アニメ・コミック

2008年11月 2日 (日)

■『ブラッディ・マンデイ』、第4話。正しい銃の奪い方。

■ブラッディ・マンデイ■ <第4話>
『裏切りと悲劇の女!!明らかになる日本壊滅テロの真相』

いやー、今回も実に面白かった。

■セクシー折原先生(吉瀬美智子)の出番は終わりかと思ったら、まだまだ活躍してくれそうでうれしい限り。

スパイの宝生(片瀬那奈)は藤丸(三浦春馬)を撃っちゃうわ、その足で本格的なウイルス爆弾をサード・アイ本部に仕掛けるわ、それに気付いた沙織(原田佳奈)は空調の主電源を落として危機一髪を乗り切るも自分は感染しちゃうわ、実は霧島(吉沢 悠)の婚約者だわ、謎の囚人神島は初めて悪魔の本性をあらわにするわ、病院の屋上に追い込まれた宝生は自分の頭を撃って死んじゃうわ、加納生馬(松重 豊)は宝生のことを愛していたことに気付いちゃうわ、しまいには藤丸が折原マヤたちに拉致られてテロ集団のリーダー’J’(成宮寛貴)とご対面しちゃうわ・・・、ふーっ、ふーっ。

こんだけの展開を1時間に押し込んで、それでもドラマが破綻しないんだから、もう曲芸の域である。

■ところで、セクシー・マヤが高木藤丸の拳銃を奪うシーンでの豆知識が気になった。

ねぇ、高木君。ドラマでね、ヒーローが犯人の背中に銃を突きつけるシーンを見たらこれからはウソだって思いなさい。

そうやって銃口を押し付けるとね。ディスコネクターが働いて、ショートリコイルのオートマティックは撃鉄が落ちないのよ。銃の位置も分かっちゃうしね。

そうやって後手に藤丸の銃をもぎ取るようにして奪うのだ。

■ディスコネクター?ショートリコール?なんじゃそれ?

気になったので、10年前に購入し、部屋の奥のほうでホコリをかぶっていたベレッタM92F(のエアガン)を引っ張り出してきていじってみた。

スライドを後方にずらすと銃身も8mmくらい一緒に後退し、そこからカチリとスライドだけが後方にすべる。

ショートリコイルとは要するにこの機構のことで、弾丸を発射するエネルギーを損失しないように時間差を作って安全にブローバックさせる機能らしい。

で、もとに戻して、今度は銃口だけを後ろに押すと、これまたスライドごと8mmくらい一緒に後退する。撃鉄は上がった状態なのだけれど、この状態では引き金を引いても撃鉄は落ちない。

要するに、「銃口を突きつけられる」だけではダメで、スライドごと後退するくらい銃口を押し付けられなきゃダメだということか。

いやー、はじめて知りました。勉強になるなー。

■と、いうわけで、背中に銃を突きつけられたらカラダを銃口にあずけて銃身を後退させ撃鉄をロックさせておいてから後ろ手で銃をつかみ、ねじ上げて奪う。

というのが、正しい銃の奪い方(By セクシー・マヤ)なのだそうです。

でも、これは相当に覚悟がいりますなー(滝汗)。

万が一にもそんな場面に陥らないように、ゴルゴ13のごとく自分の背後には十分注意を怠らないように、皆さん気をつけましょうね。

●にほんブログ村● 
にほんブログ村 テレビブログ テレビドラマへ

                           <2008.11.02 記>

       
■【テーマ曲】
Photo unreal / flumpool
■ブラッディ・マンデイ主題歌 『Over the rain ~ひかりの橋~』 収録

       
■【原作】
Bloody_monday ■ BLOODY MONDAY 1
■龍門諒・作 恵広史・画 (講談社 2007年8月初版)

■第1話 2時間スペシャル■
■ドラマ 『ブラッディ・マンデイ』。完璧な初回スペシャルには気をつけろ!

■過去記事■
■TVドラマ雑感・バックナンバー

   
************************************************

■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年10月19日 (日)

■『ブラッディ・マンデイ』、第2話。展開、早やっ!

■ブラッディ・マンデイ■ <第2話>

テロリスト先生、あっという間に追い込まれちゃいました。
男子高校生と美人女教師のやりとりをもっと楽しみたかった気もするな。妙に高いアングルで強調された折原先生の胸元に、オジさんドキドキしちゃったよ。

今回の助演女優賞は第一感染者の’サネイエさん’(江口のりこ)かな。切なかったねぇ。でも彼女に注射針を突き立てられた看護師は発症せず、サネイエ死してワクチンを残す、というところか。

レクター博士っぽい嶋田久作と「SP」で味のある公安のデカを演じた野間口 徹のやりとりも面白いし、ああ、目が離せない。

●にほんブログ村●
にほんブログ村 テレビブログ テレビドラマへ

                           <2008.10.18 記>

■第1話 2時間スペシャル■
■ドラマ 『ブラッディ・マンデイ』。完璧な初回スペシャルには気をつけろ!

■過去記事■
■TVドラマ雑感・バックナンバー

   
************************************************

■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (3) | トラックバック (3)

2008年10月13日 (月)

■ドラマ 『ブラッディ・マンデイ』。完璧な初回スペシャルには気をつけろ!

