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2017年7月 8日 (土)

■【マンガ評】『エースをねらえ!』 だから、きらめくような生命をこめて。

ウインブルドンが盛り上がっているからではないが、急に猛烈に読みたくなって大人買いして読みふけってしまった。

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■1995年ウインブルドンで松岡修造が故障からの軌跡の復活の末ベスト8に勝ち進んだ試合、「この一球は絶対無二の一球なり」という庭球訓を自分に言い聞かせるシーンあったと知り、そしてそれまでの苦難に満ちた彼のテニス人生は『エースをねらえ!』によって支えられてきたのだと知ったとき、ああ、これはしっかり読んでおかねばなと思ってはいたのだ。

しかし、これほどまでに魂に響く物語だとは思わなかった。

TVアニメの『エースをねらえ!』(古い方)は大好きで再放送を何度も見たし、『新・エースをねらえ!』も見てはいた。

けれど、ここまで感動した記憶はない。

岡ひろみの頑張りや成長も、お蝶夫人の精神性の高さも、藤堂さんの強さややさしさも、もちろん素晴らしいのだけれども、結局のところ、それらはすべて宗方仁の生きざまに集約される。

その意味で、『エースをねらえ!』は宗方仁の物語だと言えるだろう。

■その宗方仁の生き方を提示し、かつ、この作品の核となるシーンがある。テーマとしては、ここがすべてだといってもいい。

林の中で倒れてしまった宗方を岡が見つけ出し、自分がもうテニスが出来ない体であると岡に知られたことを悟り、宗方が岡に語り掛けるシーンだ。
  

  この一球は絶対無二の一球なり

  されば心身をあげて一打すべし

              ― 福田雅之助

あのことばが好きで 

かならず暗唱してからプレイした

  
だがそのことばが心底骨身にしみたのは

テニス生命を絶たれてからだった

  
この世のすべてに終わりがあって

人生にも試合にも終わりがあって

いつと知ることはできなくても

一日一日

一球一球

かならず確実にその終わりに近づいているのだと

   
だからきらめくような生命をこめて

ほんとうに二度とないこの一球を

精いっぱい打たねばならないのだと

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■岡に出合い、苦しかったそれまでの人生を

彼女にすべてを託すためのものとして受け入れ、

それからの生の一瞬一瞬のすべてを

全身全霊をもって、子を思う親の無償の愛をもって、

岡に注ぎ込んでいく

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「この27年が人の80年に劣るとは思わない」

と言い切るほどに最期の瞬間まで熱く生きた男。

その生きざまが、お蝶夫人を、藤堂を巻き込み

宗方仁の想いは継承されていく。

宗方は死んでも、宗方は常に岡と共にある。
  

  岡、エースをねらえ

 
その最期の言葉がいつまでもどこまでも広がっていく。  

生きる、ということの意味を改めて教えてくれる『エースをねらえ!』というマンガは、確かに少女漫画というよりも、人生に向き合うための教科書なのかもしれない。

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                   <2017.07.08 記>

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