映画・テレビ

2010年3月20日 (土)

■【映画評】『ディア・ドクター』、医者と白衣とペンライト。

♪遠回り 遠回りするのさ

 どんな道草にも 花は咲く

                ― エンディング曲 「笑う花」 ―

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.39  『ディア・ドクター
          
           監督: 西川美和 公開:2009年6月
       出演:笑福亭鶴瓶 瑛太 余貴美子 井川遥 香川照之 八千草薫 他

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■ストーリー■
山間の小さな村。そこで唯一の医師として村民から慕われている男・伊野のもとに研修医がやってくる。戸惑いながらも次第に伊野の献身に惹かれ、血の通った本当の医療に目覚めていく研修医。だが、伊野は誰にも言えぬ、ある秘密を抱えていたのだった。

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【DVD】ディア・ドクター

■西川美和は詩人である。

ドラマに差し挟まれる風景に余韻があって、その隙間が見る者の感情を開かせる。

その文体は多くを語らないが故に豊穣な印象に満ち溢れているのである。

   
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■医師の印象を作り上げるもの、象徴としての白衣。

医師であるから白衣を着るのか、

白衣を着るから医師となるのか。

この物語のテーマは後者にあって、そこに巻き込まれていった男の泣き笑いを軽妙に、けれど深々と描きこんでいく。

■球が飛んでくるから打つ。

打つからまた球が飛んでくる。

それを繰り返しているうちに、だんだんその気になってくる。

そうやって目の前のことに無心になって取り組んでいるとき、

ニセモノでも、本物でも、論点はそこには無い。

■生きていく。

というのは、そういうことなのかもしれない。

  

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                           <2010.03.19 記>

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【DVD】ゆれる
揺れ動く記憶の風景。
オダギリジョー、香川照之のまさに「競演」が凄い。

  

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【CD】モアリズム「笑う花」

 

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■STAFF■
原作:西川美和 「きのうの神さま」(ポプラ社刊)
監督・脚本:西川美和
撮影:柳島克己


■CAST■
伊野治:笑福亭鶴瓶
相馬啓介:瑛太
大竹朱美:余貴美子
斎門正芳:香川照之
波多野行成巡査部長:松重豊
岡安嘉文警部補:岩松了
曽根登喜男村長:笹野高史
鳥飼りつ子:井川遥
鳥飼かづ子:八千草薫

    
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2010年1月 9日 (土)

■【映画評】『ゴジラ』、最初にして最高の怪獣映画。

言わずと知れた日本怪獣映画の魁である。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.38  『ゴジラ
      原作:香山 滋 監督:本多猪四郎 特殊技術:円谷英二 公開:1954年
   出演: 宝田 明 河内桃子 他

