■【映画評】『ターミネーター:新起動/ジェネシス』。心の通わないプロットもスカイネットの仕業なのか?
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●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
No.79 『ターミネータ:新起動/ジェネシス』
原題: Terminator Genisys
監督: アラン・テイラー 公開:2015年7月
出演: アーノルド・シュワルツェネッガー エミリア・クラーク 他
■ストーリー■
2029年、「審判の日」から30年以上に渡る人類とスカイネット率いる殺人機械群との戦いは、ジョン・コナーに率いられた人類側の勝利に終わった。窮地に陥ったスカイネットはジョンの母親サラ・コナーを殺害することで彼の存在自体を抹消すべくタイムマシンでターミネーターT-800を1984年に送り、人類側もそれを阻止すべく志願したカイル・リースが送り込まれることになる。しかしタイムトラベルの瞬間、カイルはジョンが何者かに背後から襲われるのを目撃して、転移する。そして、転移中、「スカイネットはジェニシス」「審判の日は2017年」といった謎の光景を見る。
■言わずと知れた名作ターミネーター/ターミネーター2のリブート作品。
物語は、もう話は知ってるでしょ、とばかりに未来の戦場から始まる。現代の日常に裂け目が生じ、未来の悪夢が襲い掛かってくるという前作のフォーマットは完全に放逐されている。
このあたりのスタンスが実はこの作品の本質を映しているように思える。
物語とは何か、ということだ。
ストーリーは説明的に過去へと飛んでいく。ターミネータを思い起こさせる全裸のシュワルツネガーと不良のシーン。そこに現れる我らがシュワちゃん。
どう、面白いでしょ、という制作側のささやきが聞こえてきそうだ。
■一方、サラを守るために過去に飛んだカイル。すぐさまT-1000に襲われる。イ・ビョンホン。表情がいい。
T-1000からカイルを救ったのは、なんとサラ・コナー。この世界ではサラはすでに何者かが事前に送り込んだT-800によって守られ、戦闘訓練を施されていたのだ。
のっけから予定が狂ってしまっている。我々は一体、どこに連れて行かれるのか。教科書的には極めてよくできた脚本だ。
サラはすべてを知っている。だがその未来もまた変質をきたし始めているらしい。
スカイネットが起動し、世界を滅ぼした1997年ではなく、そのあとも平穏な日々の続いた時間軸の先、2017年にサラとカイルは向かう。
二人は1984年から33年間待ち続け、表面の肉体が年老いてしまったT-800と合流し、スカイネットの真の姿であるアプリケーション・ジェネシスの世界へのダウンロード開始を阻止するという筋書き。
いやあ、面白いんだけどね。何か物足りない。。。。
アクションもいい、絵も申し分ない。
たぶん、足りないのは物語なのだと思う。
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■
■4歳のサラのもとにT-1000が襲い掛かる。それを守り、育てたT-800。サラにとってはT-800父親そのものだ。ロボットであったとしても、そこには捨てがたい愛があって、そこここにその想いが語られる。
それが薄い。圧倒的に薄い。
死ぬ運命にあるカイルとの出会い。それを語るわけにはいかないサラの想い。その時、そばにいるのは父親の役割りであって、合体したのか?としか聞かないダメな父親だとしても、戦士であるサラにとって唯一、自分の苦しみをみせることができるのがシュワちゃんのはずなのだ。
そこに機械と人間の不思議な愛のカタチがあるはずで、うっすらとは語られているものの、ハイスピードで’説明’を繰り返すストーリーにかき消されてしまう。
■人類の救世主にして、サラの愛する息子ジョンにしてもそうだ。
スカイネットの策謀によって、ナノマシンによるサイボーグにされてしまったジョン・コナー。彼はすでに人間の心を失っている。
そこで彼の中にわずかに残ったオリジナルの心を登場させ、俺を殺してくれ!みたいなことはしなくて正解なのだけれども、サラにしろ、カイルにしろ、その心中は千々に乱れているはずだ。
そこでも、にっくき ’ストーリー展開’の進行のためになおざりにされてしまう。
敵と化してしまったジョン・コナーは、その強さが最強であればあるほど、単純化され’軽い’存在になってしまう。
どうだ、こんなターミネーターも面白いだろ!
という構想が先行し、そのアタマでだけ考えたプロットには心が通っていない。だから、観る者の心にもぐっと来ない。実に、薄っぺらな作品になってしまったのだ。
唯一の救いはシュワちゃんだ。
彼がいるだけで、’エンターテイメント’になる。それだけで何故か、ま、いいか、という気分になってしまう。
シュワちゃんが出る限り、たぶん、続編も見に行ってしまうのだろう。まだまだ、頑張ってほしいね。
<2015.07.21 記>
■STAFF■
監督 - アラン・テイラー
脚本 - レータ・カログリディス、パトリック・ルシエ
撮影 - クレイマー・モーゲンソー
プロダクション・デザイナー - ニール・スピサック
編集 - ロジャー・バートン
衣装デザイナー - スーザン・マシスン
音楽 - ローン・バルフェ
エグゼクティブ音楽プロデューサー - ハンス・ジマー
原作 ジェームズ・キャメロン、ゲイル・アン・ハード
■CAST■
ガーディアン / T-800 - アーノルド・シュワルツェネッガー
ジョン・コナー / T-3000 - ジェイソン・クラーク
サラ・コナー - エミリア・クラーク
カイル・リース - ジェイ・コートニー
T-1000 - イ・ビョンホン
オブライエン刑事 - J・K・シモンズ
スカイネット / T-5000 - マット・スミス
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