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2016年12月14日 (水)

■【映画評】『オール・ユー・ニード・イズ・キル/ALL YOU NEED IS KILL』、誰だって爽快なラストが見たいのさ!

原作の漫画化したものと比べると、もう段違いの完成度。これがハリウッドの実力なのか。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.92  『オール・ユー・ニード・イズ・キル/ALL YOU NEED IS KILL』
           原題: Edge of Tomorrow
          監督: ダグ・リーマン 公開:2014年7月
       出演: トム・クルーズ エミリー・ブラント 他

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■ストーリー■
近未来。地球は謎の異星人の侵略を受け、ヨーロッパ大陸を失った。人類は起動歩兵を中心にした部隊を組織し、反攻作戦を計画。米軍報道官のケイジ少佐はブリガム将軍から前線に立つことを命令されるが、将軍を脅す態度で拒否したため、階級をはく奪されて強制的に歩兵部隊に送り込まれる。ケイジは前線で死ぬことになるのだが、気が付くと部隊に送り込まれた日に戻っている。ケイジは戦場で死に、目覚め、再び戦場に向かうという無限のループにはまり込んでしまったのだ。

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■原作は桜坂洋のライトノベル。

原作は読んでいないけれども、小畑健が漫画化したものを読む限り、プロットと設定が面白く、またディテールまでしっかりしていて、見ている人はみているのだな、と思う。

そして、さすがハリウッドだと思うのは、少年少女向けのセンチメンタルな部分はすっかり消し去り、ハードな部分を抜き取る。そして、その特異なプロットを磨き上げ、確かに All You Need Is Kill. だという本質をしっかりと残しつつ、すっかり2時間のエンターテイメントに作り上げたことだ。

原作のやるせなさもよいのだけれど、やはりハリウッド映画は爽快でなければならない。

どっちもありだが、まずは原作漫画に目を通してみるのも悪くない。

ハリウッドが日本のコンテンツを映画化してもろくなことにならない、なんて思い込みはすっかりとぬぐい去られること請け合いだ。

■舞台設定が素晴らしいのは、原作譲りだとしても、プロットとシナリオが恐ろしいくらいにうまい。

かなり練り込んだに違いない。

主人公は若い初年兵から、中年の事務屋に大きく変更、少年の成長物語的なものを排して、現実に起きていることに観客を集中させることに成功している。

ヒロインのリタも歴戦の勇者らしい屈強さを持たせ、リアリティが増している。

彼女が使うアックスは、ヘリのブレードの改造品に変わり、そのあたりも違和感がない。

この手の世界のリアリティについてはハリウッドはお手の物、ということだろう。

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■シナリオも、時間がループすることを最大限に利用していてかなりうまい。伏線を張り、繰り返しで強調し、だます。

くすりと笑わせ、どきりとさせ、ぐっと感動させる。

確かにループものは、やりやすいんだろうけれど、ここまで徹底的にやられると、小気味いいのである。

中でも、軍曹の口癖、

「兵士たるもの運命は自らが支配せよ」

というセリフがメッセージとして効果的で、この映画のテーマとしてうまく浮き出させることに成功している。

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■人物造形については、まあ、トム・クルーズのうまいことうまいこと。

コミカルなダメ人間が、次第に研ぎ澄まされていき、途中、自ら運命を切り開こうと決意するシーンなんか、たまらなくかっこいい。

一方のリタは、さほど彫り込まれないのだけれど、それ故に、背景を感じさせる描き方で、全部を語ってしまう原作との対比からすると、映画的にはやはりこちらだろう。

ところで、めっぽう真面目なリタなのだが、その真面目さゆえに、何か予定外のことが起きるとすぐにリセットと称して主人公を射殺してしまう。

その、すぐリセットしたがる癖は終盤までおさまらず、ここもまたクスりとさせるところで、リタいいぞ!と応援したくなるのである。

■「ギタイ」と称するクリーチャーについては、これまた原作から修正。これまた結構いけている。

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造形自体は獣のような頭と手足があって、まあ、あるかな、という程度のものなのだが、圧倒的に動きが速くて、かつ、トリッキー。この、よくわからない感が映像としては素晴らしく、「ギタイ」の容赦ない感じがうまく出ていたと思う。

