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2015年8月

2015年8月24日 (月)

■【映画評】『幕が上がる』、読まれることのない青春の手紙は。

ラスト。幕が上がる前の、ドキドキなんていうコトバではとても言い表せない、あの高揚感が蘇ってきた。いい、実にいい!!

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.83  『幕が上がる』
          監督: 本広克行  公開:2015年2月
       出演: 百田夏菜子 黒木華 他

Title

■ストーリー■
弱小高校演劇部の新3年生さおりは部長をまかされ途方に暮れている。そこに、かつて高校演劇の女王と呼ばれた新任教師・吉岡が現れる。吉岡によって演劇の面白さに目覚めたさおりと演劇部のメンバーは全国大会をめざして奮闘をはじめるのであった。

■高校演劇を舞台にした青春映画である。

ももいろクローバーZのメンバーがこの映画の撮影を通して演技力をつけていく様がオーバーラップしていくところが見どころで、やはり主演の百田夏菜子が素晴らしい。

終盤、県大会に向け、演出をしてきた今までの想いをみんなに語るシーン。

あの目がいい。生きている。迷いのないそれは、完全に役に入りきった役者の目である。

夏菜子いいぞ!と、思わず手をたたきたくなった。

Me2

アイドル映画という作りものでありながら、いや、アイドル映画だからこそのリアルがある。

純粋な物語としての面白さだけでない魅力がそこにあるのだ。

■そのももクロを引っ張る役目が黒木華。

Sensei2

この人も学生の時から実力があって、という背景の人で高校演劇の女王として、演劇の先輩として生徒を引っ張っていく役柄とリアルが交錯している。実際の現場での光景が目に浮かぶようなのであります。

■高校時代というのは多感な時代で、それ故の純真さが芝居にあふれるわけです。(ももクロはちょっと上かもしれないが。)

私自身も、高校時代に役者兼作・演出をやっていて、今、思い返せば面はゆいものがあるのだけれど、あの純情な濃密さは人生において、たぶん、もうない。

その一回性ゆえに美しい。

この意味で高校野球に通じるものがあるかもしれない。

われわれは、ももいろクローバーZの、その一回きりの舞台を目にするわけで、そこにこの映画の素晴らしさがあるのだ。

Nakaama

■本編、いかにも高校演劇的なシーンが繰り出されるわけであるが、何と言っても、さおりの悪夢のシーン大好き!

吉岡先生(黒木華)がうだるような夏休みの教室の中で灰皿を飛ばしながら指導をしている。

まだまだ、大根だ! ひゅーん、からんからん

あんたが台本書かないからこんなことになってんだよ! がらがらがっしゃん

ごめんなさーい!

Jigaki1
Jigoku1_5
Jigoku2
Jigoku3

蜷川幸雄 キタ―――(゚∀゚)――――!!

やっぱ、演出は蜷川幸雄スタイルだよねw

悪夢といえば、本番はじまってるのにセリフがまったく入っていない。それどころか、脚本が出来上がっていない、なんて悪夢を未だに見るくらい、あの頃は強烈だったなー、と遠い目をしてみたりするのであります。

Sissou

   
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■物語としての変曲点は吉岡先生が逆に演劇に目覚めちゃうところだろう。

演劇の面白さを知り、育っていく生徒を見て、自分が捨てようとして捨てきれずにいたものに気付く。自分のなかでうづいてしまう、それを抑えることができなくなってしまう。

わかるなあ。ものすごくわかる。

演劇って魔物だから。

花道の向こうで一声をあげ、ピンスポを浴びる。花道をあがりながらの長台詞。

人がいっぱいつまった小屋で、あれをやったらたぶんもう忘れることはできないだろう。みんな言わないけどね。でも、他に例えようがないエクスタシーがそこにはある。

忘れようったって、忘れられないよ。

Sensei3

たぶん、人それぞれに青春があって、大人になるために諦めたものがあって、私を含めたたいていのひとは、それを胸にしまって生きている。

でも、ときどきその思い出は、激しく自分を揺さぶるのだ。

お前はちゃんと生きているのかと。

それは、再び演劇を始めろとか、そういう直接的なことではない。

今、社会にまみれ、巻きつかれ、身動きが取れなくなっている自分が、まだそのこころの奥底にしまった獣の刃をもっていることを忘れるな、俺はまだ生きているぞ、という魂のこもった青春からのメッセージなのである。

