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2015年10月12日 (月)

■【アニメ評】『ガッチャマン クラウズ インサイト』を総括する。今、日本を覆う問題は空気などではなく。。。

最終回が終わってしばらく経つ。

ちょっとかったるかったけど、それなりに面白かったし、11話には感動もした。

でもね、落ちついて考えると少し思想として薄いなあ。と感じてしまうのである。

20171005

宇宙人のゲルサドラがみんなの気持ちを吸い取って、みんなの想いを反映させた政治を行う。

その焦点は、なんでみんな争うの?一つになろうよ!という純粋無垢な提案に集約される。

次第に社会はその空気に飲み込まれ、くうさまを生み出し、空気に反抗するものを飲み込んでいく。

その日本人の民度のなさを嘆く作品なのだけれども、はて、なんか違和感が。


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■前作のガッチャマンクラウズは、人の不幸を面白がる我々の無責任な悪意を背景に、あくまでも人類の自律的なアップデートを信じる累と、力で世界を変えようとする梅田を利用したカッツェの戦いと言える。

その戦いは、なんでも楽しんじゃおうぜ!という無責任の明るい面、その無邪気さが勝利するというものであった。

その延長線上で語るならば、その無邪気な個が、個として自律していく物語が期待されるし、そのアンチテーゼとして、自律=自由の対極にある全体主義のひとつのかたちとして「やわらかい全体主義」=「空気」をもってきたのは論理的に妥当であろう。

作品では、ネット投票の項目に「ゲルサドラにおまかせ」という選択肢が追加され、「空気」=「思考停止」と結論付けられる。

思考を放棄した日本人は、テレビのコメンテータのこれまた無責任な意見に影響を受けて右へ左へと流される。

これが、日本を戦争に追い込んだもの=「空気」と同質のものであり、日本人はまったく変わっちゃいない。

はじめちゃんの渾身の一撃で、我に返る=水を差されることにより、やっと空気を止めることが出来た。

それから、自分の頭で考える連中も、少し出てきたし、長い目で見れば未来は明るいかもしれない。おしまい。

・・・ちょとまて、本当に日本人ってそんなにアホなのか?

■明治維新で市民として覚醒した日本人。富国強兵で頑張った日本人。その成長のなかで生まれた格差の矛盾を帝国主義的に版図を拡げることで打破しようとし、だが先行する帝国主義国に国際社会のなかで孤立させられ、反撃に出た。

これが当時の空気を醸成した土壌だろう。

目的が定まれば、そこに向けて一丸となって猛進する。それを作り上げたのは軍部だけではなく、当時のマスコミであり、それに乗った一般市民だ。

その意味で、大東亜戦争の失敗は、市民にも責任がある。

下って、戦後の経済成長。

これも、豊かな社会を目指した挙国一丸の活動の成果だ。

けれども、このときは「サラリーマンは気楽な家業ときたもんだ!」と飛び跳ねる植木等がいた。

サイケとエロと虚無と哲学と、もう、うらやましいばかりの文化的炸裂が並走している。

このとき、「空気」ってどうだったんだろうと考える。

公害は無い。という経済の圧力に対し、70年代になれば、アンチ公害の流れも生まれている。

実に健康な時代だと思う。

反論を許さない「空気」などというものは、市民の爆発的なエネルギーによって粉砕されていたかに見える。

文化は左翼的だったかもしれないが、それは純粋な社会主義ではなく、反権力を目的としたものであって、それ故に、そこに健全性が担保されていたのだろう。

■そして、バブル崩壊とその後の20年を失った今の日本。

自信を喪失した我々は、断固たる意志をもった久しぶりの政治家の登場に歓喜した。

では、あたかもゲルちゃんのような、あの小泉劇場が我々の思考を奪ったのか?

否、源流はバブル崩壊の過程にあるのだと思う。

昭和元禄は崩御と共に失われる。

豊かさを手に入れてしまった我々は、この先を知らない。そのことに気付いていたものは、バブル時代の社会的狂瀾にうすら寒さを感じ、生きていく意味すら分からない。当時大学生であった私も、そんな精神状態に追い込まれていた。

だから、とっとと就職したかったし、日本が経済的に崩壊していく中、未来を考えることなく、ただ目の前をみてがむしゃらに生きてきた。

■未来を描くことが出来ない。

そこに本質があるのだと思う。

だから、政治も小粒で、マスコミも中身が無く、文化も表層的でしかない。

小泉は、ともかく今のままではいかん、ぶっ潰せと破壊した。

けれども、その後が続かない。

アメリカの片棒をかつぐ経済学者のことばに乗って、壊してはいけないものまで破壊しようとする安倍は、馬鹿なのか?

