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2017年5月17日 (水)

■【書評】『昨夜のカレー、明日のパン』、木皿泉。誰もが何かを抱えていて、けれど、明日は必ずやってきて、そこに気が付くときがくる。

ゆるくて深いシナリオライター木皿泉こと和泉、妻鹿夫妻による初めての小説である。

もうね、おかしくて笑っちゃうんだけど、油断してると、つい、うるっときちゃうんだよね。。。

<Amazon>昨夜のカレー、明日のパン

■主人公は若くして旦那に先立たれた奥さんテツコと、息子の死を乗り越えることが出来ていないギフの二人。

この小説は、古い一軒家で暮らす彼らと、そこに関わる人々の群像劇である。

一樹の幼馴染みでCAをしていた「ムムム」改め、タカラちゃん。

一樹に憧れていた従弟の虎尾くん。

テツコの同僚で、彼女と一緒になりたいと願っている岩井さん。

それぞれが、一樹の若すぎる死によってバランスを崩していて、そこに引きずられてしまっている。

その穴は、あまりにも大きいがために、日常のなかで隠されてしまい、とぼけたやわらかいその日常も、どこかぎこちない。

けれども、彼らはなんとか、何かに気づくとか、何かのけじめをつけることで、自分なりの「一樹の死んだ世界」での生き方を探り当てていく。

その、ほっこりした解放感がたまらなく心地よく、たとえそれが本質的解決ではなかったとしても、とてもやさしい気持ちにさせられるのだ。

■木皿泉のドラマはQ10と富士ファミリーしか見てないのだけれど、そういったやさしさにあふれた作家なのだと思う。

そして登場人物の誰もが何かを抱えていて、それでも日常のなかでもがきながらも微笑んでみたりしながら生きている。

この世の中に生きていると、

ああ、あいつはダメなやつだ、取るに足らないやつだ、

とか、つい考えてしまう。いや、それどころか、

その他大勢

なんていう、ほとんど名前も覚える気もない扱いをしてしまう相手もいたりするものだ。

けれど、木皿泉はたとえ、通りすがりの人であっても、いちいち語りはしないけれども、どの人にでもその人が抱える何かがあって、いつかはそのひとがそれを乗り越えていく。そういう希望をすべてのひとに与えている。

■それはファンタジーだと思う。

実際の僕らが生きている世の中は『言ってはいけない』なんて下品な新書を持ち出すまでもなく、どうしようもなく差別的だ。

誰もが前向きに生きていける、そういう世界ではない。

確かにそれは真実だ。

それでもなお、木皿泉の紡ぎだすファンタジーが我々の心を打つのは、脳溢血で不自由なからだになり、生きていても仕方がないとまで思い詰めてしまう和泉さん自身のこころであり、そこに寄り添う過酷さのなかでうつに悶える妻鹿さんのこころ、そこからにじみ出るやさしさゆえなのだと思う。

■一樹とテツコのプーケットでの新婚旅行。

まだ明けきらない道を裸足のお坊さんたちが歩いていく、

それを見て一樹がつぶやく、

 
あ、そうか、

みんな、のぼっていく太陽に向かって歩いているんだ。

 ――文庫版に書き下ろされた短編、「ひっつき虫」より

    
生きていく限り、我々は歩いていく。

歩いていくことが、生きているということなのだ。

そこに優越も、良し悪しもない。

誰もが他でもない、自分の人生を歩いていく、

それだけのことだ。

そして、それはこれからのぼってゆく太陽によって、ひとりひとり等しく照らされ、輝くのである。

                   <2017.05.17 記>

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