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2015年4月28日 (火)

■【映画評】『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』。毒舌の先にある、ほのぼのとしたファンタジー。

ここのところ、映画らしい映画を見ていなかったので、久しぶりのヴィヴィッドな映画体験。いやあ満足、満足。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.74  『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
           原題: Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance)
          監督: アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ  公開:2015年4月
       出演: マイケル・キートン  ザック・ガリフィアナキス  エドワード・ノートン  エマ・ストーン 他

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■ストーリー■
かつてヒーロー映画の主役バードマンとして一世を風靡したが、今や世間から忘れ去られてしまった男。男は、再び栄光を取り戻すためにブロードウエイで文芸作品の舞台に挑むのだが。。。

 

■多極的構成でコミュニケーションの寸断を描いた『バベル』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品。公演初日に向けた不安とトラブルの連鎖を1カットでつなげて表現するという、またもや超斬新なアプローチ。そのシームレスな流れは観る者を自然に包み込む。画期的方法論が前面に押し出されず、脇に徹しているところが素晴らしい。

プロローグも破天荒だ。

忘れ去られた男が再起を図る。よくある筋書の映画だと油断していたファーストシーン。いきなりパンツいっちょのおじさんが宙に浮いている。どうやら、彼は念動力の持ち主らしいということがいきなり明かされる。

この時点で普通でない。実は、、、というアイテムは中盤の「転」に発動するものだ。

けれども、それも計算の内で、この念動力をめぐる記述が、彼の心の状態を語らずして語る、根本的な表現手段となっていることに観る者は気づき始める。(中盤のタクシー乗り逃げ事件(笑)で確信に至る。)

■念動力が彼の心の状態とするならば、耳元でささやくバードマンは過去にこだわる彼の心そのものだ。

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男が精神的破綻に近づくにつれ、ささやきは、やがて実体となり、その実存の根幹をゆさぶる。バードマンがリアルであればあるほど、その姿は滑稽で、過去のこだわり=彼が辟易とするハリウッド思想をマンガチックに描き出す。

この毒がきわめて痛快。

ならば、ブロードウエイが素晴らしいものと描かれているかというと、そうではなくて、舞台でしか自己実現できない、やり手俳優の、演劇界の頂点に君臨する評論家の、それぞれの真剣さもまた、滑稽なのである。

 

■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■この映画が素晴らしいのは、ブラックコメディとして、それらを滑稽なものと断罪するだけではなく、一人の男がそれらを乗り越えて羽ばたいていく姿を(恥ずかしさを乗り越えて)描ききったことにある。

中盤。娘が男に向かって、お前はもうこのネット時代には生きていない、と引導を渡すシーン。カメラは娘しか映さない。だが観る者は、男の心が崩れていく様を娘の表情にありありと感じる。そういうシーンがある。

これが、ラストに効いてくる。

もう、カメラは男を追うことは無い。そうせずとも、いやそうしないことで、多くのイメージを伝えることが出来るのだから。

ここが、男と娘の新たな出発点なのだ。

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                      <2015.04.28 記>

■STAFF■
監督 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
ニコラス・ジャコボーン
アーマンド・ボー
アレクサンダー・ディネラリス・Jr
製作総指揮 クリストファー・ウッドロウ
音楽 アントニオ・サンチェズ(英語版)
撮影 エマニュエル・ルベツキ
編集 ダグラス・クライス  スティーヴン・ミリオン



■CAST■
リーガン・トムソン - マイケル・キートン : 映画「バードマン」で知られる元スター俳優。
マイク・シャイナー - エドワード・ノートン : ブロードウェイの有名俳優。
サマンサ(サム)・トムソン - エマ・ストーン : リーガンの娘で付き人。薬物依存症だった。
レスリー・トルーマン - ナオミ・ワッツ: ブロードウェイの舞台に初出演する女優。マイクの同棲中の恋人。
ジェイク - ザック・ガリフィアナキス : リーガンの弁護士で友人。プロデューサー。
ローラ・オーバーン - アンドレア・ライズボロー: リーガンの恋人で女優。
シルヴィア - エイミー・ライアン: リーガンの元妻でサムの母親。
タビサ・ディッキンソン - リンゼイ・ダンカン(英語版): ニューヨーク・タイムズの演劇批評家。
アニー - メリット・ウェヴァー(英語版): 舞台監督。

 

 

●●● もくじ 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●

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