いや、本当のヴィジョンを描けない、そこに問題の本質があるのだと思うのだ。

日本のヴィジョンが描けないから、アメリカの後追いという、かつてのシナリオに従うしかない。そういう近視眼的思考停止がそこにあるのだ。

インサイトで「空気」として描かれていたもの。

その正体は、戦前の已むにやまれぬ国際情勢によって形作られた空気とは根本的に違う、本当のすっからかんの「空気」なのである。

アメリカに追いついてしまった悲劇。

その先のヴィジョンを描けない悲劇。

新しい価値観、文化を生み出すことが出来ない悲劇。

それが、今の日本を中身のないものとし、個々の思考をあきらめさせるに至る本質なのだ。

道をつくる。それが我々の命題だ。

■シナリオはいくつかある。

一つは、技術立国を極めること。

自動車技術者としてFCVが「未来」だとは到底思えないが、一つのカタチとしてはあるだろう。

その先にあるのは、エネルギー革命としての核融合、そしていつか我々を凌駕するであろう人工知能。

それにより、今まで進んできた我々の道のさらに先を目指す、という道。

一つは、社会を変えること。

いままで歩んできた道は、もう行き止まりまで来ているのかもしれない。技術が進歩したところで、加速度的に消費され、陳腐化していしまう。

情報機器の圧倒的な進歩でネット社会が一気に加速したものの、その情報伝達のスピードゆえに逆にすぐに飽和してしまい伸び悩んでしまう現実。

いかに経済のパイを拡げようとも、マネーが先行するこの世界においては投資が拡大するだけで市民にお金がまわってこない、ゆえに市場は思ったほどには拡大せずに投資回収が出来ずにマネーはさっさと逃げていく。

つまりは資本主義経済の機能不全。

ならば、ルールを変えればいい。

金がすべて、経済がすべての価値観を一度引いた目で眺め、組み立てなおせばいい。

いままでのゲームは終わりなのだと、連中に引導を渡せばいい。

それは、決して一人の指導者が立ち上がって成し遂げるものではなく、我々一人一人が自分の判断で生き方を変え、連中のゲームから降りること。

日経平均だ、NYダウだ、というものが単なる幻想であることを見抜き、地に足の着いた生き方をすること。

さらにいえば、世の中の「常識」から解き放たれ、こころの自由を手にすること。

それしかない。

■そこに、累の理想がオーバーラップする。

彼の言うアップデートとは、自ら考える、というだけのものではない。自らの価値観を創出し、それにしたがって生きること。

いろいろな常識=ルールを押し付けてくる社会のくびきを断ち切斬り、自らのこころに従っていきること。

そこから生まれる多様な個々の地に足の着いた価値観がネットでリンクされ、議論があり、軋轢があり、そのアウフヘーベン(止揚)されたものこそが、新しい、アップデートされた社会なのだ。

ネット社会だからこその新しい革命の姿がそこにある。

ガッチャマンで市場経済の限界を語れとは言わないが、ガッチャマンクラウズで展開された志の高さの割に、インサイトが薄っぺらに見えてしまうのは、今の日本を覆うものを、過去の軍国主義的「空気」=「思考停止」への還元としかとらえられなかったところにある。

そんなものは、もうとっくに日本人は卒業しているのだ。

ネットを見ていても意見は多種多様だ。マスコミがすっからかんになってしまっていることなんて、もうみんな知ってるよ。

繰り返すが、問題の本質は、我々自身が中身を失ってしまったことなのだ。

それを取り戻さなければならない。

それが累が本来めざすべき革命だ。

その意味で、インサイトは累と理詰夢との対決を深めるべきであった。

極めて残念。

もし万が一、中村健治がこれを読んでいるなら、猛省して次回作に励むべし!!

期待してます!

                          <2015.10.12 記>

●●● もくじ 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●

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