■思いっきり引きずりこまれた2時間であった。

高校生の天才ハッカーが警察の特殊チームと協力してバイオテロをたくらむ謎の組織と戦うという話。

テンポが非常に速くて一気に後半の「事件」へと突入する。

面白いストーリーとしては、主人公たちがこれはもうダメじゃないかという状況に追い込まれるのが鉄則なのだけれども、それにしても絶望度が強烈過ぎる。

その状況のなかで加納刑事(松重豊)が吐く台詞がまた効いている。

「こりゃ~、ほんもんだぞ~」

■当然のことながら、初回スペシャルで主役級が全滅なんてことはないんだけれども、そのトリックがありがちなハイテクではなく心理的なものである意外性が新鮮。

さらに、その結果引き起こるだろう「最悪の事態」によって更なる絶望を演出しようというテロリストの知的センスにすっかり参ってしまったのだ。

■主役の高校生・藤丸(三浦春馬)がみせる天才ハッカーぶりの演出も、リアルかどうかは別にして、視覚的に面白くカッコいい。

そして、それ以上に素晴らしいのが豪華な脇役たち。

真剣でありながら少しとぼけた味わいが魅力の松重 豊、独房に拘束された謎の男を演じる嶋田久作、平成ガメラに哀愁あふれる人情劇を持ち込んだ蛍雪次郎のくたびれた刑事。

■だが、安心してはいけない。

「SP(エスピー)」でがっかりした例もある。

初回2時間スペシャルは舞台が一箇所に収斂し、物語の集中力がラストに向かって加速していった完璧ともいえる構成だったとおもう。

それだけに、これから日常を舞台にドラマが展開していったとき、テロリズムという不条理な暴力がもつ濃密な違和感が、連続的な日常に色あせてしまうのではないか、ということだ。

だから、まあ脇役たちの魅力的な演技を楽しみながら、構えずに見ていこうと思う。

●にほんブログ村●
にほんブログ村 テレビブログ テレビドラマへ

                           <2008.10.13 記>

       
■【原作】
Bloody_monday
■ BLOODY MONDAY 1
■龍門諒・作 恵広史・画 (講談社 2007年8月初版)

       
■【テーマ曲】
Photo unreal / flumpool
■ブラッディ・マンデイ主題歌 『Over the rain ~ひかりの橋~』 収録

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

■CAST■
【高木家】
高木藤丸(主人公、天才ハッカー)     : 三浦春馬

高木遙(藤丸の妹)              : 川島海荷
高木竜之介(警察庁課長補佐、藤丸の父): 田中哲司
 
【テロリスト集団】
折原マヤ(新任生物教師、テロリスト) : 吉瀬美智子
J (テロリスト集団の参謀)       : 成宮寛貴
出門丈一(テロ組織の殺し屋)     : TET
   
【警察庁秘密組織 THIRD-i 】
苑麻孝雄(警察庁警備局局長)         :中原丈雄
加納生馬(警察庁特殊班チーフ)       :松重豊
宝生小百合(特殊班捜査官)            :片瀬那奈
南海かおる(特殊班捜査官)             :芦名星
霧島悟郎(特殊班情報分析官)         :吉沢悠
工藤明(特殊班情報分析官)            :久保田将至
澤北美姫(特殊班情報分析官)        :阿南敦子
沖田耕一(警察庁課長、死亡)          :工藤俊作
    
【弥生高校新聞部】
九条音弥(藤丸の級友、新聞部長) :佐藤健
朝田あおい(藤丸の級友)              :藤井美菜
安斎真子(藤丸の級友)                 :徳永えり
立川英(藤丸の級友)                    :久野雅弘
   
【その他】

船木勘助(警視庁捜査一課刑事)      :蛍雪次朗
伊庭刑事(舟木の相棒刑事)            :尾崎右宗
    
敷村壮介(ウイルス学者)                 :神保悟志
神島紫門(謎の男)                         :嶋田久作

   
 
■STAFF■
プロデューサー   :蒔田光治、神戸明、樋口優香
脚本         :蒔田光治、渡辺雄介
演出         :平野俊一、波多野貴文、宮下健作
               * * * * * * * * * * * *
音楽         :井筒昭雄
音楽プロデュース :志田博英  
主題歌  : flumpool 『Over the rain ~ひかりの橋~』
               * * * * * * * * * * * * 
特殊メイク      :松井祐一  
アクションコーディネイター :田渕景也
製作         :東宝、TBS 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

■過去記事■
■TVドラマ雑感・バックナンバー

■ブラッディ・マンデイ 番組HP
■毎週土曜日夜7:56~ TBS系列■

■トラックバックさせていただきます■
’まぁ、お茶でも’ さんの「《ブラッディ・マンディ》★01」
 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (2) | トラックバック (2)

2008年9月23日 (火)

■暗闇に潜む気配から身を守る方法について。『爆笑問題のニッポンの教養』 民俗学、常光徹。

今回のテーマは、民俗学。

Photo_3
■『爆笑問題のニッポンの教養』(番組HPより)
FILE047:「“学校の怪談”のヒ・ミ・ツ」 2008.9.16放送
国立歴史民俗博物館副館長 民俗学、常光徹。

