■【マンガ評】『エースをねらえ!』 だから、きらめくような生命をこめて。
ウインブルドンが盛り上がっているからではないが、急に猛烈に読みたくなって大人買いして読みふけってしまった。
■1995年ウインブルドンで松岡修造が故障からの軌跡の復活の末ベスト8に勝ち進んだ試合、「この一球は絶対無二の一球なり」という庭球訓を自分に言い聞かせるシーンあったと知り、そしてそれまでの苦難に満ちた彼のテニス人生は『エースをねらえ!』によって支えられてきたのだと知ったとき、ああ、これはしっかり読んでおかねばなと思ってはいたのだ。
しかし、これほどまでに魂に響く物語だとは思わなかった。
TVアニメの『エースをねらえ!』(古い方)は大好きで再放送を何度も見たし、『新・エースをねらえ!』も見てはいた。
けれど、ここまで感動した記憶はない。
岡ひろみの頑張りや成長も、お蝶夫人の精神性の高さも、藤堂さんの強さややさしさも、もちろん素晴らしいのだけれども、結局のところ、それらはすべて宗方仁の生きざまに集約される。
その意味で、『エースをねらえ!』は宗方仁の物語だと言えるだろう。
■その宗方仁の生き方を提示し、かつ、この作品の核となるシーンがある。テーマとしては、ここがすべてだといってもいい。
林の中で倒れてしまった宗方を岡が見つけ出し、自分がもうテニスが出来ない体であると岡に知られたことを悟り、宗方が岡に語り掛けるシーンだ。
この一球は絶対無二の一球なり
されば心身をあげて一打すべし
― 福田雅之助
あのことばが好きで
かならず暗唱してからプレイした
だがそのことばが心底骨身にしみたのは
テニス生命を絶たれてからだった
この世のすべてに終わりがあって
人生にも試合にも終わりがあって
いつと知ることはできなくても
一日一日
一球一球
かならず確実にその終わりに近づいているのだと
だからきらめくような生命をこめて
ほんとうに二度とないこの一球を
精いっぱい打たねばならないのだと
■岡に出合い、苦しかったそれまでの人生を
彼女にすべてを託すためのものとして受け入れ、
それからの生の一瞬一瞬のすべてを
全身全霊をもって、子を思う親の無償の愛をもって、
岡に注ぎ込んでいく
「この27年が人の80年に劣るとは思わない」
と言い切るほどに最期の瞬間まで熱く生きた男。
その生きざまが、お蝶夫人を、藤堂を巻き込み
宗方仁の想いは継承されていく。
宗方は死んでも、宗方は常に岡と共にある。
岡、エースをねらえ
その最期の言葉がいつまでもどこまでも広がっていく。
生きる、ということの意味を改めて教えてくれる『エースをねらえ!』というマンガは、確かに少女漫画というよりも、人生に向き合うための教科書なのかもしれない。
<2017.07.08 記>
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ああ、熱い、熱い、情熱だけは~
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