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2017年6月15日 (木)

■【社会】「共謀罪/テロ等準備罪」法可決。議論無くして民主主義なし。「良かれ」が独裁に変質していく仕組みについて。

夜通し国会明けの今朝、「共謀罪/テロ等準備罪」が可決された。

参議院法務委員会での採決を省略して本会議でさせるという異例の対応だ。

これは、どう考えても長引く加計学園問題の早急な幕引きが目的で、首相官邸の目論見通り、18日には国会は閉会となる見通しである。

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■国会って一体なんだろう。

多数決で決めるだけならば、「議会」なんていらないだろう。

民主主義の本質は、多数決ではなく、多様な意見を議論によってお互いに理解し、その上で最良の選択をしていく、その点にある。

議論こそが民主主義の要なのである。

「共謀罪/テロ等準備罪」のような、正体の分からない法案についてはまさに議論をしつくして疑問や問題点を明らかにしたうえで、その対応も含めた修正を加えつつ決めるべきものだと思う。

それを「政権の安定」や、「都議選への影響」などといったことで蔑ろにすべきではない。

そこにあるのは民主主義の死である。

■与党が衆参両議院で過半数をとったことがすべての原因である。

「独裁」を生む土壌がそこに生まれたのだ。

初めから「独裁者」になろうとする人間はいない。

自らの思うままに権力を行使できる、その状況が「独裁者」を生むのだ。

安倍晋三が独裁者だといっているわけではなく、首相官邸を中心とした「政権」自体が「独裁」に染まろうとしている、そういうことだ。

■ヒトラーが率いたナチスドイツは初めから独裁だったわけではない。

当時のドイツの民主的ルールに基づいて国民に選ばれた政権だ。

しかし第一次大戦での敗戦の屈辱と経済の疲弊が、彼らを求め、絶大な力を与えてしまった。

その絶大な権力が暴走を生んでいく。

それは戦前の日本帝国軍にも言えることだろう。

天皇直結の組織である日本帝国陸海軍は政権によるコントロールを受けない。

エリート集団の陸海軍は馬鹿ではない。けれど、かれらの「良かれ」は、「組織の良かれ」に変質していき、日本を破局へと導いていった。

そう物事は単純ではないせよ、その側面が強いことは事実だろう。

■衆参の過半数を抑え、どんな法案でも可決できるパワーを得た安倍政権に怖いものはない。

彼らは彼らなりに日本という国のことを考え、「良かれ」と思って行動しているのだろう。

そこを否定するつもりはない。

けれど、その「良かれ」を実現するためには、その前提となる自らの組織とその権力の維持が不可欠であり、次第にそれが目的化していく。

安倍政権が打ち出す政策は独善的で押し付けがましく気に入らないのだけれど、ここに至り、今回の件は、「権力を守ること」が目的化してしまったという点で、とても重要なターニングポイントだったと思う。

■NHKも読売新聞も政権翼賛機関になり果てた。

文部科学省も行政機関の誇りを棄てて久しい。

これもまた「組織維持」の力である。

自民党という組織も含め、こういった「組織維持」の構造のなかで本質的意味が崩壊していくのだ。

ジャーナリストの誇りも、国家公務員の矜持も、政治家の志も、その地位を失えば意味がない。

その本末転倒が当たり前のように蔓延していく。それもしかたがないことなのかもしれない。

■けれど、そのことを考えるとき、わたしは2015年の自民党総裁選に立候補した野田聖子議員の「義を見てせざるは勇無きなり」というセリフを思い出すのだ。

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組織から外されようが、その結果、家族を路頭に迷わせようが、自らの誇りや矜持や志を守るためなら、それらはかなぐり捨てる。

ジャーナリストも、国家公務員も、政治家も、そういう気概がある人間がもっといていいのだと思う。

民主主義を守るのは国民だ、という正論はその通りだと思うが、はやり得られる情報も取れる行動にも限界があって、物事の背景にある一次情報にアクセスが出来、アクションの方法論を知った彼らが立たなければ、はやり時代は動いてはいかないのだ。

野田聖子に続いて一歩を踏み出す人間が増えていくことをこころから望む。

                       <2017.06.15  記>

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