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2015年6月11日 (木)

■【書評】『沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ! 日本の医療〉』堤 未果。国民を守るのが国の仕事じゃなかったの?

我々が安心して暮らしていくために無くてはならない国民皆保険制度に危機が迫っている。堤未果の激しい問題提起を受けて、少し考えてみた。

■アメリカ資本主導の新自由主義によって、いかにアメリカ社会が壊されていったのかを生々しく描き出し、TPPによって日本社会が狙われている、という警鐘を鳴らしてきた堤未果の新刊。

沈みゆく大国アメリカ、というタイトルでありながら、主題は日本の国民皆保険制度がアメリカ資本に狙われている、という極めて強い警告にある。

オバマケアが誰の為の制度なのか、そして現代アメリカにおいて大金を持たない人たちがどうなってしまうのか。介護の現場、医療の現場で何が起きているのか。

その姿は、近い将来の日本の姿なのだ。

■日本国憲法25条によって国家に守られるはずの日本人の安全が、金の亡者であるアメリカ資本の外圧と、竹中平蔵を代表とする経済財政諮問会議のような私利私欲で動く売国奴たちによって、切り刻まれている。

すでに総仕上げの段階だ。

後期高齢者医療制度で年寄りを切り捨てた日本国政府。混合診療(自由診療)による形骸化をねらいつつ、最終的に国民皆保険制度を殺す刀は国家戦略特区である。

 

国家戦略特別地域とは・・・(少し長いですが wikiから)

地域を絞って、そのエリア内に限り従来の規制を大幅に緩め、外国企業を誘致する計画である。また、この区域は「解雇ルール」、「労働時間法制」、「有期雇用制度」の3点の見直しを対象としている

国家戦略特別区域の方針を決める産業競争力会議。この委員となった竹中平蔵の説明に拠れば、内容は以下の通り。

この国家戦略特区(=国家戦略特別区域)は、今までの特区と異なり総理が主導の特区であり、これまでの地方から国にお願いして国が上の立場から許可するというものとは大きく異なり、例えば、東京ヘッドクウォーター特区や北海道の輸出農業を特区にしてといった形で、特区を、国を代表して特区担当大臣、地方を代表して知事や市長、民間を代表して企業の社長という国、地方、企業の3者統合本部でミニ独立政府の様に決められる主体性を持った新しい特区です。この特区を活用して岩盤規制に切り込みたいと思っている。

アメリカ通商代表部(USTR)のカトラー次席代表代行も、アベノミクスの3本目の矢である「成長戦略」に謳われている規制緩和や透明性の確保などについて、「TPP交渉のうち1つの焦点となっている非関税分野で、アメリカが目指すゴールと方向性が完全に一致している」、「(TPP交渉の非関税分野の議論は)ほとんどすべて安倍首相の3本目の矢の構造改革プログラムに入っている」と語り、歓迎している。

2013年10月21日、午前の衆院予算委員会で、雇用分野を所管する厚生労働相など、関係分野の大臣を、国家戦略特区ごとに設ける統合推進本部から、外す考えを表明。この件に関して安倍晋三総理は、「意見を述べる機会を与えることとするが、大切なのは意思決定。意思決定には加えない方向で検討している」と語った。

 

国民はどこにいるのか。

 

<追記 2015.6.14>

昨日の報道によると国家戦略特区は東京全域に拡がることになったようだ。もはや「特区」ではない。

だが、問題の本質はそこにはない。やり口だ。

失われた20年からの脱却。そのための構造改革。それ自体は否定しない。

だが、構造改革に伴う反対意見を封じ込めるために、議論の蚊帳の外に置き、一方的になし崩し的に、実行に移すそのやり口。

特区ならば、法律の範囲外なのか?必要な手続きを踏まなくていいのか?

そこにはもう民主主義などない。【独裁】だ。

正しい、とか、正しくない、なんてどうでもいい。そんなもの、どこにもありはしないのだ。

何事にも、メリット、デメリットがある。その提案について、どんなメリットがあり、どんなデメリットがあるのか。それは、その人の立場によって全く異なるものである。

だからこそ議論が必要なのであって、その議論の結果、どんなことが起こるかの全貌を全員で共有し、不利益を被る人の気持ちを斟酌しつつ、全員で進むべき道をを探っていく。

それが民主主義だろう。

今の安倍政権は、その意味で、【反民主主義】的である。

集団的自衛権の問題も、ニュースステーションにおける恫喝の問題も、「正しいことをしているのだから、外野は文句をいうな。」 という、その基本的性格を指し示している。

だが、いろいろな立場での議論展開する場であるマスコミの反応はにぶい。ここでも機能不全が起きているとしか思えない。(集団的自衛権の問題も憲法学者の長谷部恭男さんによる勇気ある一刺しがなければ、なんとなーく、ずるずる行っていたに違いない。)

そこが恐ろしい。。。<追記 おわり>

 

■さて、そもそも誰の為の改革なのか。その底流を探ってみよう。

 

日本は高齢化社会になるのだから、医療費の財源が必要である。

そういって消費税の税率が8%にまで上げられてきた。

その一方で、1989年に40%であった法人税は、2012年の見直しで25.5%まで引き下げられている。

過去25年の消費税税収累計280兆円といわれるなかで、同時期の法人税減税の累計は、ほぼ同等の250兆円である。

なんのこっちゃ。国民の血税が企業に流れただけじゃないか。

■いやいや、企業の収益をあげることで、家計に還元されるのである。金は天下の回り者。

というのが安倍さんの主張だが、以下のグラフを見て欲しい。

2008年のリーマンショックの景況が分かりやすいが、2012年に向けて企業の純利益は順調に回復。その一方でサラリーマンの平均年収は、ほぼ変わっていない。

アベノミクスでさらに企業の利益は上昇しているはずであるが、いっこうに家計には回ってこない。

<サラリーマン平均年収推移>
Photo

<企業当期純利益推移>
Photo_2

■いやいや、給与は安定して支払い続けなければならない。利益が良くなったからといって、そのまま給与に反映するわけにはいかんのだよ。

というのが、毎年の労使交渉の企業の言い訳だが、ちょっとまて。2001年の底から回復していくなかで、むしろ平均年収は下がっているのだ。

むしろ、リストラによって足腰を回復した企業は、回復したにも関わらず【スリムな体制】=【外転化、派遣化によって勝ち取った高収益構造】を維持していこうとしている。

そういうことだろ。

国民からむしりとられた金は決して帰ってはこないのだ。

これが1980年代から始まった日本の【資本主義化】の実像なのである。

■先の『無業社会』の書評でも挙げた憲法25条。

 

日本国憲法 第二十五条

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 

国民皆保険制度はこの精神によって維持されてきた。

憲法に照らすならば、今の日本政府のやろうとしていることは明かに違憲である。企業の利益を優先し、憲法で定義されている責任を放棄した日本国政府の罪は重い。

それを強く主張したい。

立憲主義国家として、政府の暴走を止める機能は働かないのか。日本の司法は死んでしまったのか?三権分立は単なる御託なのか。。。。

 

日本国憲法 第八十一条 

最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である

 

戦後70年。

集団的自衛権の行使を柱とする安全保障関連法案論議が高まる今、改めて憲法に記された文言の意味を噛みしめながら、改めてこの国のカタチを論議する。

そういう時期に、この国は差し掛かっているのではないだろうか。

                           <2015.06.11 記>

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