■ラストシーン。

県大会の舞台の幕が上がる前。

その準備を進めながら、さおりは吉岡先生にあてた、けれど決して投函するつもりのない手紙をこころのなかで読んでいる。

それは、目標である吉岡先生に向けたものでありつつ、未来の自分に向けたメッセージなのだ。

そして、そこには誰もが持っている青春時代の自分自身が映し出される。

Makugaagaru

                     <2015.08.24 記>


■ブルーレイ2枚組。ボーナスディスクが気になります。

■STAFF■
監督 本広克行
脚本 喜安浩平
原作 平田オリザ
製作 片山玲子、守屋圭一郎
音楽 菅野祐悟
主題歌 青春賦
撮影 佐光朗


■CAST■
高橋さおり(さおり) 演 - 百田夏菜子 静岡県立富士ケ丘高等学校 演劇部3年生
橋爪裕子(ユッコ) 演 - 玉井詩織   同校演劇部3年生
西条美紀(がるる) 演 - 高城れに   同校演劇部3年生
中西悦子(中西さん) 演 - 有安杏果  同校演劇部3年生
加藤明美(明美ちゃん) 演 - 佐々木彩夏 同校演劇部2年生
坂下綾乃 演 - 金井美樹   同校演劇部1年生
袴田葵 演 - 芳根京子    同校演劇部1年生
松永美緒 演 - 那月千隼   同校演劇部1年生
八木美咲 演 - 松原菜野花  同校演劇部1年生
成田香穂 演 - 大岩さや    同校演劇部2年生
村上舞 演 - 吉岡里帆     同校演劇部2年生
高田梨奈 演 - 伊藤沙莉   同校演劇部2年生
吉岡美佐子(吉岡先生) 演 - 黒木華  同校・新任の先生
溝口先生(グッチ) 演 - ムロツヨシ    同校・演劇部顧問
滝田先生 演 - 志賀廣太郎        同校・国語教師
さおりの母 演 - 清水ミチコ
明美ちゃんのお父さん 演 - 松崎しげる
明美ちゃんのお母さん 演 - 辛島美登里
さおりのお父さん 演 - 片山正道
がるるのおじいちゃん 演 - 笑福亭鶴瓶
ユッコのお父さん 演 - 天龍源一郎
中西さんのお母さん 演 - 内田春菊
中西さんのお父さん 演 - 藤村忠寿

 

 

●●● もくじ 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●

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2015年8月21日 (金)

■リカルド・ロペスを知ってるか?

ふと、リカルド・ロペスが頭の中に蘇ったので、ちょっと書いてみようと思う。

ともかく私の中ではボクサーといえばこの人的な存在なのだ。

Ricardo_lopez
リカルド・ロペス:1990年10月、無敗のままWBCストロー級の王者、大橋秀行に挑戦、5RKO勝ちをおさめ、新チャンプとなった。その後も敗れること無く2002年に引退。プロ52戦51勝37KO1分け。  

■私はあしたのジョー2世代で、井岡とその老師エディ・タウンゼントとか、マイク・タイソンとか、そういう時代。

マニアというよりミーハーで、井岡がんばれ!大橋まけるな!ってのり。

日本人が勝つ、ということが何よりも重要であった。

そんな気持ちで見ていた大橋VSリカルド・ロペス戦。

当時、大学生だった私は、いつもの調子で大橋を応援していたのだけれども、リカルド・ロペスのあまりの美しさにほれぼれしてしまって、もう、大橋の応援なんかそっちのけで食い入るように見つめ、感動していたのを覚えている。

■ともかく動く。

華麗なステップでかわす。打たれない。(前半は大橋から少しもらったけどね、ちょっと固かった。)

そして、神速のステップインで突き抜けるようなワン・ツーの速射。そして間髪入れず視界の外から飛んでくる左のショートアッパー。

結局、大橋もこれで意識をもっていかれました。

美しい。

これぞボクシング。

たぶん、それ以降にもっとすごいボクサーはいるんだろうけれど、やっぱり見ている時代のヒーローというのは不滅であって、私にとってはリカルド・ロペスが一番なのである!!

 

【1990年10月 WBCストロー級タイトルマッチ 王者・大橋秀行vs挑戦者・リカルド・ロペス】

                       <2015.08.21記>

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2015年8月18日 (火)

■【音楽評】『The Best Nightmare For Xmas(DVD)』 WHITE ASH。超、カッコよくね? 

最近、音楽から遠ざかっていたのだけど、ガッチャマン クラウズのOPのバンドがあまりにかっこ良過ぎてはまってしまったのだ。

デビュー5年、メジャーデビュー2年の生きのいいバンド、WHITE ASHである。

WHITE ASH MUSIC VIDEO集 The Best Nightmare For Xmas

■上記、DVDではこのYOUTUBE版の’落ち’が収録されてます■

音楽を語る語彙が少なくてもどかしいんだけど、リズムといい、メロディといい、何を歌ってるかわからん歌詞といい、びびっとくるんだよね。

途中でテンポをおとしたり、止めてみたりするのもいい。こいつら、かっこいいを楽しんでるなあ、きっと。

ヴォーカルの’のび太’のルックスは決してかっこよくなくて、でも、そこがまた味がある。あの意味のわからん歌詞をすらすらとのびやかに歌いきる感じ。最高です。

ドラムス(剛)もギター(山さん)も上手いし、中でも、よく前面に出てくる紅一点、ベースの彩さんがまたかっこよし。

リーダーが引っ張る’のび太’バンドじゃなくて、メンバー4人でつくるジャムセッションぽいというのか、LIVE感なんだよね。

このDVDのMUSIC VIDEOを見ていて、WHITE ASHのかっこよさの本質はそこにあるのじゃあないか、と思う。

技巧も素晴らしいんだろうけれど、それを上回る、ノリっていうのが命なんだろうね。

レッチリみたいにコーラスが増えてくると、さらに面白くなる気がするんだけどな、どうだろう。

LIVEって行かないんだけど、ちょっと行ってみようかな、って、そんな気にさせるバンドなのでありました。

                        <2015.08.18  記>

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2015年8月17日 (月)