■民族学とは日々の営みや民間伝承などから、そこに込められた意味を探る学問なのだそうだ。

そんな中でも常光先生は一風変わった存在である。

中学校の教師をしていた時代に生徒のあいだで広まっている怪談に興味をもち、そのままその研究者になってしまった方なのである。

■学校の怪談といえば、トイレの花子さん。

一人で陰部を露出して無防備にしゃがむ、その心細さが背景にあるのでは、と常光先生はにらんでいる。

確かに理科室の人体模型が動き出すのも真夜中の学校であって「心細い状態」が怪談を生む条件のひとつなのかもしれない。

■さらに、と考えていくならば、不特定多数のひとがいる、或いはいたであろう場所、という条件もあてはまるかもしれない。

トイレが怖いといっても、離れにあった昔の便所ならいざしらず、現代の各家庭のトイレではなかなか怪談は成立しにくいだろう。

いつもジメついていて不特定多数の臭気が入り混じった学校のトイレ。

そこの奥から二番目の個室で、むかし・・・、

といった想像力をかき立てる「雰囲気」というものがある。

■その実体の無い「雰囲気」に物語というカタチを与え、なんとか理解して消化しようという試みが「怪談」なのではないだろうか。

何しろ、「何なのかワケが分からないもの」というのはいちばん厄介で、どう対処していいやら分からない絶望的な不安に襲われるものである。

だから、それに「名前」を与えてやることで、口裂け女に対する「ポマード」のような、意味は分からないけれど何らかの「対処法」をあみだし、それにすがるのではないだろうか。

■霊柩車を見たら親指を隠すとか、何やら汚いものを見たときには指を交差させてえんがちょをするとか、そういう仕草には、具体的な由来があって、それを紐解いていくと当たり前だと思っていた日常が面白くなる。と、常光先生はいう。

確かにそこには古い童謡の本来の意味を探るのと同じような知的面白さがある。

けれどその一方で、意味自体が失われたにしても、「親指を隠す」とか「えんがちょ」(或いは「ダブルえんがちょ」)をしたときの指の感覚それ自体がことばとか意味とかそういうものを越えた安心感を生み出すことも我々が体験的に知っている事実である。

■不安の本質が「ワケのわからない」ものだとするならば、対抗手段は「知る」ことではなく、それに対する結界を張る具体的行為にこそあるのではないだろうか。

それら「結界」の仕草をツボとか経絡の概念で調べてみると、不安定な神経を落ち着かせる作用があるとか、意外とそこに「理屈」を通り越した「意味」が見い出せるかもしれない。

だとすると面白いんだけどね。

                             <2008.09.23 記>

Photo_4
■『 しぐさの民俗学 ―呪術的世界と心性 』
■常光徹 著 ミネルヴァ書房 (2006/09)
   

Photo
■『 学校の怪談 』(講談社KK文庫)
■常光徹 著  講談社 (1990/11)
   

■『 学校の怪談 ―口承文芸の研究〈1〉 』
■常光徹 著 角川書店 (2002/07)
   

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

Photo_2
■新書版 『爆笑問題のニッポンの教養』の既刊一覧へ■
     

■過去記事■ [バックナンバー]の 一覧
■爆笑問題のニッポンの教養■

  

■関連サイト■
■『爆笑問題のニッポンの教養』番組HP

■トラックバックさせていただきます■
’ Cosmos Factory ’ さんの「学校の怪談」
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月11日 (月)

■NHK課外授業 ~ようこそ先輩~ 押井守。視点を変えることで生まれる不思議な感覚。

押井 守 監督が母校の小学生を相手に「授業」をおこなった。

Photo_4
■NHK 課外授業 ~ようこそ先輩~
「“見方”を変えて 退屈をけとばせ」 押井守。 <2008年7月20日放送>

■大学生の頃、家庭教師をしていた生徒の家が小学1年生の頃まで私が住んでいた社宅の近くだったので、そこを覗いてみたことがある。

場所も造りもほとんど変わらないはずなのに、そこには見たことも無いミニチュアのような小さくせせこましい景色があった。

その、「知っているはずなのに見たことの無い」不思議な風景を前にして、あの私の知っている子供の頃の景色はもう自分の記憶の中にしか存在しないのだと、すこし寂しい気分におそわれた。

45年ぶりに母校を訪れた押井守も、それとおんなじ感覚を覚えたようだ。

■今回の授業のテーマは、視点を変えることで起きる不思議を体験すること。

押井守は小学生たちを外に連れ出し、都心を流れる川を屋形船で遡り、まわりよりもずっと低い川面から見上げる首都高速やビル群がいつもとは違う大きな強さをもって覆いかぶさってくる、そういう不思議な感覚を彼らに教えた。

