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2017年7月 3日 (月)

■【映画評】『ハクソー・リッジ』、なすべきことは何か。戦争の狂気に打ち勝つ信念の物語。

容赦なく米兵の頭や体を打ち抜く弾丸。迫撃砲によって飛び散る手足。火炎放射器で火だるまになる日本兵。自動小銃の銃弾の雨をものともしない銃剣突撃に崩壊する大隊。

その凄惨さに目を伏せることはできない。目をそらせばスクリーンのこちらにいるはずの自分がやられる。そう思わせるほどの力がある戦場シーンだ。

しかし、本当の衝撃はそのあとにある。

これが真実の物語であることが何よりも強く響く、そういう映画である。

●●● 名画座『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.107  『ハクソー・リッジ』
           原題: Hacksaw Ridge
          監督: メル・ギブソン 公開:2017年7月
       出演: アンドリュー・ガーフィールド    ヴィンス・ヴォーン  サム・ワーシントン 他

Title

■あらすじ■
第二次世界大戦、デズモンド・ドスは人を殺さないという頑なな意思を持ちながら衛生兵として陸軍に志願する。銃を持つことを拒否したことにより軍のなかで孤立し、軍法会議にかけられるが、ある人物の助力により、銃を持たずに戦争に参加することを許される。

彼の大隊が派遣されたのは沖縄上陸戦。だが、そこにはハクソー・リッジと名付けられた難攻不落の日本軍の拠点が立ちはだかっていた。

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■「敵が攻めてきてお前の大事なものに襲い掛かってきたら、お前はどうするんだ。」

頑なに銃をとることを拒否するデズモンドに軍曹が詰め寄る。

「分からない」

「でも、今、僕の大切なものが危機にさらされている」

戦争において、良心は判断の迷いを生み、それは本人だけでなく、小隊全体を危機に陥れる。

だから軍曹は徹底的にデズモンドを追い込み、心変わりをさせようとするが、決してデズモンドはくじけない。

彼の婚約者は軍の中で追い込まれたデズモンドを救うために

「撃たなくてもいい、銃を手に取って撃つふりをすればいいの」

と助け船を出すのだが、それはデズモンドの信念に反することであり、決して受け入れることは出ない提案だ。

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婚約者でさえ、彼の信念がわからない。

誰もデズモンドのこだわりが理解できないのだ。

しかし、デズモンド自身もどうやって銃を持たずに、相手を殺すことをせずに、自らの大切なものを守るのかという軍曹の問いには答えることができないのである。

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■地獄の戦場、ひたすら、ただひたすら、戦場の地獄が延々と続く。アメリカ兵も日本兵も、そして何より観ている私自身が、とても生き残れるとは思えない。そんな地獄だ。

夜が明け、地下壕から湧き出てきた日本軍の攻勢に一気に追い込まれるアメリカ軍。

デズモンドは敗走するアメリカ軍の中で必死に友軍兵士の救助を試みる。

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アメリカの戦艦の猛烈な艦砲射撃の中、ハグソーリッジの瀬戸際で呆然とするデズモンドは天を仰ぎ、神に問う。

 
私は何をすればよいのか。
  

その目に取り残されている負傷兵が映る。そうか、そうなんだ。と、目の前の息も絶え絶えの、内臓をえぐられ、手足を吹き飛ばされた血みどろの友軍兵を死体の山の中から探し出し、ひとり、またひとりと崖まで運び、ロープで下していく。

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■やがて艦砲射撃が止み、日本兵が敗残兵狩りに現れる

その目を盗みながらすすめる気の遠くなるような作業

  
神様、あと一人救わせてください

もうひとり、あとひとりだけ
   

そう祈りながら、デズモンドは過酷な救出作業を続けていく

その中には日本の負傷兵までも含まれる

目の前に敵が現れ、お前の大事なものに襲い掛かってきたら、お前はどうするのか

という軍曹の問いが改めてよみがえる。

それが、デズモンドのたどり着いた答えだ。

■まさに、この神々しいシーンのために、あの延々と続く地獄の描写が必要であったのだ。

殺さない、という戦場における消極的な決意は、

ひとつひとつ、目の前の命を救っていくという信念に昇華し、恐怖にも、絶望にも打ち勝って、まっすぐに強く前進する。

ハグソーリッジの第二次攻撃にあたり、隊長はデズモンドにお前が必要なんだと懇願する

誰もがみな、あの地獄に戻る恐怖には耐えられない。

殺さないことを貫き、命を救うことでそれに打ち勝ったデズモンドの強さを突入部隊は必要としたのだ。

それは、敵兵である日本人を殺すという矛盾をはらんだものであるものの、戦争という狂気に、その場に居合わせたアメリカ兵たちの心に、強い楔を打ち込んだのだ。

■エンディングで、実際のデズモンドや隊長たちのインタビューが流れる。

ここがこの映画の最大のメッセージだろう。

これは虚構じゃない。

確かに、戦争という狂気に打ち勝った男がいたのだと、

この映画を見終わったわれわれの心にも、強い楔を打ち込んでくるのだ。

集団の狂気に抗い、自らの魂に従い信念を貫き通すことは可能なのだ。

それは奇跡かもしれないけれども、われわれと同じ血の通った人間がそれを成し遂げたのだと。

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                      <2017.07.03 記>

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■STAFF■
監督      メル・ギブソン
脚本      アンドリュー・ナイト
            ロバート・シェンカン
             ランダル・ウォレス
原案      グレゴリー・クロスビー
音楽      ルパート・グレグソン=ウィリアムズ
撮影      サイモン・ダガン
編集      ジョン・ギルバート



■CAST■
アンドリュー・ガーフィールド - デズモンド・T・ドス
リス・ベラミー          - 若年期のデズモンド・T・ドス
ヴィンス・ヴォーン       - ハウエル軍曹
サム・ワーシントン       - グローヴァー大尉
ルーク・ブレイシー       - スミッティ
ヒューゴ・ウィーヴィング    - トム・ドス
ライアン・コア          - マンヴィル中尉
テリーサ・パーマー       - ドロシー・シュッテ
レイチェル・グリフィス      - ベルサ・ドス
リチャード・ロクスバーグ    - ステルツァー大佐
ルーク・ペグラー         - ミルト・"ハリウッド"・ゼーン
リチャード・パイロス       - ランダル・"ティーチ"・フューラー
ベン・ミンゲイ           - グリース・ノーラン
フィラス・ディラーニ        - ヴィート・リンネリ

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