■メガ恐竜展2015、幕張メッセ。アノマロカリスに爆泣。

娘を連れて恐竜展に行ってきた。

Photo_2

目玉のトゥリアサウルスだけでなく、マンモスやらティラノサウルスやら豪華な展示に満足なんだけど、さらりと展示されていたアノマロカリスの化石に仰天とともに大感動。

もう、これだけで来たかいがありました。

Anomarokarisu1
Anomarokarisu2

このムカデのようなものは、かつて「奇妙なエビ」と呼ばれたアノマロカリスのヒゲなのであります。

アノマロカリスは5億年前のカンブリア紀に生きた当時最大の捕食者。

一気に生物の多様性が拡がったカンブリア大爆発が生んだ奇妙なものたちのひとつなのだ。

カンブリア大爆発の何が凄いかというと、いままで数十種類しかいなかった生物種が一万種のレベルまで爆発的に増加した、というだけでなく、我々脊索動物を含めた門レベルでの生物種がすべて出そろった、ということにある。

つまり、唯一無二の大変化の時だったのである。

その5億年前に想いを馳せて、中年おやじは、しばし展示の前に佇むのであった。。。

                         <2015.08.17記>


■【書評】『ワンダフル・ライフ ―バージェス頁岩と生物進化の物語』、S・J・グールド著。生命樹の影に広がる展開されなかった未来たち。


■『眼の誕生 カンブリア紀大進化の謎を解く』
眼からうろこの大仮説。何故、大進化はここで起きたのかについて、ワクワクしながら、するりと納得します。(ありゃ、まだ書評書いてませんでした。)

 

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2015年8月12日 (水)

■【演劇評】『ジャガーの眼』唐十郎、状況劇場1985年春公演、花園神社。永遠に生きる、私の宝物。

かつてNHKで放映したものをVHSからDVDに焼き直し、保存していた宝物を久しぶりに見た。始まった瞬間、すべてがよみがえる。赤テントの座敷に詰め込まれた一体感、役者のドウランの入り混じったその匂い、飛び交うツバ、熱気、笑い、音楽。たまらなく愛おしい・・・。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.82  『ジャガーの眼』
    作・演出: 唐十郎 公演:1985年4,5,6月 新宿花園神社赤テント
   出演: 千野宏 田中容子 唐十郎 六平直政 金守珍 他

Dr

■ストーリー■
平凡な男しんいちのもとに不思議な女探偵くるみが現れる。移植した角膜のもとの持ち主の妻だったというくるみと出会うことで、しんいちは角膜に違和感を覚え始める。角膜を追うくるみと接するうちに、うずく角膜に導かれるように、しんいちのなかで婚約者との平凡な未来を生きようとしていた自分が捨ててしまったものが湧きあがる。

一方、くるみの上司である探偵(唐十郎)は、くるみが来る前に共に生きたダッチワイフのサラマンダーの幻想に悩まされつつ、部下のくるみを追うのであった。

■当時、私は高校1年。映画三昧、名画座通いの中学時代を過ごし、ふとテレビで見た蜷川幸雄の魂たぎる演出に思い立ち演劇同好会に入部、先輩に連れられるままいくつもの芝居を見に行った。

そのころは演劇ブームのはしりで、夢の遊眠社の野田秀樹、第三舞台の鴻上尚史がブレイク。パワーと夢想がスタイリッシュに極まるその演劇スタイルは、初心者の私を魅了した。

だが、新宿の猥雑な街を抜けた先にある花園神社におったてられた赤テント。そこで体験したこのジャガーの眼を、私は一生忘れることは無いだろう。

そこにある過剰なまでの生々しさ。

ショックだった。

2

その後の状況劇場、唐組の公演でも、ここまでの衝撃は得ることはできなかった。決して慣れたとか、そういうことではなく、演劇の持つ一回性、そういう意味での出会いだったのだと思う。

■寺山修司と唐十郎が世に出た60年代後半に、私は生まれた。

だから、その全盛期を私は知らない。

高度経済成長と安保闘争の時代である。世にアナーキズムがまだ生き残っていた、そういう時代。

その時代に高校生の私は激しく嫉妬した。

バブルの前夜。PARCOを筆頭に、世の中はスタイリッシュなカルチャーに占領されていた。

池袋PARCOの本屋に入りびたり、シネヴィヴァン六本木で芸術映画なぞを堪能していながらも、生々しい、怨念とも言えるような魂の叫び、そんな重く、熱いものを私は求めていたのだ。

