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2017年2月 9日 (木)

■【映画評】『プロメテウス』、なぜ神は自らに似せて我々を作りたまいしか?作り手が陥る罠について。

ブルーレイで改めて落ち着いて観たら、意外と傑作だった。劇場ではエイリアンの前日譚として観てしまったから少し観かたが浅くなってしまったのかもしれない。

あくまでもこの作品は人間と創造主の物語なのである。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.58-2 
『プロメテウス
           原題: Prometheus
          監督: リドリー・スコット 公開:2012年 8月
       出演: ノオミ・ラパス マイケル・ファスベンダー他

Prometheus56_2

■ストーリー■
人類の起源にかかわる重大な手掛かりを発見した科学者チームが、謎を解明するために宇宙船プロメテウス号に乗り組み、未知の惑星に向かう・・・。

■この映画の素晴らしいところはテンポの良さだ。

いくらでも引き延ばせる話をトントン進めていく。

プロローグでの生命誕生のシーンから、エリザベスとチャーリーが洞窟で壁画を発見するシーン、そして宇宙へ。

そこまで一切の説明はなく、宇宙船が目的の惑星にたどり着き、乗員がコールドスリープから覚めてブリーフィングを受けるまで観客も状況が分からない。

それでも見るものを飽きさせないのはテンポの良さに加えて、想像力を掻き立てる見せ方とリドリーの映像の美しさによるものだろう。

■惑星に到着してからも、探検あり、異星人のホログラム映像あり、死体あり、遺跡あり、砂嵐ありと実に飽きさせない。

わくわく感がさらに膨らんでいくうまい作り方だ。

けれど、実はそこに問題があって、スピード感を維持するために捨て去ったものが多すぎる、それゆえの分かりにくさがどうしても出てしまい、一番の盛り上がりの終盤に「あれ?」となってしまったのだろう。

未公開シーンを見て、ようやくわかることがあまりにも多い。

それについてはネタバレ以降に述べるとしよう。

■それ以外に強く感じたのはエリザベスを演じるノオミ・ラパスの演技のうまさ。

特に中盤の手術のシーン以降に神が宿る。

ここからはセリフではなく表情と動きで伝えることになるのだけれど、彼女が追い詰められる、おいおい!という状況は下手をするとお笑いになってしまうのだけれど、彼女の演技力のおかげで緊迫感が途切れない。

『エイリアン』のときのシガニー・ウィーバーのような色気はまったくないが、極限状態での演技力に関してはそれに近いものを出していて、リドリーがほれ込んだのもうなづける話だ。

Noomirapaceinprometheus

■あとは今回のメインディッシュである〈エンジニア〉こと大柄な異星人。演じたのは長身の俳優イアン・ホワイト。これがまた雰囲気がいい。

長身の人にありがちな手足のバランスの悪さはまったくなく、ローマ人が泣いて喜びそうな均整の取れた肉体美を見せつけてくれる。まさに神話的存在感。

そしてこの表情。黒い濡れた瞳に見つめられると吸い込まれてしまいそうな神秘的気分にさせられる。

これでこそわれらの創造主たる神なのである。

『エイリアン』でのビッグチャップと同じぐらい、このエンジニアの存在は成功だと思う。編集ですべてのセリフはカットされたのだけれども、それもその意味では正解。この神秘性こそが『プロメテウス』の本質だと思う。

Prometheus

■アンドロイドのデイヴィッドも素晴らしい。

宇宙船の乗組員がまだ眠っているなかで孤独に過ごす最初のシーンから引き込まれる。『アラビアのロレンス』がお気に入りでセリフをそらんじ、エリザベスの夢を盗み見る。

感情がない、といっておきながらバリバリに自我がある。

人間でないことを理解していて、かといって劣等感を抱くとか、理解できないと突き放すのではなく、言葉に出さない人間への複雑な思いをにじみださせるマイケル・ファスベンダーの演技はかなり面白い。

ノオミ・ラパスとは対照的な正統派の演技のうまさだ。

創造主と人間の関係を考えるときに、人間と人間が自らに似せて作ったアンドロイドの関係との二重構造があって、それがわれわれが創造主の感情を推察する糸口になるという物語の構造なのだけれども、それはマイケル・ファスベンダーの演技力あってこそなのである。