その足で超高層ビルの展望室に移動して、同じ都心の町並みを今度は上から見下ろしてみる。

なんとも頼りない、模型のような風景。

そこでは、さっきの力強い生命感はすっかり影を潜めている。

■同じ景色も視点を変えることで、これほどまでにも違って見える。

その感動を意識的に学ぶことが出来た小学生たちはとても幸福である。

これから成長し大人になっていく過程でその記憶はきっと薄れていくだろう。

けれど、ふとした瞬間にその時の感覚を思い出す。

世の中に「絶対」などというものはなく、今、目に映っているもの、そしてそこから感じるものは、物理的にも心理的にも、今の自分の「視線」の位置によるものでしかない。

今回の授業の記憶は、そのことに気付くための強力な切っ掛けとして、彼らの胸の中に深く埋め込まれたに違いない。

■押井守は「それ」が映画監督の仕事なのだという。

現実も、妄想も、どちらも自らの心に映るものであって、それをどうやって区別しようというのか。

いかにも押井 守 監督らしい授業であった。

                          <2008.08.11 記>

【追記】台湾の町並みを撮影するのにリアカーにカメラを載せて「犬の視線の高さ、犬の歩く速さ」で撮った映像が紹介されていたけれど、これは面白かった。主としてアニメを表現手段として選択しているけれど、押井守は根っからの映画監督なんだな、と感嘆した次第。

   

Photo
■【DVD】 うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー
■攻殻機動隊もいいけれど、やっぱり押井守の原点はビューティフル・ドリーマーなんだとおもう。

     

押井守 監督 最新作 映画『スカイ・クロラ』公式HP
■主人公たちが飛ばす戦闘機が【震電】(しんでん)というところがマニア泣かせだ。やっぱり、これが編隊で出撃していく光景を「妄想」したかったんだろうな。

NHK 課外授業 ~ようこそ先輩~番組HP

    

■過去記事■ 文化・芸術など

■トラックバックさせていただきます■
大石英司さんの’代替空港’
’悠々日記’ さんの「NHK「課外授業ようこそ先輩」に押井守監督が登場」
 

****************************************

■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年8月10日 (日)

■すべては自分の内から生まれてくる。『プロフェッショナル・仕事の流儀』 映画監督・宮崎駿。

今回のプロフェッショナルは夏休みスペシャル拡大版。

宮崎駿さんが『崖の上のポニョ』を生み出す過程をカメラが追った。

080805
■宮崎駿のすべて ~「ポニョ」密着300日~・映画監督・宮崎駿
<2008.08.05放送> (番組HPより)

■「映画の奴隷になる」、宮崎さんはそう語った。

’この映画はこうでなきゃいけない’という「宿命」がある。

作品とは自らの意思で創りあげるものではないのだ。

■主人公のイメージを決めたら、いきなりシナリオを書き始めるのではなく、イメージボード(スケッチ)を描き、毎日の散歩でみた身近な風景や、スタッフとのたわいない会話から、さらにそのイメージが膨らんでいく。

物語は、今、この瞬間に感じるものが、これまで今まで生きてきた自分自身の足跡と重なり、共鳴することで立ち上がってくるものなのだ。

■「生まれてこなければよかった」。

母親が病身で思い切り甘えることが出来ず、ムリに「いい子」であろうとして屈折していった幼少期。

それが67歳にしてなお創作の源泉であり続ける。

「楽しんでもらうこと」。

それが「自分が生きていていい唯一の存在理由だ」とつぶやくのだ。

■幼少期に刻まれた母親の笑顔を手に入れようという切なる思いは、アニメーション作家になって以降の宮崎さんにとって作品を見てくれる子供たちの笑顔に直結する。

宮崎さんの作家活動は自らの心の奥でうずき続ける屈折した幼児期の自分を救済する為に存在するのだろう。

だから「本当の笑顔」を得るために決して妥協はしない。

それは理屈によって生み出せるものではなく、鬱屈したこころの奥底に沈む「なにか」から浮かび上がってくるものなのだ。

■絵コンテの締め切りを過ぎても「それ」が浮かび上がってこない限り先に進むことは出来ない。

「崖の上のポニョ」の終盤のシーン。

歩けないはずの老婆「トキ」が宗佑に歩み寄り、抱きしめる。

その絵コンテを書き上げた宮崎さんの目には涙が浮かんでいた。

それは、決して悲しみによるものではない。

Photo

                            <2008.08.10 記>

Photo
■【DVD】プロフェッショナル 仕事の流儀スペシャル 宮崎 駿の仕事

  

Photo_2
■【DVD】 ルパン三世 - カリオストロの城
■宮崎駿・初監督作品。79年の公開時点では全く売れずに、その後「アニメージュ」誌上で人気が出た「風の谷のナウシカ」映画化までの5年間(38歳~43歳)は不遇の時代だったのだそうだ。
この映画が「マンガ映画」ではない「映画作品」として存在したことで日本のアニメーション全体が底上げされたように思うのだが、やはり先頭バッターはツライ、ということか。
   

Photo_3
■【マンガ】 『 風の谷のナウシカ 』 全7巻セット
■『ナウシカ』の完全版をいつか映像で見てみたいものだ。

   

■関連記事■
■感情に正直であること。 宮崎駿

                         

**************************************

過去の記事■『プロフェッショナル・仕事の流儀』

■『プロフェッショナル・仕事の流儀』番組HP

■茂木健一郎さんのクオリア日記にT/Bさせていただきます。

*********************************************

■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年7月26日 (土)

■ドラマ 『打撃天使ルリ』。だっしゃー!と濃すぎる漫画を日常に組み込む試みは成功するのか?

