経済・政治・国際

2009年11月12日 (木)

■NHK土曜ドラマ『外事警察』が楽しみなのだ。

『ハゲタカ』のスタッフが今度は諜報の世界に挑戦する。

14(土)から全6回で始まる土曜ドラマ『外事警察』だ。

原作は『宣戦布告』の麻生 幾。

いやー、これは面白そうですな。楽しみ、楽しみ。

                        <2009.11.12 記>

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Photo
■外事警察 麻生 幾 著 日本放送出版協会 (2009/09)

■スタッフ■
原案 麻生 幾
脚本 古沢良太
演出 堀切園健太郎 他?
音楽 梅林 茂

■キャスト■
渡部篤郎
石田ゆり子
尾野真千子
片岡礼子
遠藤憲一
余貴美子
石橋凌 他

 
■土曜ドラマ『外事警察』番組HP

     

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2009年11月10日 (火)

■【書評】2日で人生が変わる「箱」の法則。心の戦争、心の平和。

’2日で人生が変わる’っていうのは大袈裟だけれども、確かにものの見方が少し変わったような気がする。

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■2日で人生が変わる「箱」の法則

■本書はベストセラー『自分の小さな「箱」から脱出する方法』の続編であり、かつエピソードゼロ的本である。

前作で主人公を「箱」の外に導いたルー・ハーバートが今回の主役。

犯罪に手を染めた息子が40日間の矯正キャンプに送り込まれることになるのだが、それを始めるに当たってその親を対象にした2日間のプログラムが実施される。

ルーはそのプログラムで、変わらなければならないのは息子ではなく実は自分自身だったということに、そして自分のこころを閉じ込め苦しめている「箱」の存在について自ら気付いていく、という内容だ。

■前著では、「箱」=自己欺瞞の概念の説明、そこからの脱出方法=相手を人間と見る、というところに重点を置かれていたが、今回はそれをさらに深堀りし、特に、相手を「モノ」ではなく「人間」としてみる、という方を繰り返し繰り返し説いていく。

「優越」、「当然」、「体裁」、「劣等感」。

そういった歪んだものの見方に捉われ、相手に不満をもって接するとき、人間はその相手を「モノ」として見ている。

自分と同じ血の通った人間であると感じることが出来ず、やっかいな「モノ」として扱ってしまう。

■すると相手も同じように自分を「モノ」として扱うようになり、不満が不満を呼ぶ連鎖反応が生じて人間らしい思いやりのある関係が消え去る。

心の戦争状態が生じ、安らかな心の平和が乱されてしまう。

それは家庭や職場で起きることだが、その個々人の心の荒みは民族間の憎しみ、ひいては戦争にまでつながっていく。

それを避けるためには、まず、自分自身、ひとりひとりが「箱」から出る、つまり相手をひとりの人間として捉え、その気持ちに寄り添うこと。そこからすべては始まっていくのだ。

■けれど、それはちょっときれいごと過ぎるのではないか。

そう感じたのは事実である。

世の中には理不尽な、人を人とも思わない嫌なヤツがいて、そんなきれいごとでは済まされないことだってあるだろう。

「箱」から出る=相手を思いやる、いい子ちゃんでいること。

そんなことで問題が解決するなんておとぎ話もいいところだ。

■ところが、読み進めるうちに、そうでもないか、と思えるようになってきた。

こころの中に小さな変化が生まれてきた。

本書の中で主人公のルー・ハーバートを導く役割りを担う二人の講師はユダヤ人とパレスチナ人で、しかも二人ともイスラエルでの民族間の憎悪と戦争の渦のなかで大切な人を失っている。

その二人の体験からは、その根幹に平和への祈りのようなものが流れているように感じとれるのだ。

■世の中にはどうしようもないヤツはいるものである。

こっちが自己欺瞞を乗り越え、冷静に、思いやりをもって対したとしても、そこにつけ込もうとするに違いない、酷いヤツはいる。

けれども、相手が決して変わらないとしても、それでもその相手を人間と見て思いやる。

そこに生まれるのは自分の心の平穏である。

自分の人生に言い訳をしない、真っ直ぐで澄み切った生き方である。

■親鸞がいう悪人正機説「善人なおもて成仏す。いわんや悪人や」というのは、悪人だからこそ罪を背負った苦しみの深さゆえに救われる、というものである。

だが、「救い」というものが自らの心の平穏を意味し、「成仏」とは、祈る者の心の中の悲しみや憎しみが消失することを意味するのであれば、「鬼畜のような相手」と考える自分自身の中にある苦しみ、それこそが救いの対象なのではないか。

「悪人」が救われるのではなく、「悪人」に苦しめられたこちら側の心が救われる、ということではないのか。

そんなことをぼんやりと考えてみるのである。

 

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                          <2009.11.10 記>

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■2日で人生が変わる「箱」の法則
■「自分の小さな「箱」から脱出する方法」の続編ではあるのだが、内容は独立しているのでこの本だけ読むのでもOKだと思います。

   
■関連記事■
■【書評】自分の小さな「箱」から脱出する方法。人間関係がうまくいかない根本原因はどこにあるのか。

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2009年11月 7日 (土)

■【映画評】『沈まぬ太陽』。人間の生き様。ラストシーンの感動が止まらない。

上映時間3時間22分の大作である。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.36  『 沈まぬ太陽
          監督: 若松節朗 公開:2009年10月
       出演: 渡辺謙  三浦友和  他 

          001

■休憩10分をはさんだ3時間半もの長大な映画。集中して見ることができるかどうか、正直あんまり自信が無くて見に行くのをためらっていたのだけれども、そんな心配はまったくの無用。

恩地元というあまりにも真っ直ぐな男の生き様にあっという間に取り込まれてしまったのであった。

  
■ストーリー■

昭和30年代。巨大企業・国民航空社員の恩地元は、労働組合委員長を務めた結果、会社から10年におよぶ僻地での海外勤務を命じられた。かつて共に闘った同期の行天四郎が組合を抜けてエリートコースを歩みはじめる一方で、恩地は家族との長年にわたる離れ離れの生活で焦燥感と孤独に追いつめられ、本社への復帰を果たすも不遇な日々は続くのだった。そんな中、航空史上最大のジャンボ機墜落事故が起こり…。<goo映画より>

 
■この作品は、己の信念を曲げないがために僻地をたらいまわしにされる恩地の話と、日航ジャンボ墜落事故とその遺族の話、そして航空会社の腐敗体質にまつわる話が交差しながら進んでいく。

それぞれの話がそれぞれに深くて物語が発散してしまいそうに思えるのだが、それが逆にうまく共鳴しあい、さらに深みを増している。

■そのなかでもやはり御巣鷹山の墜落事故の遺族たちの話がやるせない。

あれから24年も経つというのにあのときのショックが鮮明に蘇る。

特に墜落中に家族に向けたメモを残した父親と、それを読む息子の話は胸がつぶれる思い。

丹念に遺族に取材したのであろう事実がしっかりと背景にあって、だからこそのリアリティであって、だからこその重みなのである。

■その一方で、この映画は実直な恩地元(渡辺謙)と、出世の鬼と化した行天四郎(三浦友和)の歴史を縦糸として物語を織っていく。

明と暗、陰と陽のそのコントラストが素晴らしく、またそのコントラストの強さに関わらず陳腐に落ちないのがまた素晴らしい。

それはもちろん原作と脚本によるものであるけれども、渡辺謙と三浦友和の魂を揺さぶる好演によるところが大。

また、そのコントラストを際立たせる俳優陣の力にもよるのだろう。

何しろそれぞれが主役を張れるような豪華な顔ぶれで、ため息が出るくらいなのだ。

■ラストシーン。

妻に先立たれ、日航機の事故で息子家族を一度に失い、ただひとり残された老人(宇津井健)が四国のお遍路の旅にいる。

その老人に宛てた恩地の手紙が胸を激しく揺さぶる。

こころの奥の底のところでズンと打ち震えるような感動だ。

救いようの無い絶望。

そこにはどんな慰めの言葉も届かない。

それでも生きていこうと思わせるのは、広大な自然に向かって立ち、ちっぽけな自分をいつまでも照らしている夕陽、その瞬間にあるのだ。

 

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                           <2009.11.07 記>

Photo
■【原作】沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上)
山崎 豊子 著 新潮文庫 (2001/11)
  

■STAFF■
原作:山崎豊子『沈まぬ太陽』
監督:若松節朗  
製作総指揮:角川歴彦
企画:小林俊一
製作:井上泰一
脚本:西岡琢也
音楽:住友紀人
エンディング・テーマ:福原美穂『Cry No More』
製作:「沈まぬ太陽」製作委員会
製作プロダクション:角川映画
配給:東宝

■航空会社やスポンサーに首根っこを抑えられたテレビ会社の協力を得ずにこれだけの大作を真っ直ぐ作り上げた製作委員会と角川に深い敬意を感じます。
   



■CAST■
恩地元:渡辺謙
行天四郎:三浦友和
三井美樹:松雪泰子
恩地りつ子:鈴木京香
 * * * * * * * *
国見正之:石坂浩二
八馬忠次:西村雅彦
桧山社長:神山繁
小暮社長:横内正
堂本社長:柴俊夫
和光監査役:大杉漣
八木和夫:香川照之
 * * * * * * * *
利根川総理:加藤剛
龍崎一清:品川徹
竹丸副総理:小林稔侍
道塚運輸大臣:小野武彦
 * * * * * * * *
阪口清一郎:宇津井健
鈴木夏子:木村多江
小山田修子:清水美沙
布施晴美:鶴田真由
 * * * * * * * *
恩地純子:戸田恵梨香
恩地克己:柏原崇
恩地将江:草笛光子
 * * * * * * * *
国民航空123便操縦士:小日向文世
航空管制官:長谷川初範

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■過去記事■

■【映画評】名画座・キネマ電気羊 <目次>へ

   
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2009年10月26日 (月)

■Nスペ・自動車革命 第2回 スモール・ハンドレッド 新たな挑戦者たち。果たして自動車産業は相転移を起こすのか。

中国の小規模電気自動車メーカーってこんなに爆発的に増えてたんだね。知らんかったよ。

Photo
■NHKスペシャル 自動車革命 第2回 スモール・ハンドレッド 新たな挑戦者たち(2009.10.25放映)

■とはいっても、クリアすべき安全基準もなくて、当然のようにナンバープレートもない。

中身は結構レベルの高いものから、部品を集めてきて適当にでっちあげたようなインチキ臭いものまで有象無象の状況なようだ。

けれども、そうした裾野の広さって大事なようで、航続距離がガソリン自動車と遜色の無い300kmなんてクルマもあって、それも結構走るらしい。(とはいえ、安全基準が・・・ならば大手メーカーの電気自動車と比べるのもナニなのだが。)

■一方、アメリカの状況も面白い。

こちらも電気自動車のベンチャー企業が乱立しはじめているようで、グライダーみたいな3輪自動車をひっさげて、これは古いアタマの自動車メーカーには作れまい、なんていう訳で、かなり威勢がいい。

アタマが固いと言われていちいち反論するもの大人気ないし、確かにそういう側面もあるだろうから、真摯にご意見拝聴なのである。

■それよりも驚くべきは、電気自動車を家庭の電気の蓄電池として、各家庭と電力会社をネットワークでつないで電力供給のマネジメントをするというアイデア。

うーん、確かに画期的。

時代を変える、という言葉がリアリティをもってくる。

■水が沸騰したり、氷になったりするように、一気に構造が変化することを相転移というのだけれども、今回の番組を見ていて、もしかすると、本当に自動車業界にも相転移が起こりかけてるのかもしれない。

電気自動車なんて、第一インフラが整ってないじゃん、なんて思っていたのだけれども、良く考えれば、インターネットなんかも始めは電話回線でピーガガやってて画像一枚引っ張ってくるのにかなり時間がかかってたのに、あっという間に光回線が普及して当然のようにさくさく動くようになったもんな。

電気会社が本腰を上げれば、インフラなんか、あっという間に整備されてしまうのかもしれない。

この10年、面白いことになりそうですな。

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                         <2009.10.26 記>

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2009年10月18日 (日)

■聖地チベット展へ行く。

上野の森美術館で聖地チベット展をみた。

Photo
■歴代ダライ・ラマが本拠としたポタラ宮

■何が印象に残ったかというと、金キンキラキラの仏像群。

本当に千本手があるんじゃないかと思わせる「十一面千手観音菩薩立像」もそれぞれの手に「目」があるという異様さが良かったが、なんといっても圧巻は、男女の菩薩が向き合う「カーラチャクラ父母仏立像」。

Photo_3 Photo_5
■左「十一面千手観音菩薩立像」/右「カーラチャクラ父母仏立像」

■「慈悲」をあらわす24本腕の父と、「智慧」をあらわす6本腕の母が交わっていて、しかも付き合わせた顔はいがみ合う表情。

この生々しさが実にイイ。

まさにインド直輸入って感じ。

02

■全体としてはどうかというと、展示が少しあっさり気味で、海抜4000メートルのチベットの雰囲気に没入できるところまではいかず、そのあたりは少し残念。

けど、そうめったに見られないものだし、今までよく分からなかったチベットの歴史に触れられただけでも十分に良かったかな。

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                        <2009.10.18 記>

■聖地チベット展 ―ポタラ宮と天空の秘宝―

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■過去記事■ 文化・芸術など

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2009年10月 3日 (土)

■祝・MRJ、米社から100機受注。

国産初の小型ジェット旅客機、MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)が アメリカの地域航空会社トランス・ステーツ・ホールディングスから100機の受注を受けた。初号引渡しは2014年で、5~6年かけて納入する予定だそうだ。

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いやあ、この大不況の時代にめでたいニュースである。

競合機種より燃費が3割いい、というのが売りで、その技術力を買われたのだろうから余計にうれしい。

YS-11から40年余り。

日の丸旅客機の幸先のいいスタートに乾杯!

なのである。

                          <2009.10.03 記>

■関連記事■
■MRJ事業化決定。技術屋の夢と、ビジネスと。

 
■過去の記事■ 飛行機、宇宙の話など  
    

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■2016年五輪はリオデジャネイロ。結果的にはいいんじゃないの?

結局、リオで決まりましたね、オリンピック。

下馬評ではシカゴも有力、といわれてたけど最初の投票であえなく落選。

この手の予想ってのもあてになりません。

南米初。

いいんじゃないでしょうか、リオデジャネイロで。

落ち着くべきところに落ち着いたような気がします。

中国、ブラジルとなると、次はロシアか、インドあたりでしょうか。

え、東京?