それに、あのとき花園神社で出会うことが出来たのだ。

この時の『ジャガーの眼』と、浅草、常盤座で公演された第七病棟の『ビニールの城』(脚本:唐十郎、出演:石橋蓮司、緑魔子)。

この2つの芝居が、私が嫉妬して已まない70年代の最後の咆哮だったのだと思う。

それを体験することが出来たことは、本当に幸いなことだし、特に『ジャガーの眼』については、それに鼓舞されつことによって一本の芝居を書きあげ、高校生芝居ではあるものの、演出し、演じ切ることができた。その私の人生のはじまりにおける土台を作り出せたという意味で、『ジャガーの眼』は私の大切な宝物なのである。

■♪

この路地に来て思いだす

あなたの好きなひとつの言葉

死ぬのはみな他人ならば

生きるのもみな他人

死ぬのはみな他人

愛するのもみな他人

覗くのは僕ばかり

そこに見てはいけない 何があるのか

 

私とは何か。

それが、この芝居のテーマだ。

私と他人。

生きる者、死ぬ者、生きてすらいない者。

移植された臓器は「私」と呼べるのか。

他人の臓器を受け入れている「私」は私でいられるのか。

だが、くるみは分かっている。

ジャガーの眼と呼ばれた、3人の男を渡り歩いた角膜は、それ自体が意味をもち、それを移植したものにジャガーの魂を与えることを。そして、そのジャガーの魂を持つ男を愛するのだということを。

■人は、確定した存在ではない。

しんいちはジャガーの眼を移植したことだけによって、ジャガーの魂を宿したわけではない。それを追う、くるみという「他人」との関係性によって、いつの間にか売り渡してしまった魂を取り戻し、あらたな存在となったのだ。

人は自分のみで自分であるわけではない。他者との関係性の中で、自分が作られていくのだ。

他者とは、生きているもの(しんいちにとってのくるみ)、死んでいるもの(少年にとっての犬のチロ)、生きてすらいないもの(田口にとってのダッチワイフのサラマンダ)。

それらに囲まれて、「私」は形作られ、生きている。

唐十郎は、臓器移植の問題を通してそこを見抜いた。

見た当時は、そこまで考えなかったが、人生を、いくつかの絶望を経てきた今、そのことが分かるような気がするのだ。

『ジャガーの眼』は、赤テントと癖のある役者たちの醸し出すものによって70年代の炎を燃えたぎらせているだけでなく、作品自体が人間の本質をついている。それ故に、深く、深く、こころに刺さるのだ。

■そこに小室等の音楽がかぶさることで感動は究極に至る。もう、そこにただただ体をまかせるしかないだろう。

わたしは見ていた

あなたの体が よろこびにつつまれ

誰かの前に運ばれていくのを

わたしは見ていた

その赤い塊を 

まるで 登りきらず

郊外の家並みに かかる太陽のように

そんな家の一軒で あなたは生きて暮らしていた

 

この目が何ですか?

私です、あなたと暮らしたくるみです。

僕と?!

その眼と!

 

おねえさーん!このチロの心臓生きるよね!

きっと、

あの移植したジャガーの眼のように!!

                      <2015.08.12 記>

Bookジャガーの眼

■STAFF■
作・演出: 唐十郎
音楽: 小室等
美術: 濃野荘一
照明: 水野司朗   

■CAST■
田口:   唐十郎
しんいち: 千野宏
くるみ:   田中容子
扉:     六平直政
Dr.弁:   金守珍
夏子:   御旅屋暁美
サラマンダ: 大野まみ
少年:   中村祐子
住人二:  深貝大輔

 

●●● もくじ 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●

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2015年8月11日 (火)

■モンゴルの青い空と野生馬タヒ(モウコノウマ)。

■家族でモンゴルに行ってきた。

ゲルに泊まって大自然の中で乗馬を楽しむのが目的だったのだが、最終日にホスタイ国立公園でタヒ(モウコノウマ)に出会うことが出来、それが予想外の感動なのであった。

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タヒは世界唯一の野生馬で、現在100頭くらいが生息しているらしい。野生種は1960年代に絶滅したとみられるが、動物園などで飼育されていたものを野生に戻し、現在に至る、ということらしい。

ガイドによると、ホスタイを訪れても会えないことも良くあることで、会えたとしても100メートル程度近づくと逃げて行ってしまうものらしい。

■だが、なぜか我が家族が出会った4頭の群れは、100メートルを超えても、逃げたりしない。

ちらっ、と気付いた感じはあるものの、おっとり草を食んでたりする。

さらに近づき、足を止め、様子をうかがいながら、ゆっくり近づく。

そうこうするうちに30メートルまで近付いてしまった。

首を大きく上下に振る挨拶を、モンゴルの乗馬用の馬に教えてもらっていたので、彼らにも試してみたのだが、それが効いたのかは分からない。

さすがに30メートル以上近づくと、こちらの様子を伺いながら、タヒたちがちょっと距離を取る。

でも、逃げない。

何だか、いい関係を築けたようで、とっても幸せな気分。

最後は、10歳の娘ひとりにアプローチさせたのだけれど、だるまさんが転んだっぽく遊べたと大満足でありました。

ガイド曰く、何が起こったか分からない。という稀有な状況だったようです。

■草に覆われた山の緑と青い空。

その中でタヒたちは、じっと佇みながら山を下りていく我々を見送ってくれた。

一週間の旅の締めくくりに、良い思い出が出来ました。

タヒさん!ありがとう!!