困ったねー。こりゃ一筋縄ではいかないよ。

Photo
■金曜ナイトドラマ、『打撃天使ルリ』。

■正直、ラストの暴力シーンはちょっと引いてしまった。

お茶の間に持ち込まれる「暴力シーン」というのは型にはまった毒抜きされたものというのがお約束であって、懲らしめられるべき極悪人も必ずそういう「型」を踏むワケで、だからこそ時代劇にしても刑事ものにしても安心して家族でテレビを囲むことができるのである。

内気で弱々しいルリを打撃人類として覚醒させるために必要な刺激であるとはいえ、被害者の妻と子供をドラム缶にコンクリート詰めにするというのは明らかにその一線を越えている。

「必殺仕事人」のような爽快感がまったく無く、後味の悪さだけがいつまでも残ってしまうのは、「お約束」を裏切ったことによる不可避な副作用なのである。

■じゃあ、もう見ないのかというと、そこでなかなか踏ん切りがつかないのだ。

脚本も演出も上手く出来ていて、ハラハラしながら一気にラストまで惹きつけられたというのもまた事実なのである。

「あ、こう来るだろうな」というところで、「やっぱり!」と一度思わせておいて、その場で裏切る脚本の妙。

はじめの部分の夢オチか?と思わせたシーンとか、コンビ二前で3人組に立ち向かうと見せかけて菊川玲がヘナヘナの猫パンチを出すシーンとか、どうしてもニヤリとしてしまう。

その脚本の面白さにテンポとスピード感のある思い切りのいい演出が加わって、力強くコッチを作品世界に引きずり込んでゆくのだ。

■原作は10年ほど前にヤングジャンプで連載されていた山本康人の同名の漫画である。

ストーリーはすっかり忘れてしまったが立ち読みしていた記憶はあって、原作の「ルリ」は地味な女子高生なのだけれども、「だっしゃー!」のシーンの描写があまりにも濃く、いや、本当に濃すぎる絵で、そこだけが妙に記憶に焼きついている。

その濃すぎる絵のゆえに現実から切り離されていて、その異質な感覚が魅力であったように思う。

■そんな異質な作品をテレビドラマに持ち込むというのは明らかに暴挙である。

ところが作り手はこれを見事に料理した。

「だっしゃー!」という素手による「打撃」で相手をふっとばし、壁に人の形の穴をあける。

そんなバカな。

というマンガ的な部分をはっきりとわかりやすく描く一方で、そんな「非日常」はまったく理解しがたいですよ、という「現実」の部分は芝居としてリアルに描く。

そのギャップを強烈に作り出すことで、「こんなことあるわけない!」という感覚を面白く浮かび上がらせることに成功しているのだ。

「打撃」を目撃した街の人インタビューのドキュメンタリー’風’な場面とか、「非現実」を目の前にそれを受け入れることを頑なに拒む菊川玲の真剣な演技とか、エッジが効いているというのか、素直に凄いなと感心してしまう。

菊川玲?なんで!?という、はじめに感じた唐突な印象は、

おお!

という感嘆符に塗り替えられた。

■まわりを固める俳優もいい。

とくに素っ頓狂な声を出すコールセンターの係長。

この職場のドラマもうまく動き出せば面白そうだ。

あと、この人濃いなーと思ったデカ長。

見ているときには気付かなかったけどピーター(池畑慎之介)さんじゃないですか!

ヒゲ生やして、ぼさぼさのアタマで、色眼鏡かけてて、もう全然わからんかった。

ある意味一番のサプライズだったかもしれない。

■というわけで、後味の悪さを乗り越えて次回も見るのだろうな、とおもう。

毎回こんな展開だと見放さざるを得ないだろうけれど、もっと大きく化ける予感を秘めたドラマである。

そんな予感を信じてみたい。

                         <2008.07.26 記>

■追記■
やっぱ、駄目みたい・・・。リタイヤします。
                         <2008.08.19 記>

■原作 『打撃天使ルリ』 (1)
     

**********************************

■金曜ナイトドラマ 『打撃天使ルリ』公式HP

■キャスト■
>【打撃人類】
小峰ルリ    :菊川怜
相馬健一郎  :遠藤雄弥
謎の少女・唯  :沢木ルカ
【港警察署・刑事】
神取祐司    :池畑慎之介
佐々木達也   :池田努
柚川麗美    :中山恵
【ルリの家族】
小峰咲子(母) :石野真子
小峰 誠(父)  :升毅
【職場の同僚】
森崎潔(係長) :小須田康人
水上礼奈    :木内晶子
本吉由香里   :永池南津子
【ニュースリポーター】
葛谷美里    :能世あんな
   

■スタッフ■
原作:山本康人
脚本:徳永友一、高橋美幸
演出:常廣丈太、秋山 純、梶山貴弘
音楽:海田庄吾
制作:国際放映、テレビ朝日
* * *
主題歌 『I LOVE YOUをさがしてる』 GLAY
   

