォート=ロバーツ
脚本 ダン・ギルロイ
    マックス・ボレンスタイン
    デレク・コノリー
原案  ジョン・ゲイティンズ
     ダン・ギルロイ
製作総指揮 エリック・マクレオド
      エドワード・チェン
音楽   ヘンリー・ジャックマン
撮影   ラリー・フォン
編集   リチャード・ピアソン

■CAST■
ジェームズ・コンラッド(元SAS) - トム・ヒドルストン
プレストン・パッカード(大佐) - サミュエル・L・ジャクソン
ウィリアム・"ビル"・ランダ(特務研究機関モナークのリーダー) - ジョン・グッドマン
メイソン・ウィーバー(女性戦場カメラマン) - ブリー・ラーソン
サン・リン(女性科学者) - ジン・ティエン
ハンク・マーロウ(生存者) - ジョン・C・ライリー
グンペイ・イカリ(マーローの戦友、日本人) - MIYAVI
ジャック・チャップマン - トビー・ケベル
ヴィクター・ニエベス - ジョン・オーティス
ヒューストン・ブルックス - コーリー・ホーキンズ
グレン・ミルズ - ジェイソン・ミッチェル
アール・コール - シェー・ウィガム
レグ・スリフコ - トーマス・マン
レルス - ユージン・コルデロ
スティーブ・ウッドワード - マーク・エヴァン・ジャクソン
ウィリス上院議員 - リチャード・ジェンキンス

 

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