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【DVD】ゴジラ <昭和29年度作品>

■ストーリー■
水爆実験によって海底の棲みかを追われた古代の巨大生物が東京に上陸し破壊の限りを尽くす。我々人類はその脅威に対抗することは出来るのか。

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■ゴジラを見た。

だいたい25年ぶりくらいだろうか。

その後、幾多の怪獣映画を見たが、やはりオリジナルには敵わない。

何故なら、これ以降の特撮怪獣映画は『怪獣』そのものを描くわけだが、この映画は人間の業を描いているからに他ならない。

■その背景には原水爆の脅威があって、直接的にはビキニ島沖での第五福竜丸事件が切っ掛けとなっている。

焼け野原と化した東京の街は、つい10年前の東京大空襲を想起させるが、ゴジラの撒き散らす放射能は目に見えないが故にさらに恐ろしい災厄をもたらす。

被災者収容施設で少年にガイガーカウンターをあてて医師が悲しげに首を振るシーンが事態の深刻さをありありと描いている。

■そんな状況でもなお、この特異な生物を研究の対象として守るべきだと考える山根博士(志村 喬)。

脅威の破壊力をもつオキシジェン・デストリイヤーが政治的に利用される危険性が高いことが分かっていながらそれを完成させてしまう芹沢博士(平田昭彦)。

方向性は違えども、ともに真理を追究せざるを得ないという科学者の業である。

そして、そういった芹沢博士の業によって作り出されたオキシジェン・デストロイヤーでしかゴジラに対抗出来なかった、その悲観がこの映画に深みを与えているのである。

■もちろん怪獣映画としても素晴らしい。

ストップモーションによる人形アニメーションが主流だったアメリカの特撮映画に対して、精巧なミニチュアの街と着ぐるみ怪獣の組み合わせによる新機軸。

CG全盛の現在においても着ぐるみの実写の方がリアリティがある。

未だに廃れないその技術の元祖でありながら既に完成されているところに改めて驚かされる。

■あらを探せば切りが無いし、画面の粗さに助けられている部分もあるだろうけれども、本編と特撮の切れ目が気にならない。

映画に没入するためにはそこが一番キモになる部分なのだと思う。

それはセットやミニチュアを如何に精巧に作るかという、実に地道な作業に支えられているのである。

■このあと『ゴジラ』は怪獣プロレスへの道へと進み、志は急速に曲がっていってしまうのであるが、『クローバーフィールド』とか『グエムル・漢口の怪物』など現代の怪物映画に確実にその志は引き継がれている。

その意味で怪物・怪獣映画の金字塔といって間違いない、不朽の名作なのである。

  

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                              <2010.01.09 記>

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■STAFF■
原作:香山 滋
監督:本多猪四郎
特殊技術:円谷英二


■CAST■
尾形秀人(南海サルベージKK所長)     宝田 明
山根恵美子(山根博士の娘、尾形の恋人) 河内桃子
芹沢大助(科学者、山根博士の愛弟子)  平田昭彦
山根恭平(古生物学者)            志村 喬

    
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2010年1月 5日 (火)

■大河ドラマ「龍馬伝」。龍馬は一日にして成らずなのだ。

■最近のNHKは気合いが入っている。

一大巨編「坂の上の雲」をやりながら、その一方で坂本龍馬にオリジナル脚本で挑もうっていうのだから恐れ入る。

■さて、その「龍馬伝」である。

第1回はタイトル通り、土佐藩における上士と下士の不条理を描く。

そのなかで弱虫な子供であった龍馬が母の死後、その不条理を胸に抱きつつ腕の立つ青年剣士に育っていく。

■少年時代のアーノルド・シュワルツェネッガーが虚弱体質であったことはよく知られているが、それをバネにして一流のボディビルダーになり、一流の映画スターになり、政治家になり、と、何となく今回の「龍馬」像と重なって見えてくる。

坂本龍馬も、その根本は「弱虫」にあって、その弱さゆえに大きく羽ばたいていく、というわけである。

その辺りが新しい。

そこで福山雅治、ということか。

■ハッキリ言って福山雅治に坂本龍馬は似合わない。

剣の腕前とアタマの良さをちょっとお調子者の快活さで覆い隠す、そういう龍馬に対して福山雅治は線が細過ぎなのである。

けれども、我々の抱いている龍馬像は、薩長の手を結ばせ、船中八策であたらしい日本をデザインした英雄の姿であって、結果から作られた虚像なのかもしれない。

そこにズバッと斬り込み、「生きている龍馬」をえぐり出す。

どこか弱々しさを感じさせるような、そこに生の龍馬がある。だからこその福山雅治なのだろう。

■他のキャストで気になるといえば、やはりこの物語の語り部でもある岩崎弥太郎を演じる香川照之だろう。

この人は本当にすごい。

小汚くて、少し性根の曲がった青年期の弥太郎の見事なことといったらない。

「坂の上の雲」の正岡子規もいいけれど、こういうネジクレタ役をやらせたら右に出るものはいないのではないだろうか。

■オリジナル脚本の筆をとるのは「HERO」の福田靖。

演出は「ハゲタカ」、「白洲次郎」の大友啓史。

これで面白くないわけがない。

この後どんな龍馬像が描かれていくのか、楽しみに待とうと思う。

                            <2010.01.05 記>

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2009年12月16日 (水)

■NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』。単純明快に!

■まだ第3話を見てないのだけれども、2話目までの簡単な感想。

話は、伊予松山で生まれ育った秋山好古、真之、正岡子規が東京に出て、それぞれの道を歩み始めるところまで。

■いやー、引き込まれるドラマです。

90分があっという間に過ぎていく。

司馬遼太郎調の語り(渡辺謙)、久石譲の情感豊かな音楽。

また好古を演じる阿部寛、真之を演じる本木雅弘、子規を演じる香川照之がこれ以上ないというくらいハマっていて、脇を固める菅野美穂、伊東四朗も輝いている。

テンポが速くて、それでいて丁寧な演出、脚本ももちろん最高だ。

■2話目までで一番印象に残ったのが好古が真之を指導するときの「単純明快に!」という考え方。

一刀両断、って感じがして小気味いい。

■「単純明快に!」

いいねえ、気に入った!