■過去記事■
■TVドラマ雑感・バックナンバー

■トラックバックさせていただきます■
’カネハトキナリ’ さんの「思ってたより面白い! 打撃天使ルリ 」

**********************************

■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (2) | トラックバック (4)

2008年7月18日 (金)

■【書評】『栞と紙魚子の百物語』 諸星大二郎。物の怪が当たり前のように日常に居る楽しさ。

栞と紙魚子の新作である。

胃の頭町全体を巻き込む壮大なスケール(笑)で展開した前作、

『何かが街にやって来る』でてっきりおしまいと思っていたのだけれども、これはうれしい誤算であった。

Photo ■栞と紙魚子の百物語

■今回からまた新しく珍妙なメンバーが登場する。

・妖怪に変化した古本を集めて回る妖怪「司書」、キイチ。
(本名は、十口木一=古本、というやる気のないネーミング)

・実は露出狂なんじゃないかという疑いの晴れない弁天様。

・クダギツネ使いの’イケメン’転校生、管正一。

■とはいえ中身は相変わらずの栞と紙魚子で、安心して読み進めることが出来るのだけれども、全体を通してみると、なんか少し今までの「栞と紙魚子」とは違う味わいを感じる。

今までの「栞と紙魚子」は、日常の片隅にある何の変哲も無い扉から「異界」にさ迷い込むとか、日常の中に「ワケの分からないもの」が発生して混乱を巻き起こす、そういうパターンが多かったように思う。

けれど、今回はごく当たり前に「もののけ」があって、その前提の上に物語が組み上げられている感じがするのだ。

まぁ、これだけ変なことが起きる胃の頭町が正常な日常を維持できるわけもないのだけれど(笑)。

■話は7編。

■「妖怪司書」。

子鬼のキイチ登場のはなし。妖怪化した古本や妖怪が擬態した本を捕まえるのが妖怪司書の仕事で、もちろん怪しげな古本がしこたまうなる宇論堂がはなしの舞台。栞と紙魚子がキイチを捕まえようとしかけるベタな罠と、それに引っかかるベタなキイチが面白い。

■「栞と紙魚子物怪(もののけ)録」。

二百年前、連日のように現れる妖怪をものともしなかった豪胆な青年、平太郎の絵巻物世界に引き込まれ、胃の頭町もののけ代表として平太郎を嚇かさなければならなくなった栞と紙魚子のはなし。

オチがみえみえなんだけれど、そのページを開いたときの満足感は期待以上。

この絵は諸星大二郎しか描けないわな。

■「弁財天怒る!」。

弁財天のお堂を守る神様用の’強そうな’結界。・・・なのだけれども、「でも、あの隅の方のはよそ見してるわよ」となんなくすり抜けられてしまう、その間抜けさが好きだ。

■「モモタローの逆襲」。

川をどんぶらこと流れてくるものを迂闊に拾わないこと。

キイチの叔父さんの本物の「鬼」が結構怖い。

■「百物語」。

怪談ひとつ終わるごとにロウソクの火を消していく、いわゆる百物語なのだが、そのメンバーが問題。

何を間違えたか段先生の奥さんは先生との出会いのノロケ話を開陳する。

悪魔召喚の話は数あれど、召喚される側から描いた話は初めてじゃなかろうか(笑)。

さらに、奥さんを召喚した魔導師の使った本が「根暗なミカン」(爆)。

その情けない表紙のイラストが最高におかしい。

※根暗なミカン→ネクラナミカンの何が面白いのかサッパリ分からなくて気持ちの悪い方は下の「ネクロノミコン」を参照してください。

■「クダ騒動」。

使い魔の一種、クダギツネをあやつる謎の転校生、管正一の話。

久しぶりに猫のボリスが活躍。

■最後は3話にわたる中篇、「天気雨」。

忘れ去られたような胃の頭稲荷の小さな祠から「宝物」が盗まれた。

お稲荷さまから犯人探しを頼まれた栞と紙魚子、さらに管くんとクダギツネたちを巻き込んで大捜索が展開する!

お稲荷様の俗物ぶりと、紙魚子の策略にまんまとはまる間抜けな神様が楽しい。

■栞と紙魚子の次回作まで、また2、3年待つことになるのだろう。

それも待ち遠しいのだけれど、

本家の幻想・伝奇マンガの新作はまだなのか。

このままだと怪奇ギャグ漫画作家って言われちゃいますよ、

諸星センセイ!

                           <2008.07.18 記>

Photo  
■栞と紙魚子の百物語 諸星大二郎・著(2008.06.30刊)
    

Photo_3■ネクロノミコン 大瀧 啓裕 訳
■ク・リトル・リトル神話体系/クトゥルー神話に嵌ったのは高校生の頃だから、かれこれ20数年前のことになる。いまさら触れてはならないこの本を開こうにも、その前に記憶があやふやで楽しめる自信は無い。もちろんこれを機にラブクラフトを再読しようなんていう気力・体力ともに全然無い。
でも、本棚の飾りとしてならあっていい本かもしれない。その背表紙を見るだけで気分はボストン近郊のアーカム、ミスカトニック大学付属図書館になるのだから。
ところで、この本の出版社が学研というのには一番驚いた。
普通、国書刊行会か青土社でしょ。時代も変わったものである。