もうオリンピックに頼らずともいいんじゃないかな。

なんかシカゴとか東京をみていると大人気ない気がしてしまって・・・。

っていうのは、愛国心無さ過ぎでしょうか。

                          <2009.10.03 記>

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2009年9月22日 (火)

■【書評】『悪魔の文化史』、ジョルジュ・ミノワ。異者に対する脅威の感情が「悪魔」を生み出すのだ。

悪魔の出処を知ることはキリスト教文化を知ることでもあるのだ。

Photo
■悪魔の文化史 ジョルジュ ミノワ 著  
文庫クセジュ 白水社 (2004/07)

■悪魔というのはとても魅力的な存在だ。

光り輝く正道は得てしてツマラナイものであって、薄暗い横道からこっちへおいでとささやく声につい、ふらふらっと覗いてみたくなるものなのである。

たぶん、それは万国共通のものであって、得体の知れないものへの好奇心というのは人間が知的な動物である限り避けられないものなのだろう。

■なんていう風に考えながらこの本を開いたわけなのだが、出だしからちょっと様子が違う。

実はこの本は「悪魔」を通してキリスト教社会の本質を掘り下げた文化論なのであった。

そこで展開される一神教の文化というものは、われわれ日本人のような何でも来いの雑食的なものの考え方のイイカゲンな文化とくらべて何やらめんどくさいもののようなのである。

■問題は「善」と「悪」の在り方にある。

ユダヤ教、旧約聖書の神は「善」とか「悪」とかいったものをすべて含んだ存在で、善行を積んだ人に対して不条理と思えるような酷い仕打ちをしたり、疫病を流行らせたりもする存在で、サタンはその「悪」の役回りを実行する神の僕に過ぎない。

それに対して、キリスト教では神は絶対的に「善」の存在で、サタンはそこから弾き飛ばされた「悪」を引き受け、神と対立するものになったのだという。

新興の小さなセクトであったキリスト教の成立過程において、ゾロアスター教、マニ教などの二元論が入り込み、「善」と「悪」の分離が起きたということらしい。

■だが、そこに矛盾が発生する。

神は「善」なるものである、けれどその一方で「すべて」である神に「悪」が含まれないのはおかしいではないか、という神学的問題が発生し、その問題とは「悪」とその化身である「悪魔」は存在するや否や、という問題と同義なのである。

いやー、実にめんどくさい。

■いや、問題はそれだけに止まらない。

キリスト教が「悪魔」を必要としたのは、単に善悪の二元論の影響を受けたというだけでなく、そこに根付いたメンタリティというものがあって、それが重要な理由となるのである。

そのメンタリティとは、

「サタンの支配下にある世界全体が、自分たち少数の選良グループを取り囲み、脅かしている、という追い詰められたセクト主義的な考え方の典型」

からくるものだ。

極初期のキリスト教は、ユダヤ教下にある有象無象の小規模セクトのひとつだったわけで、周囲に対する排他的、防衛・攻撃的メンタリティが「サタン」を必要とした、ということだ。

■そして、そのメンタリティとその構図は、紀元前後のキリスト教誕生のころから、十字軍、魔女狩りの時代を経て現在にまで続いている。

先のイラク戦争を見よ。

先のアフガンを見よ。

合理主義、科学万能的世界観の中心であるはずのアメリカも、一皮剥けば、キリスト教2000年のメンタリティを脈々と引き継いでいるのである。

アメリカ人の心の奥底にあるメンタリティを追求した、マイケル・ムーアの「ボーリング・フォー・コロンバイン」の衝撃的結論を思い出さずにはいられない。

■そして厄介なことに、イスラエルにしても、イスラムにしても、一部のセクト的小規模集団においてはその構造的性格ゆえに、キリスト教原理主義とおなじ排他的、防衛的メンタリティーをその特性として抱え込んでいて、それ故に中東の戦争に終わりは無く、テロ活動にも終止符は打たれない。

当然それだけが理由ではないだろうけれども、彼らのうちにあると思われるそのメンタリティが戦争状態を継続させる心理の背景にあることは間違いないだろう。

■我々日本人にとって、絶対的悪、など存在しない。

だから彼らの心理を理解できないのかもしれない。

「悪魔」の問題は、決して怪奇趣味に止まる問題ではなく、実は異者に対する心理の問題なのである。

文明・文化を越えた相互理解というものはかくも難しいものかと感じた次第である。

  

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                          <2009.09.22 記>

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■悪魔の文化史
ジョルジュ ミノワ 著  文庫クセジュ白水社 (2004/07)

   

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2009年9月18日 (金)

■HTV、ISSとの結合に成功!!これは日本宇宙開発史上の偉大な一歩なのだ。

HTV(宇宙ステーション補給機)が、ISS国際宇宙ステーションとの結合に成功した。

Htv_image
■HTVのISSへの結合イメージ図
Htv_small01
■実際の画像

■スペースシャトルに代わる大型輸送機としてHTV(H-II Transfer Vehicle)が通用することが見事に実証されたわけだ。

HTVには与圧部分があって、明日以降にはISSのクルーがそこに乗り込んで船内の補給品の入れ替えを行う予定。

これは一見地味にみえるのだけれども、実はニッポンの’船’に初めて人が乗り込むことになるという大きな一歩でもあるのだ。(実験棟「きぼう」は’船’じゃないということで。)

■これをもって、日本の有人宇宙船への大きな足がかり、なんていう気の早い記事が新聞に踊っていたりするのだけれど、それはちょっと言いすぎなような気もする。

何せ、この’船’はミッション終了後、ISSの廃棄部品を搭載したまま大気圏に再突入、燃焼廃棄される予定なのだ。

有人宇宙船としては再突入、回収が大きな難関なはずであって、その辺の実証試験がそもそもHTVの延長線上に予定されているのかも今のところ分からない。

けど、まあもちろんJAXAもそこのところを考えているには違いなく、それもそう遠い未来のことではないだろう。

■そういうことも踏まえて考えると、やはり今回のミッション成功はニッポンの宇宙開発史のなかでの大きな一歩であることには間違いない。

Hー2Bを含めたHTV開発関係者の皆様、おめでとうございます!!

   

■JAXA HTVの運用の流れ

 
■過去の記事■ 飛行機、宇宙の話など  
    

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2009年9月11日 (金)

■H-ⅡB打ち上げ成功!

9月11日午前2時01分46秒、

宇宙ステーション補給機(HTV)を乗せたH-ⅡBが無事、打ち上げられた。

H_b02

■H-ⅡBは、前型のH-ⅡAに対しメインエンジンLE-7Aを2基に、固体ロケットブースターSRB-Aを2基から4基に増やして大出力化を図り、国際宇宙ステーションISSに物資を運ぶHTV(宇宙ステーション補給機)を打ち上げるために開発された、現時点での日本最大のロケットである。

とてもめでたい話だ。

■10年前くらいだったかH-Ⅱロケットの打ち上げ失敗があって、日本のロケットなんでだめじゃないの?なんていう雰囲気が漂っていた頃から考えると感慨深いものがある。

いや、いや、無事に打ち上げられて本当によかった!

■さて、今度はHTV実証機がちゃんと機能するかである。

これから1週間かけていろんな飛行実験をして最終的には18(金)にISSにドッキングが行われる予定。

これが成功すれば技術的には欧米に肩を並べることになるということで、なんかワクワクしてしまうなあ。
 

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                           <2009.09.11 記>

■関連記事■
■NASA、スペースシャトル後継に日本製無人輸送船HTVを!?(2008/07/21 記)

■JAXA(宇宙航空研究開発機構)HTV/H-ⅡB特設サイト
   

 
■過去の記事■ 飛行機、宇宙の話など  
    

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2009年8月31日 (月)

■【書評】『「空気」の研究』、山本七平。決して古びることのない本質的日本人論。

「空気」を読めない、

などと言われる「空気」について深く掘り下げることで日本人の本質を浮かび上がらせることに成功した名著だと思う。

30年以上昔の本でありながら、その鋭利さは少しも錆び付きを感じさせない。

Photo
■「空気」の研究 山本七平 著 文春文庫(1983/01)

   
■「空気」とは簡単に言えばその場の雰囲気である。

そう言ってしまえば簡単なのだけれども、山本七平氏の手に掛かるといきなり学術的な香りが漂いだす。

曰く、「臨在的把握」。

対象物そのものをそのまま把握するのではなく、そこに何か「恐れ」のようなものを感じることをいうらしい。

その根本にはアニミズム的な意識が色濃く残る日本を、一神教である西洋文明と対比させる意図があり、主題はやはり日本人論なのである。

■では何故、「空気」を取り上げるのか。

その問題意識は、戦前、戦中、戦後と状況は変われども、「空気」なるものが我々日本人の意思決定の目を曇らせている、というその点にある。

■「あの時は、そういうことをいえる「空気」では無かった」

などという発言は、あの無謀な戦争に突入しようとしていた時点でも、敗色濃厚な中でとても合理的とは考えられない作戦を遂行しようとしていた時点でも、当時の意思決定に関わった人たちの言葉として良く聞かれる文句なのである。

それを繰り返してはならない、その為の本書の研究なのだ。

■しかも問題なのは、戦後においてもその「空気」による意思決定は脈々と続いていることである。

この本が出版された昭和52年当時には「公害問題」が盛んに騒がれていたのだけれども、その論議においては排気ガスのNOxについても、イタイイタイ病のカドミウムについても、「絶対悪」の「空気」が蔓延していて純技術的・学術的な議論が出来ない状況にあったのだという。

■それは現代においても、80年代イケイケどんどんのバブル全盛時代や、この間の小泉改革の時代を考えれば、当たり前が当たり前でなくなる傾向は続いているように思える。

大正生まれの山本七平氏がいうには、幕末、明治のあたりまでは、「男子たるものその場の空気に左右されるような軽挙妄動は謹んで」みたいな思考方法があったようで、「空気」の問題は、この100年のことであるようだ。

じゃあ、この100年って何だというと、一部のエリートが無知な民草を守り導くという政治のカタチから、(一応の)民主主義体制への転換によって、一般庶民にまで情報が行き渡り「全体のムード」(即ち「空気」)が生まれやすくなった、ということだろう。

■どうも我々日本人は集団ヒステリーに罹りやすいようで、じゃあ、といって「空気」に惑わされない一部のリーダーにすべてを任せた士農工商の時代に戻れるわけもない。

では、どうするか。

というところで、山本七平氏は「水を差す」というアイデアを挙げる。

呑んでいる席でみんなで夢のような話で盛り上がっているところに、「でも先立つものが無いぜ」、と「水を差し」て現実に引き戻す、それである。

■けれどもそれも結局は「まあまあ、ここはそれとして」ということで、うやむやになってしまうのだ。

どうもそこが日本人と一神教の欧米人の違うところであるらしい。

そのあたりが、旧約聖書の世界に深く分け入った山本七平氏の真骨頂であるようで、その分析が非常に面白い。

■本書で「空気」への対抗手段が示されるか、というとそういうわけではない。

あるのはあくまでも分析であって答えではない。

その答えを導き出すのは我々への宿題というわけである。

自分のなかでは、「個人主義」とか、「自由」という方向にその答えがあるように思えるのだが、そういう西洋的な価値観が本当に「幸せ」につながるのかという疑問も大いにあって、ぐるぐると堂々巡りをしてしまうのである。

■2009年8月30日、今回の衆議院議員選挙での民主党の圧倒的勝利によって戦後初の本格的な政権交代がおこなわれることになった。

これもまたひとつの「熱狂」であって、その「空気」にまた取り込まれてしまうのではないか、という一抹の不安を感じる。

その一方で、何となくではなるものの、冷静な風がそこに流れているような気もする。

それは「空気に流されるのを潔しとしない」冷静さを我々一人ひとりが持つことであり、それが新しい日本流の「個人主義」につながっていくのじゃあないか、と思うのである。

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                         <2009.08.31 記>
   

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■「空気」の研究 山本七平 著 文春文庫(1983/01)
   
    

■関連記事■
■【書評】『悩む力』 姜 尚中。悩み抜いた果てにたどり着くであろう他者とのつながり。
 

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2009年8月29日 (土)

■極超音速実験機 X-51A 「ウェーブライダー」。スクラムジェットの実用化への更なる一歩。

この秋にもXー51Aの実験が開始されるようだ。

X51a_03

■X-51A・ウェーブライダーはアメリカ空軍が開発中のスクラムジェット実験機。

スクラムジェットとは、超音速で飛行することでエアインテークから入ってくる空気を圧縮して燃焼させる仕組みである。

X51a_06
X51a_01
オシリの部分がロケットで、機体下面にインテーク、機体両側面にラムジェット推進部、という構成だろうか。

■X-51AはB-52のパイロンにつるされて高度約1万メートルで発進、ロケット推進でマッハ4.5まで加速、そこからスクラムジェットで約4分間飛行して巡航速度マッハ6を目指すという。

先行していたX-43はマッハ9.8を記録しているが、ラムジェット推進の時間はたったの10秒間であり、スクラムジェット実験機としてのX-51Aは画期的なものだといえる。

■だが実用化はまだまだ先のことのようだ。

高校時代(25年くらい前)に読んだ本では、近い将来スクラムジェットが旅客機に採用されて東京ーニューヨーク間を1時間で飛行するなんて夢の世界が描かれていたけれど、果たして生きているうちに乗れるかな。

もっとも、それ以前に採算の問題で軍事利用だけになってしまうかもしれないが・・・。

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                           <2009.08.29 記>

 
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2009年8月22日 (土)

■【書評】『しのびよる破局 ― 生体の悲鳴が聞こえるか』、辺見庸。人間の尊厳の恢復は我々一人ひとりの中に。

人間とはいったいなにか。

人間とはいったいどうあるべきなのか。

著者の切々たる想いが込められた本である。

Photo_3
■しのびよる破局―生体の悲鳴が聞こえるか
辺見 庸 著 大月書店 (2009/04)
※2009年2月1日に放映されたNHK・ETV特集「作家・辺見庸 しのびよる破局のなかで」を基に再構成、大幅補充をしたもの。

■今、我々は複合的な破局に対峙している。

世界同時多発テロ、地球温暖化による気象災害、世界金融恐慌、格差の拡大、新型インフルエンザの流行。

それは決して単独であるものではなく、人間が人間らしさを喪失した、それがすべてをつなぐ伏流水として流れているのだと辺見庸は読む。

■キーワードは’マチエール(身体で実際に感じる質感)’と’慣れ’である。

テロにしても、異常気象にしても、格差の拡大にしても、身体で感じ取ることができない。テレビの、或いはパソコンの画面の中でしか接することができないが故に常に空虚であり、実感がない。

毎年3万人以上が自殺し、その何倍もの数の自殺未遂者がいる異常事態に対して何も感じることができない。

そして、そういった破局の中にあって、すべてのことがらに慣れてしまい、日常の中に消えていってしまう。

それは秋葉原事件を起こした青年の、パソコンや携帯を通してしか世界とつながることが出来なかった空虚さと同質のものなのである。

■その背景には、行き過ぎた資本主義、合理主義、グローバリゼーションが、ある。

「多様化な生き方を可能にする」という名目で改正された派遣労働法がいい例である。

口先ではかっこいいことをいいつつも、結局は人間を景気動向に対する調節弁としてしまった。そうでなければ企業はグローバルな過当競争を生き抜くことが出来ない、企業がつぶれてしまっては元も子もないでしょうと開き直る。

当時、人材を大切にする日本的経営を維持していくとカッコよく唱えた某巨大自動車メーカーが秋葉原事件と無関係ではなかったことの、この皮肉。

■100年に一度の大恐慌といいながら、あれから一年も経たぬうちに景気も底を打ったなどと浮かれた記事を目にしたりする。

もしかすると景気の回復は本当に近いのかもしれない。

けれど辺見さんはいう。

 
 本当に取りもどさなければならないのは、経済の繁栄ではないのではないのかとぼくはおもうのです。人間的な諸価値、いろいろな価値の問いなおしが必要なのではないか。でなければ、絶対悪のパンデミックは、いったん終息してもまたかならずやってくるだろう。もっとひどいかたちでくるかもしれない。(P74)
 

と、同時に

 
 誠実とか愛とか尊厳ということばを、商品世界のコマーシャルのみたいな次元に全部うばわれている、つまり悪は悪の顔をしていないというときに、やっぱり本来のマチエール、愛にせよ誠実にせよ人間の尊厳にせよ、言語の実質、実感というものを取りもどすことだとおもいます。(P117)
  

と語る。

まったく同感である。

そんな中で、

 
「私はかつておまえだった。おまえはやがて私になるだろう。」
 

という警句が、ひときわ響くのである。

 

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                          <2009.08.22 記>

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■しのびよる破局―生体の悲鳴が聞こえるか
辺見 庸 著 大月書店 (2009/04)

   

Photo_4
■もの食う人びと
辺見 庸 著 角川文庫  (1997/06)

    

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■ボーイング787開発遅れ。混合チーム運営の難しさ。

ボーイング社が開発中の次世代中型ジェット旅客機、B787に構造的欠陥が見つかりデリバリーがかなり遅れそうな様子だ。

B787_2

■今回見つかったのは主翼と機体の接合部分の強度問題。

飛行機で一番負荷がかかるところで、なにやってんの?っていう感じなんだけれども、今回の開発は70社にも及ぶ国際的な合同プロジェクトなのだそうで、その前からの度重なる開発遅延を含めて、無関係では無さそうだ。

■最近の航空機開発では分業体制が当たり前だという話もあるが、多分、質の面でも量の面でも今まで類を見ない規模での共同事業なのだろう。

主翼の設計担当は三菱重工で、お得意の炭素系複合材の技術を見せ付ける立場にあったようだが、とんだ裏目に出てしまったことになる。

連係プレーが求められる接合部でミスったというのは、いわゆる三遊間ゴロというやつで、ちょっと情けない。

■と、いうのを通りこして今回の話は共同事業のもつ本質的な怖さを指し示している。

なにせ、この部分は加重が猛烈にかかる部分で、そこの耐久強度不足は10年後、20年後に主翼脱落による墜落という最悪の事態を招くからだ。

■そんな大事なところのミスを最後の最後まで見抜けなかったボーイング。混合チームがでかくなり過ぎると全体が見えなくなるというよい例である。

いずれにしても、全日空から矢の催促があろうがどうしようがジックリ綿密に見直しを行って、ゆめゆめやっつけで対応しないことを切に願う。

御巣鷹山は決して繰り返してはならない。

 

