■【社会】戦前の人の寿命って45歳って本当なのか?平均寿命のトリックと人間の寿命について考える。
現在の我々の寿命は80歳で、戦前は50歳以下だった。なんてよく聞くけど本当なんだろうか?だって、昔話だっておじいさん、おばあさんが平気で出てくるじゃん。おかしいよね?と思って厚生労働省の資料をグラフ化してみた。
■結果、想像以上に面白いことがわかった。
平均寿命の定義は、0歳平均余命。つまり、おぎゃあと生まれた赤ん坊が平均であとどれくらい生きるのか?という平均値なのだ。
当然、抗生物質のない戦前の乳児死亡率は高いわけで、平均寿命は乳児の死亡率に思いっきり引っ張られる。
だから、20歳とか40歳の平均余命の推移が分かれば、無事に成人した人が何歳くらいまで生きたのかがわかるだろう、そう思ってグラフを作成してみたのである。
■上のグラフは明治24年以降の0歳、20歳、40歳、65歳、80歳それぞれが平均で何歳まで生きたか(年齢+平均余命)を示したものである。(男性)
予想通り、20歳まで生き残った人は明治時代においても60歳、40歳まで生き残った人は65歳くらいまで生きている。
つまり無事に成人した人は還暦まで生きるのが普通だったということだ。
思い出してみよう。平均寿命の定義は、0歳平均余命。上のグラフで言うと一番下の青い折れ線だ。確かに戦前の平均寿命は50歳以下で、戦後にぐいぐいと上昇していく。
僕らはこれを見せられていたのだ。。。
うーん、やっぱそうだよね。ここまでは想定内。
だが、びっくりしたのは80歳まで生きた人の寿命である。
■再び上のグラフの一番上の80歳の水色の折れ線を見てみよう。
なんと明治時代から85~90歳と安定して推移しているじゃないですか!
つまり、大きな病気をしないで80歳まで生きた人は85歳まで普通に生きていた。しかも、それは平成の世になっても90歳以上には伸びない、ということだ。
で、江戸時代の有名人をしらべてみたら、葛飾北斎は90才、杉田玄白85才、貝原益軒85才、滝沢馬琴82才、上田秋成76才、良寛74才、伊能忠敬74才、徳川光圀73才、近松門左衛門72才なのだそうで、やっぱり江戸時代でも80歳まで平気で生きていらっしゃる。
平均寿命=0歳平均余命ってことを意識していないと、江戸時代も明治の人も50歳でなくなっていた、だって織田信長も人生50年ってうたってたもんね。なんていうとんでもない勘違いをしてしまうのだ。
昔は病気も治らなかったし、栄養状態も悪かったからね、現代は圧倒的に健康になって、老人の寿命もどんどん延びていくんだね。
という理解は、全体としては正しいのだけれど、【寿命】というものを「人間は健康であれば何歳まで生きるのか?」と定義するならば、それは大きな間違いだ、ということだ。
僕らの寿命は、明治も今も90歳弱。(ちなみに女性の80歳平均余命は今回グラフ化した男性の場合の+0~2歳)
【結論】 大きな病気にかからず健康に老いた場合の人間の寿命は90歳くらい。それは明治時代も今もさほど変わらない。どれだけ医療や栄養状態が良くなっても90歳程度で老いて死ぬ。人間って、そういう風にできているのだ。
だから、娘よ。
ずいぶん先の話ではあるけれど、
ぼくが90歳になって死にそうになったとしても、無理な延命処置で管とか突っ込んだりしないで静かに枯れるように死なせてね。
自然がいちばんなんだから。
<2017.08.04記>
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