■【書評】2日で人生が変わる「箱」の法則。心の戦争、心の平和。
’2日で人生が変わる’っていうのは大袈裟だけれども、確かにものの見方が少し変わったような気がする。
■本書はベストセラー『自分の小さな「箱」から脱出する方法』の続編であり、かつエピソードゼロ的本である。
前作で主人公を「箱」の外に導いたルー・ハーバートが今回の主役。
犯罪に手を染めた息子が40日間の矯正キャンプに送り込まれることになるのだが、それを始めるに当たってその親を対象にした2日間のプログラムが実施される。
ルーはそのプログラムで、変わらなければならないのは息子ではなく実は自分自身だったということに、そして自分のこころを閉じ込め苦しめている「箱」の存在について自ら気付いていく、という内容だ。
■前著では、「箱」=自己欺瞞の概念の説明、そこからの脱出方法=相手を人間と見る、というところに重点を置かれていたが、今回はそれをさらに深堀りし、特に、相手を「モノ」ではなく「人間」としてみる、という方を繰り返し繰り返し説いていく。
「優越」、「当然」、「体裁」、「劣等感」。
そういった歪んだものの見方に捉われ、相手に不満をもって接するとき、人間はその相手を「モノ」として見ている。
自分と同じ血の通った人間であると感じることが出来ず、やっかいな「モノ」として扱ってしまう。
■すると相手も同じように自分を「モノ」として扱うようになり、不満が不満を呼ぶ連鎖反応が生じて人間らしい思いやりのある関係が消え去る。
心の戦争状態が生じ、安らかな心の平和が乱されてしまう。
それは家庭や職場で起きることだが、その個々人の心の荒みは民族間の憎しみ、ひいては戦争にまでつながっていく。
それを避けるためには、まず、自分自身、ひとりひとりが「箱」から出る、つまり相手をひとりの人間として捉え、その気持ちに寄り添うこと。そこからすべては始まっていくのだ。
■けれど、それはちょっときれいごと過ぎるのではないか。
そう感じたのは事実である。
世の中には理不尽な、人を人とも思わない嫌なヤツがいて、そんなきれいごとでは済まされないことだってあるだろう。
「箱」から出る=相手を思いやる、いい子ちゃんでいること。
そんなことで問題が解決するなんておとぎ話もいいところだ。
■ところが、読み進めるうちに、そうでもないか、と思えるようになってきた。
こころの中に小さな変化が生まれてきた。
本書の中で主人公のルー・ハーバートを導く役割りを担う二人の講師はユダヤ人とパレスチナ人で、しかも二人ともイスラエルでの民族間の憎悪と戦争の渦のなかで大切な人を失っている。
その二人の体験からは、その根幹に平和への祈りのようなものが流れているように感じとれるのだ。
■世の中にはどうしようもないヤツはいるものである。
こっちが自己欺瞞を乗り越え、冷静に、思いやりをもって対したとしても、そこにつけ込もうとするに違いない、酷いヤツはいる。
けれども、相手が決して変わらないとしても、それでもその相手を人間と見て思いやる。
そこに生まれるのは自分の心の平穏である。
自分の人生に言い訳をしない、真っ直ぐで澄み切った生き方である。
■親鸞がいう悪人正機説「善人なおもて成仏す。いわんや悪人や」というのは、悪人だからこそ罪を背負った苦しみの深さゆえに救われる、というものである。
だが、「救い」というものが自らの心の平穏を意味し、「成仏」とは、祈る者の心の中の悲しみや憎しみが消失することを意味するのであれば、「鬼畜のような相手」と考える自分自身の中にある苦しみ、それこそが救いの対象なのではないか。
「悪人」が救われるのではなく、「悪人」に苦しめられたこちら側の心が救われる、ということではないのか。
そんなことをぼんやりと考えてみるのである。
<2009.11.10 記>
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■2日で人生が変わる「箱」の法則
■「自分の小さな「箱」から脱出する方法」の続編ではあるのだが、内容は独立しているのでこの本だけ読むのでもOKだと思います。
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