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                       <2009.08.22 記>

 
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2009年8月 9日 (日)

■【書評】『図解雑学 ゲーム理論』渡辺隆裕 著。他者とのやりとりで迷ったときに選択すべき道はどれか。

数学っぽくて、どうもとっつきにくいと思っていたゲーム理論なのだけれども、意外にあっさり読めました。

Photo
■ゲーム理論 (図解雑学) 
渡辺 隆裕 著 ナツメ社 (2004/08)

■何故とっつきやすいか、というと数式がほとんど載っていないから(笑)。

よって実際に高等なゲーム理論を駆使して複雑な交渉事にかかわる問題解決を図ろう、という高級な人には会わないだろう。

けれど、ゲーム理論って何じゃらほい、という私のような初心者にはとてもいい本だと思う。

■と、いっても内容は実践的。

他者とのやりとりで迷ったときに選択すべき道はどれか、というときに相手の行動を読みながら最適解(ナッシュ均衡)を導き出す「利得行列」だとか「ゲームの木」だとかの基本ツールの使い方がジックリ丁寧に語られている。

特に図とか表が駆使されていて、それがとても分かりやすい。

■何だか判ったような気になってしまったが、じゃあ、迷ったときの解決ツールとしてすぐ使えるか、というとあまり自信は無い。

けれど、答えを出すところまで行かなくても、仕事上の意思決定や日々の悩み事について、その構造を把握するにはいいツールだと思う。

■また「モラルハザード」だとか「インセンティブ」とか新聞とかでよく目にする用語も知ってるつもりでいたのだけれど、まったく分かっていなかったことに赤面の至り。

やっぱり言葉の定義はあやふやのままではいけない。

勉強、勉強。

なのである。

 

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                        <2009.08.09 記>

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2009年7月12日 (日)

■裁判員制度は誰の権利を守るものなのか。『爆笑問題のニッポンの教養』 刑事訴訟法、後藤昭。

今回のテーマは、刑事訴訟法。

File078
■ 爆問学問『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE078:「やっぱり、みんな有罪ですか?」 2009. 7. 7放送
一橋大学大学院法学研究科教授 刑事訴訟法 後藤昭。

■太田は是非とも裁判員制度に参加したいといい、田中は出来れば避けて通りたいという。

お前はどちらかといえば明らかに田中の方で、一般的日本人の大方の意見もそうだろう。

太田にいわせれば無責任、傍観者。

なるほど確かにそうかもしれない。

■これも一つの日本人論なんだと思う。

お上に対して文句はいうけど、お上に直接それをぶつけるでもなく、結局は上意に従って、またそれの文句を垂れるの繰り返し。

その柳腰もひとつの賢い生き方だ、というのもありだし、だから無理やりそれを変える必要もないのかもしれない。

けれども、明治、大正、そして戦後において’権利’というやつが日本の中に根付いていって、それはそれでいいのだけれど、その権利とセットであるはずの’責任’が欠けているのが問題で、モンスター・ペアレントにしても、不祥事を起こしてアタマを下げる経営者にしても、根っこにはその問題があるように思えるのだ。

■小学生の頃に先生から

 
’義務’と’責任’の違いを答えなさい、
 

なんて言われたことがあるけれども、その答えは未だにわからない。

世の中には理屈抜きにやらねばならないことがあって、’義務’とはそういうことだと理解しているが、’責任’、というやつについてはどうにもスカッといかないのである。

■もしかすると、分かっているつもりの’義務’についても、お上ごもっとも、世間様に顔向けできない、の文化のなかで定着しただけで、一皮向けばこれもよく分からないものなのかもしれない。

し、だからこそ、’責任’についてもよく分からないのかもしれない。

逆に言えば、’責任’が分かることで、’義務’の再定義も可能になってくるのだろう。

そこでキーワードになってくるのはやはり’権利’であり、それと’責任’との関係にポイントがあるに違いない。

■そこで裁判員制度である。

これは国民の義務なのか、責任なのか。

日本人の多くはこれを’義務’と捉えているのではなかろうか。

いや、言葉上は’責任’だ、と答えるのであるが、心情として「心ならずも課された’義務’」と捉えているのではないか、ということである。

■もし、ここに’権利’という概念があれば、少し雲行きが変わってくるのではなかろうか。

では、ここでいう権利とは何か。

刑事裁判に関していうならば、公正に裁かれる権利、であろう。

事実に基づいて有罪・無罪を判定され、イイカゲンな証拠では有罪とされない権利(無罪推定)。

そして、有罪であったとしても、法外な刑を受けることのない権利。

そういう被告人の権利である。

■今まで日本人は、その権利を守ることをお上に任せてきた。

その上で、犯罪者の人権ばかりを重視して遺族の人権を軽視しているとかの意見を垂れ流してきたわけである。自分自身がそうであるように。

ところが、

起訴される事件の99.9%は有罪判決。

なんていわれてビックリ仰天するわけだ。

いや、数字のマジックに踊らされることを嫌ったとしても、検事、弁護士、裁判官の閉じたコミュニティのなかで、一般の常識との乖離が生まれ、それも被告人に不利な方向にハタラくという後藤先生の話には説得力がある。

■しかも、この番組のHP上でのコメントにあるように、「素人の方が有罪にしやすくて、プロの方が無罪にしやすいと思ってた」という太田の話に後藤先生自身が驚いた、というのだからこっちも驚く。

中立な立場であるはずの研究者であっても、’法律家コミュニティ内の常識’による偏りがあるということで、じゃあ裁判官はどれほど一般人と乖離した感覚を有しているか、ということである。

■その閉じたコミュニティに我々は自分自身の’権利’を委ねてきたのである。

それは、自分が被告になったときに守られるべき’権利’である。

自分が被害者になることを想像しても、なかなか自分が被告になる想像力は我々にはないが、松本サリン事件の例を引くまでもなく、冤罪としてそこに引き込まれそうになる可能性は決してゼロではないのだ。

その時になってはじめて青くなる。

そして世間は被告の権利には知らん振り。

■今回の番組を見て、いろいろ考えるまでは、裁判員制度は「被告を裁く権利」なのだと勘違いをしていた。

太田の言葉を聞いていても、そういうニュアンスが感じ取れて、決して特殊な感覚ではないのじゃないか、と思う。

そして、その大きな勘違いにこそ、裁判員制度の捉え方を難しくしている本質があるように思えてくるのだ。

■裁判員制度が守る権利は、法によって侵されるかもしれない被告の人権である。

その上で、被害者の人権をも考慮しながら適正な裁きを規定する、ということである。

我々が裁判員制度で負うべき責任は被告の人権を守ることであり、それは誰のためでもなく、自分自身が法に裁かれる立場になったときに守られるべき権利なのだ。

一般的な解釈は別として、それがこの論の結論である。

■義務と責任の話は難しくてまだよく分からないところもあるが、責任というものが自分自身の権利とセットであることは間違い無さそうに思う。

やはり分からないことは具体的な話で考えるに限る。

モンスター・ペアレンツにしても、不祥事を隠してしまう企業にしても、守られるべきは誰のどのような権利なのかを考えることで本質的なものが見えてくるということなのかもしれない。

また、改めて考えてみたいと思う。

    

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                          <2009.07.12 記>

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Photo新版 わたしたちと裁判
後藤 昭 著  岩波ジュニア新書 (2006/10)

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それでもボクはやってない スタンダード・エディション [DVD]
監督: 周防正行 出演: 加瀬亮 瀬戸朝香 山本耕史 もたいまさこ 役所広司
■この映画が気になってしまった。

  
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■本家のこっちは見てないんだよな・・・。

  

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2009年7月11日 (土)

■日曜劇場 ドラマ 『官僚たちの夏』 今、高度成長期を再演することの意味。

拡大版というのを忘れてオシリの20分が切れてしまったのは残念だったが、それでも濃密で十分楽しめた第一話であった。

Photo

■1955年頃までの戦後復興期を越え、高度経済成長を迎えようとする時代。

それからの驚異的成長は当時の現在形では到底想像もできず、それでも戦勝国アメリカに経済力、豊かさでなんとか追いつこうと苦闘した官僚たちの物語である。

■第一話は、自動車を基幹産業として立ち上げようと試みる、国民車構想の話。

町工場のオヤジと若い連中がその夢見たいな構想を意気に感じて捩じりハチマキ、時速100km/hが出せて10万キロ走っても壊れない車を苦戦のすえに作り上げるあたり、やっぱりモノづくりの話は面白い。

実際に画面に出てきたのはトヨタ パブリカと思われ、作ったのは町工場でもなんでもないのだけれども、まだ当時は零細自動車企業がいろいろあったようで、このドラマのような場面も場合によってはあったかもしれない。(たぶん無かったんだろうけど。)

■それはそれとして、『官僚たちの夏』を何故、今、企画するのかという意味である。

今の日本の置かれている状況を2度目の焼け野原と言った人がいる。

逆に言えばここからが面白いということだ。

■そういったときに思いを50年後に飛ばすならば、今が、新たな’戦後復興’、新たな’高度経済成長’の基点になることを夢見ることは可能だろう。

それは決して同じことの繰り返しではないし、アメリカというお手本があるわけでもない。

その意味で、かつての高度経済成長期の官僚たちよりももっと強靭で夢のあるヴィジョンが必要とされるだろう。

■複雑系的に考えるならば、たぶん、それは誰がいうともなく生まれてくるモノに違いない。

問題なのは、自然発生的に生まれてきたその芽に気付き、育てる人の存在なのだと思う。

これからの10年。

東京オリンピックもあるかもしれないし、新しい東京タワーも立つわけで状況は万全。

楽観的に眺めてみようじゃないか。

(↑って、なんで参加意識がないの?、(笑))
   

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                           <2009.07.11 記>

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【原作】官僚たちの夏 (新潮文庫)
城山三郎 著 新潮文庫 (1980/11)

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■STAFF■
原作 : 『官僚たちの夏』 城山三郎著 (新潮文庫刊)
脚本 : 橋本裕志
演出 : 平野俊一 大岡進 松田礼人
 
主題歌 : コブクロ『STAY』
音楽 : 佐橋俊彦
 
制作統括 : 貴島誠一郎
プロデューサー : 伊佐野英樹 真木 明
製作著作 : TBS 
 
  
■CAST■
風越信吾 : 佐藤浩市
庭野貴久 : 堺雅人
鮎川光太郎 : 高橋克実
西丸賢治 : 佐野史郎
丸尾要 : 西村雅彦
牧順三 : 杉本哲太
山本真 : 吹石一恵
御影大樹 : 田中圭
風越道子 : 床嶋佳子
風越貴子 : 村川絵梨
 
片山泰介 : 高橋克典
玉木博文 : 船越英一郎
池内信人 : 北大路欣也
 
<第1話ゲスト出演>
朝原太一 : 蟹江敬三
朝原弥生 : 市毛良枝
日向毅 : 加藤虎ノ介

 

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■トラックバックさせていただきます■
’まぁ、お茶でも’ さんの「《官僚たちの夏》#01」
 

リンク: 佐藤浩市 ドラマ好調!.

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2009年7月 5日 (日)

■ああ、アメリカよ。『爆笑問題のニッポンの教養』 日米関係史、阿川尚之。

今回のテーマは、日米関係史。

File077_us_ilove_you_2
■ 爆問学問『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE077: 「U.S. I LOVE YOU」 2009.6.30放送
慶應義塾大学教授
日米関係史・米国憲法史 阿川尚之。

■アメリカってなんだろう。

阿川先生の見るアメリカは、多様性に富んだ自由な国。

太田の見るアメリカは、大国の正義を押し付ける尊大な国。

きっとどちらも本当のアメリカなのであろう。

■感覚的には、太田の言うアメリカの方が理解しやすく、すっと入ってくる。

特に、ソ連崩壊後に唯一の超大国となってしまったアメリカは、自由主義の旗頭という役割を喪失し、それ故に各地の紛争に関わる大義が見えにくくなってしまった。

それまでのアメリカの覇権主義が良かったとはいえないが、大義名分を失ったアメリカに世界の批判が集中するのもやむを得ないことなのだ。

■アメリカを擁護する阿川先生は、その問題を正面から答えることを避けているように見える。

と、いうよりも、関心事が別のところにあるといった方がいいかもしれない。

巨大なバケモノと化してしまったアメリカについて語るのではなく、その本来の姿について広く理解を得ることで、それはバケモノなんかじゃない、という伝道をおこなっている、ということなのだろう。

■アメリカを批判するのは簡単なことである。

けれど、その前にアメリカという国の成り立ちを知ること、実際のアメリカ人と友人となって語り合うことが重要だ、という阿川先生の意見は非常に正しいように思える。

たぶん、それでも、アメリカという国に対する批判的精神が変わることはないのだろうが、その批判に幅が出ることは確かであろう。

やはり、知ること、というのは大切なことなのだ。

 

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                                                 <2009.07.05 記>

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Photo
■ 憲法で読むアメリカ史(上)
阿川 尚之 著 PHP新書 (2004/9/16)
         

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2009年7月 1日 (水)

■【書評】『武装解除 ―紛争屋が見た世界―』 伊勢崎賢治 著。平和は正義を曲げてでも手に入れる価値のあるものなのだ。

日本人にもこんな人がいたのかと驚いた。

まだまだ日本人も捨てたものじゃないのである。

Photo_2
■ 武装解除 -紛争屋が見た世界
伊勢崎賢治 著 講談社現代新書 (2004/12/18)

 
■著者の伊勢崎さんは東チモール、シエラレオネ、アフガニスタンといった地で活躍した紛争解決の専門家であり、現在、戦地から離れて大学の教壇に立っている人である。

こんな人に世界の現実を教授され、思考と議論の機会を与えられる学生は幸せ者である。

そして、その一部を垣間見ることができそうなところがこの本の魅力なのだ。

■紛争解決に向けた手順に、DDR(Disarmament,Demomilization,Reintegration)という活動がある。

・武装解除(各軍事勢力からの武器を回収)、

・動員解除(指揮者の解任、組織の解体)、

・社会再統合(市民生活に戻るための教育などの復員事業)

の3つの活動からなるもので、国家再建のための首長選挙・議員選挙を成功に導くには、法と秩序の回復と治安の保証が必須であり、DDRは避けて通れない重要な活動なのである。

■伊勢崎さんは東チモールでは国連から委任された県知事として平和維持軍を統制して治安の維持に当たり、シエラレオネでは国連PKOのもとDDRを統括する立場で現場を引っ張って内戦終結へと導き、その後、アフガニスタンのDDRを担当することになった日本政府の特別顧問として2004年3月までの1年間をアフガンで過ごした。

すごい人である。

こういう感心の仕方は落合信彦以来かもしれない。

■と、感心ばかりしているわけにはいかない。

上手い話ばかりではないのだ。

シエラレオネではDDRを成功させるために、自国民を大量に虐殺し、腕を切断するといった残虐な行為を繰り返してきた武装勢力に恩赦を与えざるを得なかった。

そんな身を切られるような思いをしてまでも、内戦状態を停止させ武装解除を進めることは重要なのである。

内戦の原因は貧困だ、などという人がいるが、著者はその欺瞞を批判する。

そういえば、先に読んだジャン・ジグレールの本でも貧困、飢餓の大きな要因のひとつとして内戦を上げていた。

ここでは内戦は結果ではなく原因なのである。

■こういったキレイゴトだけでは前に進んでいかない泥臭い武装解除活動を行ってきた伊勢崎さんが、本書の結びで語っている。  
 

 現在の日本国憲法の前文と第九条は、

 一句一文たりとも変えてはならない。

  
日本人は憲法に守られた受益者として、その意味を深くかみ締める義務がある、と思う。                             

                           <2009.06.30 記>

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■ 武装解除 -紛争屋が見た世界
伊勢崎賢治 著 講談社現代新書 (2004/12/18)

     

日本国憲法 前文(後半部分、抜粋)

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。(1946年11月3日公布)
  
   

    
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2009年6月27日 (土)

