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2017年4月28日 (金)

■【書評】『戦争にチャンスを与えよ』 エドワード ルトワック。 平和を維持したいならば、戦争に正面から向き合って、常識の逆を行く大戦略を取らなければならない。

ルトワックっておじさん、面白い。かなり気が合うね。

■エドワード・ルトワック、1942年ルーマニア生まれ。米戦略国際問題研究所(CSIS)、上級顧問。軍務経験もある戦略家、歴史家。ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のメンバーも歴任。その言葉には、現場に実際に立ち会った人物ならではの説得力がある。

本書での彼の主張のポイントは2点。

■ひとつは、戦争には役割がある。ということ。

一旦始まった戦争は、経済的、軍事的に双方が疲弊して継続が困難になるか、一方が完璧なダメージを受けるかするまで収束しない。

そこで講和が成り立ち、はじめて廃墟のなからの復興と平和がはじまるのだ。

ところが、第二次大戦後、特に冷戦終結後の世界は、国家間の紛争や内戦に対し積極的に介入し、無理な停戦や難民キャンプの設置に奔走してきた。

国連や、NGOのこういった行為は、たとえ「善意」に基づくものであったとしても、それは「害悪」であると著者は断罪する。

戦争の原因が解消されないままでの停戦は本質的な問題を解決しないから、戦争の火は消えない。停戦はむしろ双方の軍事力の回復を促して次の火種を大きくする。

一見人道的と思える難民キャンプは、難民が拡散して各地での定住と新しい生活を歩みだすことを阻害し、「難民」の恒久化をおこなうだけでなく、テロリストの温床になってしまう。

60年続くパレスチナの難民キャンプとテロ組織、停戦が継続するだけで全く復興の兆しの見えないボスニア、ツチ族を保護すべく国境近くに難民キャンプを作ったためにそこを拠点とした反攻を助長して民族同士の殺し合いを拡大させたルワンダ。

戦争は悲惨で目を覆いたくなるものだが、回避不能の軋轢を破壊によって生産的に解消する機能をもっているのだ。

その機能が機能として完遂するまえに、無理にそれを止めてしまえば、軋轢はいつまでも継続し、結局はさらに多くの人命が失われ、国の回復も望めない。

悲惨な戦争や虐殺は目を覆いたくなる。

けれども「おせっかいな」人道主義は、かえって人を殺すのである。

■もうひとつは、「戦略」の世界では人間的な常識の逆が正解となる、というパラドキシカル・ロジック(逆説的論理)だ。

戦争は平和を生み出す、平和は戦争を誘発する。

平和に暮らすわれわれにはなかなか納得がいかない話だ。

何しろ戦争はいけない。

その意識が不必要な介入によって関係のない他国の戦争を長引かせ、泥沼に引き込む。

けれど、ここでさらに重要なのは、その意識は「われわれは戦争に巻き込まれない」という根拠のない確信だ。

北朝鮮が弾道ミサイルを開発しても、小型核爆弾を開発しても、「たぶん大丈夫だろう」とどこかでたかをくくっている。

今の状態がいつまでも続くに違いない。

それが人間の基本的な思考回路なのだ。

けれども、冷徹に計算すれば、戦争のリスクはかなり高い。その「リスク」の原因を取り去る行動を起こすことが、ここが逆説的であるのだが、「戦略的」に平和を維持するためには必要なことだということなのだ。

■ルトワックが立つ「大戦略」では、何よりも「同盟」を重視する。

個別の戦いで勝利を得たとしても、大日本帝国やドイツ帝国のように意味のない同盟しか持てなかったならば、とうてい最終的な勝利を勝ち取ることはできない。

それは各国の思惑を感情レベルで理解し、本当に求めていることは何かをつかむことだ。

本書で述べているわけではないが、例えば、太平洋戦争前の日本で言えば、日本は真珠湾攻撃をかけた時点で負けである。

山本五十六は「一年間は暴れまわって見せましょう」と言ったそうだが、その間にアメリカとの講和ができるという甘い考えを持っていたのだろう。

ハルノートが日本に対する最後通牒のように言われるが、アメリカは実はかなり譲歩していて満州の権益まで捨てろとは言っていない。

中国全体への進出が、アメリカの「俺のメシを取るな!」という逆鱗に触れたのである。

逆に言えば、中国の一番おいしいところはアメリカに譲る、という態度さえとれば、世界を敵にした戦争に突入することはなかったのである。

そこさえ間違わなければ、最終的に良かったのかどうかはわからないが、帝国日本はまだまだ行けた可能性がある。

■ルトワックは事実のみを述べる。

勘違いしてしまいそうだが、戦争礼賛では決してない。

「戦争はこの世に実在し、戦争が持っている機能というものがある。」

と言っているだけだ。

むしろ最大の努力をもって戦争を回避せよ、と言っている。

そのための同盟戦略だ。

同盟を構築するために必要なのは、また、敵対する国との戦争を回避するためには、相手の国の思惑を理解すること。

北朝鮮問題でいえば、アメリカと中国と北朝鮮とロシアの思惑だ。

中国、ロシアの本心を理解するほどの情報をわたしは持ち合わせていないが、アメリカと北朝鮮に関しては明白だ。

アメリカは、アメリカ本土に届く核兵器は絶対に許さない。

北朝鮮は、金王朝の維持の保証。

極めてシンプルだ。

ならば、日本はどうするべきなのか。

日本が譲れないのは、経済の安定の意味も含めた平和の維持、そして拉致被害者の安全な帰国である。

感情をいったん置いてみて、リスクとチャンスを整理したならば、日本が取るべき戦略は明白だろう。しかも、その役割は日本にしかできないものなのだ。

今、安倍首相はロシアを訪問している。

帰国後の動きに注目したい。

 

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                     <2017.04.28 記>



■難しそうだが、こちらにも挑戦してみようかと思う。
戦争だけでなく、日常の交渉に役立つと思うからだ。


■ルトワックによればヨーロッパは滅亡する。それは、難民とかEUとかそういうことだけではなく、根幹の部分で「イーリアス」のこころ、「男は戦いを好み、女は戦士を好む」というこころを偏狭な自由主義の蔓延によって失ったからだという。つまり「活力」の喪失である。ルトワックは爺さんだが、かなりモテそうだ。私もそういう男でありたい。


■この間、この幼女戦記のアニメをやっていて、またミリタリー少女ものか、となんとなくみていたのだが、これがかなり毒のある戦争論であり、このオタクじじいが!という嫁の冷たい視線をものともせず、すっかりはまってしまった。さすがに本まで買うのは抵抗があるけど、、、、。

■過去記事■
■【書評】ひつじの本棚 <バックナンバー>1
 

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