迷ったときは、「単純明快に!」

とりあえず2010年のテーマとしておくか。

   

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                          <2009.12.16記>

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■坂の上の雲(全八巻)司馬遼太郎 著 文春文庫

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■「明治」という国家
司馬遼太郎 著 日本放送出版協会 (1989/09)

  
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■スタッフ■
原作:司馬遼太郎(『坂の上の雲』『明治という国家』)
脚本:野沢尚、柴田岳志、佐藤幹夫
演出:柴田岳志、佐藤幹夫、加藤拓、木村隆文、一色隆司
音楽:久石譲
主題歌:サラ・ブライトマン『Stand Alone』(作詞:小山薫堂 作曲:久石譲)

■キャスト■
秋山真之  : 本木雅弘     海軍軍人。日露戦争時の連合艦隊参謀
秋山好古  : 阿部 寛       陸軍軍人。“日本騎兵の父”とよばれる
正岡子規  : 香川照之      俳人・歌人。俳句や短歌の革新を目指す
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山本権兵衛  : 石坂浩二   日露戦争時の海軍大臣。
                                       後に第16・22代総理大臣
東郷平八郎  : 渡 哲也     海軍軍人・日露戦争時の連合艦隊司令長官
高橋是清    : 西田敏行    神田・共立学校の英語教師。後に大蔵大臣、
                                       第20代総理大臣
伊藤博文    : 加藤 剛      初代内閣総理大臣
児玉源太郎  : 高橋英樹    陸軍軍人。日露戦争時の満州軍総参謀長
* * * * * * * * *
夏目漱石  : 小澤征悦        小説家。子規とは親交が深かった
秋山久敬  : 伊東四朗         秋山兄弟の父
秋山 貞   : 竹下景子         秋山兄弟の母
秋山多美  : 松たか子          好古の妻
秋山季子  : 石原さとみ        真之の妻
広瀬武夫  : 藤本隆宏         海軍軍人。海軍での真之の友人
正岡 律   : 菅野美穂        子規の妹。病床の子規を支え続けた
陸 羯南    : 佐野史郎           新聞「日本」主筆。子規の恩人
正岡八重  : 原田美枝子       子規、律の母
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語り     :  渡辺謙

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2009年11月29日 (日)

■【映画評】エイリアン4部作。オリジナルは唯一無二の傑作だが、続編も3者3様の面白さ。

今回は4本立てで行きましょう。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.37 『 エイリアン4部作 』
          

■『エイリアン ALIEN』(1979年公開)
 監督 リドリー・スコット 脚本 ダン・オバノン
 クリーチャーデザイン H・R・ギーガー
 出演 シガニー・ウィーバー トム・スケリット 他

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■エイリアン (ベストヒット・セレクション) [DVD]

■一番好きな映画は何?

なんて聞かれることがあるが、そういう時は迷った挙句、『ニューシネマパラダイス』とか『生きる』とか無難に答えるのだけれど、実は本当に大好きなのは『エイリアン』なのだ。

これほどにハラハラする映画は無くて、何度見ても同じところでビックリするのだから、驚くべきホラー映画なのである。

ケインがフェイスハガーに襲われる時でしょ、ブレットがビッグチャップに襲われる時でしょ、ダラスが通気口の中でやられるシーンでしょ、アッシュが・・・な時でしょ、それに最高のラストシーン。

■この映画は、CMディレクターだったリドリー・スコットのメジャー映画デビュー作品なんだけど、巨匠といわれる現在と同じか、いやそれ以上に’リドリー・スコットらしい’映画なのである。

