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2017年1月17日 (火)

■【書評】『三流の維新 一流の江戸 「官賊」薩長も知らなかった驚きの「江戸システム」』 原田伊織、明治批判は良いのだけれど、いまいち見えない次世代に活きる江戸時代発の新しさ。

『明治維新という過ち』で話題をさらった原田伊織の新刊である。

趣旨は、明治維新以降に否定的に扱われている江戸時代こそ、あたらしい社会のカタチを模索する今後の世界が参考とすべき素晴らしい時代だった、というものだ。

面白い読み物であった。けど、どうも尻すぼみなんだよね。

■まず、著者は明治維新をおこした勤皇の志士たちはテロリスト集団であり、尊王の意識などまったくない連中だと断じる。

明治政府にしても、江戸時代の遺産によってやっと運営できたもので、連中のやったことといえば「王政復古」の号令のもと「廃仏毀釈」をすすめ、日本独自のものとして開花した仏教文化を破壊するなど、どこぞやのテロ国家と変わらんということを説く。

通読して思うのは、どうも一神教や共産主義のような排他的な一元的価値観に縛られたものが嫌いでしかたないのだな、ということだ。

結局、勤皇の志士たちの思想を源泉とする一元的価値観に支配されてしまった日本は、世界を敵にまわした戦争に突入し、この国を破滅に導いたという歴史観には、なるほどと膝をたたくものがある。

著者は、勤皇の志士や明治という時代をことさら美化する司馬遼太郎を敵視するが、その司馬遼太郎自身が日本軍という組織のなかで自らが苦しめられたその価値観と明治が連続するその矛盾を感じているのかもしれない。その意味でも正鵠を得た見方ともいえるだろう。

■そこはよい。だが、本論の江戸時代発の提案が希薄なのだ。

本書では乱暴狼藉が支配した戦国時代と対比させることで、「元和偃武」に始まる江戸時代がいかに平和で平穏な時代であったかを参考とした文書を羅列しながら説得力をもって説いていく。

江戸時代の街道はしっかりと整備され、一人旅も安全で、庶民も自由に旅に出ることが出来た。それは幕府の威信をかけたものであったこと。

人口分析からみると江戸時代の人口に変化がなく静的な社会という見方があるが、実は人の移動がダイナミックに行われた活力にあふれた社会であったということ。

鎖国は、外国人を拒絶する狭量な姿勢から生まれたものではなく、戦国時代に戦乱の中で生け捕りになった日本人を奴隷としてアジアに売りさばいたスペイン人、ポルトガル人たちを追い出し、同時に日本侵略の先兵として日本の既存の価値観を否定し破壊するキリスト教宣教師たちを排除する、その国防の観点から生まれた制度だということ。

このあたり、実に面白いし、勉強になる。

■けれども、だからどうなのか、という話なのだ。

原田伊織は明治を否定した。

一元的価値観という意味では戦後の資本主義社会も「合理」という意味で同じであり、そこに破綻が生まれているとしている。

だからこそ、感覚的な「中世」と合理的な「近代」の中間にある「近世」という世界でも独自の存在となる時代であり、250年の他に類を見ない平和を維持した「江戸時代」に一体なにを見、そこから引き出すのか、そこを語らなければ論理が収束しないのだ。

明治ダメ!ほら、江戸って素敵でしょ?

に留まってしまっては、単なる読み物に終わってしまう。

実際、江戸時代にポスト資本主義のヒントが隠れていると私自身思っているので、どうしてもそこを期待したくなってしまうのだ。

 
まあ、そこを差し引くとしても、今までの価値観をひっくり返すお話がいっぱい載っているので、それはそれで非常に魅力的なのは間違いなく、一読して損することはない。

 

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                    <2017.01.17 記>

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