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2016年9月13日 (火)

■【映画評】『君の名は。』 物語とは何か。そのスタイリッシュさがあえて捨て去ったもの。

予告編につられて娘と見に行った。予想を上回る高品質の作品。ヒットするわけだ。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.88  『君の名は。』
          監督: 新海誠  公開:2016年8月
       出演: 神木隆之介   上白石萌音 他

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■ストーリー■
ある日、岐阜の山奥の湖のほとりの町に住む女子高校生、宮水 三葉(みやみず みつは、声 - 上白石萌音)と都心に住む男子高校生立花 瀧(たちばな たき、声 - 神木隆之介)の心と体が入れ替わる。ずっと、というわけではなく、数日おきに目が覚めると入れ替わっている、という具合だ。はじめはとまどっていた二人だが、お互いへの不平不満をかかえながら、それぞれのもう一つの生活を楽しみ始める。瀧は、いま岐阜で過ごしているであろう三葉の携帯に連絡を取ってみようとするのだが、何故かつながらない。実は・・・。

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■高品質。

というのが、適切な表現だと思う。

想定をはるかに超える壮大で緻密なプロットも、愛すべき登場人物たちも、リアルでかつ美し過ぎる映像も、テンポの良さも、心躍る挿入歌も、すべてが高品質。観る者は、その世界にのめり込み、その切なさの先に提示されたラストにやわらかな涙を流す。

新海誠監督の才能は素晴らしい。

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けれども、だ。

さめざめと泣いた映画を観終わった感覚と何か異なる微妙な違和感。

軽いのだ。

このそこで思い起こすのは、やはりあの作品、『時をかける少女』(2006年、細田守 監督)だ。

筒井康隆の名作を大きく改変し、大林宣彦と原田知世が決定づけた世界観を大きく覆して見せた、あの作品である。

■細田の「時をかける少女」も、しっかりしたプロット、吸い込まれるような背景、いきいきとした性格描写、何度聞いても胸を締め付けられるテーマ曲の「ガーネット」、と、新海の『君の名は。』と極めて似た性格をしている。

だが、決定的に違うのは、人物の成長や生き様の作り込みなのだと思う。

いや、新海もかなりの心理描写を作りこんでおり、キャラクターが表層的だなどということは決してない。それでは自然に涙がこぼれることは無い。

新海の作品は従来の映画とは違う感覚的なアプローチで作品を仕上げた。

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RADWINMPSのテンポの良い曲にあわせた場面展開。東京の朝の街並みが早回しされる時間経過の表現は印象的だし、かっこいい。それに画面を割って三葉と瀧を登場させるマンガ的表現もテンポを崩さない上で、うまくいっていると思う。

この『君の名は。』の一番の見どころこそが、「軽さ」の原因なのだ。

■感覚的表現はストレートに心に訴えてくる。素晴らしい楽曲と印象的なシーンの舞踏。コトバを介さずに、いや、ストーリーすら無かったとしても、そこには感動が生まれるだろう。

なにもRADWINMPSの音楽に頼り切っていると言っているわけではない。例えば、何故だか涙が流れてくる、というシーン。記憶に上らないみえない部分の心の動きを表現した秀逸なシーンであり、物語の根幹に関わる重要な部分なのだけれど、このシーンもまた、感覚表現だ。

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つまり、この映画は、音楽も含めたビジュアルの切り貼りであり、その部分に於いて、どれだけ丹念に人物描写をおこなっても、頭で理解できても心の中でつながってこない。心の連続性が絶たれているのである。

■だから悪い、といっているわけではない。

例えば(かつての第三舞台のような)スタイリッシュな演劇などは、まさにそういった表現で感動を伝えようとしてきた。場面場面のそれぞれが勝負であり、その総体で浮かび上がる物語性という手法もやはりあって、『君の名は。』のスタイリッシュさは、あのバブルの時代を彷彿とさせるものがある、などと言ったら年寄りと笑われるだろうか。

私はむしろ、そういった表現が好きだし、胸の高鳴りを抑えられなくなる方だ。

その一方で、その表現はストーリー作りのつたなさとも映る。

細切れの物語の足し算では決して「組紐」にはならない。ていねいに、ていねいに、ひとつひとつ心を込めて編み込んでいく物語には、その積み重ねの上に初めて味わえる心の動きがあって、それが細田守にはあって、今回の新海誠の作品では感じることができなかったものなのだ。

それがゲームクリエーターの限界なのだ、などと言わせない「物語」を次回は見てみたいものだ。新海監督には、それだけの才能を感じるから。

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■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■今回は、ネタバレするとしゃれにならないので、語り残した魅力は涙を呑んで割愛します。

                      <2016.09.13 記>

■STAFF■

監督・原作・脚本・絵コンテ・編集・撮影 - 新海誠
キャラクターデザイン・オープニング作画監督- 田中将賀
作画監督・キャラクターデザイン - 安藤雅司
音楽 - RADWIMPS 「前前前世」、「スパークル」、「夢灯籠」、「なんでもないや」
演出 - 居村健治
美術監督 - 丹治匠、馬島亮子、渡邉丞
色彩設計 - 三木陽子
撮影チーフ - 福澤瞳
3DCGチーフ - 竹内良貴
製作 - 市川南、川口典孝、大田圭二
企画・プロデュース - 川村元気
音響監督 - 山田陽


■CAST■
立花 瀧(たちばな たき)     声 - 神木隆之介
宮水 三葉(みやみず みつは) 声 - 上白石萌音
奥寺 ミキ(おくでら ミキ)    声 - 長澤まさみ 瀧のアルバイト先の先輩。
宮水 一葉(みやみず ひとは) 声 - 市原悦子 三葉の祖母で宮水神社の神主。
勅使河原 克彦(てしがわら かつひこ) 声 - 成田凌 三葉の同級生。
名取 早耶香(なとり さやか)  声 - 悠木碧 三葉の同級生。
藤井 司(ふじい つかさ)    声 - 島崎信長 瀧の同級生。
高木 真太(たかぎ しんた)   声 - 石川界人 瀧の同級生。
宮水 四葉(みやみず よつは) 声 - 谷花音 三葉の妹。
宮水 トシキ(みやみず トシキ) 声 - てらそままさき 三葉の父。糸守町の町長。
宮水 二葉(みやみず ふたは) 声 - 大原さやか  三葉の母。
ユキちゃん先生  声 - 花澤香菜

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●●● もくじ 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●

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