滴る水、水蒸気、陰影が強調された画面。

特にブレッドが猫(ジョンジーだっけ?)を探しているときに、上の吹き抜けから水が滴り落ちてきて上を見上げる、あのシーンが最高だ。

■ビッグチャップ(エイリアンの成体)をほとんど見せない手法も、怖さを盛り上げる効果抜群。

初めて見たときにはその姿はほとんど判別できなかったもんな。

’見えない’、けどもしかしたら恐ろしいものがそこにいるかも知れない、という恐怖は原初の昔からDNAによって伝わってきた本能的反応なのだろう。

■ディレクターズカットでは、最後の脱出の場面の途中で、ダラスが繭にされているシーンが差し挟まれてこれも魅力的なのだが、やはりここは劇場公開版の方が私は好きだ。

危機感が盛り上がっていく場面で水がさされる感じがするからである。

そこをカットしたのはプロデューサーらしいのだが、その辺り、映画は監督だけで作るものではないなあ、と思う。

■あと忘れちゃいけないのがH・R・ギーガーのデザイン。

ビッグチャップを筆頭に、異星人の遺棄された宇宙船、その内部、エイリアンエッグと今までには全くなかったエロティックかつグロテスクな世界を作り出している。

■そんなこんなで語りだすとキリが無いのだけれども、ともかくこのオリジナルの『エイリアン』は企画、脚本、演出、デザイン、音楽、もちろん役者の演技を含めて最高の組み合わせであって、いつまでも記憶されていくだろう素晴らしい映画なのである。

 

■『エイリアン2 ALIENS』(1986年公開)
 監督・脚本 ジェームズ・キャメロン
 デザイン シド・ミード 他
 出演 シガニー・ウィーバー ジェニット・ゴールドスタイン他

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■エイリアン2 完全版 [DVD]

■今度は戦争だ!というのがキャッチコピー。

『エイリアン』は一匹のビッグチャップの強さが圧倒的であったが、エイリアン2では圧倒的なのはウォーリアー(兵隊エイリアン?)の数。

■海兵隊の重火器にによって次々にエイリアンが殺られるのだけれど、次から次から現れるからどんどんと追い詰められていく。

まさに戦争。

オリジナルの『エイリアン』はあまりに完成度が高いので同じ土俵で戦わなかったジェームズ・キャメロンは正解だったと思う。

■もうひとつの特徴はエイリアン・クイーンを生み出したところ。

リプリーと孤児ニュートの関係とクイーンとウォリアーとの関係がオーバーラップして、’母の強さ’というサブテーマをうまく作り出している。

個人的には前作の’捉われた人間が繭となり、新しい卵になる’というイメージが好きだったのでちょっと残念なのだけれど。

■この映画、劇場公開版は137分、ディレクターズカットでは154分。

大体において私の好みは簡潔な劇場公開版なのだけれども、この映画だけは違う。

その長い上映時間を飽きさせず濃密に話を展開させていくのがジェームズ・キャメロンの本領なのだろう。

 

■『エイリアン3 ALIEN3(1992年公開)
 監督 デヴィッド・フィンチャー
 出演 シガニー・ウィーバー ランス・ヘンリクセン 他

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■エイリアン3 完全版 (2枚組 プレミアム) [DVD]

■失敗映画の代表作と評価されてしまう可哀想な映画。

撮影が開始されているにも関わらず脚本の骨格すら定まっていなかったという酷い状態だったらしい。

各所に見られる’何となく落ち着かない感じ’も仕方なし、要するに映画として仕上がっていないまま公開されてしまった、というところか。

■それでも、決して悪い映画ではないと思う。

デヴィッド・フィンチャーが作り出した監獄惑星という独特の世界観は、その雰囲気だけでも味わう価値はあるだろう。

■エイリアン2に登場したアンドロイド、ビショップがこの作品にも登場するのだけれども、終盤、そのオリジナルとおぼしき科学者が登場するあたりからは「物語」としても面白い。

エンディングについては劇場版と完全版で異なるが、好みとしてはリプリーがクイーン・チェストバスターを抱きしめて落ちていく劇場版の方がいいかな。

 

■『エイリアン4 ALIEN:Resurrection』(1997年公開)
監督 ジャン=ピエール・ジュネ
出演 シガニー・ウィーバー ウィノナ・ライダー 他
 

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■エイリアン4 完全版 [DVD]