 

Img_1885
どこまでも続く1000頭の羊たち(の一部)

Img_1696
乗馬に付き合ってくれたお馬さんたち。休憩中にとなりの馬の首にアタマを乗っけて休む様子がちょーかわいい。

                     <2015.08.11記>

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2015年8月10日 (月)

■【映画評】『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、怒涛のMADは巨匠の精密誘導によって疾走し、我々をV8の極楽に導くのだ!!

これまで40年映画を観てきたが、これまでで最高にかっこいい映画だ!!上映最終日、間に合ってよかった!!

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.81  『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
           原題: Mad Max: Fury Road Scissorhands
          監督: ジョージ・ミラー 公開:2015年6月
       出演: トム・ハーディ   シャーリーズ・セロン 他

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■ストーリー■
核戦争後の興廃した世界。マックスは暴走集団に襲われ、イモータン・ジョーが支配する砦に囚われる。ガソリンの取引のために砦から出撃するタンクローリーの隊列。だが、その隊列を率いる女戦士フュリオサ・ジョ・バッサ大隊長はイモータン・ジョーを裏切り、その妻たちを連れて砦から脱出、故郷である「緑の地」を目指すのであった。それに気づき自ら軍団を率いて追うイモータン・ジョー。軍団の輸血用血液袋として連れ出されるマックス。フュリオサはこの狂気の軍団から逃げ切り、「緑の地」にたどり着くことが出来るのか!

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■説明はほとんどない。見る者は、怒涛のような展開とカーアクションの渦に巻き込まれていく。

余計なものは全くない。

びゃー!ぎゅーん!ひゃっはー!どーん!

もう、たまりません。

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■それでいて、マックスはもちろん、ヒロインのフュリオサ、間抜けな戦士ニュークス、敵の親分イモータン・ジョー、ワイブスの5人の女、武器将軍、人食い男爵、炎のギター弾き、それぞれが濃くって濃くって、背景なんて語る必要なし。黙っていても画面からバンバン溢れ出してくる。

この荒れ果てた世界に正義とか悪とか、そういうものはもう消え果ていて、それぞれの生存本能がただただぶつかり合う。

その生々しさのエネルギーとともに、スピードとパワーが疾走する。それは、精密に計算しつくされたシナリオと細やかなカット割りによって、激突すれすれ、目ん玉むき出しのスリリングなサーカスとして制御される。

まさに職人技!ジョージ。ミラー最高!!なのである。

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■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■この映画がスカッと気持ちいいのは、悪がさっぱりしているところにあるのだともう。からりとした砂漠の思想なのか、じとじとしていない。V8エンジンとガソリンと水と母乳!!を信奉する彼らはむしろ魅力的だ。

放射線に蝕まれた肉体は、生きる事を渇望し、それ故に、ウォー・ボーイズたちは避けられない死を自覚した上でV8の神へ祈りをささげ、戦いの中での死に永遠の生を見る。

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その素直なウォー・ボーイズたちの一人、ニュークスはとりわけ、かわいい存在だ。

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イモータン・ジョーに目を合わせてもらった!とハッスルし、フュリオサのタンクに追いすがる。恐怖の砂嵐などお構いなし!

鎖でつながったマックスとフュリオサとの三つ巴のやりとりでも、一瞬マックスを仲間と思ってしまう素直さ!もちろん、叩きのめされるんだけど。

最高なのは、追いついたイモータン・ジョーに「逝って来い!」と言われてハッスル頂点、フュリオサ、ピンチ!という瞬間、飛び乗ったタンクの上でずっこけて、万事休す。

こりゃダメだ!

もう、腹の皮がよじれるくらい笑いました。

■結局、イモータン・ジョーの子供を宿した花嫁を救えず死なせてしまい、戻るに戻れなくなった失意のニュークス。そこに寄りそう赤毛の花嫁ケイパブル。

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いつか自分の命を奪うであろう首筋の2つの腫瘍「ラリーとバリー」が唯一の友達であったであろうニュークスにとって、初めて守るべきものが生まれ、自分の足で生きることを始める。

ただのおちゃらけ担当だと思っていたのだけれど、意外や意外の大活躍。良かったよ。大好き。

■敵の首領、イモータン・ジョーは多くを語らない。

ひたすら自分の花嫁と赤ん坊を取り戻そうと追いかける。首領でありながら、自らハンドルを握り、先頭に立つ姿はリーダーの鏡と言えよう。

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東映戦隊モノの幹部のような凶暴な風貌を持ちながら、ウォー・ボーイズたちを率いる父としての意思と強さとその裏に見え隠れする優しさが人間的で、これまた魅力的。

彼は一代で帝国を築いた訳で、きっと苦労も多かったに違いない。とか、つい考えちゃうんだよな。

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ところでイモータン・ジョーの愛車はキャディラックのダブルバーガー、1200馬力だそうで、いやー、馬鹿だねー。

■イモータン・ジョーの配下の武器将軍。

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笑。もう、見るだけで笑える圧倒的狂気の存在。

この人には戦いしかない。両目をやられても狂ったように撃ちまくる。この映画で一番狂ってる人間だろう。その意味で最高!!

