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2017年2月27日 (月)

■【映画評】 『ラ・ラ・ランド』 エモーションはミュージカルにのせて。映画はプロットだけじゃない!

『セッション』で息をするのも忘れてしまうような怒涛のラスト9分間を体験させてくれた新鋭デミアン・チャゼルの最新作は夢と愛がテーマ。

さて、今回はどんな世界に連れて行ってくれるのか。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.95  『ラ・ラ・ランド』
           原題: La La Land
          監督: デミアン・チャゼル    公開:2017年2月
       出演: エマ・ストーン  ライアン・ゴズリング 他

Title

■あらすじ■
だれもがスターになることを夢見るロサンゼルス。いつかは自分の店を持つことを夢見るピアニストと映画女優を夢見てオーディションを受け続ける若い女が偶然の出会いから互いに惹かれ始める。

■アカデミー作品賞は逃したものの、実に6つもの賞を獲得!
主演女優賞: エマ・ストーン
監督賞   : デイミアン・チャゼル
歌曲賞   : 「City of Stars」
作曲賞   : ジャスティン・ハーウィッツ
撮影賞   : リヌス・サンドグレン
美術賞   : デヴィッド・ワスコ、サンディ・レイノルズ・ワスコ

みなさん、こういう作品に飢えていたのかな、と思う。

確かに、ミュージカルは人の心を動かす。

そして、どこかで見たことがあるような懐かしさと、今まで見たこともないような映像と音楽の美しさ。

それが今回の評価の理由だろう。

 
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■さて、感想。

楽しい。実に楽しい。

色が、音楽が、歌が、カメラワークが、縦横無尽に動き回る。

ああ、これがミュージカルだな、と思う。

壮大なミュージカル巨編ではない。けれど、いまだに私のあたまのなかに再生されるジーン・ケリーの『雨に唄えば』の幸福感は、こういうものだったな、と改めてこみあげてくるのである。

いまどきの快適な映画館のシートに身を沈めながらも、なんだか懐かしい名画座の固いシートから食い入るように見つめた画面に吸い込まれていく、そういう感覚がよみがえるうれしさだ。

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■話の導入もいい。

エマ・ストーン演じる役者の卵であるミアが、古き良きジャズにこだわる不遇のピアニストと出会う。

偶然の出会いは必然となり、当然のように二人は恋に落ちる。

この理屈のなさが、恋なのだと思う。

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■問題は話の展開だ。

くわしく語るとネタバレになってしまうが、中盤以降、それはうまくいきすぎだろとか、どうしてそうなるのか、という展開についていけない、どうしてもひっかかる部分があって、ところどころ、この’夢’の世界から覚めてしまうのだ。

それでもなお、ラストではきっちり、「そうきたか!!」という展開が待っていて、思わず手を叩きそうになってしまった。

結局、見終わってしまえば、そんなことはどうでもよくて、そこには感情だけが漂っている。あのラストの表情だけで永遠が表現されていて、ああ、愛なのだな、と思える。

『セッション』で、あそこまで完成されたプロットを作り上げたデミアン・チャゼルは、今回敢えてそれを崩したのだろう。

愛に理屈はない。あるのは一瞬の、永遠の、想い、それだけだ。

たぶんそれがメッセージなのであって、それはプロットではなく、ミュージカルそのもので語るものなのだ。

    
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■なんといっても、ラスト前。

一流映画スターになったミアは何故か前の金持ちの彼氏と結婚。子供もいる。

夫婦で渋滞した道を外れて入ったジャズバーのオーナーがセバスチャンで、という場面。

シーンは二人がバーで出会ったシーンにさかのぼり、すれ違うはずが、再会をよろこび、抱き合い、そこからの人生を二人で幸せに過ごす。

それもまた幻で、、、、

思い返せば、オープニングはロスの高速の渋滞場面。

ロスで夢を追う人たちは、その人生の渋滞のなかで踊り、歌い、人生を輝かせる。

このラストの導入もまた渋滞で、セレブになったとしても、人生はうまく進まない渋滞道路であり、そこから横道にそれた場所で小さな夢を見る。

そういう場面なのだろう。

そう、人生は思い通りにはならない。けれど、その渋滞走路の脇にはそうあったかもしれない側道が常に走っている。

別れ際のミアとセバスチャンの表情がそれを物語っている。

人生にしっかりと組みあがったプロットはいらない。

ジャスのようにいつも入れ替わりながら、いつも違った顔で現れる。

だから生きていけるのだ。

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                      <2017.02.27 記>

■『セッション』の鬼教師、J・K・シモンズも参加。いいよね、このおじさん。

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【サウンドトラック】
 

【Blu-ray】

■STAFF■
監督   デミアン・チャゼル
脚本   デミアン・チャゼル
製作   フレド・バーガー
      ジョーダン・ホロウィッツ
      マーク・E・プラット
      ゲイリー・ギルバート
音楽   ジャスティン・ハーウィッツ
撮影   リヌス・サンドグレン
編集   トム・クロス
美術   デヴィッド・ワスコ、サンディ・レイノルズ・ワスコ

■CAST■
ライアン・ゴズリング - セバスチャン・ワイルダー、ジャズ・ピアニスト
エマ・ストーン     - ミア・ドーラン
J・K・シモンズ     - ビル、レストランの経営者
フィン・ウィットロック - グレッグ
ローズマリー・デウィット - セバスチャンの姉
ミーガン・フェイ    - ミアの母親

●●● もくじ 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●

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