■【映画評】『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、怒涛のMADは巨匠の精密誘導によって疾走し、我々をV8の極楽に導くのだ!!
これまで40年映画を観てきたが、これまでで最高にかっこいい映画だ!!上映最終日、間に合ってよかった!!
●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
No.81 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
原題: Mad Max: Fury Road Scissorhands
監督: ジョージ・ミラー 公開:2015年6月
出演: トム・ハーディ シャーリーズ・セロン 他
■ストーリー■
核戦争後の興廃した世界。マックスは暴走集団に襲われ、イモータン・ジョーが支配する砦に囚われる。ガソリンの取引のために砦から出撃するタンクローリーの隊列。だが、その隊列を率いる女戦士フュリオサ・ジョ・バッサ大隊長はイモータン・ジョーを裏切り、その妻たちを連れて砦から脱出、故郷である「緑の地」を目指すのであった。それに気づき自ら軍団を率いて追うイモータン・ジョー。軍団の輸血用血液袋として連れ出されるマックス。フュリオサはこの狂気の軍団から逃げ切り、「緑の地」にたどり着くことが出来るのか!
■説明はほとんどない。見る者は、怒涛のような展開とカーアクションの渦に巻き込まれていく。
余計なものは全くない。
びゃー!ぎゅーん!ひゃっはー!どーん!
もう、たまりません。
■それでいて、マックスはもちろん、ヒロインのフュリオサ、間抜けな戦士ニュークス、敵の親分イモータン・ジョー、ワイブスの5人の女、武器将軍、人食い男爵、炎のギター弾き、それぞれが濃くって濃くって、背景なんて語る必要なし。黙っていても画面からバンバン溢れ出してくる。
この荒れ果てた世界に正義とか悪とか、そういうものはもう消え果ていて、それぞれの生存本能がただただぶつかり合う。
その生々しさのエネルギーとともに、スピードとパワーが疾走する。それは、精密に計算しつくされたシナリオと細やかなカット割りによって、激突すれすれ、目ん玉むき出しのスリリングなサーカスとして制御される。
まさに職人技!ジョージ。ミラー最高!!なのである。
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■
■この映画がスカッと気持ちいいのは、悪がさっぱりしているところにあるのだともう。からりとした砂漠の思想なのか、じとじとしていない。V8エンジンとガソリンと水と母乳!!を信奉する彼らはむしろ魅力的だ。
放射線に蝕まれた肉体は、生きる事を渇望し、それ故に、ウォー・ボーイズたちは避けられない死を自覚した上でV8の神へ祈りをささげ、戦いの中での死に永遠の生を見る。
その素直なウォー・ボーイズたちの一人、ニュークスはとりわけ、かわいい存在だ。
イモータン・ジョーに目を合わせてもらった!とハッスルし、フュリオサのタンクに追いすがる。恐怖の砂嵐などお構いなし!
鎖でつながったマックスとフュリオサとの三つ巴のやりとりでも、一瞬マックスを仲間と思ってしまう素直さ!もちろん、叩きのめされるんだけど。
最高なのは、追いついたイモータン・ジョーに「逝って来い!」と言われてハッスル頂点、フュリオサ、ピンチ!という瞬間、飛び乗ったタンクの上でずっこけて、万事休す。
こりゃダメだ!
もう、腹の皮がよじれるくらい笑いました。
■結局、イモータン・ジョーの子供を宿した花嫁を救えず死なせてしまい、戻るに戻れなくなった失意のニュークス。そこに寄りそう赤毛の花嫁ケイパブル。
いつか自分の命を奪うであろう首筋の2つの腫瘍「ラリーとバリー」が唯一の友達であったであろうニュークスにとって、初めて守るべきものが生まれ、自分の足で生きることを始める。
ただのおちゃらけ担当だと思っていたのだけれど、意外や意外の大活躍。良かったよ。大好き。
■敵の首領、イモータン・ジョーは多くを語らない。
ひたすら自分の花嫁と赤ん坊を取り戻そうと追いかける。首領でありながら、自らハンドルを握り、先頭に立つ姿はリーダーの鏡と言えよう。
東映戦隊モノの幹部のような凶暴な風貌を持ちながら、ウォー・ボーイズたちを率いる父としての意思と強さとその裏に見え隠れする優しさが人間的で、これまた魅力的。
彼は一代で帝国を築いた訳で、きっと苦労も多かったに違いない。とか、つい考えちゃうんだよな。
ところでイモータン・ジョーの愛車はキャディラックのダブルバーガー、1200馬力だそうで、いやー、馬鹿だねー。
■イモータン・ジョーの配下の武器将軍。
笑。もう、見るだけで笑える圧倒的狂気の存在。
この人には戦いしかない。両目をやられても狂ったように撃ちまくる。この映画で一番狂ってる人間だろう。その意味で最高!!
乗ってるのも、戦車とクルマのハイブリッド!!バカだなあ!!
■もう一人の幹部、人食い男爵。
なんで乳首いじってるの~!!