乗ってるのも、戦車とクルマのハイブリッド!!バカだなあ!!

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■もう一人の幹部、人食い男爵。

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なんで乳首いじってるの~!!

金の亡者の彼の愛車はもちろんベンツ。

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人食い男爵の描き方は足りなかったけど、存在感はありました。

■外せないのはギター男。

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バックにドラム隊を率いた孤高のギタープレイヤー。

炎を吹き出す魂のダブルネックで軍団を鼓舞する。

もう意味なんてどうでもいい!!たぶんこの男にもいろいろ背景はあるんだろうけれど説明は一切なし。

それでいい。

魂のプレイだけがすべてなのだ。

■唯一の彩がワイブスと呼ばれるイモータン・ジョーの花嫁たち。

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彼女たちがいることで、イモータン・ジョーが彼らを追いかける執念にリアリティが生まれる。

何しろ、この狂った世界での’正常’な存在なのだ。その稀有さが宝としての価値を生む。

だが、彼女たちは正常な赤ん坊を生み出す’モノ’であることから逃げ出す。

で、どこに?

それが、この映画のテーマの一つでもある。

え?テーマなんてあったの?という気もするが、そういうさりげなさもまたこの映画の素晴らしさなのだ。

■さて、マックスを抑えてこの映画の主人公とも言える存在、フュリオサ。

「緑の地」からさらわれ、20年間以上の月日を狂気の世界で過ごしてきたフュリオサは、この脱出にすべてをかける。

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心の支えは、亡き母と過ごした「緑の地」に帰還すること。

誰も信じず、自分の能力を最大に磨きこみ、20年間待ち望んだこの日に賭けた。

彼女の渇望と強い意志が、この映画のエンジンである。この映画のハイスピード展開は彼女の想いに追いすがる悪夢なのだ。

だが、たどり着いた先に「緑の地」は無かった。放射能汚染は20年の年月の中で彼女の心の中にあった「緑の地」を死の大地に塗り替えてしまった。

ありがちな落ちではあるが、彼女の絶望の深さはその’ありがち’を凌駕する。

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何処までも続く乾いた砂漠。

どれだけ泣き叫んだところで、涙はすべて吸い込まれてしまう。

非情の大地。

■フュリオサは、かつての村の生存者である老婆たちとともに、砂漠の向こうに希望を探す旅に出る事を決意する。

だが、マックスは知っている。

絶望はどこまでも、どこまでも続いている。

走っても、走っても、絶望から抜け出すことはできない。

だから、目の前にあるわずかな、だが確かに見えている可能性にすべてを賭ける。

それがマックスの生き方だ。

終盤のここで、やっと主人公が前に出る(笑)。

Max

■そして、逃走劇はベクトルを180度変え、生きるための奪還劇として再び大爆走を始める。

ちょっと、もやもやさせて、そいつを一気に吹き飛ばす。

すべてをかなぐり捨て、ラストシーンに向けてトレーラーは疾走する。

いやあ、もう、本当に気持ちいい。かっこいい。ただただひたすらに、かっこいい。

Madmax

■キャラクターもその背景もぎっしりつまっていて、とても濃密で、だけど、そこにこだわらない。そんなことに関係なく突っ走り続けるMADな野郎たちの軍団とマックスたち。

本当に贅沢な映画だ。

MADMAX最高!!

                      <2015.08.10 記>

■メイキング本■

マックスの心の中に登場し、マックスを非難し、時に導く少女はいったい誰なのか。本作の中で語られることは無かった。どうも暴走族に殺された妻と娘ではないらしい。次回作で描かれるのか?別に説明されなくてもいいけどね!

■STAFF■
監督 ジョージ・ミラー
脚本 ジョージ・ミラー ブレンダン・マッカーシー ニコ・ラサウリス
製作 ジョージ・ミラー ダグ・ミッチェル P・J・ヴォーテン
製作総指揮 イアイン・スミス グレアム・パーク ブルース・バーマン
音楽 ジャンキーXL
撮影 ジョン・シール
編集 マーガレット・シクセル