■副題のResurrectionは死者の復活、よみがえりの意。

その名の通り、前作で死んだはずのリプリーがクローンとして蘇る。

それも体内に宿していたエイリアンの遺伝子が組み込まれていて、驚異の運動能力と超酸性の血液をもった悲しきハイブリッドとして。

■登場するエイリアンの方も今までの’全くの異物’ではなく、怒りの感情を持っていたり、人間たちを罠にかける知恵まで兼ね備えていて共感の余地がある。

そのあたりも新鮮な感覚があって面白い。

あとはリプリーの娘(?)とも言えるニューボーン。彼女の最期は本当に可哀想だったなあ。

■この作品は前作とまったく逆で設定がシッカリしている。

ゆえに安心して見ていられるエンターテイメントなのである。

重要な役割りを担うウィノナ・ライダーも可愛くて華があるしね。

■ラストは劇場公開版と完全版でまったく異なるものになっている。

爽やかな劇場公開版もいいが、新しい物語が後に続きそうな完全版もいい。

完全版の衝撃のラストについては、オープニングに伏線らしきものがあって、そこも面白い。

 

■【映画評】『エイリアン コヴェナント』  或いは、フランケンシュタインの怪物が自ら名前を得る物語。

 

■エイリアン アルティメット・コレクション [DVD BOX]

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■エイリアン アルティメット・コレクション [DVD]
■エイリアン1~4の完全版。
エイリアン1と4は劇場公開版も収録。

 

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                           <2009.11.29 記>

    
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2009年11月28日 (土)

■NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』第1部。始まるのが待ちきれない。

司馬遼太郎の代表作のひとつ『坂の上の雲』。

高校時代に始めて読んだときは、その面白さにどっぷり浸かったものである。

その『坂の上の雲』、ずいぶん前からNHKでドラマ化されるという話があって、なかなか始まらないなぁ、とやきもきしていたのだが、いよいよついに明日、始まるのだ。

Img_story01_01
■2009.11.29(日)より 20:00~21:30 NHK総合 

■今年から3年に渡って年末に放映される予定だそうで、今回の第一部は日清戦争が終わって秋山真之がアメリカに留学するところまで。

明治維新によって世界に扉を開いた日本が、好奇心旺盛な少年のようにグイグイと成長していくその過程を、秋山好古、真之、正岡子規の3人の青年の成長と重ね合わせて描く、それが今年放映の第1部、ということだろう。

■正岡子規が病床のなかで高浜虚子らと新しい俳句の世界を模索し、その一方でロシアの影が日本に忍び寄り、ついに日露戦争開戦、というのが来年の第2部。

秋山好古、真之兄弟が陸軍、海軍それぞれの立場で、ぎりぎり限界のところでロシア軍を押しとどめる、そのクライマックスが再来年の第3部。

いやー、書いていて何だかもう、わくわくしてきた。

始まる前から待ちきれない感じなのである。

    

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                           <2009.11.28記>

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■坂の上の雲(全八巻)司馬遼太郎 著 文春文庫

  
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■キャスト■
秋山真之  : 本木雅弘     海軍軍人。日露戦争時の連合艦隊参謀
秋山好古  : 阿部 寛       陸軍軍人。“日本騎兵の父”とよばれる
正岡子規  : 香川照之      俳人・歌人。俳句や短歌の革新を目指す
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山本権兵衛  : 石坂浩二   日露戦争時の海軍大臣。
                                       後に第16・22代総理大臣
東郷平八郎  : 渡 哲也     海軍軍人・日露戦争時の連合艦隊司令長官
高橋是清    : 西田敏行    神田・共立学校の英語教師。後に大蔵大臣、
                                       第20代総理大臣
伊藤博文    : 加藤 剛      初代内閣総理大臣
児玉源太郎  : 高橋英樹    陸軍軍人。日露戦争時の満州軍総参謀長
* * * * * * * * *
夏目漱石  : 小澤征悦        小説家。子規とは親交が深かった
秋山久敬  : 伊東四朗         秋山兄弟の父
秋山 貞   : 竹下景子         秋山兄弟の母
秋山多美  : 松たか子          好古の妻
秋山季子  : 石原さとみ        真之の妻
広瀬武夫  : 藤本隆宏         海軍軍人。海軍での真之の友人
正岡 律   : 菅野美穂        子規の妹。病床の子規を支え続けた
陸 羯南    : 佐野史郎           新聞「日本」主筆。子規の恩人
正岡八重  : 原田美枝子       子規、律の母

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2009年11月20日 (金)