金の亡者の彼の愛車はもちろんベンツ。
人食い男爵の描き方は足りなかったけど、存在感はありました。
■外せないのはギター男。
バックにドラム隊を率いた孤高のギタープレイヤー。
炎を吹き出す魂のダブルネックで軍団を鼓舞する。
もう意味なんてどうでもいい!!たぶんこの男にもいろいろ背景はあるんだろうけれど説明は一切なし。
それでいい。
魂のプレイだけがすべてなのだ。
■唯一の彩がワイブスと呼ばれるイモータン・ジョーの花嫁たち。
彼女たちがいることで、イモータン・ジョーが彼らを追いかける執念にリアリティが生まれる。
何しろ、この狂った世界での’正常’な存在なのだ。その稀有さが宝としての価値を生む。
だが、彼女たちは正常な赤ん坊を生み出す’モノ’であることから逃げ出す。
で、どこに?
それが、この映画のテーマの一つでもある。
え?テーマなんてあったの?という気もするが、そういうさりげなさもまたこの映画の素晴らしさなのだ。
■さて、マックスを抑えてこの映画の主人公とも言える存在、フュリオサ。
「緑の地」からさらわれ、20年間以上の月日を狂気の世界で過ごしてきたフュリオサは、この脱出にすべてをかける。
心の支えは、亡き母と過ごした「緑の地」に帰還すること。
誰も信じず、自分の能力を最大に磨きこみ、20年間待ち望んだこの日に賭けた。
彼女の渇望と強い意志が、この映画のエンジンである。この映画のハイスピード展開は彼女の想いに追いすがる悪夢なのだ。
だが、たどり着いた先に「緑の地」は無かった。放射能汚染は20年の年月の中で彼女の心の中にあった「緑の地」を死の大地に塗り替えてしまった。
ありがちな落ちではあるが、彼女の絶望の深さはその’ありがち’を凌駕する。
何処までも続く乾いた砂漠。
どれだけ泣き叫んだところで、涙はすべて吸い込まれてしまう。
非情の大地。
■フュリオサは、かつての村の生存者である老婆たちとともに、砂漠の向こうに希望を探す旅に出る事を決意する。
だが、マックスは知っている。
絶望はどこまでも、どこまでも続いている。
走っても、走っても、絶望から抜け出すことはできない。
だから、目の前にあるわずかな、だが確かに見えている可能性にすべてを賭ける。
それがマックスの生き方だ。
終盤のここで、やっと主人公が前に出る(笑)。
■そして、逃走劇はベクトルを180度変え、生きるための奪還劇として再び大爆走を始める。
ちょっと、もやもやさせて、そいつを一気に吹き飛ばす。
すべてをかなぐり捨て、ラストシーンに向けてトレーラーは疾走する。
いやあ、もう、本当に気持ちいい。かっこいい。ただただひたすらに、かっこいい。
■キャラクターもその背景もぎっしりつまっていて、とても濃密で、だけど、そこにこだわらない。そんなことに関係なく突っ走り続けるMADな野郎たちの軍団とマックスたち。
本当に贅沢な映画だ。
MADMAX最高!!
<2015.08.10 記>
マックスの心の中に登場し、マックスを非難し、時に導く少女はいったい誰なのか。本作の中で語られることは無かった。どうも暴走族に殺された妻と娘ではないらしい。次回作で描かれるのか?別に説明されなくてもいいけどね!
■STAFF■
監督 ジョージ・ミラー
脚本 ジョージ・ミラー ブレンダン・マッカーシー ニコ・ラサウリス
製作 ジョージ・ミラー ダグ・ミッチェル P・J・ヴォーテン
製作総指揮 イアイン・スミス グレアム・パーク ブルース・バーマン
音楽 ジャンキーXL
撮影 ジョン・シール
編集 マーガレット・シクセル
■CAST■
マックス Max Rockatansky -トム・ハーディ
フュリオサ大隊長 Imperator Furiosa -シャーリーズ・セロン
ニュークス Nux -ニコラス・ホルト
<ワイブス>
スプレンディド The Splendid Angharad-ロージー・ハンティントン=ホワイトリー
トースト toast the knowing -ゾーイ・クラヴィッツ
ケイパブル Capable -ライリー・キーオ
ダグ The Dag -アビー・リー・カーショウ
フラジール Cheedo The Fragile -コートニー・イートン
<シタデル砦の人物>
>息子たち
イモータン・ジョー Immortan Joe -ヒュー・キース・バーン
リクタス・エレクタス Rictus Erectus -ネイサン・ジョーンズ
>ウォーボーイズ
コーパス・コロッサス Corpus Colossus - クエンティン・ケニハン
スリット Slit - ジョシュ・ヘルマン
エースTHE ACE -ジョン・イルズ
ドーフ・ウォーリアー The Doof Warrior -iOTA (エンタテイナー)
>他
ミス・ギディ(ばあや) Miss Giddy -ジェニファー・ヘイガン
オーガニック・メカニック The Organic Mechanic -アンガス・サンプソン
武器将軍 The Bullet Farmer -リチャード・カーター
人食い男爵 The People Eater -ジョン・ハワード
グローリー・ザ・チャイルド Glory the Child -ココ・ジャック・ギリース
非難する死者 The Accusing Dead -クルーソー・クルドダル /シェリダン・トンガ
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