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2015年6月 2日 (火)

■【書評】『意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論』マルチェッロ・マッスィミーニ、ジュリオ・トノーニ。「意識」とは複雑さを最大限にした「状態」のことなのだ。

意識を定量化し、測定する。今までの脳科学が踏み込めなかった領域に我々は何を見るのか。

■植物状態にある患者がいる。

何を呼びかけてもまったく反応はない。だが、このような患者のうち、意識を保っている人がいることが分かってきた。

その患者は、ありありとした意識を持ちながら、指も、表情も、目も動かすことが出来ず、自分に意識があるということをまわりに伝えることもできないそんな永遠とも思われる地獄に生きている。

こんなひどい話があるだろうか。

その患者に意識があるかどうかを知るすべはないだろうか。

この一念に動かされ、著者は思考をめぐらし、しかし既存の手法では「意識」を捕まえることが出来ないことに絶望する。

だが、そこで著者は立ち止まることなく、新しい理論と測定方法によって、この「意識」の世界に立ち向かっていく。

そのワクワクする挑戦に読む者は引き込まれていくのだ。

■意識のないこん睡状態と意識のある状態の違いとは何か。

何に意識があり、何に意識がないのか。

そこで著者はデジタルカメラを持ち出す。

何百万画素を持っていようが、デジカメの世界では、各画素の「情報」は独立である。100万の画素情報であるならば、情報量は100万である。

一方、意識は、見える情報をニューロンの発火状態の総体として捉える。ひとつひとつのニューロンが、他のニューロンと短距離、長距離、いろいろな組み合わせとしてつながりあう。(複雑系で議論される最適なネットワークの状態とそっくりだ!)

100万のニューロンが、個々独立でもなく、一斉にまったく動きをするのでもなく、複雑な「情報量を最大とする」つながりとして立ち現れる。

このようなとき、そこに意識が立ち現れるのではないか、という仮説である。

■一つの「行動命令」に対して単純な反応をしめす小脳は大脳以上のニューロンの数をもっているにも関わらず、各ニューロンモジュールは独立で、複雑な振る舞いをしない。

一斉に同調する心筋細胞によって動く心臓は、細胞がすべてつながり同調する単純な振る舞いをする。

したがって小脳にも、心臓にも、「意識」はない。

■「意識」があるとき、一つのニューロンを刺激すると、そのニューロンだけが反応するのではなく、また、ニューロンのつながり全体が同じ反応をするのではなく、いろいろなニューロンが複雑で入り組んだ反応をする。

その現象をとらえる装置を著者たちのグループは作成し、10年の歳月をかけて測定してきた。

結果、昏睡、あるいは、ノンレム睡眠をしているときには、単純な応答しか見せなかったニューロンが、意識があるときには、極めて複雑な応答を返してくる。

ここに、念願の「意識」をとらえるのである。

■本書は、「意識」がどのように発生するのか。という難題に直接答えているわけではないが、「意識」の発生する状態を定義し、測定し、検証するという偉業は、その答えへの確実な一里塚である。

それは我々を悩ませ行き止まりに追い込んできた「哲学的ゾンビ」を測定し、数値化する科学であり、今後発展していくAIが意識を持つことが出来るのか、或いは、意識をもった機械が持たねばならない「資質」を提供するものである。

その意味で、これからの我々の科学、哲学に対する重要なキーストーンとなる書なのである。

≪参考記事≫
【複雑な世界、単純な法則 ―ネットワーク科学の最前線―】 マーク・ブキャナン著。我々を取り巻く複雑なネットワークが持つ、幾つかの特性。

■【無意識の脳、自己意識の脳】「私」とは何か?A・ダマシオ

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                          <2015.06.02 記>

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