**************************************      

■栞と紙魚子シリーズ■既刊■【眠れぬ夜の奇妙な話コミックス・ネムキ】
※書評をご覧いただくため、既に絶版になった初版にリンクを張っています。

アマゾンで購入する場合は’栞と紙魚子’で検索して’新版’をご購入下さい。
9609 9805_2 0001
■生首事件 (96年9月) ■青い馬(98年5月) ■殺戮詩集 (00年1月) 

0108 0402
■栞と紙魚子と夜の魚 (01年08月) ■何かが街にやって来る (04年02月)

■過去記事■
■【書評】ひつじの本棚 <バックナンバー>

■トラックバックさせていただきます■
’パパと娘のオタ日記’ さんの「栞と紙魚子の百物語」

***************************************

■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年5月30日 (金)

■ETV特集 『石ノ森章太郎・サイボーグ009を作った男』。深刻な傷が癒えるとき。

NHK教育でこんなに面白い番組に出会うとは思わなかった。

Cyborg00901_2 Etv_01
■ETV特集 『石ノ森章太郎・サイボーグ009を作った男』 2008/5/25(日)放送

■今年は石ノ森章太郎さんの没後10年なのだそうだ。

それで企画された番組なのかはよく分からないけれども、009の物語を追いながら、植島啓司(宗教学者)、姜尚中(政治学者)、養老孟司(解剖学者)といったそうそうたる面々が「石森章太郎」を読み解く。といった趣旨の番組だ。

このドキュメンタリーの語り手は精神科医の名越康文さん。グータンに出てくる当たりのやわらかな先生というイメージしか無かったが、実は漫画評論家でもあったのだそうだ。(うーん、そういわれると日本人全員が漫画評論家といえるのかもしれないが・・・)

■数ある石森作品の中から、「何故、サイボーグ009なのか?」というと、石ノ森さん自身が生前に残した「ひとつだけ作品を選べといわれれば、さんざん悩んだあげく、サイボーグ009を選ぶだろう」ということばの行間に潜む深いもののせいでもあるし、実際、死の寸前まで「完結編」の構想を練り続けたものの、未完に終わってしまっているという神話性によるものでもあるだろう。

■第1期「誕生編(?)」を養老先生が、第2期「地下帝国ヨミ編」を姜尚中(カン・サンジュン)さんが、第3期以降の「天使編、神々との闘い編」を植島先生が語るという構成。

「地下帝国ヨミ編」のラストで、島村ジョーとジェット・リンクが流星となってひとつの完結を迎えて以降の「009」については、正直、ついていけないところもあって番組後半は入り込めなかったのだけれど、前半の養老先生、姜さんのあたりはぞくぞくするほど核心に迫る、深さと重さがあった。

■養老孟司先生は、石ノ森章太郎さんのひとつ年上の同世代である。

1945年の終戦を7歳前後で迎えていることになる。

ここがキーポイントで、名越先生ともども「へぇー」そういうことか!と養老先生の読み方に目からウロコだったのである。

■養老先生はいう。

石森さんの漫画の登場人物たちは、「役割」とか「機能」が明確になっている。009に出てくるサイボーグたちのそれぞれの「能力」がいい例である。

で?

たぶん石森さんは、「モノ」だけを信じたのではないだろうか。

人間同士のつながり、「愛」、というようなものや、イデオロギーというような「絶対に正しい」とか「正義」とかいったものが信じられない。

そういったものを徹底的に疑っていって、たどり着いたのが「機械」とか、「技術」とかいった手で触って確かめられるもので、「【モノ】だけが信じられる」という価値観であったのではないか。

そのどこか悲観的な大人の見方が、根本の部分では楽天的で明るい手塚治虫の作品と袂を分かつ部分なのだ、と。

■名越先生が深くうなづく。

石森さんの作品では、何か巨大なゴーレムのようなものが現れたときに実はそれは機械であった、という落ちが多く、そこに強い違和感を感じていた。「ゴーレム」は「ゴーレム」でいいじゃないか、と。

けれど、今の養老先生の話からすると、「ゴーレム」ってなんだ!?というとき、その正体が「確かな存在」の「機械仕掛け」であることは必然だったのかという深い納得に至るワケだ。

■いやいや、まったく名越先生と同感!

最近、この話題が多いのだけれども、敗戦を肌身で感じた世代というのは戦争前の軍国少年が突如として教師から教科書を墨で黒く塗れといわれた世代であって、その価値観の崩壊ゆえに信じられるものといったら食い物に直結する【モノ】だけだ。