■CAST■
マックス Max Rockatansky  -トム・ハーディ
フュリオサ大隊長 Imperator Furiosa -シャーリーズ・セロン
ニュークス Nux  -ニコラス・ホルト
<ワイブス>
スプレンディド The Splendid Angharad-ロージー・ハンティントン=ホワイトリー
トースト toast the knowing -ゾーイ・クラヴィッツ
ケイパブル Capable -ライリー・キーオ
ダグ The Dag -アビー・リー・カーショウ
フラジール Cheedo The Fragile -コートニー・イートン
<シタデル砦の人物>
>息子たち
イモータン・ジョー Immortan Joe -ヒュー・キース・バーン
リクタス・エレクタス Rictus Erectus -ネイサン・ジョーンズ
>ウォーボーイズ
コーパス・コロッサス Corpus Colossus - クエンティン・ケニハン
スリット Slit - ジョシュ・ヘルマン
エースTHE ACE -ジョン・イルズ
ドーフ・ウォーリアー The Doof Warrior -iOTA (エンタテイナー)
>他
ミス・ギディ(ばあや) Miss Giddy -ジェニファー・ヘイガン
オーガニック・メカニック The Organic Mechanic -アンガス・サンプソン
 
武器将軍 The Bullet Farmer -リチャード・カーター
人食い男爵 The People Eater -ジョン・ハワード
 
グローリー・ザ・チャイルド Glory the Child -ココ・ジャック・ギリース
非難する死者 The Accusing Dead -クルーソー・クルドダル /シェリダン・トンガ

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2015年8月 8日 (土)

■【映画評】『バケモノの子』。その胸に空いた穴を埋めるモノは・・・。

『おおかみこどもの雨と雪』で子を思う親のこころを描いた細田監督は、さらにそれを深化させ、親になるとはどういうことか、それをこの作品で描き切った、のだと思う。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.80  『バケモノの子』
          
          監督: 細田守 公開:2015年 7月
       出演: 役所広司 宮崎あおい 染谷将太 他

Photo

■ストーリー■
母親を交通事故で亡くし、親戚のもとから飛び出した9歳の少年・蓮は、渋谷でバケモノの世界に迷い込み、そこで熊徹というバケモノの弟子になる。一匹オオカミで生きてきた熊徹は、九太の扱いに戸惑うが、次第にふたりは心を通わせ、絆を深めていく。17歳になったある日、九太はバケモノの世界から渋谷の街へと彷徨い出る。人間の世界で高校生・楓と出会うことで九太は人間としての人生を取り戻していく。だが。。。。

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■ネットの評判は二分している。かなりの酷評が目立つ。

曰く、少年時代の話は引き込まれるが、青年期からの話でついていけなくなる。女子高生とのロマンスなんて余計な話だ。

こういう人たちには伝わらなかったんだね。残念ながら人を選ぶ映画というものはある。その人の価値観、人生観によって、ひっかかるべきところにひっかからない。ひっかかる人のツボにはまる内容であればあるほど分からない人にはさっぱり分からなくなる。

この物語の導入は、バケモノの世界から始まり、九太(蓮)がそこに迷い込み、その世界で生きていく。そいういうところから始まる。

だから千と千尋を想起して、そういうフォーマットの映画だと思い込んだ瞬間に罠にはまるのかもしれない。それゆえの失望なのかもしれない。

■素直に、この物語に没入できなかった人は、バケモノ界と人間界を行き来する、このとても乱暴な展開に覚めてしまったのであろう。

だが、その一見乱暴に見える展開も、バケモノ界と人間界が心の在り方という意味では地続きである。そこを無意識ながらにでも受け入れるならば、そこに違和感を感じることは無かっただろう。

この作品は現実の人間の苦しみの根源であるこころの穴を埋めるものについて語るものであって、我々の論理が通じない異世界を描き出すことで日常の化けの皮をはぎ取るという類のものではない。

あくまでも主は現実であり、熊徹たちの世界も、現実世界の深部を探るためのツールであるがゆえに、むしろ現実世界の本質が純化したカタチでそこにある。

九太を見守る熊徹も多々良も百秋坊も、熊徹のライバルである猪王山も現実の人間の純な感情を持って生きている。

そこを素直に受け入れられるかどうかが分かれ道なのだろう。

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■今まで一人で育ち生きてきた熊徹には欠けているところがあり、それゆえに宗師に弟子を取れと言われ、しょうがないと人間の子と暮らし始める。

はじめは戸惑いながら不器用に接する孤独な二人が、お互いを認め、不器用なりにも関係性を深めていく。師匠と弟子、親子、とくくることが出来ない、もっと本質的な愛がそこにある。

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その新しい関係性が、九太だけでなく熊徹自身を変えていく。そこに前半部の本質があり、そこに感情移入が出来なければ、たぶん終盤の感動に入り込むことは不可能だ。

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コトバにすることが難しい、師匠の、親の子供への愛。コトバにした瞬間に、その意味が定型的なツマラナイモノ、説教くさいものとなり、だからこそコトバを排除した映画という物語を通して初めて伝える事のできるもの。それこそが細田監督が伝えたかったことなのだ。

■人間は弱く、誰しも胸に穴を抱えていて、成長するに従って、その胸の穴はさらに大きくなっていく。

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楓がそうしようと決意したように、型にはめようとする親から離れて本当の自分を探しだし、その穴を埋めていこう。そういう自分探しの罠にはまるものも多い。

