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2014年2月24日 (月)

【書評】『ジェノサイド』 高野 和明。人間という種の本質とは。自らを平和主義者であると思い込んでいる我々日本人に対する警告。

一級のエンターテイメントでありながら、本書は、人間という生物が持つ本質的な醜さに対して警告を発する、実に深い作品なのである。

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■ ジェノサイド 上 (角川文庫)

■始まりはアメリカ大統領の朝のブリーフィング。そこで報告されたのは、『人類絶滅の可能性 アフリカに新種の生物出現』という唐突な内容。

一体、なんだそれは!と、始まりから読者を一気に惹きつける。

物語は、大規模紛争地域のコンゴの密林に潜入する傭兵たち、日本に暮らす平凡な薬学部の大学院生らを巻き込みながら、アメリカ、アフリカ、日本と駆け巡り、ハイスピードで進んでいく。

そこには多くの謎が敷き詰められ、読む者を圧倒的なサスペンスの世界に放り込む。

もうどうなるか、ワクワク、ドキドキで、文庫本、上下巻を一気に読んでしまった。

■しかし、Amazonでの評価は最悪。

何故か。

どうやら、物語の中で語られる日本人の朝鮮人蔑視や関東大震災時の朝鮮人虐殺の部分が引っかかっているようだ。朝日新聞を代表とする自虐史観をこの著者に見ているのである。

しかしながら、それはあまりに表層的な反応で、著者の語らんとすることの本質を見ていない。

むしろ、そういった「排除」の考え方自体が人間のDNAに刻まれた本質であると語っているという意味で、著者の語ることそのものがAmazonの書評にあらわれているのである。

実に皮肉なことだ。

■本書は、超一級のエンターテイメント/サスペンスでありながら、「ジェノサイド」とは、こういうものだ、とばかりに極めて残虐な描写を繰り返し繰り返し描きこむ。

特にコンゴでの民兵が集落を襲う場面、少年兵の場面などは極めてつらい。

そこに人間という生物がもった本質が現れていると著者は語りかけてくる。

そこで、「まったく、アフリカの民度の低い連中のやることは!我々は関係ない!」と考える日本人に突きつける為の切っ先が、いまだに蔓延る日本人の朝鮮人蔑視、そして関東大震災時の朝鮮人虐殺なのである。

そのことについて語るのは、確かにストーリー上は不要かもしれない。けれども、著者の語りたいことからするならば、絶対に外すことのできないエピソードなのである。

■その意味で、終盤、ルーベンスという桁外れのIQを持つ研究者と、冷戦時代に人類絶滅の可能性を説いた科学者ハインズマンとの対話が面白い。

あえて自らの身を危険にさらしながら、致死性の難病に冒された子供たちを救おうとする日本人学生の姿に人間という種の可能性をみる。

決して、悲観論だけで終わらない清々しさがそこにはある。

表層だけを見て、思考停止に陥ってはいけない。

                          <2014.02.24 記>

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