■【書評】『世界の半分が飢えるのはなぜ?』。飢餓を取り巻く構造と、私が生きている世界の構造はつながっているのだ。

父と息子の対話というカタチを通じて、飢餓とその周辺にある問題に対して多面的な見方を示し、育ててくれる、そういう本である。

Photo_3
■ 世界の半分が飢えるのはなぜ?
―ジグレール教授がわが子に語る飢餓の真実

ジャン ジグレール 著、 たかお まゆみ 訳、勝俣 誠 監訳

■FAO(国連食糧農業機関)の1999年の統計によると、世界で「深刻な飢餓状態(明日、餓死してもおかしくない状態)」の人びとは3000万人。その背後に「慢性的な栄養不良」の人々が8億2800万人いるという。

世界が100人の村だったら、でいえば14人が飢えに苦しんでいるという計算になる。

■これを多い数字ととるか、ふーん、それくらいなのか、ととるかは人によって違うだろう。

それは飢餓が発生している仕組みの理不尽さについてどれくらい知っているか、そして何よりも実際の飢餓をどれくらい肌身でわかっているかによって違ってくるのだろう。

■著者のジャン・ジグレールさんは、1934年生まれのスイスの人で、現場を渡り歩く実証的な社会学者であり欧州でもっとも知られた飢餓問題の専門家だ。

起きている事実を分析し、要因を切り分けて考える論理性がしっかりしていて妙な感情論にばかり流されない。提言も極めて具体的。

その一方で飢餓の問題に横たわる構造的理不尽さ(我々は無関係ではないということだ!)に対して時折みせる剥き出しの感情があって、そこが深い共感を呼び込む。

■そういうジグレールさんの「語りかけ」を聞いているうちに、飢餓に対する意識が確実に変わっていく。

それだけではなく、紛争、市場原理主義、環境破壊といった飢餓の元凶に対してその人なりのモノの見方が生まれてくる。

■飢餓の最前線を歩んできたジグレールさん。

その真実味のある言葉を受けた息子のカリムは、それを自分の言葉に置き換えていくであろう。

その過程でカリム自身のオリジナルのモノの見方が構築されていく。

それが、この本を読み終えた私のなかで今起きていることなのである。

■この本の原著が出版されたのは1999年であって、9.11のテロも、それに続くイラク戦争も起きてはいないし、現在進行している市場原理主義を元凶とした世界同時不況の影もない。

けれども、そういった時間軸でのハンディキャップが気にならないのは、そこに語られているのが’出来事’を’構造化’し、本質に迫ったものであるからだ。

だから、古びない。

いや、むしろ、この本を読んで自分のなかで変化、生成した「世界の捉え方」、その捉え方によってその後の出来事について考えることが、ひとつのテストなのだと思う。

その意味で、若い人に是非とも読んで欲しい本である。

  

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                          <2009.06.28 記>

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■世界の半分が飢えるのはなぜ?
―ジグレール教授がわが子に語る飢餓の真実

ジャン ジグレール 著、 たかお まゆみ 訳、勝俣 誠 監訳
   

   
■関連記事■
■無邪気なわれわれの罪について考える。『爆笑問題のニッポンの教養』 農学、岩永勝。

        

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2009年6月26日 (金)

■マイケル・ジャクソン死去。享年50歳。

東スポ1面の常連さんになってからのマイケル・ジャクソンについてはよく知らないが、少なくとも1983年、高校生だった私の目を釘付けにした「スリラー」でのあなたは真実だ。

Photo

                           <2009.06.26 記>

■【Youtube 動画】『 スリラー 』プロモーション・ビデオ
■監督は『ブルース・ブラザース』のジョン・ランディス、
特殊メイクはSFX界の大御所リック・ベイカー!
   

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スリラー 25周年記念リミテッド・エディション(DVD付)

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2009年6月25日 (木)

■「生命」とは全体の動き、そのものなのだ。『爆笑問題のニッポンの教養』 複雑系科学、池上高志。

今回のテーマは、複雑系科学。

Photo
■ 爆問学問『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE075:「博士が愛した『イノチ』」 2009.6.16放送
東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻 
複雑系科学 教授 池上高志。

■何も刺激を加えていないのにひとりでに動き出す脂肪膜につつまれた擬細胞。

円筒の中の水をゆっくり回してやると生まれてくる不思議な模様。

パソコンの画面のなかであたかも生きているかのように振舞うドットのカタマリ。

実に面白い。

■池上先生の研究は、その「面白い」に注目する。

一般的な科学が、判っていることを積み上げて全体像を語ろうとするのに対して真逆のアプローチなのである。

とにかくやってみよう、見てみよう、

そこからものごとを考えよう、

というその姿勢は、きっと2000年前の科学者(哲学者)に近い、より純粋なものなのかもしれない。

■太田さんも(既成のものを)破壊してみては?

と水を向けられた太田は生真面目に答える。

自分が考える’飛びぬけたもの’というのは、滑走路を飛び立つ飛行機のように、既成の地道な努力の積み重ねの先にあるものだ。

時々、突飛なことをやって、基本からはずれたところから始める人たちがいて、お笑いの世界にもあるのだけれど、それは違うと思うのだ、と。

■守、破、離、

なんてことをいうけれど、泥臭く地道な「守」無くして、「破」も「離」もあったもんじゃない。

まったく太田と同感だ。

■多分、池上先生のいう「新しいことを意識的につくる」というのも、十分すぎるほどに泥臭い調査、仮説、実験のトライアンドエラーを繰り返した上での「破」であって、その土台には無意識にかもしれないが、確実に「守」があるのだと思う。

だからこそ、池上先生のつくる「突飛なもの」が面白いのであるし、科学的好奇心をくすぐるのである。

■気象にしろ、経済にしろ、よくわからない振る舞いをするもの(複雑系)を捉えるのに、地球シミュレーターのような馬鹿でかいコンピューターで予測をしよう、なんていうアプローチが主流のように思えるのだが、果たしてそれは正しいのだろうか。

結局は小さく細分化されたセルに対して既存の方程式を組み込む試行錯誤に過ぎないのではないか。(競馬の予想屋と何が違うというのだ!!)

■そういうことじゃなくて、「全体の動き」そのものに着目する。

それは今まで語られてきた「科学」では無いのかもしれないし、ただ面白いだけで、複雑系の仕組みを解き明かすまでには至らないかもしれない。

けれど、それでいいじゃないか。

面白いことに、ここに来て「科学」という活動自体がひとつの複雑系になりつつあって、それが臨界を突破してあたらしい「自律的なカタチ」を生み出すとするならば、そこには池上先生のような突飛な多様性こそが必須のものと思えるからなのである。

  

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                                                          <2009.06.25 記>

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■ カウフマン、生命と宇宙を語る―複雑系からみた進化の仕組み
スチュアート カウフマン 著 日本経済新聞社 (2002/09)
■複雑系科学の到達点と謳われる本。
一度しか読んでいないのでまだ理解度は浅いが、それでも十分に感動ものだ。
そのうち再読して記事にしたいと思っている本のひとつなのだが、いつになることやら・・・(苦笑)。
  

Photo_2
■動きが生命をつくる―生命と意識への構成論的アプローチ
池上 高志 著 青土社 (2007/09)

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2009年6月21日 (日)

■ドラマ『刑事一代 平塚八兵衛の昭和事件史』。「現場」と「人間」は時代を超えて通用するか。

ここまで引き込まれるドラマも久しぶりである。

Photo

■演出も脚本も美術もいいんだろうけれど、飛びぬけて役者がいい。

八兵衛の相棒を演じる高橋克実も、ふたりの上司を演じる柴田恭兵も素晴らしいのだけれども、キャスティングの妙と言えなくも無い。

そのなかで圧倒的に光るのが主演の渡辺 謙だ。

平塚八兵衛の火の玉のような生き様を内側から滲み出るように演じきる。

その迫力がその他きら星のような豪華キャストの各々の演技に良い影響を与え、さらに引き上げているように思える。

■土曜日放送の前編では、帝銀事件、警備員殺人事件について語り、吉展ちゃん誘拐事件担当に引き抜かれたところで終わる。

昭和38年のここまでは戦時中の匂いがまだそこここに漂っていて、八兵衛の火の玉が生きる土壌がまだあるのだけれど、昭和43年の三億円事件あたりから時代が高度成長期へと移っていく。

1970年の万博音頭が能天気に流れる中で、時代遅れといわれてしまいそうな八兵衛のやり方が一体どういう影響を受けるのか、とても興味深い。

それは「現場」と「人間」にこだわり続けるやり方が時代を超えて通用するのか、という問いであり、決して過去の問題ではなく、今現在の問題でもあるのだ。
   

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                                                          <2009.06.21 記>

■追記■
■第2夜。

萩原聖人、よかったなあ。

取調べの時の心理戦の表情もよかったし、落ちたときの一気に噴出す感情の描写も迫力だった。

萩原聖人は久しぶりに見たのだけれど健在ですね。

あとは、病床で表彰をうける高橋克巳。

ベタだけど、つい泣けてしまった。

■ドラマの方は、ラスト近くの演出過剰は気になったけれど、吉展ちゃん誘拐事件のお話はその濃さに圧倒されました。

いやー、実に贅沢なドラマ、満足です。

                        <2009.06.22 記>

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■[原作] 刑事一代―平塚八兵衛の昭和事件史
佐々木 嘉信 著, 産経新聞社 編集 新潮文庫(2004/11)

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■STAFF■
監督: 石橋冠
脚本: 長坂秀佳、吉本昌弘
音楽: 吉川清之
制作:テレビ朝日

  
■CAST■
平塚八兵衛(警視庁捜査一課刑事) : 渡辺謙
石崎隆二(捜査一課刑事。八兵衛の相棒) : 高橋克実
草間毅彦(警視庁捜査一課刑事)   : 山本耕史
尾藤和則(警視庁捜査一課課長代理): 大杉漣
加山新蔵(警視庁捜査一課主任)   : 柴田恭兵
* * * * * * *
平塚つね(八兵衛の妻)          : 原田美枝子
* * * * * * *
平沢貞通(帝銀事件の容疑者)     : 榎木孝明
平沢咲子(貞通の娘)           : 木村多江
* * * * * * *
森川剛三(警備員殺人事件の容疑者) : 杉本哲太
森川八重子(剛三の妻)         : 余貴美子
* * * * * * *
小原保(吉展ちゃん誘拐殺人事件の容疑者): 萩原聖人
* * * * * * *
岩瀬厚一郎(社会部新聞記者)     : 小泉孝太郎
吉崎真由(新聞カメラマン)        : 相武紗季

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■刑事一代 平塚八兵衛の昭和事件史 番組HP

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2009年6月17日 (水)

■【映画評】『ハゲタカ』 一体どうしたっていうんだ。劇場まで足を運んで見たかったのはNスペじゃないんだぜ?

説明するまでもなく、名作ドラマ「ハゲタカ」の劇場版。

今一番ホットな自動車業界を舞台にどんなドラマを展開するのかワクワクして見たのだけれど、どうにも複雑な気分になってしまったのである。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.29  『ハゲタカ
          監督: 大友啓史 公開:2009年6月
       出演: 大森南朋 玉山鉄二 他

01

■ストーリー■
世界金融危機 前夜。日本のマーケットに絶望し、表舞台から姿を消した天才ファンドマネージャー・鷲津の元に、かつての盟友・芝野が現れる。中国系巨大ファンドが買収に乗り出した、大手自動車メーカー「アカマ自動車」を危機から救ってほしい、というのだ。日本を代表する大企業「アカマ」の前に突如現れたのは、“赤いハゲタカ”こと劉一華(リュウ・イーファ)。豊富な資金を背景に、鷲津を圧倒し続ける劉ら中国ファンドの真の目的とは!?
<goo映画より>

Photo_2 Photo_5 Photo_3

■鷲津が、三島由香が、西野が、そして芝野が帰ってきた。

それだけで満足するべきなのかもしれない。

あの音楽も、青いトーンも健在で、セリフに頼らない表情と仕草による抑えた演技・演出も素晴らしい。

けれど、どうしても乗り切れなかったのである。

可愛さ余って、

などと言い訳をしながら、そこのところを考えてみたいと思う。

■’赤いハゲタカ’劉一華(リュウ・イーファ、玉山鉄二)が大手自動車メーカーに襲い掛かる前半部分は文句なしにいい。

リュウ・イーファと鷲津の手に汗握るTOB合戦が実にいい。そこで敵の正体が’赤い国家’であることが判るあたり、その絶望感が素晴らしい。

この絶望的な状況をどう切り抜けるのか、それとも!!というドキドキ感が否が応にも盛り上がる。

と、ここまではいつものハゲタカ節炸裂で安心して見ていられたのである。

■ここから先がどうにも落ち着かない。

キャラクターの描きこみと動機付けが急に希薄になってしまうのである。

何故、西野(松田龍平)は猫を撫でるのをやめて、ファンドの世界に舞い戻ったのか。

何故、派遣社員の守山は働く者の権利を主張する情熱を捨てて床に散らばった銭を拾うのか。

そして何故、リュウ・イーファは本当の心を押し殺してまでハゲタカを演じるのか。

■もちろん、いろいろな推測はつくだろう。

し、語らないことで語るということだってあるだろう。

けれど、それがうまく機能しているようには思えないのだ。

なんだか詰め込みすぎ、という気がするのである。

■後半は、鷲津が反撃に出る話なのだけれども、どうもそのあたりの集中力に欠けている。

イスラム金融、リーマンショック、サブプライムローン、市場原理主義の終焉。

そういった、ここ半年のトピックスが無理に押し込まれてドラマとして破綻しかけているのである。

いや、イイタイコトはよく分かるんだけど、それは左の脳みそでの話であって、右脳直撃!!のドラマチックさが無いのだ。

■そこのところ、ドラマのハゲタカは上手かった。

当時、問題になっていた企業買収の問題をわかりやすく解説しながらも、同時に濃密に描かれたキャラクターと映像、音楽の素晴らしさで我々の右脳を揺さぶったのである。

ところがどうだ。

今回の新しいキャラクターでシッカリ人物が描けていたのは、アカマ自動車社長の古谷(遠藤憲一)くらいなものだろう。

■たぶん、テレビと劇場映画というメディアの違いが大きいのだろう。

ある程度リラックスしてみるテレビドラマと違い、劇場映画は観る者を引き込んでナンボのものである。

最近の経済の動きにおもねることで散漫になってしまった部分もあるだろうし、スポットを当てる登場人物が多すぎたきらいもある。

欲張ってはいけない。

松田龍平は猫を撫でていればいいのであるし、派遣の青年は札束には目もくれず啖呵を切って出て行けばいいのである。

主人公はリュウ・イーファでしょ?

なんでそこに集中できないのか、ということである。

■もちろん、それは釈迦に説法。

監督も脚本家もスタッフも皆、そんなことは百も承知であって、涙をのんで選択した何らかの事情があるのだろう。

けれどもファンとしては、そこをなんとか突っ張って欲しかった。

これは短期的に消費されるテレビドラマではなく、歴史に刻まれていく劇場映画なのだ。

100年に一度の経済危機がどうしたというのだ。

そんなことは些細なこと。

本質は中国とかインドとかロシアとかの新興国が圧倒的な資金力で日本の技術力を札束で奪いに来たとき、我々はいったいどうするのか、ということでしょう?

真正面からそれを受け止めなくて何の「ハゲタカ」か、と強く主張したい!!

