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2017年4月 9日 (日)

■【社会】中学必須科目の武道に「銃剣道」追加。自らの志を持たない文科省はすでに死んでいる。

文部科学省は3月31日付の官報で「新学習指導要領」を告示した。中学の保健体育では、武術の種目として新たに「銃剣道」を加えた武道9種目が記された。

201704009

■経緯としては、2012年に中学の体育に武道が必須科目として追加、剣道、柔道、相撲からの選択となったことがあって、なぜ相撲?という疑問もなくはないが、同時にダンスも追加されていることから、多様性とか、経験してみる、とかそういう観点から、とても理解できる内容だと思う。

ところが今回はそこに空手道、弓道、合気道、少林寺拳法、なぎなた、銃剣道が追加されたということだ。

銃剣道はあまりにもマイナーということで外れたようだが、どこかの声のでかい人によって追加されたらしい。

■実に違和感がある。

ニュースでは戦前を想起させる銃剣道にばかりフォーカスしているが、なぜ柔道、剣道、(と相撲)だけではだめなのか、ということが腑に落ちないのだ。

私は中高一貫の私立に通っていたが、そこは柔道か剣道かを選ぶ(体が出来上がっていない中学は剣道のみ)授業があって、全国大会で競い合うような鬼のように強い教師に週一で授業を受けていたし、そのなかで全員が有段者になることを目標にしていたくらいだから、単なる体験のレベルではなかった。一月には早朝から11日間続く寒稽古なんていうイベントもあって、それなりに剣道はやったなあ、という感覚はある。

その意味とは、剣道の体裁きとか、相手に対峙したときの構えだとか、呼吸だとか、ことが終わったと見えても気を抜かない残心だとか、少ししか受けていないが柔道の受け身だとか、体育という意味でも、生きていくうえでの体の置き方のようなものを学んだと思っている。

また剣豪小説を読むときには、何だかわかったような気になるし、日本人としての誇りのようなものも醸成されたことも確かだ。

最近の子供は、実際に殴り合うような喧嘩を小学生のころに体験しないから、殴られれば痛い、という実感を持たないがゆえに、殴られる相手の気持ちが分からない。

だから、暴力にしても加減が分からず、暴力ではないイジメにしても、傷つけられる相手の心が理解できない。そういう意味でも「殺し合い」の技を起源とする柔道や剣道を体験するということにはむしろ賛成だ。

■しかし、なぜ他の武道を選択項目に追加する必要があるのか。

今でさえ、柔道や剣道の指導が出来る人間を確保するのが難しいであろうに、空手道、弓道、合気道、少林寺拳法、なぎなた、銃剣道なんてかなりの無理筋で、実際、文部科学省もまあ、ほとんど実施されないだろうと考えているに違いない。

柔道、剣道、相撲、空手道、弓道、合気道、少林寺拳法、なぎなた、銃剣道

さて、これらの競技はどうやって選ばれたのか。

実はこれらは、日本武道館が中心となる日本武道協議会に参加している競技団体そのものなのである。

日本武道館が危険な団体だなどとは到底思えない。けれども一私的な団体によって、国の子供の教育が決められる違和感なのだ。

■国を私してはならない。

日本武道館が他の競技も子供たちに触れさせたい、という思いを持つのは痛いほどわかるけれども、国政を預かる人間がそれをそのまま受け入れる愚には怒りすら覚えるのである。

これは文科省の天下りと無関係ではないのではないか、などと勘繰りたくもなってしまう。

問題なのは、こういうことになりかけたときにストップをかける機能が完全に停止してしまっているのではないか、ということだ。

文科省の役人には自分の頭でものを考える力はないのか。

グローバリズムを勝ち抜くためと誰の圧力を受けたか知らないが、大学の文科系を殲滅させるような動きをみせて、その思想的底の浅さを、逆にグローバリズムを推進する側の経団連に突き上げられるという滑稽な喜劇を演じた文科省。

もう組織的に崩壊しているのかもしれない。

■教育は国の根幹である。

子供に多様な未来を提供し、将来の日本が発展していく原動力を与える。それが教育の意味だ。

教育勅語の話もあるが、決して老人たちの趣味の実現のためにあるのではない。

文科省にも優秀で志をもった人もいるだろう。

けれども崩壊した組織の中ではいくら優秀な人間があがいたところで大きな流れを変えることはかなり困難なことなのだと推察する。

一旦、解体してみてはどうだろうか。

                    <2017.04.09 記>

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