■【アニメ評】『ガチャマンクラウズ インサイト』。空気にのみこまれるい恐ろしさ。必要なのは何よりもバチバチっっていう激しい議論なのだ!
ずるずるだらだらとすすんできたガッチャマンクラウズインサイトも前回の8話、青赤白のしましまの謎の存在「くうさま」の登場で一気に物語が動き始めた。
番外編 『ガッチャマンクラウズ インサイト』
■8話での衝撃は、何と言ってもるいるいが籠絡され、あたたかい思考停止の世界にとりこまれてしまったところ。Xが必死の説得を試みる姿がかなしい。
この事態について、カッツェがまた なぞなぞを出す。
前回のは、「どんな人間も大好きな、めっっちゃくちゃ甘くておいしーものってなぁあんだ?」
で、答えは【人の不幸】、それはネット民の悪意を指し示していて、でも、ネット民の多様性や、好奇心というものは、そう捨てたもんでもないんだよ、というお話だったわけです。
で、今回のなぞなぞは、
Q:入れるのは簡単だけど出すのは結構難しいみんなの大好物ってなーんだ?
<ヒント> なぞなぞの答え、もちろんミーも大好物っす でも、ゲルゲルの方が二万倍好きっすね
うーん、【意見】?って思ったけど、
正解は【空気】でした。
空気読めない、の空気です。
みんなひとつになって幸せになろーよ!
というゲルちゃんとつばさの危うさがじわじわと盛り上がってきたその頂点で、その危険の姿が明かにされたわけであります。(9話)
■みんなひとつになって幸せになろーよ!
というみんなの【空気】から生まれた「くうさま」は、空気をよめない人を飲み込み始める。
(8話のラスト、丈の目の前でアランが飲み込まれるシーンは衝撃!あっ、飲んじゃった!!)
空気にそまらない人を飲み込み始めるくうさまを前に、【難しい話はよく分かんないですけど、】と、反対意見に対して受け入れ拒否、思考停止をしてきたつばさが、やっと気づくわけです。自分が推し進めてきたことの恐ろしさに。
その微妙な空気にみんな気付き始めていて、ここで空気にあわせないと、自分が飲み込まれちゃう、と。
9話ゲストでメガネの高校生として登場したWHITE ASHののび太も、思いっきり合わせてました。
■敵が見えないという意味で、独裁よりもやっかいな【空気】というもの。
下手に敵対すれば、大衆の作り出す【空気】にはじき出されてしまう。
戦前、戦後と日本はこの【空気】によって動いてきた。
日本の一体感の正体は、この【空気】なのである。
この現象を分析したのは山本七平で、それは『空気の研究』に詳しい。
■【書評】『「空気」の研究』 山本七平。決して古びることのない本質的日本人論。
この山本七平の論によれば、この空気に対抗するには【水を差す】という行為しかない。
みんなが安倍ちゃん最高!アメリカ議会でもスタンディングオベーション!って、盛り上がってるところに、それって憲法違反だよね、と言った憲法学者の長谷川先生みたいなもんだ。
これは、水を差すのが上手くいった珍しい事例で、実際には、まあまあ、大人の発言をしようよ、なんてたしなめられて消えてしまうのが、良くある話。
空気というのは、それほどに強い力を持つものなのだ。
■次回、10話。VAPEのリーダー鈴木理詰夢が、この空気を変えるべく動き出す。
大衆の心の動きを追ってきた監督の中村健治が山本七平を知らないわけはなく、絶対に水を差しに来る。さて、どうなるか、非常にたのしみである。
あと3話だしね!ラストに向かった疾走がそろそろ始まりますよ!!
一方。今の日本。
安倍首相の独裁ともいえる官邸政治。
小選挙区制だから、自民党議員は造反すれば次回の公認を得られず落選することが目に見えているわけで、違う!と思っても、違う!と言えない。
中選挙区制を止めたことで、2大政党制が育たなかった日本の悪夢。かつての派閥政治の時代にあった議論がまったくない。野党は相変わらず的外れの反対議論をぶち上げるだけでまったく説得力が無い。
日本の民主主義は本当の危機にある。
安倍の資本主義至上主義とアメリカ迎合戦略。
個人的には反対意見だが、それよりもなによりも、まったく議論の無いまま、安保法案については防衛省の意見すらいれられずに決まっていく、この姿が民主主義的に正しいとは到底思えない。
民主主義の基本は多数決の前に、何よりも議論を尽くすことなのだから。
はじめちゃんのいう【バチバチっ】ってやつです。
■安倍の独走、マスコミも批判せず、の状況に対し、憲法学者の長谷川先生が水を差した。
そこから、反安保法案のうねりが生まれて今に至る。
新たな空気が醸成されつつあるわけです。
個人的には心地いい風なのだけど、これが行き過ぎるのもまたヤバい。
安倍がやっていることは、ある意味で正しく、ある意味で間違っている。
それを頭から否定する流れだからだ。
何よりも議論が必要で、安倍自体が議論を認めないからまたやっかいなんだけど、どちらに転んでも不幸な道に行きかねない。
今、唯一の光は総裁選をなんとか実施させようとしている野田聖子議員だろう。
公認はずしが怖くて何も言えない、議論をしようとしない先輩議員に業を煮やして立ち上がった正義感。
義を見てせざるは勇無きなり!!
という彼女の心意気が清々しい。
ともあれ、ガッチャマンクラウズ、タイムリー過ぎでしょ!!
<2015.09.06 記>
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