というのが、愛すればこその苦言なのである。
  

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                           <2009.06.16 記>

■追記■
DVDでディレクターズカットが見れないかな・・・。
  

 
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Photo Photo_2
レッドゾーン(上) レッドゾーン(下) 真山 仁 著 講談社

   
Photo_3 [ドラマ] ハゲタカ DVD-BOX
    

■STAFF■
監督: 大友啓史
脚本: 林 宏司
原作: 真山 仁 『ハゲタカⅠ』、『ハゲタカⅡ』、『レッドゾーン』(講談社)
音楽: 佐藤直紀
撮影: 清久素延
美術: 花谷秀文
照明: 川辺隆之
編集: 大庭弘之
製作: NHKエンタープライズ、東宝


■CAST■
鷲津政彦 -鷲津ファンド代表     大森南朋
劉一華 -ブルーウォールパートナーズ代表  玉山鉄二
* * * * * * * * * *
三島由香-東洋テレビ記者        栗山千明
西野治 -西野屋旅館社長        松田龍平
飯島亮介-MGS銀行頭取        中尾彬
芝野健夫 -アカマ自動車取締役  柴田恭兵
* * * * * * * * * *
守山翔 -アカマ自動車派遣工     高良健吾
古谷隆史-アカマ自動車代表取締役社長  遠藤憲一
* * * * * * * * * *
中延五郎 -鷲津ファンド社員    志賀廣太郎
村田丈志 -鷲津ファンド社員    嶋田久作

Photo_4
■アカマGTカッコよかったね。ベースはなんじゃろか。 


■映画 ハゲタカ 公式サイト■

    
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2009年6月15日 (月)

■【書評】『名前と人間』、田中克彦。名前という多様性の花。

さまざまな例をひいて「名前」は生きていると実感させる面白い本である。

Photo_2
■名前と人間 田中 克彦 著、岩波新書 (1996/11)

■ここでいう名前とは固有名詞のことである。

赤とか、花とか、山とか、そういった一般に通用し生活していくうえで必要な普通名詞に対して、ここでは固有名詞は峻厳に区別される。

何故ならば、著者の田中先生は固有名詞を(半ば面白おかしく、半ば真剣に)憎悪しているようなのだ。

■歴史の本を開けば、そこには固有名詞の雨あられであり、教科書においては「それを記憶せよ」という暴力的権威主義に満ち満ちている。

そこには数学や哲学の本のような普通名詞で語られる学問の爽やかさがなく、ケガレているのだという。

■だがその一方で、固有名詞には極めて人間的な要素がこびりついていて、好むと好まざるとに関わらずその言葉固有の物語をその内に含んでいる。

そのことが、固有名詞に対する想いをさらに複雑にさせているように見える。

■19世紀半ば、J・S・ミルは論理学のはなしの中で、固有名詞は普通名詞から意味を取り去ることで成るとした。

「ベイカー」さんという苗字に「パン屋」という意味がくっついていては調子が悪い、ということである。

それはなるほどその通り。

けれども、ベイカーさんという人を知ったときに我々は
 

あ、この人の先祖はパン屋さんだったのかもしれないな、

 
なんていう想像をしてしまい、ベイカーさんはパン屋から自由になることは難しい。

その意味で現実の固有名詞はJ・S・ミルの愛する論理学の世界のようには爽やかにはいかず、どうしても何らかの意味を引きずってしまうのだ。

■「千と千尋の神隠し」において、湯バア婆が千尋(ちひろ)の名を千(せん)に変えてしまう話がある。

ここで興味深いのは、異界で生きるための名前、千(せん)と呼ばれ続けた彼女が、いつの間にか自分自身も本当の名前を忘れかけてしまうことで、もとの世界での自分自身(存在)も同時に消えかけてしまう、そういう恐ろしさが暗示される場面だ。

この神話的なエピソードが我々をひきつけるのは、「名前には意味がある」というだけでなく、「名付けられる対象が名前の通りになっていく」というイメージを心のどこかで了解しているからなのではないだろうか。

■それはサッポロ、メマンベツ、オビヒロというアイヌ語を入植者が札幌、女満別、帯広と表記したときに消え去ってしまったものである。

そこで失われるのは意味だけではなく、これまで引き継がれ息づいていた固有の文化なのだ。

名前とは、歴史の教科書という標本箱の中に収めるものではなくて、今、この生において声に出して呼びかけることではじめて在るものなのかもしれない。
  

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                           <2009.06.15 記>

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■名前と人間 田中 克彦 著、岩波新書 (1996/11)
   

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■ことばと国家  田中 克彦 著、岩波新書 (1981/11)
■母語、という概念をこの本で学びました。
昔、教科書で読んだ「最後の授業」についてフランス人の独善が暴かれる話も小気味良かったです。

   
■関連記事■

■コトバの支配からの逸脱。『爆笑問題のニッポンの教養』 社会言語学・田中克彦。
 

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2009年6月14日 (日)

■かぐや、月に還る。

■2007年9月14日の打ち上げ以来、17ヶ月余りにわたり月の全球を観測した月周回衛星「かぐや」を、日本時間6月11日(木)3:25、東経80.4度、南緯65.5度へ制御落下させました。
<JAXAプレスリリースより抜粋>

Photo
■かぐや搭載のハイビジョンカメラ(広角)による「地球の出」の撮影結果平成19年11月7日14時52分(日本時間)

■38万Km離れた月から見ると、

地球はこんなにもちっぽけで頼りないものなのか、

なんて感じ入らせてくれたりした月周回衛星「かぐや」。

  
お疲れ様でした。

                            <2009.06.13 記>

■<月周回衛星「かぐや」観測映像>

■「かぐや」HDTVによる満地球の出(2008年4月5日)

■「かぐや」HDTVによる地球のダイヤモンドリング
(またはコチラ)

■回転する月の動画

**********************************************

   
■関連記事■
■地球がとっても青いから。月周回衛星「かぐや(SELENE)」から見た「満地球の出」。

 
■過去の記事■ 飛行機、宇宙の話など  
    

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2009年6月 9日 (火)

■無邪気なわれわれの罪について考える。『爆笑問題のニッポンの教養』 農学、岩永勝。 

今回のテーマは、農学。

Photo_2
■ 爆問学問『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE072:「お米レボリューション」 2009.5.26放送
独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構
作物研究所 所長 岩永勝。

■日本の食料自給率は40%なのだそうで、先進各国のなかでもダントツのビリなのだ。

岩永さんはそんな危機的状況を打開すべく日本に呼び戻された、のかどうかは分からないけれども、30年間にわたる海外での作物の研究と発展途上国での指導経験を買われたのは確かだろう。

■いやいや、食料自給率が低いといったって比較するアメリカとかフランスとかは大平原を持つ農業国、極めて平地の少ないわが国と比べるのは的を得ない、

とか、

そもそもエネルギー自給率4%の日本で食料の自給率だけを問題にするのはナンセンス、

とか、

■ついつい、そういった知ったような口をききたくなってしまうのだけれども、どうやらそういうことではないらしい。

岩永さんが日本の食料自給率を問題にする理由は、日本の危うさの問題ではなく、日本が海外市場で買い占めることによって値段の高騰した穀物を手に入れることが出来きなくなる貧しい国々が出てきてしまう、その罪意識にある。

■ルワンダの友人が惨殺された話があって、そこに、「戦争の原因は食料なのだ、ハラが減っている人たちに対して何を言っても通じないのだ」、という話を重ねてみるとき、想像の枠の外側にある極めて重たいものの存在に慄然とする。

一世紀に一度の不況だなんだといっても、今の日本で食料暴動が起きる心配は無いし、太平洋戦争前夜のような絶対的孤立に陥らない限り、これからもきっとないだろう。

したがってアフリカ各地で起きていることについて新聞やネットで読んだからといって「知っている」なんて決して言えないのである。

それは金満・飽食ニッポンに住む者の想像力の遥か向こう側の話なのだ。

■食いものが足りないと世界中から食料を買い漁ること。

それを食いきれずに、或いはハシをつけることもなく廃棄すること。

言い換えるならば、われわれにとって当たり前の日常を水面下で支えているそういった現実が、貧困と飢餓に苦しむ人たちの目にどう映るか、ということである。

■ならば、どうするか。

といっても’生活’というものはなかなか変えようとして変わるものでもないし、中身を伴わなければ意味も無い。

だから、今できることとして、「知る」ことなのだと思う。

この一日に世界中で何人の人が飢餓で死んでいくのか。

私自身、それが数人レベルなのか何万人なのか、ということすらまったく知らない、せめてこの現状を何とかしたい。

まずは、そこからなのだろう。

知らないことによる無邪気さの罪は、見る立場によっては万死に値することもあるのだ。
  

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                         <2009.06.09 記>

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■ 食料自給率のなぜ (扶桑社新書)
末松 広行 著 扶桑社 (2008/11/27)

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■ 世界の半分が飢えるのはなぜ?
―ジグレール教授がわが子に語る飢餓の真実

ジャン ジグレール 著 合同出版 (2003/08)
   

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2009年6月 7日 (日)

■とっとと選択肢から外してしまえ。F-22・ラプター、日本に輸出するなら一機、250億円!

馬鹿にするにも程がある。

F_22_2
■タキシングするF-22。最早、この機体が日の丸をつけることはないだろう。

■重要機密ということで国外への輸出を規制されているF-22・ラプターだが、民主党の重鎮ダニエル・イノウエ上院歳出委員会委員長は輸出規制の緩和への期待を表明するとともに、日本へ輸出する場合は一機あたり2億5千万ドル(約250億円)になると米・国防長官と日本の駐米大使に伝えたらしい。

政治的メッセージってヤツなんだろうけど、こいつはあんまりだ。

■何しろ4月にF-22生産中止案が出て60機増産の話はパー。それじゃ軍産複合体も困ってしまうってんで、ならば丁度同じくらいの機数を欲しがってるニッポンに売ればいいだろう。

それで大事なところを引き抜いた上で米軍調達価格に100億円上乗せと来たもんだ。

まったく馬鹿にした話である。

■もうそろそろラプターなんてオモチャを買ってと駄々をこねるのはおしまいにして、渡りに船のF-15SE(一機、1億ドル也)で手を打っておいて、ポストF-15で純国産第5世代戦闘機にしたらいい。

その為のATD-X・心神だろう。

次期中期防の初年度である10年度の予算請求に次期主力戦闘機調達予算は盛り込まれないようで、これじゃあ、ずるずる後まわしになるばっかりじゃないか。

そろそろ誰かガッツのある奴が、アメさんを向こうにまわして将来の日本の戦闘機構想をビシッと決めたらんかい!!

と思うのだけれども、いかがなものであろうか。

FS-Xの二の舞は是非とも避けて欲しいものである。

   

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                          <2009.06.07 記>

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F22
■ F-22はなぜ最強といわれるのか
ステルス、スーパークルーズなど最新鋭戦闘機に使われるテクノロジーの秘密に迫る

青木 謙知 著 サイエンス・アイ新書 (2008/12/16)

    
■【動画・Youtube】T-38でF-22を撃墜!!模擬戦・HUD映像。
・・・だから何だ、というワケではないですが、面白いので載せときます。
  
  

■関連記事■
■F-22生産中止!?どうなるF-X!!

■F-15SE(Silent Eagle)、ちょっと工夫でこのうまさ。
 

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2009年6月 6日 (土)

■サバイバル・テクノロジーという発想。『爆笑問題のニッポンの教養』 触媒化学、原亨和。

今回のテーマは、触媒化学。

Photo
■ 爆問学問『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE069:「永久エネルギー誕生!」 2009.4.21放送
東京工業大学教授
機能セラミックス・触媒 原亨和(はらみちかず)。

■石油化学の領域で、触媒としての硫酸が欠かせないものだなんて初めて知った。

で、実際の処理工程を見てみると、反応前後で変化しないのがミソの触媒なのにも関わらず、目的の物質を取り出すためにわざわざ中和処理をして硫酸でなくしてしまうのは確かに賢くないなあと思う。

■そこで原先生が硫酸と’炭’とを混ぜてやって作り出したのが「カーボン固体酸」というやつで、これなら生成物をろ過してやるだけで分離でき、そのまま何度でも使えるスグレモノ。

こいつを使ってやれば、木屑とか雑草なんかを反応させて砂糖をつくり、そこから石油代替物質としてエタノールが手に入る、という’エコ’な時代が求める画期的技術なのだ。

■そこで胡散臭いと思わせないのは、原先生は決してこの技術で環境問題や石油危機の問題が根本的に解決できるなどと大風呂敷を拡げないからである。

そこには少年時代に体験した石油ショック(当時10歳くらい?)が切っ掛けで、なんとかこの豊かな生活を維持しながら生き延びたいという、今でいうサスティナビリティ(持続可能性)を先取りした強い思いがある。

根っから真面目なのである。

■より少ないエネルギーで求めるものを手に入れることが出来る技術、サバイバル・テクノロジーといっていたか、その考え方が印象深い。

確かに、我々はそこを見誤りがちなのである。

■使い捨ての牛乳パックと、リユースが出来る牛乳ビン。

どっちが’エコ’かといえば誰でも牛乳ビンだと思うだろう。

けれど、よく考えてみれば牛乳ビンは重いからその分輸送費は余計にかかるし、回収はもちろん、洗浄、消毒なんかの手間もかかる。

「消費者が牛乳を飲む」ということに対してどちらがトータルで消費エネルギーが少ないか、そうやって真面目に考えてみると、牛乳ビンが本当に’エコ’なのかどうなのか何だかあやしくなってくる。

■そう言うと、「いやいや、誰が何と言おうとリターナルビンはエコなのだ、これに反対する人は反エコなのだ」なんて自称・環境にやさしい人たちからマナジリを結して批判されそうなのだけれども、冷静に、トータルで考えることが必要だし、先生の仰るとおり、結論がスグには出ない問題だったりするものだから、常にアタマの柔軟さが求められる。

それはコンビ二袋の話であったり、割り箸の話であったり、ハイブリッドカーの話であったりするわけで、達成手段が目的化してしまい、根本的な議論がなおざりにされるのはヨロシイことではないのである。

■テクノロジーを生み出す立場人間がそういう広い視野と柔軟性をもっていること。

先生の真面目さと謙虚さを見ていて、しみじみと心に響いた。

サバイバル・テクノロジー。

技術屋の端くれとして、その思想、しかと心に刻み込みたいと思う。
 

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                           <2009.06.06 記>

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■ Sustainable Design[サステイナブル・デザイン]
デザイナーと企業が取り組むべき環境問題

Aaris Sherin (著), 石原 薫 (翻訳) ビー・エヌ・エヌ新社 (2009/4/25)

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■言葉にした瞬間に消え去ってしまうものがあるのだと分かっていたとしても。『爆笑問題のニッポンの教養』 文化人類学、川田順造。

今回のテーマは、文化人類学。

Photo
■ 爆問学問『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE073:「人類よ声を聴け」 2009.6.02放送
東京外語大名誉教授 文化人類学 川田順造。

■文化人類学っていうと何故か少しマユにつばをしたくなるのであるが、さすが’巨人’ともなると雰囲気がある。

新婚時代に未開の集落で日本人は奥さんとふたりだけっていう状況もすごいんだけど、そのうち日本語がめんどくさくなってくる、っていう話に唸らされた。

そうか、言葉ってそういうものなのか、と新しい角度からの光が差し込んだ感じ。

■このにこやかで柔らかくも、鋭く深い感覚はどこかであったな、と思ったら、水木しげるさんだ。

好奇心と実体験と才能に溢れていてそれが渾然一体となって、そこにある。

言葉を介さずに太鼓の音で直接語る民族の話とかを聴いていて、そのまま引きずり込まれて眠っていた新たな感覚を呼び起こされる感覚だ。

それは理屈による理解の対極にある。

■そのなかで太田の「ガンバレ」論が光っていた。

「ガンバレ!」

と相手を励ますとき、相手は「こんなに頑張ってるのに、」っていう責められる感覚を覚えたりするのだけれども、だから「ガンバレ!」と言うのを諦めるのではなくて、何とかそれを伝えたい。

相手に「もっとガンバレ」とプレッシャーをかけるつもりはまったく無くて、でも「あとチョッと!」というニュアンスも少しはあって複雑なのである。

■すごく分かる。

何か言葉にならない、’うめき’のようなもので表現したくなるようなもどかしい感じ。

先生がいう「伝えたいことが、脳から言葉を経由せずに指先から直接太鼓に伝わって音となる」豊かさがあって、言葉にした途端に消え去ってしまうもの。

■われわれが会話において相手に伝えることのうち、言葉で伝えられていることは実に一割程度しかない、という話がある。

目であったり、表情であったり、身振り手振りであったり、そういうことが「感覚」として相手に伝わって、その体内に身体感覚として再生される、それが伝達の9割を占めるというのだ。

何をもって9割というかはよく分からないが、ナルホドと思わせる話である。

■じゃあ、川田先生の新婚時代のように言葉を使わずにやっていけるかというと、そういうものでもないだろう。

言葉にした瞬間に消え去ってしまうものがあるのだと分かっていても、我々は言葉を使わざるを得ない。

たとえそれがモドカシイものであったとしても、「一対一」の見つめ合いだけでこの文明を維持できるはずもなく、もうエデンの園へと戻ることは出来ない。

だから、ひたすら表現を磨くのである。

     

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                           <2009.06.05 記>

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■口頭伝承論〈上〉川田 順造 著 2001/04 平凡社ライブラリー

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2009年5月29日 (金)

