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2015年6月 2日 (火)

■【書評】『無業社会』働くことができない若者たちの未来。工藤啓、西田亮介。今、日本に必要な価値観とは。

少子高齢化が進む中で、今の若い者は大変だなあと他人事にはしていられない重大な問題なのである。

■2012年時点での若年無業者数(15~34歳の非労働力人口のうち,家事も通学もしていない者)は63万人(内閣府)。若年就労者1600万人だから、実に4%(若年人口の2.3%)もの若者が就職もせず、求職活動もしていない、ということになる。

この数値は統計が開始された1995年時点で約40万人だったものが、2002年に60万人に跳ね上がり、高止まりしている状況だが、少子化を考慮すると比率としては継続した上昇傾向を示す。

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それに対して、2015年4月時点での若年失業者は79万人(5%)であり、2003年の173万人(9%)、2010年の130万人(7%)をピークに、バブル崩壊が完了した1993年時点の76万人(4%)に近いあたりまで戻してきており、対照的だ。

どうやら無業者の問題は、景気だけによるものではないようだ。

■著者はNPOとして若年就労支援を行ってきた方であり、その経験とデータから若年無業者の実態を語る。

そこに映し出されるのは、病気であったり、就職先の不適合であったり、就職面接の失敗により、労働社会からはじき出されてしまった若者の姿である。

いい歳して親のすねをかじりながら、ろくに働きもせず、2ちゃんを眺めて暮らしているという外見は、あくまでも’今の姿’であり、その裏にあるのは、そこから抜け出そうとしても決して抜け出すことが出来ない。その諦めの上での已むない姿なのである。

これについて、努力が足りない、と一蹴すべき問題ではないことは、先のデータが示している。景気が回復し、失業率が戻ってきても、無業者は増え続けているのだ。そこには何らかの理由がある。

■著者は、それを、一度落ちこぼれると圧倒的に不利になる「日本型システム」にあると読む。

実際、この社会に働いていて、それはしみじみと感じる。働き方が自由であるべきだとか、多様性だとか、いろいろかっこいいことは言われるが、確かに中途採用は増えたが採用されるのは、30代ばりばりの即戦力、落ちこぼれを知らないエリートばかりなのだ。

■著者たちの努力は、この社会システムとの「つながり」を失って、孤立してしまった若者たちを再度「つながり」に導く努力である。

これは極めて大切なことであって、一旦社会から孤立して何年も過ごしていると、再び社会に復帰するのは至難の業であって、実際私自身、3年間の実体験があり、その大変さは肌身で知っている。その時大切なのは、「社会復帰へのリハビリ」と「仲間」である。

その意味で、著者たちの活動は極めて的を得ていると思う。

■だが、その受け入れる社会自体が変わらなければ、元の木阿弥だ。

企業は、失われた20年の間に効率化を極めた。一度落ちこぼれると圧倒的に不利になる「日本型システム」を維持しつつも、いや、それを維持するために、それ以外のモノを切り捨てていった。

その効率化の権化が、一度ドロップアウトしたものを拾い上げ再生するという社会的役割を引き受けるか?答えはNOだ。

それならば、誰かがその役割を引き受けなければならない。効率という観点からは、あまり価値のあると思えないものたちを、それでも一人の人間として誰とも比べることのできないものを受け入れる世の中であらねばならない。

それを国家に丸投げするのではなく、行き過ぎた資本主義に対する新しい価値観を立ち上げること。

たぶん、著者たちの活動がその先駆けになるのではないか、と思うのである。

 

日本国憲法 第二十五条

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

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                          <2015.06.02 記>

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