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2017年10月21日 (土)

■【書評】『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』 矢部 宏治 高度に政治性を持つ案件については、日本人の人権は日本国憲法では保護されない?

日本は米軍に支配されてる。

そんなの知ってるわい、と思ってスルーしてたんだけど、これは目からうろこの本なのである。


【新書】知ってはいけない 隠された日本支配の構造 矢部 宏治・著

■本書に記されている内容を簡単にまとめる。
  

1.東京から日本海側までを覆いつくす空の米軍支配、「横田空域」

2.日本全土が治外法権、米軍の軍事演習はどこでも可能

3.安保と日米地位協定と日米合同委員会によって、米軍の特権は隠される

4.定例秘密会議、日米合同委員会は米軍から官僚への上意下達の仕組み

5.米軍取扱を定める裏マニュアル「部外秘資料(最高裁)」、「実務資料(検察)」、「日米地位協定の考え方(外務省)」

6.安保と日米地位協定は日本国憲法の支配を受けない。日本版統治行為論と、日本政府による米軍以外への拡大解釈

7.歴史をたどるとすんなりと理解できる憲法9条の意味

8.矛盾のすべては朝鮮戦争によって生まれた

9.米軍による占領状態の継続

    
ざっとこんな感じか。

Photo

■基地の外でも米軍は自由に活動すること、そこで事故や事件が起きても、日本の警察は何もできないこと。

ニュースで何度もひどい事件を目にし過ぎて、すっかり麻痺してしまったのかもしれない。

そんなことは、もう常識だと思ってしまう。

しかし、それが行政、司法の世界ではシステマティックに行われているということには、改めて怒りを覚える。

一体誰のために仕事をしているのか。

■1960年の新安保で、米軍の特権は表向き消されるが、実際には「日米地位協定の考え方」として外務省内に定められ、最高裁も検察も、それぞれにマニュアルをもち、米軍や軍属の日本の法の外へと逃がしていく。

月に2回実施される米軍と官僚による日米合同委員会では、日本やアメリカの議会や首相、大統領が関与しないところで「占領政策」が米軍から通達される。

米軍は日本においては日本国憲法の支配の外にある。

それを是とする官僚たち。

■統治行為論、というらしい。

 
「日米安全保障条約のように高度な政治性をもつ条約については、一見してきわめて明白に違憲無効と認められない限り、その内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできない」 ― 1959年12月砂川事件、最高裁判決骨子

  
高度に政治性を持つ案件については、日本人の人権は日本国憲法では保護されないということである。

そんな、ばかな。

しかし、それは日米安保に適用されるだけでなく、放射性物質についても各種条文の適用除外を受けていて、2011年の福島原発事故の翌年に原子力基本法が改正されて、以下の内容が追加されている。

 
原子力利用の安全の確保については、我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする

 
要するに原子力の安全確保も高度に政治性を持つ案件とされたと見ていいだろう。

これは最高裁の機能停止以外の何物ではなく、時期を考えれば安倍政権以前の問題として、官僚が統治行為論を拡大解釈して、国民の人権を制限する手法を手に入れてしまっている、ということだ。

日曜日の衆議院選挙と同時に実施される最高裁判事国民審査も、なにか虚しさが漂ってしまうのである。

■もうひとつ、本書で驚くべきことが示さている。

 
日本国憲法9条

一、日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 
二、前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 
今回の衆議院選挙の争点として、自衛隊の憲法での定義や、集団的自衛権が問題となっているが、その根幹に関わることである。

私自身、以下のようにとらえ、自衛権としての戦力は認められる、と考えていた。

「陸海空軍その他の戦力」は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使」や「国際紛争を解決する手段としては」 、「これを保持しない」

つまり、自衛権の確保を忍び込ませたとされる芦田修正の意図に沿った解釈だ。

 
日本国憲法13条
 
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

  
日本人の生命権を考えれば、当然のことである。

■しかし、本書で提示されるのは、日本国憲法の前提となった国連憲章の前身ダンバートン・オークス提案(1994、米英中ソ)、連合国共同宣言(1942、連合国26か国)、その大本となった大西洋憲章(1941、米英)への遡りだ。

ダンバートン・オークス提案は米英中ソのみが戦力を保有し、そのほかの国は戦力と交戦権を放棄、国連軍によって安全保障が行われる、という内容であり、その文脈で憲法9条を照らせば、

日本は国連軍を前提にして戦力を放棄する

という理解が極めて自然、条文もすんなりと理解できる。

自衛隊は違憲である。

という憲法学者の思考回路がさっぱり理解できなかったのだが、こういう説明を受ければ、もう明らかに自衛隊は違憲なのだ。

■しかし、実際には国連軍は創設されなかった。

従って、戦力放棄の前提が失われてしまう。

そこで日本の独立当時、朝鮮戦争で劣勢に立たされていたアメリカが採用したのが、日米安保によって国連軍の代わりとする、という論理だったのだ。

警察予備隊にはじまる日本の戦力、つまり自衛隊は、当然のように国連軍=米軍に組み込まれ、指揮命令系統は米軍最高司令官である大統領ということになる。

何しろ、日本が主権として発動できる「戦力」は無いのだ。

今、北朝鮮と戦争になった場合、自衛隊の最高司令官は安倍首相ではなく、トランプ大統領になる。

ロジックは分かるが、心がついていかない。

平時にすっかり慣れてしまって、まったくリアルにとらえていなかったのだ。

■戦後、自民党は、日米安保と9条と自衛隊の矛盾を、「専守防衛」という平和主義を維持するためにだましだまし、これらを運用してきた。

日本人の生命や財産を守るためには日本が日本の主権で動かせる自衛隊を持つ権利をもっているのは当然のことである。

その「当然」に「矛盾」を合わせてきたのだ。

しかし、何を目的にしているのか分からないが、安倍首相は2015年4月、安保法案審議に先立って、アメリカ議会でこの法案を通すことを約束した。

そして、安保法案を数の論理で通したあとは、憲法を改正して自衛隊を明記したいという。

一体だれに向けて動いているのか。時期を考えれば北朝鮮有事に向けた法整備を自衛隊を指揮するアメリカに約束した、と考えるのが適切だろう。

戦後、自民党保守本流が苦しみながらも工夫をこらして守ってきたものが、われわれ日本人以外のところを駆動力として、今崩れ去ろうとしている。

日本の防衛は日本の主権をもって行うべきだし、平時も含めて日本人の人権が制限されるのは絶対に間違っている。その大前提を回復した上で、在留邦人の保護や、米軍との共同作戦について議論を進めるべきなのだ。

このことをしっかり意識して、今回の衆議院選挙に臨みたい。

                 <2017.10.21 記>

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