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2015年8月24日 (月)

■【映画評】『幕が上がる』、読まれることのない青春の手紙は。

ラスト。幕が上がる前の、ドキドキなんていうコトバではとても言い表せない、あの高揚感が蘇ってきた。いい、実にいい!!

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.83  『幕が上がる』
          監督: 本広克行  公開:2015年2月
       出演: 百田夏菜子 黒木華 他

Title

■ストーリー■
弱小高校演劇部の新3年生さおりは部長をまかされ途方に暮れている。そこに、かつて高校演劇の女王と呼ばれた新任教師・吉岡が現れる。吉岡によって演劇の面白さに目覚めたさおりと演劇部のメンバーは全国大会をめざして奮闘をはじめるのであった。

■高校演劇を舞台にした青春映画である。

ももいろクローバーZのメンバーがこの映画の撮影を通して演技力をつけていく様がオーバーラップしていくところが見どころで、やはり主演の百田夏菜子が素晴らしい。

終盤、県大会に向け、演出をしてきた今までの想いをみんなに語るシーン。

あの目がいい。生きている。迷いのないそれは、完全に役に入りきった役者の目である。

夏菜子いいぞ!と、思わず手をたたきたくなった。

Me2

アイドル映画という作りものでありながら、いや、アイドル映画だからこそのリアルがある。

純粋な物語としての面白さだけでない魅力がそこにあるのだ。

■そのももクロを引っ張る役目が黒木華。

Sensei2

この人も学生の時から実力があって、という背景の人で高校演劇の女王として、演劇の先輩として生徒を引っ張っていく役柄とリアルが交錯している。実際の現場での光景が目に浮かぶようなのであります。

■高校時代というのは多感な時代で、それ故の純真さが芝居にあふれるわけです。(ももクロはちょっと上かもしれないが。)

私自身も、高校時代に役者兼作・演出をやっていて、今、思い返せば面はゆいものがあるのだけれど、あの純情な濃密さは人生において、たぶん、もうない。

その一回性ゆえに美しい。

この意味で高校野球に通じるものがあるかもしれない。

われわれは、ももいろクローバーZの、その一回きりの舞台を目にするわけで、そこにこの映画の素晴らしさがあるのだ。

Nakaama

■本編、いかにも高校演劇的なシーンが繰り出されるわけであるが、何と言っても、さおりの悪夢のシーン大好き!

吉岡先生(黒木華)がうだるような夏休みの教室の中で灰皿を飛ばしながら指導をしている。

まだまだ、大根だ! ひゅーん、からんからん

あんたが台本書かないからこんなことになってんだよ! がらがらがっしゃん

ごめんなさーい!

Jigaki1
Jigoku1_5
Jigoku2
Jigoku3

蜷川幸雄 キタ―――(゚∀゚)――――!!

やっぱ、演出は蜷川幸雄スタイルだよねw

悪夢といえば、本番はじまってるのにセリフがまったく入っていない。それどころか、脚本が出来上がっていない、なんて悪夢を未だに見るくらい、あの頃は強烈だったなー、と遠い目をしてみたりするのであります。

Sissou

   
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■物語としての変曲点は吉岡先生が逆に演劇に目覚めちゃうところだろう。

演劇の面白さを知り、育っていく生徒を見て、自分が捨てようとして捨てきれずにいたものに気付く。自分のなかでうづいてしまう、それを抑えることができなくなってしまう。

わかるなあ。ものすごくわかる。

演劇って魔物だから。

花道の向こうで一声をあげ、ピンスポを浴びる。花道をあがりながらの長台詞。

人がいっぱいつまった小屋で、あれをやったらたぶんもう忘れることはできないだろう。みんな言わないけどね。でも、他に例えようがないエクスタシーがそこにはある。

忘れようったって、忘れられないよ。

Sensei3

たぶん、人それぞれに青春があって、大人になるために諦めたものがあって、私を含めたたいていのひとは、それを胸にしまって生きている。

でも、ときどきその思い出は、激しく自分を揺さぶるのだ。

お前はちゃんと生きているのかと。

それは、再び演劇を始めろとか、そういう直接的なことではない。

今、社会にまみれ、巻きつかれ、身動きが取れなくなっている自分が、まだそのこころの奥底にしまった獣の刃をもっていることを忘れるな、俺はまだ生きているぞ、という魂のこもった青春からのメッセージなのである。

■ラストシーン。

県大会の舞台の幕が上がる前。

その準備を進めながら、さおりは吉岡先生にあてた、けれど決して投函するつもりのない手紙をこころのなかで読んでいる。

それは、目標である吉岡先生に向けたものでありつつ、未来の自分に向けたメッセージなのだ。

そして、そこには誰もが持っている青春時代の自分自身が映し出される。

Makugaagaru

                     <2015.08.24 記>


■ブルーレイ2枚組。ボーナスディスクが気になります。

■STAFF■
監督 本広克行
脚本 喜安浩平
原作 平田オリザ
製作 片山玲子、守屋圭一郎
音楽 菅野祐悟
主題歌 青春賦
撮影 佐光朗


■CAST■
高橋さおり(さおり) 演 - 百田夏菜子 静岡県立富士ケ丘高等学校 演劇部3年生
橋爪裕子(ユッコ) 演 - 玉井詩織   同校演劇部3年生
西条美紀(がるる) 演 - 高城れに   同校演劇部3年生
中西悦子(中西さん) 演 - 有安杏果  同校演劇部3年生
加藤明美(明美ちゃん) 演 - 佐々木彩夏 同校演劇部2年生
坂下綾乃 演 - 金井美樹   同校演劇部1年生
袴田葵 演 - 芳根京子    同校演劇部1年生
松永美緒 演 - 那月千隼   同校演劇部1年生
八木美咲 演 - 松原菜野花  同校演劇部1年生
成田香穂 演 - 大岩さや    同校演劇部2年生
村上舞 演 - 吉岡里帆     同校演劇部2年生
高田梨奈 演 - 伊藤沙莉   同校演劇部2年生
吉岡美佐子(吉岡先生) 演 - 黒木華  同校・新任の先生
溝口先生(グッチ) 演 - ムロツヨシ    同校・演劇部顧問
滝田先生 演 - 志賀廣太郎        同校・国語教師
さおりの母 演 - 清水ミチコ
明美ちゃんのお父さん 演 - 松崎しげる
明美ちゃんのお母さん 演 - 辛島美登里
さおりのお父さん 演 - 片山正道
がるるのおじいちゃん 演 - 笑福亭鶴瓶
ユッコのお父さん 演 - 天龍源一郎
中西さんのお母さん 演 - 内田春菊
中西さんのお父さん 演 - 藤村忠寿

 

 

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