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2017年3月 9日 (木)

■【書評】『日米対等 ―トランプで変わる日本の国防・外交・経済』、アメリカ・ファーストの本当の意味。 

藤井厳喜、二冊目。2017年1月10日時点の情報で書かれた最新の意見を聞きたくて読んでみた。

■戦後70年の枠組みをぶっ壊すトランプ大統領登場により、日本が対米自立するチャンス到来というのがこの本の趣旨。それを日本の国防、外交、トランプ政権分析、トランプ政権の狙い、日本経済という切り口で語っていく。

■【防衛】

トランプ政権は発足後、さっそく日米安保を堅持することを明示することで日本を安心させたが、本書が書かれた時点で著者はGDP2%の防衛費をかけてアメリカの装備を購入することを提案している。

一種の肩代わり論だ。

長距離ミサイルをアメリカから買って攻撃能力を高めよ、自衛隊は在日米軍の補助部隊であり「普通の国」を目指すべき、という藤井節炸裂なのだけれど、この辺は、はいはい、と聞き流せばいい。

この人の本から得るべきなのは、現状を読み取る力なのだ。

その意味では、在日米軍のプレゼンスあってこその日本の平和、台湾の重要性、朝鮮半島の不安定性というポイントが重要だ。

特に、韓国の政治・経済の崩壊、THAAD配備に伴う中国の韓国叩き、北朝鮮による金正男暗殺と弾道ミサイル発射が在日米軍攻撃が目的であるとする声明など、朝鮮半島の急展開がこのあとどうなるか。

何があってもおかしくない。

ともかく日米安保を維持し、深めること、当面はこれに尽きるだろう。

■【外交】

トランプの勝利を予言していたのは木村太郎と自分くらいだという自慢から始まるのだが、それなら私も恐怖指数に投資してちょっとばっかし儲けたぜと自慢したくなる。

けれど本論はそこにはなくて、意図は自前の情報収集能力のなさに対する警告にある。

現地取材の情報を信じず、アメリカのメディアを信じる日本のマスコミの能力無さは別に今更というところだが、インテリジェンス(情報戦)の能力を全く持たない外務省は領事省にしてしまえという論には深くうなずく。

もう外務省に対してはあきらめていて、官邸と自民党のインテリジェンス能力を高めよ、というのが著者の論だ。

インテリジェンスの9割は映画のようなスパイ行為ではなく、一般に出回っている情報の分析だといわれるが、インターネットの時代、ますますその重要性は高まっているだろうし、逆に、著者が力説するように人とのつながりがポイントになってくるだろう。

朝鮮半島の動向だけでなく、ことしは党大会で中国の代表が変わるという重要なイベントがあるわけで、国防の観点からもインテリジェンスは死活問題だ。

■【トランプ政権分析】

トランプ政権の主要なメンバーの人物評。

キーはマイク・ペンス副大統領だという。

ポピュリストの代表として大統領になったトランプは共和党と一枚岩というわけではない、けれど法案を通すためには共和党との連携が必須である。

その意味で共和党のベテラン議員であるペンスが重要だということだ。

その背後にはトランプの娘婿のジャレッド・クシュナー(ホワイトハウス上級顧問)らトランプ一家がいて、それは彼らのバランス感覚を示していると言える。

 外交の要である国務長官にはエクソン・モービルのCEOだったレックス・ティラーソンが就いた。これがトランプの基本方針を示しているという。

1つにアメリカは石油・天然ガス(シェールガス)でやっていく、ということ、2にロシアとのつながりの強化(ティラーソンは北極海油田開発でロシアと連携)、3にアメリカ復興のための大企業との連携である。

エクソン・モービルは国際企業ではあるが、アップルのような利益最優先のボーダーレス企業ではなく、アメリカの国益を代表する企業なのだという、エクソンについては良く知らないが、日本における新日鉄みたいなものだろうか。

ともあれ、草の根から大企業までのオールアメリカンでの体制を意味するものだ。

 国防長官はテロ掃討作戦を指揮した狂犬マティスこと海兵隊大将のジェームズ・マティス。単なるガッツのある軍人ではないようで戦史、戦略の研究にいそしみ、蔵書が実に7000冊という勉強家。「戦争の本質は変わらない」という戦争観を持つようだ。

トランプは親ロシア、反中国といわれるが、歴史を踏まえた冷静な対応をしてくれそうだ。

 商務長官はロスチャイルド商会から投資家になったウィルバー・ロス。

日本でも再生ビジネスを行い、東日本大震災のときには13億円の支援基金をあつめ叙勲を受けた親日家。

金儲けばかりではない、反グローバリズムの視点を持つ人なのだろう。

 主席戦略官兼上級顧問のスティーブ・バノンは毒舌ニュースサイトを立ち上げたガチガチの草の根保守。マスコミでは影の大統領などと呼ばれ、実際、中東からの入国禁止の大統領令は彼が進めたなどと言われるが、本書での記載は少ない。

選挙戦でポピュリズムを煽る意味では重要であったが、軍事、経済、外交、という視点では今後消えていく存在なのかもしれない。

■【 トランプ政権の狙い】

普通に働けば一戸建てにクルマがあるという豊かな生活を得ることが出来るという本来の意味での「アメリカン・ドリーム」を復活させる。それがトランプが国民に約束したことだ。

そのための国益最優先であり、その敵は「アメリカン・ドリーム」の主役であった中間層から労働と金と誇りを奪い去ったグローバル企業である。

グローバル企業はアメリカの高い賃金を嫌い、生産を賃金の安い中国などの低賃金国にシフトした。

それは形を変えた植民地主義的奴隷制であると著者は断ずる。

労働基準法も環境基準も整備されていないそれらの低賃金国で過酷な労働を安い値段で強いることでグローバル企業は莫大な利益を得る。

しかもその利益はアメリカ国内に還流することはなく、タックスヘブンを経て、一部の金持ちの懐に入るという構図だ。

それをぶち壊し、再びアメリカに力を取り戻す。

トランプは経済の主体が国民にあることを知っている。

国内に莫大な投資を行い、仕事を増やし、消費を活性化させる。

それが復活の起点なのだ。

日本の政界、官僚は爪の垢を煎じて飲んだほうがいい。

■【日本の経済】

トランプがTPPから手を引くことは確定的だ。

そこで著者はチャンスかもしれないという。

TPPからアメリカが抜ければ、アメリカ企業からの提訴による国内法の改定、もっと言うと社会保険の崩壊から逃れられる。

さらには本来の意味での大東亜共栄圏が築けるのではないか、というところに夢を馳せる。

でも、それって前項の「植民地主義的奴隷制」じゃない?って突っ込みたくなるけれど、方向的には面白いと思う。

あとはアメリカ兵器をバンバン買えとか、政府発行通貨があるから国債による借金なんて全然気にすることはないとか、かなり乱暴な論がならぶ。

どうも著者の国際情勢の分析の鋭さは、それを日本に向けた瞬間に自分の願望がにじみ出てしまって、目が曇ってしまうように思われる。

そういうところに注意さえすれば、やはり視点が鋭くかつ新鮮で、追いかけたい分析者ではある。

今年はEUが本格的に崩壊していく可能性もあり、それよりなによりアジア、特に朝鮮半島のバランスが一気に崩れる可能性も高まってきた。

荒れる時代には、こういう広く客観的な視点の人物の声に耳を傾けるべきである。

                  <2017.03.09 記>

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