だが、どこにも「本当の自分」なんてものはなく、それ故に決して胸の穴は埋まることはない。

唯一、その胸の穴を埋めるのは愛である。どんな人間であろうと関係ない、私の子供。それをいとおしみ、その苦しみの穴を埋めようと思う、無条件の親の愛である。

その愛に気付き、受け入れること。そのことによって人は初めて成長し、愛を知る「親」となることができる。

それがこの映画のメッセージなのだと、私は思う。

 
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■


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■だから、楓の存在は、甘いロマンスのヒロインなんかじゃない。そこにあるのは子供としての蓮を愛おしく思う親の愛の芽生えである。

自分の胸の穴と同じものを蓮のなかに感じ、お守りを授ける。その愛。

決して一人では気づくことのできなかった、その愛を、楓は蓮を通じて知ることが出来る。「バケモノの子」は決してバケモノと子供の心の交流を描いた作品ではない。欠けたものを抱えた人の心。そこに寄りそう愛の物語なのである。

それゆえに楓はこの物語において決して外すことのできない存在なのだ。

その愛は、終盤において蓮から一郎彦へとつながっていく。この愛の連鎖に希望がある。

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■一郎彦は、猪王山に拾われた人間の子。親を慕い、お父さんのようになりたい。だけど人間の子である一郎彦は牙も生えなければ、鼻も伸びない。

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親を尊敬し、そうなりたいと思うのにそうなれない。僕はいったい何者なのか。その想いのなかに一郎彦の胸の穴が深くなっていく。

楓の想いとは対極的ではあるが、これも成長期にかかえる人の心の穴のひとつのカタチだ。

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■完璧な人格者で心身ともに最強の猪王山であっても、一郎彦の心の穴に気付くことはできなかった。

いやむしろ完璧であるが故に、そこに気付けない。

これもまた親子の悲劇である。

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次の宗師を決める戦いにおいて、熊徹は実力では劣りながらも九太という存在に支えられ、ついに猪王山を破る。

絶対である父の負けを受け入れられない一郎彦は、その胸の穴に呑み込まれ、破壊神と化してしまう。

その時はじめて、猪王山は己のおごりを知るのだ。猪王山の一郎彦を想う愛には、彼の心の穴を埋める力が無かったということだ。

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■九太=蓮を追って人間界に入り込んだ一郎彦は巨大なクジラの影となる。それは人間の心の闇そのものだ。

それは現実世界でも、異常な事件として時折われわれを恐怖させるものの裏に潜むものである。

この闇にわれわれはどう向き合えばよいのか。

それと対峙した蓮は、己の中に取り込み、一緒に滅するしかないと意を決する。

心の穴には心の穴で。

だが、それで問題が解決するのだろうか。大なり小なりの心の穴を皆が抱えたこの世の中で、闇を闇として扱い、葬り去ることが、解決につながるのだろうか。

細田監督は否と答える。

心の穴を埋めるのは、無条件に相手を包み込むような、親が子供に与えるような、大丈夫、お前は生きていていいんだよ、と全肯定する愛なのだ。

熊徹は剣に宿る神として転生し、九太=蓮の心の穴に入り込む。それは全肯定され、生きていいぞ、と励まされ、生きていいんだ、という自信につながる力である。

その力が、一郎彦の闇を貫き霧散させる。

九太=蓮を支えた楓のお守りは、一郎彦の腕に結ばれ、そこに愛の連鎖という可能性が示される。

闇を斬るのは闇ではない。

深く、温かく、包み込む、愛なのである。

親が、親となること。温かい世の中を再構築していく道は、われわれひとりひとりにとって、とても私的なところにあるのかもしれない。

                       <2015・8・08 記>

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■STAFF■
原作・監督・脚本 - 細田守
キャラクターデザイン - 細田守、山下高明、伊賀大介
作画監督 - 山下高明、西田達三
美術監督 - 大森祟、高松洋平、西川洋一
音楽 - 高木正勝
色彩設計 - 三笠修
CGディレクター - 堀部亮
美術設定 - 上條安里
衣装 - 伊賀大介
編集 - 西山茂
録音 - 小原吉男
音響効果 - 赤澤勇二
音楽プロデューサー - 北原京子
企画・制作 - スタジオ地図

■CAST■
熊徹(くまてつ) - 役所広司
九太(きゅうた)/蓮(れん) - 宮崎あおい(幼少期)、染谷将太(青年期)
楓(かえで)     - 広瀬すず
多々良(たたら) - 大泉洋
百秋坊(ひゃくしゅうぼう) - リリー・フランキー
宗師(そうし) - 津川雅彦
猪王山(いおうぜん) - 山路和弘
一郎彦(いちろうひこ) - 黒木華(幼少期)、宮野真守(青年期)
二郎丸(じろうまる) - 大野百花(幼少期)、山口勝平(青年期)
チコ - 諸星すみれ
九太の父 - 長塚圭史
九太の母 - 麻生久美子
賢者 - 中村正、沼田爆、草村礼子、近石真介

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2015年8月 4日 (火)

■「法的安定性は関係ない」発言、礒崎補佐官が謝罪

許して、ちょんまげ

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