でも、どっかでこれ見たな、という感覚もあって、あとから気づいたのだけれど、マトリクスのクリーチャーの動きだった。まあ、それは、マトリクスの悪夢世界の描き方が素晴らしすぎだった、ということだろう。

■ケイジが放り込まれる、戦場もいい。

ともかく壮大で、有無を言わさないものがある。

あんなところに突然放り込まれたら1分と生きていられない。

そういう激しさも万全である。

こういうところで手を抜かないのがポイントで、作品の深さは背景にどれだけエネルギーを投入したかで決まる、という好例である。

■先に書いたが、この映画、ラストの爽快感が半端ない。

原作を読んだ人ならば、絶対に見ておく価値がある、おすすめだ。

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■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■この映画のなかで、ぐっと来たシーンがある。

ケイジとリタが何度もトライを重ね、ついに戦場を抜け出す。

追ってを振り切り、無人の小屋にたどり着く、そこにはヘリがあって、それを使ってラスボスがいるダムを目指そうとする、というシーンだ。

満身創痍にも関わらず、積極的に仕掛けようとするリタ。

けれど、ケイジは、そんなリタを必死に抑え、落ち着かせようとする。

コーヒーの砂糖は3杯だったね、

というさりげないケイジのセリフに、リタの表情が凍り付く。

戦場を抜けた時点で、繰り返しのループから抜け出したと、リタも、見るものも、勝手に解釈してしまうのだけれど、実はこの場面も繰り返し行われていて、しかも失敗しているということだ。

このときのリタの表情がいい。

分かってたはずなのに、まんまとやられた、という感覚に水をささない絶妙な演技を要求されるシーンだが、エミリー・ブラントは見事にそれを演じて見せた。

ここから物語は大きく転調していく、そのきっかけになるシーンだけにゆるがせにできない、そういうこだわりも見えてきて、たぶん、作り手のそういう姿勢が映画全体をうまく動かしているんだろうな、と感じ入るのである。

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■さて、ラストである。

リタはアルファにやられ、ケイジも死ぬ。

けれど、ラスボスであるオメガの体液を浴びたケイジは、また時間をさかのぼる。

そこは、将軍に司令部まで呼び出され、ヘリで移動している最初の場面。

だが、その時すでに、エイリアンは謎の大爆発のあと、急速に無力化されてしまっていた。

あれ、時系列がおかしくないか???

と一瞬思うのだけれど、よく考えれば、あのエイリアンたちは時間軸を超えた存在であり、ある時間軸でオメガを破壊した瞬間に、ケイジがたどり着くすべての世界において、エイリアンは同時に消滅するのである。

という屁理屈はおいておいて、このラストによって、リタも小隊の連中も、この世界において死ぬことから逃れられる。

リタも小隊の仲間も、ケイジのことはまだ知らず、これから一緒に戦うこともないのだけれど、ケイジだけがそれを知っている。

腕立て伏せに励むリタのもとに現れるケイジ。

それはあたかも、勝利ののち、彼女を迎えにきたようで、あれ?トップガン??と、ちょっと脳内で若返ったトム・クルーズなのであった。

                      <2016.12.11 記>

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■STAFF■
監督 ダグ・リーマン 
脚本 ダンテ・W・ハーパー 他
原作 桜坂洋 『All You Need Is Kill』
製作 ジェイソン・ホッフス
グレゴリー・ジェイコブズ
トム・ラサリー
ジェフリー・シルヴァー
アーウィン・ストフ
製作総指揮 ジョビー・ハロルド 
音楽 ラミン・ジャヴァディ
撮影 ディオン・ビーブ
編集 ジェームズ・ハーバート

■CAST■
ウィリアム・ケイジ  トム・クルーズ 
リタ・ヴラタスキ    エミリー・ブラント 
ファレウ曹長     ビル・パクストン 
ブリガム将軍    ブレンダン・グリーソン 
カーター博士    ノア・テイラー 

 

 

●●● もくじ 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●

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