■【映画評】『ブリキの太鼓』。あの小人たちは何処へいってしまったのか。

いやーな味の映画である。

それでいて観る者をつよく惹きつけて放さない。

’毒’とは、そういうものなのだろうか。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.27  『 ブリキの太鼓
           原題: Die Blechtrommel
          監督 フォルカー・シュレンドルフ 公開:1979年5月(ドイツ)
       出演: ダーフィト・ベンネント アンゲラ・ヴィンクラー 他

          Photo

■いろいろと解釈が出来そうな映画なのだけれど、安易に進めば泥沼にはまってしまいそうな予感を含んでいる。

理屈ではなくて、作品そのものが放つ’毒’をそのまま満喫する、というのが無難な観かたなのかもしれない。

■ストーリー■
1899年、ポーランド・ダンツィヒ。

郊外のカシュバイの荒野で4枚のスカートをはいて芋を焼いていたアンナは、その場に逃げてきた放火魔コリャイチェクをそのスカートの中にかくまい、それが因でアンナは女の子を生んだ。

1924年、アンナの娘・アグネスは成長し、ドイツ人のアルフレートと結婚するが、従兄のポーランド人ヤンと愛し合いオスカルを生む。

3歳の誕生日を迎えたオスカルは母アグネスからブリキの太鼓を買い与えられるが、その晩、大人たちの醜い世界を覗き見て嫌気がさし、階段から落ちることで自らの成長を止める。それとともに彼は太鼓を叩きながら奇声を発することで周囲のガラスを破壊する能力を得る。

ナチスの台頭が町を脅かす中、密会を重ねるアグネスは再びヤンの子どもを身ごもり、自殺。16歳を迎えるも幼い容姿のままのオスカルは、家にやってきた同じ年齢の使用人のマリアを愛するが、父アルフレートの後妻に納まってしまい息子を身ごもる。

失意のオスカルは、かつて友情を育んだ小人症のサーカス団長ペプラの一座と一緒にさすらいの旅に出るのだが・・・。

■[DVD] ブリキの太鼓 HDニューマスター版

Photo_2

   
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■解釈をするな、

といわれても、どうしてもいろいろと考えてしまう。

見た直後には、どこかドライな関係を残した欧米の親子関係に感じる、違和感のようなものについてぼんやりと考えていた。

けれども、記事を書くにあたってもう一度じっくり咀嚼してみると、そんなことよりもずっと「際どい」ものがそこに横たわっているのではないかという気もして、改めてそういう視点から眺めてみようと思う。

■この映画から強く受け止めたイメージは、

・祖母のスカートの中に始まるエロティシズム

・オスカルが発する奇声と割れるガラス

・サーカス団のフリークスたちの異形

といったところだろうか。

そして、その背景にナチスの台頭と崩壊という時代のうねりがある。

■このナチス(と、それに続く旧ソ連?)の抑圧を抜きにして、この物語を語るのは憚られるような気がするのだが、ポーランド人でもドイツ人でもユダヤ人でもスラブ系少数民族のカシュバイ人でもない自分が、そこに流れる何かをつかめるとは到底おもえない。

けれども、放浪者の血、という文脈でなら、この日本においても何かが見えてくる可能性はある。

■’異者’の物語といってもいい。

母と叔父から放浪者である祖母の血を強く受け継いだオスカルは明らかに’異者’である。

彼はそれを否定すべく成長を拒絶するのだが、結局、’異者’である彼が落ち着く場所は小人症の男を団長とする旅のサーカス団以外にはない。

しかも皮肉なことに、戦時下においてそのサーカスは慰問団として、本来は’異者’を排除する立場のナチスの部隊をめぐることになる。

■連合軍の侵攻から逃れ、小人の麗人ロスヴィーダの死に打ちひしがれて故郷に帰るとことなったオスカルは、そこに自らの場所を見出せない。

そして血のつながらぬ父親を罠に嵌めて殺してしまうことで、群れのなかのオスとしての地位を得ようとする。

そこで、放浪のあいだに成長し、3歳を迎えた息子(だとオスカルが信じる)の投げた石で気絶し、アタマを打ったオスカルは再び身体的な成長を始める。

■このとき、オスカルの実年齢は20歳前後。

’大人’になるにはちょうどいい頃合いだ。

祖母アンナからカシュバイ人としての生き方を聞かされたオスカルは、後を息子のクルトに託して再び放浪の旅に出るのであった・・・。

■さて、われわれの世界に目を戻そう。

われわれにとっての’異者’とは何か、という問題である。

そこでふと思うのは、かつてテレビで良く目にした小人症の俳優さんたちのことだ。

最近、すっかり目にすることがなくなってしまったのは気のせいか?

■それだけでなく、ピグミーとかホッテントットとかの’異様な’民族の映像もテレビから消えて久しい。
 

世の中から’異者’が消されている。

 
そういう印象を抱いてしまうのである。

■故郷に戻ったオスカルは、結局、再び放浪の旅に出る。

それが’異者’の定めであるかのように。

テレビの画面から消えうせた小人症の役者やプロレスラーたちも、きっとどこかで元気に暮らしているに違いない。

ただ、「テレビ」という舞台が日常の色に染まりすぎて彼らの「存在感」の強さに耐えられなくなってしまったのである。

■世はダイバーシティ(多様性)だ、なんだというけれど、所詮は日常で受け入れることが難しい’異者’は清潔なテーブルクロスの向こうにしまわれたままだ。

けれど、
 

そこの議論を抜きにして先に進めてはならない、

 
なんて優等生的なことは考えるのは止した方がいいだろう。

なぜなら、ここでかくいう私自身が’差別’に関して余りにも無知であって、実際’清潔なテーブルクロス’のこちら側しか認識できなくなってしまっているからだ。

要は、そういう自分も同じ穴のムジナだということだ。

■この映画を見たときに覚える違和感は、あえて’毒’という表現をしたが、そのテーブルクロスの向こうに追いやったものに対する感覚なのかもしれない。

今、私が感じることができるのはここまで。

あとはただ、この映画が提示してくれた’毒’に軽い酔いを覚えてその’存在’にこころを向けるだけである。

そしてオスカルは今日も放浪の空の下。

行く先は見えない。
  

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                           <2008.05.29 記>

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Dvd
■[DVD] ブリキの太鼓 HDニューマスター版

    
Photo_3
■[原作] ブリキの太鼓 第1部
ギュンター・グラス 著 (集英社文庫)
   

■STAFF■
監督 フォルカー・シュレンドルフ
製作 アナトール・ドーマン、フランツ・ザイツ
脚本 ジャン=クロード・カリエール
ギュンター・グラス
フォルカー・シュレンドルフ
フランツ・ザイツ
音楽 モーリス・ジャール
撮影 イゴール・ルター
編集 スザンネ・バロン



■CAST■
オスカル・マツェラート   : ダーフィト・ベンネント
アルフレート (父)    : マリオ・アドルフ
アグネス   (母)    : アンゲラ・ヴィンクラー
   *     *     *
ヤン     (アグネスの従兄弟): ダニエル・オルブリフスキ
マリア    (後妻)    : カタリーナ・タールバッハ

アンナ    (祖母)    : ティーナ・エンゲル、ベルタ・ドレーフス
ヨーゼフ   (祖父、放火魔) : ローラント・トイプナー
   *     *     * 
ベブラ    (サーカス団の団長)     : フリッツ・ハックル
ロスヴィーダ (サーカス団のヒロイン)  : マリエラ・オリヴェリ
マルクス (おもちゃ屋主人、ユダヤ人) : シャルル・アズナヴール

    
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2009年5月27日 (水)

■価値観の焼け野原に立つ日本は、これからが面白いノダ。「爆笑問題のニッポンの教養」スペシャル:『ニッポン チャチャチャ』(3/24放送)。

DVDを整理していて録画したまま見ていなかった特番をみつけ、2ヶ月の遅ればせながらにして拝見させていただいた次第・・・。

で、今回のテーマは大上段に構えて「日本」とは何か。

Photo
■「爆笑問題のニッポンの教養」スペシャル:『ニッポン チャチャチャ』 2009.3.24放送
●川勝平太(比較経済史) ●姜尚中(政治学) ●近藤一博(ウィルス学)
●斎藤成也(人類学) ●田中克彦(社会言語学) ●山口仲美(日本語学)

■国土を豊かにおおう山林のおかげで日本は清涼な水に恵まれている。

そういう背景があって、「日本」は水のように何でも受け入れる、水に流す、その清らかさがあって、もののあわれを知る微妙な心が生まれるわけで、黄河を眺めていてもそれは生まれない。

という、とても魅力的な論が上がった。

■確かにそうだし、誇らしい部分である。

それが江戸の文化に集約されるというイメージも分かりやすい。

けれどもその一方で、清浄な水で穢れを祓って、じゃあその穢れはどうなるのか。どこへいってしまうのか。

なんだかとても危険な議論に思えてきた。

■そういや、
 

桜の木の下には死体が埋まっている

  
なんて言ったのは坂口安吾だったか、

儚げで清らかに感じるものの裏にはぞっとするような’もの’が横たわっている・・・、

なんてことを考えていると田中先生が、

  
そんなもんじゃ’戦争’には勝てない!
 

とやってくれた、まさにそれ、リアリティの話。

■そうなんだよね。

確かにそこに日本独特の’美’はあるにせよ、それでお腹は膨らまないし、戦争にも勝てない。

多感な軍国少年時代に、’敗戦’による価値観の180度転換を実体験した田中先生の言葉だけに、本物のリアリティがある。

■’戦争’とはいっても、今の日本に課せられているのは、グローバリゼーションとの対峙である。

敗戦後、奇跡的な成長を遂げて、アメリカと再び肩を並べるに至った経済大国日本。

けれども20世紀末頃から、アメリカが牽引するグローバリゼーションという’ゲームのルール’に乗らざるを得ない状況となり、その結果がいまの日本を覆い尽くす不安の根源なのだ。

■田中先生がもうひとつ面白い話をした。
  

安倍、福田、と総理がかくも簡単に辞職する姿をみて、これは今までの日本ではアリエナイすごいことだ。

総理大臣でさえ’国家’よりも個人の論理を優先する姿をみて、アメリカ流の民主主義もここまで浸透してきたか、と感慨深い。

だから今はとっても面白い時期ナノダ。

 
というのだ。

■姜(カン)さんが補足する。

 
今は「焼け跡」なのだという認識に立つこと。
  

これは実にショッキングな発言だ。

つまりは、いま日本が直面しているのは、’敗戦’で強いられた価値観の大転換、それに等しいものだ、というのである。

 
個人、個人が自由に、経済的な豊かさを求めること。

それが幸福につながるのだ。
 

その価値観こそがアメリカをお手本として敗戦後の日本の急成長を支えたものであって、9.11同時多発テロを境にしてほころび始め、今回の大恐慌に於いて抜本的な見直しを迫られている価値観なのである。

■そんなことは分かっている、

そういうつもりであったのだけれども、敗戦の’焼け野原’をそこに重ねたとき、それが意味する深刻さが身震いするほどのリアリティをもって立ち上がってくる。

と、そのあたりで録画をミスったのかDVDが止まってしまった。

ああ、ここからが肝心なのに、と思う一方、’第二の敗戦’というイメージを獲得できただけで十分に満足できるだろう、とも思う。

■そこを出発点としたときに初めて、川勝先生や山口先生のいう’日本特有の美意識’は単なる趣味的論議から離脱し、日本のこれからのカタチを考える上での実体を伴った意味が生まれてくるのだと思う。

それが、姜さんのいう、「剥く」という行為そのものに意味を見出すタマネギ論であり、すべての歴史は現代史である。ということの意味なのだろう。

■何が正しい、とか、そういうことではないし、明快な答えが出てくるハナシでも無いだろう。

けれども、今、ニッポンは新しい時代のとば口に立っているのだという認識を実感できたのが何よりも収穫なのであった。

     

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2009年5月25日 (月)

■草食男子はスターチャイルドの夢を見るか? 『爆笑問題のニッポンの教養』 進化生物学、長谷川眞理子。

今回のテーマは、進化生物学。

File071
■ 爆問学問 『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE071:「ヒトと殺しと男と女」 2009.5.19放送
総合研究大学院大学先導科学研究科教授 長谷川眞理子。

■何が興味深かったかって、やっぱり殺人統計の話。

殺人を犯すのは圧倒的に男で、それも20代前半に突出している。しかも、世界のどこでもそれが変わらない、という話だ。

■この事実(?)からはいろんなことを考えることが出来て、例えば、世界中の’ヒト’に見られる傾向であるならば、それが遺伝子的に決定されていることだと仮説を立てることも可能だし、そうすると、生きものとしての’ヒト’のオスが繁殖期の絶頂において競争相手を’殺す’という意味付けも浮かび上がってくる。

20代前半の男性が起こした殺人の理由を調べてみると、これまた圧倒的に面子にかかわる話だったりして、その点でも先の仮説を補強するもののようにも思えてくる。

■太田は、

女は花が好きだ、

という。

それは大体において当てはまるようである。

■何故?といわれても説明はつかないだろう。

ただ、

キレイだから、カワイイから。

ということなのだろうし、男のクセに野草に惹かれる私自身、そこに理屈を見出すことは出来ない。

このあたりに、実は、今回の話の本質が隠れているような気がする。

■女は花が好きだ、

女は情緒的である。

と言い換えてみると分かりやすいかもしれない。

逆に言えば、男は論理的な考え方をする、ということだ。

■これは、一般的な見方として世間に定着している捉え方といっていいだろう。

チョッと待て!

という鋭い反論が出てくる前に先手を打つと、男が論理的思考を重んじるのは’理解力の無さ’を補完するためなのじゃないか、ということを言いたいのである。

要するに’男’はバカだ、ということで、

逆に女からすると

’こんなことも分からないの?鈍感ね!’

となるのである。

■男は’何となく分かってしまう’という能力で女性に対して劣っていて、だから理屈を考える。

それはソクラテスの昔からそうであって、どうして?、と問いを立てることを生業とする哲学者は圧倒的に男が多いのである。

女は、’分かってしまう’から、そんな問いを立てる必要が無いということだ。

論理を土台にした現在の科学技術社会は、ある意味、男が理解力を得るためにした努力の副産物だ、という皮肉な話なのかもしれない。
  

■かなり寄り道をしてしまった。

殺人の話に戻ることにしよう。

  
「殺してはいけない」、

ということは、理屈抜きに女には分かる。

男は「何でだろうね?」とそこに理由を求めてしまう。

けれども、先の仮説によるならば、オトコがヒトを殺してしまうのは意識の下の深いところに埋め込まれたものからくるものであって、誤解を恐れずに言えば、理屈で制御できるものではない。

■つい、カッとなってしまって。

というのに、どうしても許せない’理由’をつけるのはその後の話で、’カッとなるその’瞬間にはそもそも理性など無いのだ。

そこにあるのは、「殺せ!」と命令する若いケモノの本能と、「殺してはいけない。」と問答無用に本能を抑え付けてくる’何か’。

その’何か’こそが、女が’知っている’ものであって、法律や道徳といった集団のルールの根元の奥のその底に横たわっている’何か’なのだ。

■そこで草食男子、である。

実は、コロシは20代前半の男性において突出しているという先の原則が唯一当てはまらない特異点があって、それが現代の日本なのだという。

日本人青年はむやみにヒトを殺さなくなってしまったのである。

■それをどう読むかといったときに、長谷川先生は、「一生懸命」の話をする。

動物が如何に生きているかを学んでいるときに学生が言うのだそうだ。

 
 なんで、そんなに一生懸命なんでしょうね。
 

長谷川先生は唖然としながらも、自然界では一生懸命でなきゃ’存在’できないこと、我々人間のように一生懸命でなくても’存在’し続けることが出来る方が例外的であること、そしてその人が一生懸命でない分、どこかでそれを支えている人がいるのだ、ということを伝えるのだという。

うーむ、いい話。

でも、その延長線上に草食男子を捉えるのはどうだろう。

■戦後日本の驚異的な経済成長と、一億総中流という幻想、どこの共産主義国よりも平等な’ムラ’社会。

この幸福な状況は、一方で日本の青少年のオスとしての本能をダメにしてしまい、その結果、殺人の件数も他の世代と変わらないくらいに減少してしまったのではないか。という説である。