デイヴィッドに「なぜ我々を作ったのか?」と問われて、チャーリーが「作れたから」と答えるシーンがあり、デイヴィッドがある決意をするのだけれど、この作品のテーマに直接ヒントを与える最重要のシーン、あとはエンジニアが作り出した宇宙図の美しさに恍惚とするシーン。この二つは特に光る。

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【Blue Ray】プロメテウス

 

■【映画評】『エイリアン コヴェナント』  或いは、フランケンシュタインの怪物が自ら名前を得る物語。

■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■さて、BlueRayに収められている未公開シーンである。

いろいろと面白い映像満載で、こんなに重要なシーンを大量に削ってしまったのかと驚嘆するのだけれども、オーディオコメンタリーを聞く限り、ともかくスピード感優先で容赦なくザクザク切っていったようである。

・ヴィッカーズとウェイランドが対面するシーンでは、ヴィッカーズがゆがんだ形で父への愛を示し、それをウェイランドが突き放す流れになっていた。

・覚醒したエンジニアと乗員が対峙するシーンでは、エンジニアはしゃべっていた。その言葉の意味は「パラダイス(楽園)」であった。

多くの未公開シーンのなかでもこの二つを削ってしまったのは少しやりすぎだったかもしれない。

■終盤の盛り上がりの中で引いてしまうのが、ウェイランドがなぜここまで不死にこだわるのかがわからないまま突然怒り狂ったエンジニアに殴り殺されてしまうシーンだ。

ヴィッカーズとウェイランドの会話の公開版でも一応意味は通じるが、フルバージョンを見れば、ヴィッカーズが崇拝した父は如何に超然とした権威であったかが感情としてわかるし、それゆえに不死に取りつかれた無様な姿がヴィッカーズを通じて我々にも沁みてくる。

さらにエンジニアとの対話でウェイランドが自ら創造したアンドロイドを示しながら私はあなたと同じ神だから不死になる権利があると訴え、それを聞いたエンジニアが「作られたものの分際で!」と激怒しデイヴィッドの首を引っこ抜いて人間どもを殴り殺すのも理解できるのである。

そしてエンジニアがしゃべった一言が「パラダイス」であるとデイヴィッドがエリザベスに語るラストの方のシーンも話の流れ上カットされているのだけれど、それは何故エンジニアたちが人間を滅ぼそうとしていたかについての重要なヒントであって、それ無くして理解させようというのはあまりにも酷な話だ。

要するに、地球をパラダイスにしようと生命を生み出したのにできた結果の人間は失敗作だったから消去する、そういうことだと想像できるのだけれど、このヒントなしでは無理ゲーにも程があるということだ。

■テンポの重要さはわかる。

けれど編集する方はすでに答えを知っているのだ。その意味で、まったく背景の知識を持たない観客とは絶対に同じ土俵には乗ることができない。「わかるだろ?」と編集するものが考えたとしても観客とは根本的に視界が異なるのだ。

そこに罠があったのだと思う。

次回作の『エイリアン:コヴナント』を見る前に、ファンは是非とも未公開シーンとオーディオコメンタリー2種は押さえておきたい。いやはや実に不親切な話なのだが、、、。

                   <2017.02.09記>

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【DVD】プロメテウス+エイリアンシリーズBOXセット

■STAFF■
監督     リドリー・スコット
脚本     デイモン・リンデロフ
        ジョン・スパイツ
製作     リドリー・スコット
        トニー・スコット
        デヴィッド・ガイラー
         ウォルター・ヒル
音楽     マルク・ストライテンフェルト
撮影     ダリウス・ウォルスキー
編集     ピエトロ・スカリア
製作会社  スコット・フリー・プロダクションズ
        ブランディーワイン・プロダクションズ

■CAST■
エリザベス・ショウ     ノオミ・ラパス
若い頃のショウ       ルーシー・ハッチンソン
メレディス・ヴィッカーズ  シャーリーズ・セロン
キャプテン・ヤネック   イドリス・エルバ
デヴィッド         マイケル・ファスベンダー
ピーター・ウィーランド  ガイ・ピアース
チャーリー・ホロウェイ ローガン・マーシャル=グリーン
フォード          ケイト・ディッキー
フィフィールド       ショーン・ハリス
チャンス         エミュ・エリオット
ラヴェル         ベネディクト・ウォン
ミルバーン        レイフ・スポール

エンジニア        イアン・ホワイト
 

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