■【書評】『獣の奏者』Ⅰ闘蛇編/Ⅱ王獣編、上橋菜穂子 著。群れの中の個の生き様を描く、ファンタジーの姿を借りた社会論。

NHK教育でやっているアニメ『獣の奏者エリン』の原作である。

なんだ子供向けか、と思ったら大間違い。

大人の心をグイと引き込む力強さをもった作品なのだ。

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■獣の奏者〈1〉闘蛇編 ■獣の奏者〈2〉王獣編
上橋 菜穂子 著  講談社文庫(2009/8/12)
 

■作品の世界はいかにもファンタジーらしい世界だ。

崇拝される王がいて、国を守る戦人がいる。

その戦人が操るのが’闘蛇’といわれる竜のような巨大な生物。

主人公のエリンはその闘蛇を育てる闘蛇衆の村に生まれるが生粋の闘蛇衆ではなく、緑の瞳をもつ流浪の民族、’霧の民’を母に持つ。

父は既に亡く、10歳にして目の前でその母を残酷なカタチで喪ったエリンがくじけずに成長していく、そういう物語でもある。

■だが、この物語の力強さの源泉は何かといえば、徹底したリアリズムにある。

ぬらぬらとした粘液に包まれジャコウのような甘いニオイを放つ’闘蛇’の描写から、蜂飼いのジョウンが蜜蜂の巣分けをする場面や、’闘蛇’の天敵である’王獣’のヒナとのコミュニケーションを試みるためにエリンが竪琴を改造する場面。

映像はもちろん、そのニオイ、手触り、音、といった五感のすべてにありありとした手応えをもって現れてくるのである。

そして、そのリアリズムは場面描写だけに留まらず、思わずハッとするような情け容赦のない物語の展開にも現れる。

期待する甘い期待をスパリと切り裂く鋭い刃にリアリティが宿るのである。

■さて、この物語のテーマは何であろうか。

 ― この世に生きるものが、なぜ、このように在るのか、を知りたいのです。

エリンが’獣ノ医術師’の学校の試験で、志望理由を問われたときの答えである。

わたしには、どうもこのあたりに核心があるのでは、と思うのだ。

■決して人に慣れることのないといわれていた王獣とのコミュニケーションにエリンは成功する。

では逆に、何故、何百年もの間、先達たちはひとりも王獣と対話をかわすことができなかったのか。

実は王獣を扱う為の’王獣規範’という厳格な規定があって、それに従う限り、ヒトは王獣とコミュニケーションが取れないように巧妙に仕組まれていたのだ。

■ヒトと獣が本当に分かりあうことは出来ない、そこには相手を制御するための’恐怖’が必要なのだ、とする考え方があって、王獣を制御する唯一の手段が’音無し笛’というもので、それを吹くと王獣は固まったように動けなくなってしまうのである。

それをヒトが作り上げる社会にアナロジーを求めたとき、極めて絶望的な社会の見方へとつながっていく。

■ヒトの世界には掟、戒律というものが、ある。

見えるもの、分かるものもあれば、見えぬもの、気付かぬものもある。

それらは人々が’安全’に暮らしていくために必要なものではあるが、それは同時に実は王獣に対する音無し笛のようなもので、我々のこころを縛りつけ、思考停止に陥らせているのではないか。

思考停止のまま群体として動いていくイメージ。

それを果たして生きていると言えるのであろうか、という作者の問いかけを感じてしまうのだ。

■その究極が蜂の社会であり、それを言いたいが為に、物語の前編において丁寧に丁寧にそれを描いたのではないか。

だからどうだ、とはっきり言わないのが小説の良さである。

ポンと投げたいくつかの小石が、心の水面に波紋を作り、それが重なり合いながら幾重にも拡がっていく。

そこに描かれる模様は、読み手のこれまでの人生によって変わっていくのである。

■だが、己の出自である霧の民の生き方に対して反吐が出る、と血を吐く思いで切り捨てるエリン。

そこに作者の想いが現れている、群れるな、と。

そしてそのとき、個が個として生き始めたとき、

初めて個と個が通じ合うことが出来る。

ラストシーンの感動は、その力強い希望の光なのであった。

    

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                        <2009.11.20 記>

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■獣の奏者〈1〉闘蛇編 ■獣の奏者〈2〉王獣編
上橋 菜穂子 著  講談社文庫(2009/8/12)
■続編として3巻目の<探求編>、4巻目の<完結編>が単行本で出ているけれども、1巻目の<闘蛇編>と2巻目の<王獣編>で話は完結しているので、ここで留めておくのもいいと思う。というより単行本を買うのはちと高いよね、やっぱり。
    

