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2015年5月17日 (日)

■【映画評】『ドリームキャッチャー』。愛おしい、愛おしい、純粋無垢の魂。善が生きにくい時代に。

「見せてあげよう、見たことを後悔する恐怖を・・・。」というキャッチコピーが違う意味で機能してしまった作品。すさまじい展開の果てに観客が目にするものとは。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.76  『ドリームキャッチャー』
           原題: Dream Catcher
          監督: ローレンス・カスダン 公開:2003年4月
       出演: トーマス・ジェーン  ダミアン・ルイス モーガン・フリーマン 他

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■ストーリー■
少年時代からの仲間4人が20年来の旧交を温めるために冬の山小屋に集まるのだが、そこで奇怪な現象に巻き込まれる。事態はハイスピードで展開していき・・・。

■2ちゃんに10年以上続いているドリームキャッチャーのスレッドがあって、それに出くわしたのが久しぶりに再見したきっかけ。そこの住人達があまりにもこの映画を愛しているので、それが伝染し、どうにも無性に見たくなったのだ。

初見のイメージはとんでも映画だったのだが、改めて見直してその人物描写の描きこみにぐいぐいと引き込まれた。

ヘンリー、ジョンジー、ビーヴァー、ピートの現在。そして、彼らをつなぐ純粋無垢なダディッツとの記憶。その愛おしさ。

ホラー、SF、アクションとその姿を次々と変貌させようとも、その底流にある愛おしさは薄れることは無く、むしろこの異常体験によって強化されるのだ。

この映画の本質はそこにある。

アーイ\(゚∀゚)/ダディッツ!

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■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■とはいえ、この映画を語るうえでこの濃密なハイスピード展開をなおざりにするわけにはいかないだろう。

さりげなく語られるジョンジーたちの超能力にサイコサスペンスの予感を感じさせる導入部。冬の山小屋で彼らが目にするコズミックホラー。宇宙人の侵略を阻止しようとする軍事組織とクレージーな眉毛の指導者。感染症の脅威。ハリウッドアクション的宇宙人殲滅戦。ジョンジーの心の中での宇宙人との心理戦。そこに差し挟まれる少年期の甘酸っぱい記憶。そして、ラストの宇宙人同士の戦い。

ひとつひとつの展開だけで一本の映画が取れてしまいそうな濃密さであり、その贅沢さに乗り切れない人は不幸である。

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■なんといっても最初の山場は、ミスター・グレイの登場シーン。山小屋に招き入れたゲップ男が便所で出産。その産み落とされた何かを必死に便器に閉じ込めるビーヴァーは精神安定のための爪楊枝を拾いたくてしかたがない。その葛藤の末、ビーヴァーはうなぎのような異生物に襲われてしまう。その場に遅れて飛び込んだジョンジーの背後に佇む気配・・・。この一連のシーンはエイリアンファンとしても納得の出来栄え。クリーチャーがリアルであればあるほど、異世界感が圧倒的に強まり、特にミスター・グレイの異様さ、意味の分からなさが出色。まさに悪夢だ。

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■スタンドバイミーだと思いきや、おいおいエイリアンか?いや、サイン?と展開したところで、25年間宇宙人の侵略から地球を守ってきた軍事組織の登場。

これが初めての事態ではない、ということだ。

そして、25年間、宇宙人の侵略の魔の手から地球を守り続けた男が眉毛おやじ(モーガン・フリーマン)。

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この人がまた濃い。濃いのは眉毛だけではない。何しろこの親父のクレージーさは、自らのルールを破った部下の右手を拳銃で撃ちぬくレベルなのだ。クレージーな司令官といえば地獄の黙示録のキルゴアだが、あの明るい単純バカとは正反対の偏執狂で、部下に権限を委譲すると宣言しておきながら、まったく主導権は譲らない。異星人に汚染された住民を皆殺しにしようとする眉毛についていけなくなった部下の裏切りが許せず、終盤、こともあろうに異星人を追い詰めようとしている部下に攻撃ヘリで復讐を試みる。地球存亡の危機よりも自らの鉄のルールの厳守が大事という男で、部下だけではなく、観客にとっても理解不能。25年のプレッシャー、恐るべしなのである。

とはいえ、命乞いをし逃げ惑う難破宇宙船の異星人に容赦ない攻撃をかける眉毛のガッツがなければ、地球は守りきれなかっただろうというのもまた事実で、そのあたり、戦争が作り出した男の悲劇の物語と見てとれなくもない。