こういう視点で格差社会、不安な社会となってしまった今の日本の状況を考えると、また青年の殺人件数が増えてくるのではないか、という予測が立つ。

■そうなのかもしれない。

多分、きっとそうなんだろう。

でも、それじゃあ面白くない。草食男子を戦後日本の特異な状況が生んだアダ花だなどと思いたくは無いのだ。

■そうではなくて、人類の新しい進化のカタチだ、というのはどうだろうか。

見た目の変化は無いけれど、オスでありながら女が’知っている’ものを’知っている’。

女のように’分かってしまう’。

それ故に、彼を突き動かそうとする本能に対して、それをしっかりと抑えつける’何か’がシッカリと機能する。

■今までは、あれに興味が無い=子孫を残せない、ということで、当然のことながらそういう「品種」は淘汰されてきた。

が、現代では性交に拠らずとも子供が作れるし、それ以前に子作りという目的意識をもってコトに及ぶというのもありだろう。

次世代の人類が静かにゆっくりと増加していく様子や彼らが作り出すであろう社会を空想すると、それなりに楽しめる。
   

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                       <2009.05.25 記>

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2009年5月21日 (木)

■3代目新型プリウス発売開始。’孤高’から’フツウ’への転換を象徴する215/45R17タイヤ。

満を持して3代目プリウスの登場である。

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■ぱっと見て、プリウスと分かるたたずまい。それでいてまったく古さを感じさせない。

小憎らしいほどにブランドが確立しているからこその芸当であろう。

■ハイブリッドメカニズムの思想としては前型のTHSⅡから大きな変化は無いが、ユニットの小型化が図られて技術がそこに留まっていないことを静かに主張している。

メカニズム全体でいえば、太陽電池による夏場の室内温度上昇防止機構なんてキャッチーなところに目が行ってしまうのだけれども、やはりなにより出力の向上だ。

■エンジン排気量が1.5Lから1.8LにグレードUPして、最大トルクは110N・mから142N・mと3割ちかく向上、モーターの頑張り代に余裕を持たせている。

一見、それじゃ燃費が悪かろうという風に見えるけれども、重要なのはバランスなのだ。

電池の能力(出力・容量)に限界がある限り、モーターの出番が多いということは結局は充電しなければならない、つまりエンジンを回さねばならなくなるということで、ハイブリッド車は生まれながらにしてそういう矛盾を抱えているのである。もちろん、もの凄く高いレベルでの矛盾なのだが。

その結果として、モード燃費を前型の35.5km/lから実に7%も押し上げて(これは驚異的!)、38.0km/lにまで向上させることが出来たということだ。

■車両寸法では全長の+15mmが効いていそうだ。

ホイールベースは2700mmで変わらないから乗員配置は変わらない。(たぶん・・・)

Cd値は、後席に乗る人の頭の上のスペースを取りたい車両設計と、後方に向けてルーフを下げて行きたい空力設計のせめぎ合いなのだが、全長が伸びればその分’せめぎ合い代’が楽になって、結果、前型で気になった後席のアタマまわりのスペースを確保できたということだろう。

■その一方で全幅が20mmも拡がってる。

これは何かというとタイヤサイズのUPである。

今回の新型プリウスにおけるトヨタの意志が強く現れている、そこが重要なポイントなのじゃないかと思えるのだ。

■前型も2種類のタイヤを履いていて、標準タイヤが185/65R15、上級が195/55R16と1インチUP。

10・15モード燃費は、それぞれ35.5km/lと33.0km/l。

中途半端っちゃー、中途半端だけれども、うーんゴメンナサイ、16インチ履きたかったんデス、という可愛らしさがある。

■ところが今回の上級グレードは215/45R17!

扁平率45だってよ。転がり抵抗が無茶苦茶高そうじゃん!

燃費は、標準仕様(前型と同じ185/65R15)の38.5km/lに対して35.5km/lと前型の標準仕様と同じ。

きっとタイヤ屋さんを中心にして、汗をだらだらかきながら必死に頑張ったんだろう。お察しします。

■もともとプリウスって、儲からないけど歯を食いしばって新しいクルマを世に問うていくのだ!という強い’使命感’を感じるクルマであって、それが共感を呼び、Mクラスで一番台数が売れるクルマにまでなったのだ(※)。

そこに17インチタイヤを履かせて燃費を落とそうなんてのは今までの思想からすれば愚の骨頂。ではないだろうか。

※2009年3月登録実績 :プリウス6,000台、プレミオ3,500台、アリオン2,600台、シルフィ1,400台、インサイト4,100台。

■いや、今回のトヨタのその態度を批判しているのではない。

むしろ、感慨深いのである。

要は、フツウのプロジェクトのように、造形だとか営業だとかの声をいれて仕様を決めていく。

孤高の存在であったプリウスも’一般化’する時期にきたのだという感慨である。

■それでもインサイトの燃費30.0km/l(175/65R15)に対して+5.5km/lの余裕があるのだから、相変わらず敵はいない。

そういう意味では、未だ孤高の存在であるのだけれども、今回のプラットフォームはLクラスのものを使っているようで、トヨタの中で次々とハイブリッド軍団が出てきそうな予感がする(Mクラスではやっぱり商売は難しいということだろう)。

 
5年後くらいにはハイブリッド車が当たり前になっている、

 
きっと、そういうトヨタのヴィジョンがあって、今回の17インチがその象徴に思えてならないのである。

                             <2009.05.21 記>

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2009年5月18日 (月)

■新型インフルエンザ拡大。対応策がキツ過ぎるというけれど。

■関西でインフルエンザが拡大し始めた。

発生地と異なる地域で継続的に感染が拡がる、という要件からすればWHOがフェイズ6、パンデミック(世界的大流行)を宣言するのは時間の問題だろう。

■と、いっても今回の新型インフルエンザはバタバタと死者を出す【強毒性】ではなくて、幸いなことに致死率1%以下と普通のインフルエンザと変わらない【弱毒性】だ。

だから、「強毒性鳥インフルエンザを想定した行動計画」を適用するのはやり過ぎじゃないの?

という論がある。

■学校閉鎖、福祉サービスの休止、人が数多く集まるイベントの中止要請なんて聞くと、確かにやり過ぎの印象は拭えない。

けれど、それはミソとクソを取り違えた議論なのじゃなかろうか。

私は専門家でも何でもないのだが、頭の体操として、進行している事態をすこし整理してみようとおもう。

■「新型」が新型である所以は、人間がまだその免疫をもっていないということにある。

つまり感染したら発症する(体内でウイルスが大量に増幅する)確率が極めて高いということだ。

’不思議なのは、その感染の拡大の早さである’

なんてニュース番組でいっていたりするが、それが「新型」なのであって、不思議でもなんでもない。

■けど弱毒性なんでしょ?

というけれど、強かろうが、弱かろうが、感染力にその違いがないとするならば「感染拡大」を阻止する方法にその違いは無く、やはり強毒性鳥インフルエンザを想定した行動計画に拠らざるを得ない、というのが今の状況なのだろう。

■規制を緩めるということは爆発的感染を許す、ということであって、そこはデジタルに考えた方がいいのだと思う。

やっかいなのは感染から発症までの潜伏期間が1~7日であり、しかも他人への感染力を獲得するのは発症の1日前からだ、ということ。

発熱もセキもなく普通にしている人が実は発症直前の感染者で、既に大量の新型インフルエンザのウィルスを撒き散らしているかもしれないのである。

■週があけて、感染者が高校生以外にも拡がっていることが明らかになってきて、11時過ぎの時点で国内の感染者が130人を超えたと報道されている。

これからもっと増えるだろうし、神戸と同じことが東京で起きていても何の不思議もない。

■最も恐ろしいのは、その拡大の中でウィルスが突然変異を起こして【強毒性】を獲得することだ。

何しろ、強毒性と弱毒性の遺伝子的違いはDNAの塩基配列のたった一箇所の違いにあるという話があって、それが本当ならもうビクビクものなワケである。

■その突然変異を阻止する意味でも感染拡大は最大限の努力で防がねばならない。

弱毒性どうの、では無いのだ。

スペインでは感染者の周囲の人たちに対して、感染の有無を問わずタミフルの予防投与をして感染拡大に成功したようである。

その為にはスピードが要求される。

ちんたら下らない議論をしている時間は無いのだ。

                        <2009.05.18 記>

■関連記事■

■【書評】『H5N1型ウイルス襲来』新型インフルエンザから家族を守れ!岡田 晴恵。今できることは何か。<2008.01.31記事>

■Nスペ、最強ウイルス・ドラマ『感染爆発~パンデミック・フルー』。新型インフルエンザの前に成す術無く崩れ去る対策シナリオ。<2008.01.14 記事>

    
   
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2009年5月11日 (月)

■いつも、あらゆる可能性に覚醒していること。『爆笑問題のニッポンの教養』 デザイン思想、原研哉。

ちょっと遅くなったけど、久しぶりの爆問学問。

今回のテーマは、デザイン思想。

Photo
■ 爆問学問『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE070:「シンプル最高/再考」 2009.4.28放送
武蔵野美術大学基礎デザイン学科教授、
日本デザインセンター代表、原 研哉。

アートは’私はこう思う’、

 というのに対して

 デザインは’共感してもらいたい’。

  
という原さんの言葉が、わたしの中でずっと居座っていたもやもやを一気に晴らしてくれた。

■芝居をやっているときには’自己満足’と’観客の受け’との戦いであったし、

工業製品の設計をしている今でも、相変わらず’自己満足’と’販売成績’との戦いの日々なのである。

■芸術作品を作り上げる過程でそこにいるのは’わたし’と’対象’だけであり、その対峙のなかから’アート’が生まれてくる。

一方、「デザイン」を作り出そうとする段で欠かすことが出来ないのは’他人の目’である。何故かならば、デザインの本分は’相手に伝える’ことにあるからだ。

もちろん、このブログを書いていることも含めて、私が目指すのは他の人が喜んでくれることであり、常に「デザイン」だ、ということだ。

ああ、すっきりした。
   

■けれど、そのアプローチは世界共通というものではない。

だから、演劇にしても、クルマの設計にしても、そういう’アイデア’になかなか至らないのである。

■ユーラシア大陸を東を下にして90度傾けると日本は世界の一番下にいて、ヨーロッパだとか、インドだとか、中国だとか、そういったさまざまな文化があたかもパチンコの玉が釘に跳ね返りながら落ちてくるようにニッポンにむけて集まってくる。

そういう雑多な文化の影響を受ける環境のなかで、日本は銀閣寺を象徴とする独自の「シンプル」を生み出した。

■ドイツ製のナイフと日本の板前さんが使う柳刃包丁の比較が分かりやすかった。

手の形に添って力が入りやすいグリップをデザインするドイツ製ナイフの機能美。工業製品をつくる者にとってとても分かりやすいアプローチであって、かくありたいという指針であったりもする。

その一方で、柳刃包丁のにぎりはなめらかな楕円の棒であって、過剰な情報を一切そぎ落とした、原さんの言うエンプティ(空っぽ)なのである。

皮肉なことに、その’空っぽ’が板前さんの超絶的技巧を支えているのだ。

■ドイツの機能美は「使い方」を規定する。

デザインをコミュニケーションと捉える原さんの見方でいうならば、一方通行の投げ込みでキャッチボールの楽しさ、豊かさが無い、ということになる。

決してドイツ流が悪い、といっているわけではない。私も機能美が大好きだ。理由をもったカタチにワクワクする性質なのである。

■けれども、何かを生み出して誰かに分かってもらおうとしたときに、しっくりとくるのは’空っぽ’の柳刃包丁のアプローチなのだ。

すべてを規定してしまわない。

すべてを伝えない、伝えようとしないからこそ伝わるものなのである。

逆説、或いはパラドックス。

けれども、そうだよな、と深くうなづいてしまうのは私が日本人だからなのであろうか。

議論をしていて時々「正論を吐く」ひとに出会うのだけれど、確かにあなたは正しいけれども絶対に共感なんかするものか、と思ったりする。

そういう感覚に近いのかもしれない。

■要するに’残された余地’、’間(ま)’が無いのである。

太田が紹介してくれた、「おもろい夫婦」のミヤコ蝶々さんの話もそれを補強してくれる。

 
すべては、’間(ま)’ なんですよ。

人の’間’と書いて、人間。

時の’間’と書いて、時間。

世の’間’と書いて、世間。

漫才だけじゃない、ぜんぶ、’間’なんです。
   

こころにすっと入ってくる、いい例えだと思う。

蝶々さん、すごい人だったんですね。

■さて、「シンプル」をテーマとした割りには随分と長い文章になってしまった。

まったくいつもこんなんなんで、まだまだ修行が足りないのだ。

けれど、文章における「間」というのは読み手が認識する’行間’とかそういったもので、ことさらシンプルに「イイタイコト」に絞り込む駿台の小論文的アプローチは’点数’は取れるかもしれないが、味わいとしてはどうだろう、とも思ってしまうのである。

ここでいう’味わい’を感じてもらいたいのはもちろんこれを読んでくださっているアナタである。

■だから、そういうリズムを心がけているつもりなのだけれど、どうなのかな。

アナタに’いい味わい’と感じてもらえているかをリアルタイムで直接知ることが出来ないのがもどかしい。

文章を書くひとは皆、同じ悩みを抱えているに違いない。

だから、
 

 いつも、あらゆる可能性に覚醒していること。

  
という、原研哉さんのアドバイスがとてもうれしい。

大切なのはテクニックではなく、こころの在り方なのである。
    

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                        <2009.05.11 記>

  

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2009年4月29日 (水)

■現実を受け止め、本気で実行することこそが人を目覚めさせるのだ。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 武装解除・瀬谷ルミ子。

今回は武装解除活動DDRのプロフェッショナル、瀬谷ルミ子さん。

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■銃よ、憎しみよ、さようなら ・武装解除・瀬谷ルミ子
<2009.4.21放送> (番組HPより)

■32歳。笑顔がかわいらしい人である。

そんな彼女がアフリカや中東の紛争地帯での武装解除のスペシャリストだなんて、もう想像の域を遥かに越えてしまっている。

■国家規模の武装解除活動であるDDRとは、武装解除(Disarmament)・動員解除(Demobilization)・社会復帰(Reintegration)の3つの活動によって構成される。

政治的な和平合意が成されても、紛争地帯の現場ではなかなか平和が訪れるものではない。

銃が普通に行き渡っていて、軍や民兵組織も解体させず、たとえ解散したとしても職は無く生活、生きていくことが出来ない。

そういう難しく絡み合った現実・実態をひとつひとつ解きほぐしていくのが瀬谷ルミ子さんの仕事なのである。

■肌の色も、風習も、考え方も異なる異国の、しかも極限までの緊張状態が続く紛争地帯だ。

日本女性の柔らかさが、かえって相手のこころを開かせる、

とはいっても、少しでも踏み込む方向を間違えれば自分の命が危険にさらされることになることに違いは無い。

決して甘い世界ではないのだ。

■何が彼女を突き動かすのか、

その問いは私自身にとって未だに大きな謎であって、今回はそこは問うまい。

これは理屈でどうこう言えるものではないだろう。
   

■瀬谷さんのもつ人間としての強さとやさしさは、画面を通してしっかりと伝わってきた。

そのなかでも一番心を打たれたのは、両親を失い、叔父を殺され、少年兵として軍に入った19歳の青年の話だ。

■紛争は終結し、軍は警察の役割を担うようになったのだけれども、学校に戻って勉強をしたいという青年の除隊を上官は全く受け入れない。

瀬谷さんは彼のほんとうの気持ちを分かろうと試みるのだが、すっかり人生をあきらめてしまったかに見える青年はうなだれるばかり。

■すぐさま青年の所属する隊に向かうもまったく話がかみ合わない。これはダメだと、その方面を総括する准将に面会を求め、除隊が可能であるという発言を引き出した。

結局、除隊は無理だったのだが、軍に所属しながら学校で学ぶという道筋を作り出すことに成功する。

■デスクでパソコンと電話にしがみつき、早朝から深夜まで、ねじりハチマキで統計データを分析する。

いくら懸命にはたらいていたとしても、それでは本質的な問題解決にたどり着くことは出来ない。

極めて個人的な現実を見つめ、相手のこころの深いところに接することで見えてくるものは、実は全体としての問題解決の大きな糸口になるものなのである。

瀬谷さんが青年と真剣に向き合ったことで立ち現れてきたことは彼一人の悩みではなくて、その地域の軍全体がかかえている矛盾につながるものであり、ひとりの問題の解決は、多くの青年たちの苦しみを解放することにもつながるのである。

■が、感動を覚えたのは、そこではない。

自分の為に、雲の上の存在である准将と直接掛け合ってくれ、学ぶことにむけての道筋を示してくれた、その瀬谷さんの’本気’に目覚めた青年の瞳に感動したのである。

  ここから先は自分の力で進んでいくんだよ、

という瀬谷さんに対して、

  I know to do, now.

