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2017年6月22日 (木)

■【書評】『縄文とケルト 辺境の比較考古学』 松木武彦。遺跡の愚直な踏破体験からのみ浮かび上がってくる「文明外」の世界。

ケルトってよく聞くけど実はよく知らない。でも気になる。それを縄文と比較して語るというのだから、これは面白そうと一も二もなく飛びついた。

■結果、いい意味で裏切られた。

古代イギリス文明と縄文はローマと中国という大陸文明の辺境にあってとても似た形で「非文明」の文明を発達させたという極めてそそるテーマである。いきおいドラマチックな展開を期待するのだが、もう終盤まで徹底的に遺跡紀行なのである。

語り始めてすぐに、ともかく出かけよう!と我々をイギリスのど田舎の殺風景な場所に連れていく。

そこで出くわすのはヘンジと呼ばれる石の遺跡である。

松木さんはイギリス全域にひろがるそれを時代毎に系統立てて道案内していく。

微に入り細に入りそれらを解説していく姿は実に楽しそうで、好感が持てるのだけれど次第にそれにも飽きてくる。

古代文明の話でいえば最近読んだ『人類と気候の10万年史』があるが、そこで体験したようなスリリングさは全くないと言っていい。

実際、その細かい説明に何か意味があるかと言えば、ただそれだけであり、そこから衝撃的事実が浮かび上がってくるわけではないのだ。

■しかし、そこがポイントなのだと思う。

蓄積されたデータを分析して何かを導き出す、そういう「文明的」な方法論の外にこの本はあるのだ。

ひたすら体験する。

その体験から何かを感じる。

そういう体験から来る意識下での反応、そこに目を向けることこそが、「大陸の文明」に侵されなかった「辺境の文明」である先ケルトと縄文の方法論であり、松木氏は図らずもその方法論を実践してみせている。

その長い旅路の果てに、我々はもともとイギリスに住んでいた先ケルトと大陸から金属や階級という「文明」を運んできたケルトが連続性を保ったものであり、その構図が縄文と弥生にも言えるという結論にたどり着く。

そこに論理はない。

発掘された事実を直に体験し尽くすことから浮かんできた「イメージ」だ。

そして、たぶんそれは正しい。

■その後、ケルトはドーバー海峡が渡りやすかったがゆえに、ローマの支配を受けて消滅し断絶する。もう一方の弥生は元寇をも返り討ちにした対馬海峡によって守られ、連続的に古墳時代へとつながっていき、現在に至る、それが現在のイギリスと日本を分かつ分岐点であった。

というのがその続きなのだけれども、先の結論も、この話も別に新規性のある論ではない。むしろ最近の定説といっていいだろう。

けれども、ではこの本に価値がないかと言えば、圧倒的にそれは違う。

ここでは「論理」とか、そこから導出される「結論」に大した意味はないのだ。

東西の遺跡を踏破し、そこで生活をしていた人たちの心に思いを馳せ、驚くべきことに大陸の東と西の両端の島国において同じように発達したであろうその心に触れるとき、時間も距離も飛び越えた人間としての確かな共感がそこにある。

何度も何度も遺跡に足を運んできた松木さんだからこそ、その内側で育った実感だろう。

そして、我々はこの本の旅路を通してそこに触れることが出来る、そこに本書の唯一無二の価値があるのだ。

理屈を離れたときに、たとえば一人旅の街で出会った体験にも似た清々しさのようなものが、そこにある。

とても気持ちの良い本である。

 

                    <2017.06.22 記>

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