■一方、ジョンジーの体を乗っ取ったミスター・グレイとの攻防もまた見どころ。

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ミスター・グレイの体がはじけ、飛び出した赤い紛体がジョンジーの体に侵入。ジョンジーの表情がガラリと変わる。ここで、意味の分からない存在であったミスター・グレイに意思が宿る。それは、はっきりとした侵略者の顔だ。

ジョンジーは小屋に来る前にダディッツの幻によって導かれたような交通事故にあっており、その時の臨死体験によって心の座である「記憶倉庫」を強化されており、そこに立てこもることでミスター・グレイと対抗する。

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ここに来て、4人がいじめられているダディッツと出会い、交流を深めることでダディッツから超能力というギフトをもらった、その意味が浮き上がってくる。

ダディッツは地球が存亡の危機を迎えるこの日のために、すべてを準備していたのだ。

■宇宙人に体を乗っ取られたジョンジーを追うヘンリーは、ダディッツが重要な役割をになうことを直感的に気づき、大人になったダディッツを迎えに行く。

だが白血病に侵されたダディッツは余命いくばくもない状態にあった。そのダディッツを送り出す母親の姿もまた泣ける。

母親もまた、この日が来るのを薄々感づいていたのかもしれない。

知的障害をもつ子供を抱えた母親の苦労は計り知れないが、それ以上に、純粋さの結晶であるダディッツを愛し、慈しみ続けた母の愛。アイ、ダディッツ!のポーズで息子を送り出すその姿にすべてを読み取り、涙するのである。

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■ラスト。貯水池のミスター・グレイ(イスター・ゲイ)との対決の場面。

ジョンジーの体からミスター・グレイを追い出したダディッツは、ミスター・グレイの槍のような尾に腹部を突き刺され、絶対絶命のピンチ。

そこで問題の場面。

ダディッツは両手を突き出し、アーイ、ダディッツ!の掛け声とともに宇宙人に変身。ミスター・グレイを道連れに消滅する。

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え、宇宙人だったの???

誰もが椅子から転げ落ちるシーンである。

■ここですべてが台無しになったと思う人もいるだろう。

DVDに収録されている没案のラストではダディッツが宇宙人に変身することはなく、あくまでも超能力でミスター・グレイと対決する。まあ、この方が正当だろう。

けれども、一抹の物足りなさを感じるのもまた事実なのだ。

純粋無垢な絶対的善の存在、ダディッツ。

そこに、彼を地上に遣わしたであろう別の存在の意図を感じとってしまうからだ。

地球の危機を見通し、それを防ぐ種をまいた神という存在だ。

いや、そうではない。そうであってはいけない。

それでは、ヘンリー、ジョンジー、ビーヴァー、ピートとダディッツの出会いとその記憶もまた、神による筋書きだったということになってしまう。

ダディッツの変身は、ダディッツ自身を我々の理解の外に置くことによって、その純粋善の存在に、その意思に、リアリティを与えるこころみなのである。

そのことは同時に4人を神の筋書きから解放する。

■無抵抗な子供がいじめられている姿を見過ごせず、間違っている、と口に出して言える正義。

それは極めて大切なこころの働きである。そのこころは純粋無垢の絶対善と共鳴しあう。

そこに人間に対する希望があるのだ。

神なんかに押し付けられたものではなく、自然に生まれたものであるからこそ、それは光輝くのであって、悪に対抗する力となるのである。

大人になったヘンリーは人生に絶望し自殺を図る。ジョンジーもビーヴァーもピートもまた報われた人生を歩んでいるわけではない。

ダディッツもまた、病魔に侵される。

善が、純粋が、生きにくい時代なのだ。

だからこそ、ダディッツの純粋が、ヘンリー、ジョンジー、ビーヴァー、ピートの優しさが愛おしいのである。

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                      <2015.05.17 記>

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あまりにもいとおしく、手元に置いておきたい作品。私はBlue-Rayじゃなくて安価なDVDにしたけれど。。。

原作もそのうち読もうと思います。

■STAFF■
監督 ローレンス・カスダン
脚本 ウィリアム・ゴールドマン
ローレンス・カスダン
原作 スティーヴン・キング
製作 チャールズ・オークン
ローレンス・カスダン
製作総指揮 ブルース・バーマン
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
撮影 ジョン・シール
編集 キャロル・リトルトン
ラウル・ダヴァロス



■CAST■
ヘンリー・デブリン博士 トーマス・ジェーン
ビーヴァー ジェイソン・リー
ジョンジー ダミアン・ルイス
ピート ティモシー・オリファント
ダディッツ ドニー・ウォールバーグ
バリー・ネイマン C・アーネスト・ハース
アブラハム・カーティス大佐 モーガン・フリーマン
 

 

●●● もくじ 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●

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