Photo ■獣の奏者 (3)探求編

Photo_2 ■獣の奏者 (4)完結編

 

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2009年11月14日 (土)

■【書評】『「A」―マスコミが報道しなかったオウムの素顔』、森達也。たとえ理解不能であったとしても。

久しぶりに森達也を読む。

この人の文章は、するすると心に入ってくる。

何故だろうか。

A
■「A」―マスコミが報道しなかったオウムの素顔
森達也 著 2002/01 (角川文庫)

■本書は広報担当、荒木浩を中心に据え、地下鉄サリン事件以降のオウム真理教の内側を描いたドキュメンタリー映画『 A 』の製作記である。

テーマは、オウムの内側から社会を眺めることで日本人のメンタリティを探ること。

結果、そこに立ち上がるのはひとりひとりの人間が組織に組み込まれることで陥ってしまう思考停止。

それは地下鉄サリン事件を引き起こしながらも意識の変化が現れないオウムの信者たちの思考停止と、「社会の敵」と定義されたオウムに対して、相手もまた人間なのだという想像力を失ったマスコミを筆頭にした社会の側の思考停止、その合わせ鏡的な構図である。

■思考方法が根本的に異なる「オウム」と「社会」の狭間に立って、その通訳に当たる広報担当、荒木浩は、「言葉」が通じないその断絶の深さに苦しむ。

そしてオウムの本質を理解しようと、カメラを覗きながら、言葉を投げかけながら理解不能のその断絶の深さに苦悩する森達也。

ここにもまた合わせ鏡が存在し、けれどもその理解不能、通訳不能の苦悩があるからこそ、そこに安易なレッテル張りはなく思考停止から逃れることが出来る。

決して相手を理解できないと分かったとしても、組織を離れたひとりの人間として相手に対面したとき、共に歩いていくことが出来る。

■タイトルの「A」は、『オウム』のA、『麻原』のA、『荒木』のAでもあるのだけれども、それ以上に誰でもない、どこにでもいるA、つまり我々一人ひとりのことだ。

9.11があって、そこでもまた思考停止が蔓延し、未だに戦争状態が続いている。

オウムに限ったことではなく、この世の中、相容れない考え方をする組織同士の争いは止むことはない。

我々一人ひとりが自分のあたまで考えることの重要さに変わりは無く、相互に認め合うことの必要性という意味では、さらに大切な時代を迎えているのだと思う。
  

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                          <2009.11.14 記>

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A_2
■「A」―マスコミが報道しなかったオウムの素顔
森達也 著 2002/01 (角川文庫)

Dvd_a_
■【DVD】A  監督 森達也 1997年
■この本を読んでいて作品の方が無性に見たくなった。
レンタル屋に置いてるかな・・・。

A2dvd
■【DVD】A2 監督 森達也 2001年

  

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2009年11月12日 (木)

■NHK土曜ドラマ『外事警察』が楽しみなのだ。

『ハゲタカ』のスタッフが今度は諜報の世界に挑戦する。

14(土)から全6回で始まる土曜ドラマ『外事警察』だ。

原作は『宣戦布告』の麻生 幾。

いやー、これは面白そうですな。楽しみ、楽しみ。

                        <2009.11.12 記>

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Photo
■外事警察 麻生 幾 著 日本放送出版協会 (2009/09)

■スタッフ■
原案 麻生 幾
脚本 古沢良太
演出 堀切園健太郎 他?
音楽 梅林 茂

■キャスト■
渡部篤郎
石田ゆり子
尾野真千子
片岡礼子
遠藤憲一
余貴美子
石橋凌 他

 
■土曜ドラマ『外事警察』番組HP

     

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2009年11月 7日 (土)

■【映画評】『沈まぬ太陽』。人間の生き様。ラストシーンの感動が止まらない。

上映時間3時間22分の大作である。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.36  『 沈まぬ太陽
          監督: 若松節朗 公開:2009年10月
       出演: 渡辺謙  三浦友和  他 

          001

■休憩10分をはさんだ3時間半もの長大な映画。集中して見ることができるかどうか、正直あんまり自信が無くて見に行くのをためらっていたのだけれども、そんな心配はまったくの無用。