   It's my life !

と、希望を取り戻したその瞳に感動したのだ。

   
そして、瀬谷さんの生き方の端っこの方にちょっとダケ触れることが出来たような気がして、じんわりと幸せな気分に浸ることが出来たのである。

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                            <2009.04.29 記>

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■【新書】 武装解除 -紛争屋が見た世界
伊勢崎 賢治 著 (講談社現代新書 2004/12/18)


 
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2009年4月28日 (火)

■WHOがフェイズ4を宣言。豚インフルエンザから新型インフルエンザへ。

豚インフルが遂に警戒レベル・フェイズ4へと移行した。

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■1976年に撮影された豚インフルエンザウイルスの電子顕微鏡写真(CDC 米疾病対策センター提供) 

■WHOはヒトへの感染が限定的な警戒レベルフェイズ3から、ヒトからヒトへと感染が確認されるフェイズ4への移行を宣言。

もはや豚のインフルエンザがヒトに感染する【豚インフルエンザ】から、豚は関係なくヒトの間で蔓延する【新型インフルエンザ】になった、ということだ。

一部ではヒトの間での大流行(パンデミック)の可能性があるフェイズ5が宣言されるという予測もあったようで、どうも事態は深刻な方向へと大きく流れている。

■ところが欧米を中心にした世界中で感染者が現れてきているものの、不思議なことに今のところ死者は出ていない。

100人以上が亡くなったメキシコの状況とは明らかに違うのだ。

■はて、これはどういうことか。

新型インフルエンザはテキーラとの飲み合わせが悪いなんてことは無いだろうから、メキシコで流行しているインフルエンザと、感染が拡大したといわれる他の国のインフルエンザとでは何かが決定的に違うのだろう。

■勝手なシロウト的な予測を述べさせてもらうと、いま世界に拡がっているのは前哨戦の弱毒性ウイルスで、本命の強毒性インフルエンザは未だメキシコに待機中なんてことじゃないのだろうか。

まあ、シロウトの推理なんてものはまったく当てにならず意味の無いものだから、今出来ることは刻々と変わっていく状況・事実をシッカリ把握して必要な対応をとるということだろう。

とりあえず売り切れないうちにマスクとイソジンを薬局で買ってこようかな。

                        <2009.04.28 記>

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■新型インフルエンザ対策ハンドブック
―強毒性H5N1型ウイルス襲来に備える!命を守る、篭城生活の実践マニュアル

   

■関連記事■
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2009年4月26日 (日)

■豚、ときましたか。

■危機はいつだって予想もしなかったところからやってくる。

豚インフルエンザ。

鳥じゃなかったのかい。

という話である。

■今のところ震源地のメキシコ以外ではホットな状況は無いようだけれども、拡がるときには一気にいくのだろうから安心はできない。

空港の到着ゲートを通る旅行者を赤外線カメラで確認する姿はSARS以来だろうか。

潜伏期間がどれくらいあるか分からんし、発症しない感染者もいるのだろうから万全の対策とはいかないだろう。

■一体どういう事態になっていくのか、

一週間後くらいには見えてくるのだろうか。

まあ、よく分からないなかでじたばたしてもしょうがない。

それまでは、手洗い、うがいの励行でしょうかね。

                          <2009.04.26 記>

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2009年4月 7日 (火)

■F-22生産中止!?どうなるF-X!!

ゲーツ米国防長官は6日の記者会見で、兵器調達の大幅な見直し案を発表し、空軍の最新鋭ステルス戦闘機F22の生産中止をオバマ大統領に提言することを明らかにした。大統領は国防費の見直しを宣言していた 【EPA=時事 2009.04.07】

F_22

■F-22は、ステルス技術の秘匿度があまりに高すぎるために輸出禁止措置がとられていて、F-4ファントム後継のF-Xとしてこの最強戦闘機を何としても手に入れたい防衛省はヤキモキしていたワケだけれど、

いやいや、輸出向けのスペックダウン仕様ならOKじゃないの?

なんてシュワルツ米空軍参謀総長が発言したりするもんだから、おやおや、これはもしかしてと期待を持たせたところで、完全に息の根を止められてしまった格好だ。

■米空軍はF-22の現在の配備計画183機を不足とし、さらに60機の追加配備(増産)を要求していたのだが、この大不況のせいだろうか、

そんな金はない!!

ということで却下になったようである。

■F-22のユニットコストは1億4200万ドル、F-15Eは3110万ドルなのだそうで実に4~5倍ものお値段になってしまうのだ。

そりゃ、ダメだよっていいたくもなるし、金をかけるにしても、そろそろ無人戦闘機の時代だという見方もあるのだろう。

■けど、莫大な開発費がユニットコストを押し上げているとするなら、調達数を増やせば割引きされて、先の輸出仕様の数を増やせばさらにお得な計算になるんじゃないの?

と食い下がるのは大量生産に親しむ製造業従事者(←もちろん自分のことネ)の浅知恵で、200機程度の生産数だと(これもかなりの推測だが)所詮、全部手作りの試作に近い代物で、やっぱり生産数が効いてくるのだろう。

日本のF-2も同じ構図で調達数を減らされたしな。

■まあ、いずれにしてもF-22が日の丸をつける可能性はかなり低くなったに違いない。

F-4の老骨にムチ打ってF-35にするのか、突如現れたサイレント・イーグル(F-15SE)にするのか、はたまたお手頃のタイフーンなのか。

妄想の日々はまだまだ続くのである。

(また、お得意の勘違いで、輸出仕様(??)はまったく別の話だ、っていうことないよな・・・。)

                           <2009.04.07 記>

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■関連記事■
■F-15SE(Silent Eagle)、ちょっと工夫でこのうまさ。(2009.3.21 記)

■『FX・次期主力戦闘機』その6。次期中期防へ先送り。(2007.12.17 記)
   

 
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2009年4月 2日 (木)

■白く塗れ!

地球温暖化防止のためにカリフォルニア州が黒塗りの車の販売を禁止する方向で法制化の準備を進めていることが28日までに明らかとなった。
<Technobahn 2009.03.30>

■さすがカルフォルニア、そう来ましたか。

知らなかったのだけれど、カルフォルニア州では既に建築物の屋根などに対して太陽光反射率の高い寒色系の色に塗ることを義務付けた条例が制定されているそうな。

■確かにカルフォルニアの日差しは強かろうからクルマの車体が吸収するエネルギーは多いのだろうし、反射した太陽エネルギーは宇宙空間へと澄み切った青空を突き抜けていくのだろう。

シンプルな収支計算ですよ、なんてカルフォルニアの官僚さんは言うのだろうけれど、うーむ、どうも話が単純すぎて腑に落ちないのである。

■大気の無い月世界の話ならまだ分かるのだけれど、地面と宇宙空間の間に広がる大気圏ってのは熱的には緩衝材の役割をもっているハズで、それを考えたとき、自動車の色を黒からブルーグレーに塗り替えたところで、一体どれくらい地球の気温上昇を抑制することが出来るというのだろうか。

せっかく苦労して地面までお越しいただいた太陽エネルギーさんにそのまま空にお帰りいただくというのはどうにも勿体ない話で、そこでロスするエネルギーはどうなるかと言えば何のことは無い、実は地球の大気をあたためているなんてわけの分からないことになりかねない。

■そんなことするくらいなら、例えば、建築物の屋上については太陽電池が設置されていない領域の80%を植物で覆うこと。

そんでもって自動車の屋根には芝生を植えること、とかにすればいいのに(笑)。

■いや、冗談抜きで、植物の光合成って太陽エネルギーを使って二酸化炭素と水から酸素と炭素化合物(植物自身の体)を作る仕組みなんだから素直にそれを使えばいいじゃん、ということだ。

地球温暖化対策として単にCO2を減らすだけでなく、コンクリートジャングルが生むヒートアイランド現象も抑えることができるいいアイデアだと思うのだが如何なものでしょう、アーノルド・シュワルツェネッガー州知事殿!!

                           <2009.04.02 記>

黒い車は販売禁止、カリフォルニア州が地球温暖化対策で新方針
<Technobahn 2009.03.30>
 

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2009年3月25日 (水)

■WBC決勝、やっぱりイチローは凄いや!!

20090324wbc03

■ここぞ、というところで結果を出す。

職人だなあと思う。

今回は調子が上がらず、インタビューを受けるときも、憔悴しきった表情に目だけがギラギラしていて、ああ、眠れてないんだな、と同情していた。

けど、イチローに対して同情なんて、とんでもなく失礼なハナシであることを改めて思い知らされた。

■何しろ9回の裏に同点に追いつかれた延長10回の表、2死1、3塁で打順がまわってくる、しかもそこでシッカリと結果を出すなんてあまりにも劇的過ぎる。

やはり勝負どころにはドラマの神様が光臨してくるものなのか。

■韓国が盗塁を許して2死2塁3塁。

ここは歩かされても仕方あるまい、だし、ベンチのサインも敬遠だったらしい。

けれど林昌勇(イム・チャンヨン)は男だよ。

明らかに調子を取り戻してきている世界のイチローに対して真っ向からの勝負を挑んだ。

こんな最高の場面で計算高く逃げを打つなんて、申し訳ないが私にはそんな器用なまねは出来ません。

なんて、高倉健的な渋いつぶやきが聞こえてきそうだ。

■ファール、ファール、ファール。

その一球が来るまで、イチローはひたすらに粘り続ける。

ふー、心臓がバクバクするぜ。

と、イチローのバットが一閃、強い回転を伴ったライナーがあたかもスローモーションのように林昌勇の右肩の上を抜けていく。

  
・・・カッコいい、

イチロー、カッコ良すぎだぜ!

                           <2009.03.25 記>

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2009年3月24日 (火)

■ドラマ 黒部の太陽 後編。絶対にやり遂げる人間の強い意志と生きる力、勇気。

前後編2時間半の〆て5時間の大作、質のいい邦画を観終えたような気分である。

Photo_2
■このタイトル画も昭和30年代の映画の看板の雰囲気。

■昭和31年、高度経済成長を目指すなか、電力需要は増大し発電能力は限界に達しようとしていた。

その状況を打開する為に関西電力は黒部川最上流部に日本最大の水力発電所を建設することを決意した。

このダム建設のカギを握るのが、前人未到の北アルプスにダム建設の資材を運び込むためのトンネルをつくること。

だが、この大町トンネルの掘削は、岩盤が脆く非常に崩れやすい上にアルプスの大量の地下水を溜め込んだ破砕帯に遮られ、絶望的な戦いを強いられるのであった。

というお話。

■人間が踏み込むことを拒み立ち塞がる大自然の強大な力を前にして決して退くことなく立ち向かう人間の強い意志、そしてトンネルを突き抜いたその時きっと目の前に現れるであろうまばゆい光。

タイトルの「黒部の太陽」とは、凍えるように冷たい絶望的な暗闇のなかで震えながら苦闘する男たちが信じる、その光のことなのだ。

Photo_4

■昭和30年代~40年代にかけて日本は飛躍的な高度経済成長を遂げた。

その驚異的成長を支えた世代というのがあって、私の父や祖父の世代のことなのだけれども、彼らは不屈の精神をもって不可能を可能とする奇跡を生み出した、火の玉のように熱い世代なのである。

■何故、彼らはそこまで熱くなれたのか。

平成を生きる我々と何故、かくも違うのか。

高度経済成長のまわりにきらめく、こういったロマンチシズムを何故我々は失ってしまったのか。

それは年に3万人を超える自殺者を生み出し、うつに倒れる社会人が続発する今の時代背景と無縁ではあるまい。

少なくとも言えることは、われわれの心を満たす幸福度、といったものが低下してしまっているということだ。

■生きていく上での生活レベルは特にその底辺において確実に高くなり、完全週休二日制が当たり前になった現在では、過酷な長時間労働もまだあるにしても、公私の区別なく遮二無二働いたあの時代よりも厳しい、ということはないだろう。

先代が苦労して育てた果実をたらふく食べて何不自由なく育った我々の世代は、やはり甘っちょろいということなのか。

■父や祖父たちが血の汗を流しながら獲得したこの豊かさは、我々にとっては既得権益でしかなく、水や空気と同じ、当たり前のものになっている。

むしろ、その当たり前の豊かさ=既得権益が侵されたと感じたとき、怒りの感情と共に不幸が覆いかぶさってくる。

モンスターペアレントを嗤うのはいいが、彼らは実は極端な例に過ぎないのであって、「当たり前の権利」が否定されるとき、我々ひとりひとりのなかに多少なりともその萌芽があるという現実、そこに薄々感づいているのではなかろうか。

それを甘っちょろいというならば、それはきっとそうなのだろう。

けれど、そこにある苦しみは確かなもので、そのひと個人の責任にすべてをおっかぶせるのも違うと思うし、同じひとが昭和30年に生きていたならばそれなりの生き方をしたに違いなく、その逆もまた真なりで、そのひとの在り方は、当たり前のことながら、その時代の空気と切り離すことは出来ない。

■幸福は、それを獲得する予感に包まれたときに最大の効果を発揮する。

豊かさの絶対値は問題ではなく、今、に対してこれからどう変わっていく予感があるのか、それが幸福の尺度なのではないだろうか。

そういうふうに見てみれば、昭和30年代のカラダの底から溢れ出るような笑みの不思議が分かるような気がするのだ。

絶対的な豊かさで言えば到底いまの我々が許容できるレベルではないのだけれど、そこには将来に対する予感、いや確信があって、それがあの時代に生きる人たちを猛烈に突き動かしたエネルギー源なのではないか、ということである。

■これからの日本は敗戦のどん底から這い上がって絶対に「幸せ」をつかむのだ、

という確信には根拠も確証もなかったに違いないのだけれども、それが昭和30年代から40年代にかけて父や祖父たちの誰もが疑うことのない時代の空気だったのだろう。

■ダム工事を指揮した滝山薫平(小林 薫)が、自分の娘が白血病であることを知り、その絶望を難攻不落の破砕帯と重ね合わせ、絶対に通す、通さなければダメなんだ!と一歩たりとも退かない覚悟で攻略法を考える。

  
コンクリートで塗り固めてはどうだろうか。

冷凍法はどうだろうか。

  
■それに対して技術者の木塚一利(ユースケ・サンタマリア)が冷静に、正直言って、あまり賢い考えじゃないと思うんですが、と答えるのだが、滝山はそれに激昂する。

  
かしこぶった言い方は止めてくれないか。

なりふり構ってる時じゃなんだよ、今は。

人間が頭で考えて破砕帯に勝てるのかね。

知恵じゃ、もうとっくに負けてるじゃないか。

今はどんな非常手段を使ってでも破砕帯を強行突破しなけりゃならないんだ。

どんなことがあっても諦めない。

どんなことがあってもやり遂げる。

その人間の心が問われるときなんだよ。

■これは理屈に合わない精神論なのだろうか。

  
人のこころでは、

願うだけでは、どうにもならないことだってありますよ。

どんなに頑張ったって、・・・。

  
と苦しむ木塚は正しい。そこで、

 
君は、破砕帯に屈するのかね、

負けを認めて白旗をあげてしまうのか!

 
と、木塚を追い込む滝山は明らかに理不尽だ。

■だが最後には、絶対に不可能と思われた破砕帯の突破を彼らは成し遂げてしてしまうのだ。

失敗してもいい、効果がうまく出なくてもいい、絶対に掘り抜くという強い意志をもって、考えつくあらゆる手段を全部やりつくす。

その上で、トンネル工の親方、倉松仁志(香取慎吾)がその可能性に希望を託した冬期の地下水脈凍結、という感が当たり、破砕帯を抜けることができたのだ。

その「女神の微笑み」は決して偶然ではなく、必然だ。

何故かならば、女神が微笑むまで彼らは諦めなかったからなのである。

■確かにトンネルを貫通させれば娘は助かる、という滝山の願いは叶えられなかった。     

はじめからそんなことは分かっていた。

けれど、そう願わずには、そう信じずにはいられなかったのだ。

娘が助からないと聞いて、なるほどそれは理屈だ、と納得できるはずがない。

どうにもならない、と諦めた瞬間にすべては