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2013年12月 2日 (月)

■【映画評】『SPEC(スペック) 結 漸ノ篇・爻ノ篇』。高まる非現実ゆえに沁みる現実の残酷、そして救い。

ラストの一瞬の、その為だけの大風呂敷なのである。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.71  『SPEC(スペック) 結   漸ノ篇・爻ノ篇』
                     監督: 堤幸彦 公開:2013年11月
                   出演: 戸田恵梨香    加瀬亮  他

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■ストーリー■
テレビドラマ『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』の映画版にして完結編。

捜査一課が手に負えない特殊な事件を捜査するために警視庁公安部が設立した未詳事件特別対策係、通称“未詳(ミショウ)”に配属されたIQ201の天才であり、変人の当麻紗綾と、警視庁特殊部隊 (SIT) 出身で叩き上げの瀬文焚流の2人の捜査官が、常人にはない特殊能力(SPEC)を持った犯人と対決する姿を描く。(テレビ版)

SPECを持つものと、それを殲滅しようとするものの戦いを描いた映画版前作『天』。

その結果として世界は終末へと向かっていく。

■興業的にはどうかは知らないけれど、前後編に分けたのは作品としては失敗。

SPECホルダーを根絶やしにしようとする「シンプルプラン」をめぐる物語。それを途中でぶった切るなんてありえんよ。

結果、前篇である「漸ノ篇」は薄いにもほどがあるくらい盛り上がりに欠けてしまい、その刑事魂を体を張って見せつける野々村刑事物語に納まってしまった。

どうせ両方観るんだろうさ、という観客をバカにした態度については猛烈な反省を迫りたい。

   
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■で、後編の「爻ノ篇」。

「シンプルプラン」を上回る「セカイ」による人類滅亡計画。

後半のほとんどが、警視庁?の屋上を舞台にしてストーリーが展開していく、というか「セカイ」の中二病話で観る者はきょとん。

歴代スペックホルダーの登場はちょっとうれしく思うが、あっさり「セカイ」に消されてしまう。

結局、当麻が自ら放った悪霊どもを「セカイ」ごと飲み込んで、瀬文に撃たれることで封印し、事件は解決。

■こりゃ、なんじゃらほい。

ガフの部屋とか、ソロモンの鍵とか、「セカイ」の言葉にはリアリティの欠片もない。当麻もその世界に引き込まれ、モンスター状態。

これがSPEC??

という意見が多いのではないかと思う。

■けれども、もうあとには戻れないところまでいってしまった当麻に対する瀬文の一発。

逡巡しながらも、その弾丸は正確に当麻の額をまっすぐ射抜く。

この一発はワケの分からない、浮ついた我々の現実逃避に対する一撃なのである。

だからこそ、その直後にくるのは希望に満ちた明るい夜明けなどではなく、瀬文に対する刑事たちの暴行なのである。

この意味が分からなければ、この作品のテーマを180度取り違えることになるだろう。彼らが伝えたかったことは、人類がどうだとか、こうだとかそういういうことではない。

まったく反対に伝えたかったのは、我々のリアルな現実そのもの。不条理でやるせない現実そのものなのである。

この対比、コントラストこそが重要なのだ。

その為の大風呂敷、その為の非現実だったのだ。

■瀬文の一撃によって、世界は平静を取り戻す。

過去と現在を漂う当麻の残留思念。

そしてリンチでぼこぼこにされ投獄された瀬文のもとを漂う当麻。その腕をつかむ瀬文。そしてつかみ返す当麻。

この永遠。

愛、なんて容易いことばで表現できない絆がそこにある。

そのあと、どうなろうといいじゃないか。

時を越え、住む世界を超え、永遠がそこにある。

そこに静かな感動が生まれる。

                         <2013.12.02 記>

■STAFF■
監督 - 堤幸彦
脚本 - 西荻弓絵
挿入歌 - 佐野元春「彼女」
音楽 - 渋谷慶一郎、ガブリエル・ロベルト
撮影 - 斑目重友
編集 - 伊藤伸行

■CAST ■
当麻紗綾 - 戸田恵梨香
瀬文焚流 - 加瀬亮
吉川州 - 北村一輝
青池里子 - 栗山千明
馬場香 - 岡田浩暉
鹿浜歩 - 松澤一之
猪俣宗次 - 載寧龍二
正汽雅 - 有村架純
一十一(当麻陽太) - 神木隆之介
志村美鈴 - 福田沙紀
地居聖 - 城田優
冷泉俊明 - 田中哲司
海野亮太 - 安田顕
サトリ - 真野恵里菜
マダム陽(マダムヤン)・マダム陰(マダムイン) - 浅野ゆう子
ゲッツの人 - ダンディ坂野
餃子ロボ親父 - 多田木亮佑
ナンシー - Simone
当麻天 - 佐野元春
当麻流夏 - 石田えり
城旭斎浄海 - 香椎由宇
湯田秀樹(ユダ) - 遠藤憲一
セカイ - 向井理
青池潤(子供) - 森山樹
青池潤(大人) - 大島優子
卑弥呼 - 北大路欣也
野々村光太郎 - 竜雷太

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