【愛】とか【正義】なんてものはナンの腹の足しにもならないのである。

そして【モノ】とか、【技術】だとか、そういう目に見える確かなものだけを信じて猛烈に働き、この世代が戦後の復興を成し遂げたという構図が、ある。

その世代の気持ちを本当の意味で理解できるのはその時代を生きた同世代だけであり、それが養老先生のことばの説得力なのである。

と同時に、養老先生の唯脳論的世界観に対して時に感じる「違和感」にも、なるほどと妙に納得がいってしまうのであった。

■さて、昭和25年生まれの姜尚中(カン・サンジュン)さん。

朴訥に、けれど真摯に語るその姿勢に、いつも深い共感を覚える政治学の先生である。

熊本生まれの在日二世で、少年当時の娯楽といったら漫画しかない、という環境で育ち、それゆえにこの時期の漫画についても、いつもの調子で熱く語りはじめるのである。

■姜さんは「サイボーグ009」にアイデンティティの亀裂を見る。

彼ら00ナンバーのサイボーグたちは「悪の組織」ブラックゴーストによって改造された「兵器」である。

004アルベルト・ハインリヒの言動によく現れるのだけれど、彼らには「自分はもう人間ではない。人殺しのための兵器に過ぎないのだ。」という「悲しみ」が常に付きまとう。

そこに姜さんは、日本に生まれ日本語で暮らしながらも「日本人」ではない、という自らの出自を重ねるのだ。

■「強引で暴力的なもの」によって生まれてきた自分はいったい何者なのか。

それは決して純粋なものには成り得ず、常に「矛盾」をはらんだ存在だ。

在日二世として成長した姜さんにとっては、純粋な、絶対的なものなどはあり得ない。

「正義」を振りかざす「9.11以降のアメリカ」に対する強い反発には、それだけの理由がある。

世の中を「正義」と「悪」とで色分けしようとする二元論の危険性について、肌身をもって知っているのだ。

姜さんの政治的態度が一貫していて、かつ、人のこころをつかむ強い魅力をもっているのは、そういう「根っこ」に裏打ちされているが故のものなのである。

■引き裂かれたアイデンティティを描くのは009だけではない。仮面ライダーにせよ、キカイダーにせよ、その生まれは「悪」にある。

特に漫画版「人造人間キカイダー」については、「機械」と「人間」のあいだで引き裂かれた存在であることが左右非対称というカタチで表現され、かつ、その衝撃的なラストシーンは「完全な人間」になることで「圧倒的な【悪】の強さ」を身につける、という極めて皮肉なものとなっている。

その『人間に対するどうしようもない悲観』が石森作品に深みを与え、子供だけでなく、むしろ大人の心を惹き付けるのである。

■「石ノ森章太郎さんは、何かアイデンティティの問題を抱えていたに違いない」というのが姜さんの結論なのだけれど、実はその通りだという石ノ森さんの青年時代の話がそこにつながる。

マンガの才能を認められ東京に出てきた石ノ森章太郎さんは売れっ子になり、大学受験の勉強をする暇がないほどに忙しい毎日を送っていた。有名なトキワ荘の時代である。

実はこの時代、石ノ森さんはマンガで一生やっていくつもりはなく、映画監督か、小説家になることを夢見ていたという。

今のわたしは、本当の私ではない。

という意識。

人生の岐路に立つとき、誰もが抱く感覚だろう。

■けれど石ノ森さんの場合は、どうしようもなくツラい出来事と重なり合ってしまう。

トキワ荘でともに暮らし、石ノ森のマンガに対する最大の理解者でもあった大切な姉を喘息の発作で失ってしまうのだ。

それも、入院中に病状が安定しているときを見計らい、友人と映画を見に行っている最中に突然の急変で亡くなってしまったのである。

想像するだに、そうとうに深刻な「傷」であろう。

自らを責め、悔い、また責める。

それが延々と続いていく。

■マンガを描くことと姉の存在が重なっていったのかどうかは分からない。

けれど、マンガを描いている「自分」を見つめるとき、その影響は確実にあって、「許しがたい、どうしようもない自分」が作品に暗い影を落としたとしても不思議ではない。

そういう観点で「地下帝国ヨミ編」のラストシーンを読み返すと、ぐっと胸に迫るものがある。

ブラックゴーストと共に死ぬことが自分の使命なのだと理解する島村ジョーと、もう手遅れだと分かっているのにジョーを助けに行って自らも運命をともにするジェット・リンク。

やるべきことをやりとげ、「死」を目の前にすることではじめて訪れる「許し」。

当時28歳の石ノ森さんは、ラストの流れ星のシーンを一体どういう気持ちで描いたのであろうか。

と、しばらくそのページを開いていた。

                           <2008.05.30 記>

Photo
■2012 009 conclusion GOD’S WAR
 ―サイボーグ009完結編〈1(first)〉

Cyborg00901 Photo_2 Photo_3
   

■関連記事■
■『スカルマン』 最終回。それ、何ていうスターウォーズ?

■過去記事■
■【書評】ひつじの本棚 <バックナンバー>

   
*******************************************

■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2008年3月13日 (木)

■広川太一郎さん、逝く。

広川太一郎さんといえば、ロジャー・ムーアとかロバート・レッドフォードとかの二枚目俳優の渋い声をあてたりしていたわけだが、やっぱりわたしの中では、

「のんのーん!」

と、鼻の上のほうから抜けるような「スノーク」の声なんだよな。

とかなんとかいっちゃったりなんかして、もー・タ・イ・ヘ・ン。ってな具合の軽妙な語りがもう聞けないと思うとほんとうに寂しい限り。

心よりご冥福をお祈りします。

                          <2008.03.12 記>

■広川太一郎さんが活躍された作品
   

■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (2) | トラックバック (1)

より以前の記事一覧