恩地元というあまりにも真っ直ぐな男の生き様にあっという間に取り込まれてしまったのであった。

  
■ストーリー■

昭和30年代。巨大企業・国民航空社員の恩地元は、労働組合委員長を務めた結果、会社から10年におよぶ僻地での海外勤務を命じられた。かつて共に闘った同期の行天四郎が組合を抜けてエリートコースを歩みはじめる一方で、恩地は家族との長年にわたる離れ離れの生活で焦燥感と孤独に追いつめられ、本社への復帰を果たすも不遇な日々は続くのだった。そんな中、航空史上最大のジャンボ機墜落事故が起こり…。<goo映画より>

 
■この作品は、己の信念を曲げないがために僻地をたらいまわしにされる恩地の話と、日航ジャンボ墜落事故とその遺族の話、そして航空会社の腐敗体質にまつわる話が交差しながら進んでいく。

それぞれの話がそれぞれに深くて物語が発散してしまいそうに思えるのだが、それが逆にうまく共鳴しあい、さらに深みを増している。

■そのなかでもやはり御巣鷹山の墜落事故の遺族たちの話がやるせない。

あれから24年も経つというのにあのときのショックが鮮明に蘇る。

特に墜落中に家族に向けたメモを残した父親と、それを読む息子の話は胸がつぶれる思い。

丹念に遺族に取材したのであろう事実がしっかりと背景にあって、だからこそのリアリティであって、だからこその重みなのである。

■その一方で、この映画は実直な恩地元(渡辺謙)と、出世の鬼と化した行天四郎(三浦友和)の歴史を縦糸として物語を織っていく。

明と暗、陰と陽のそのコントラストが素晴らしく、またそのコントラストの強さに関わらず陳腐に落ちないのがまた素晴らしい。

それはもちろん原作と脚本によるものであるけれども、渡辺謙と三浦友和の魂を揺さぶる好演によるところが大。

また、そのコントラストを際立たせる俳優陣の力にもよるのだろう。

何しろそれぞれが主役を張れるような豪華な顔ぶれで、ため息が出るくらいなのだ。

■ラストシーン。

妻に先立たれ、日航機の事故で息子家族を一度に失い、ただひとり残された老人(宇津井健)が四国のお遍路の旅にいる。

その老人に宛てた恩地の手紙が胸を激しく揺さぶる。

こころの奥の底のところでズンと打ち震えるような感動だ。

救いようの無い絶望。

そこにはどんな慰めの言葉も届かない。

それでも生きていこうと思わせるのは、広大な自然に向かって立ち、ちっぽけな自分をいつまでも照らしている夕陽、その瞬間にあるのだ。

 

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                           <2009.11.07 記>

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■【原作】沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上)
山崎 豊子 著 新潮文庫 (2001/11)
  

■STAFF■
原作:山崎豊子『沈まぬ太陽』
監督:若松節朗  
製作総指揮:角川歴彦
企画:小林俊一
製作:井上泰一
脚本:西岡琢也
音楽:住友紀人
エンディング・テーマ:福原美穂『Cry No More』
製作:「沈まぬ太陽」製作委員会
製作プロダクション:角川映画
配給:東宝

■航空会社やスポンサーに首根っこを抑えられたテレビ会社の協力を得ずにこれだけの大作を真っ直ぐ作り上げた製作委員会と角川に深い敬意を感じます。
   



■CAST■
恩地元:渡辺謙
行天四郎:三浦友和
三井美樹:松雪泰子
恩地りつ子:鈴木京香
 * * * * * * * *
国見正之:石坂浩二
八馬忠次:西村雅彦
桧山社長:神山繁
小暮社長:横内正
堂本社長:柴俊夫
和光監査役:大杉漣
八木和夫:香川照之
 * * * * * * * *
利根川総理:加藤剛
龍崎一清:品川徹
竹丸副総理:小林稔侍
道塚運輸大臣:小野武彦
 * * * * * * * *
阪口清一郎:宇津井健
鈴木夏子:木村多江
小山田修子:清水美沙
布施晴美:鶴田真由
 * * * * * * * *
恩地純子:戸田恵梨香
恩地克己:柏原崇
恩地将江:草笛光子
 * * * * * * * *
国民航空123便操縦士:小日向文世
航空管制官:長谷川初範

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