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2013年9月16日 (月)

■【映画評】『スター・トレック イントゥ・ダークネス』。全力疾走症候群に愛は押しつぶされてしまうのであった。

このタイトル。

そして「人類の最大の弱点は、愛だ。」というキャッチコピー。

どう考えても、心理の内側をえぐるような物語を想像してしまう。

・・・すっかり、騙されてしまいました。

いや、エンターテイメントとしては素晴らしい映画なのだけど、それでいいのか!というわけである。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.70  『スター・トレック イントゥ・ダークネス』
           原題: Star Trek Into Darkness
          監督: J・J・エイブラムス  公開:2013年8月
       出演: クリス・パイン ベネディクト・カンバーバッチ ザカリー・クイント  他

Taitoru

■ストーリー■
未開の惑星を大噴火から救うミッションで、危機に陥ったスポックを救うために、カークは艦隊の誓いを破って現地人にエンタープライズの姿をさらす。

その責により、カークはエンタープライズの艦長の地位をはく奪されてしまう。

その一方、ロンドンで爆破テロが発生。対策を練るべく終結した艦隊幹部を謎の男が武装ヘリで襲撃する。

クリンゴン帝国領内に逃げ込んだ男を、再びエンタープライズの艦長に帰り咲いたカークが追う。

その男の正体とは・・・。

 

■のっけから迫力満載である。

未開惑星の現地人に追いかけられるカークたち。火山の中に取り残されるスポック。

追っ手を逃れて、カークたちは断崖絶壁から海へと飛び込む。

その先に待つ、エンタープライズ、そして浮上!

まったく息をつかせない。いいテンポだ。

Photo_3

■話はロンドンへ飛び、死の病に冒された少女のもとへ。

悲しみに暮れる父親のところに謎の男が現れ、ある取り引きが行われる。

艦隊の士官である父親は、その愛によって、艦隊を裏切ることになる。

なるほど、’イントゥ・ダークネス’的な展開である。

人類の最大の弱点は、愛である。

って、ここのシーンだけじゃないか!!!

■確かに、この映画は愛に溢れている。

クルーの絆を軸とした家族愛。

それは終盤に向けてカークの献身へと収斂していく。

けれど、それを天秤にかけるようなシーンは、とんとない。

愛は天秤になどかけることはできない。

そこを敵がついてくる。そういう心理的駆け引きを期待していたのだ。

■そんな期待を胸に、この限りなく素晴らしいテンポの良さに身をゆだねていたら、あっというまに終盤へとなだれ込んで行ってしまった。

え、もう終わりなの?

それが率直な感想だ。

テンポがいいのも善し悪し、なのである。

   
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

Photo_4

■ジョン・ハリソン=カーンが、あっさりと投降し、独房のガラス越しにカークとスポックに語りかけるあたり。さあ、悪魔のお出ましか、と思いきや、さにあらず。

カーンの強さは、その身体的強靭さばかりが前面に押し出され、むしろ、72基の魚雷に搭載された仲間への愛をスポックに逆手に取られるありさまだ。

一体どっちが悪魔だかわからんよ。

■そんな思いをよそに、物語はガンガン進行していく。

深手を負ったエンタープライズは、動力装置の損傷により、地球へと落下していく。

その中でカークは被曝覚悟で動力装置のコアへと向かい、足でガンガン蹴って(笑)、コアを正しい位置へ戻す。

再浮上するエンタープライズ。

だが、カークはスポックたちの目の前でこと切れる。

■地上に降り立ったカーンを追う、スポック。

バルカンの技で、ついにカーンを抑え込む。

お前のせいでカークは死んだのだ、とカーンを殴り続けるスポック。すっかり冷静なバルカンの血は消し飛んでいる。衝撃的なシーンだ。

これが、描きたかった’愛’なのか?

分かりやすいのだが、そこにまったく深みは無い。

葛藤が無いからだ。

窮地に陥ったカーンの悪魔的ささやき、が無いからだ。

■イントゥ・ダークネスは素晴らしい映画だと思う。

これだけ時間を忘れて没頭できる映画は久しぶりに見た。映像、展開、ともに観る者を惹きつけて離さない。

けれど、それだけでいいのか。

スター・トレックって、そんなジェットコースター的エンターテイメントだったのか?

未知の驚異に出くわして、それを英知と勇気で乗り越えていく。そういうシリーズじゃなかったのか?

今回の驚異=遺伝子技術により過去に生み出されたスーパーマン。だがそれは、所詮、我々の地平に住む者であり、その意味で驚異でもなんでもない。

そこにはまったく異質な思考回路があって、その前では’愛’は弱みとなる。そこでカークたちは、いったいどういう答えを導き出すのか?

そこから思いがけない結末が引き出される。

そこがこのシリーズの醍醐味ではなかったのか?

■いや、これは新シリーズなのだと、そういったものは取り扱わないのだと。それならば、エンディングで流れるメインテーマとそこからくる高揚はいったい何なのだ。

まぎれもなく、これはスタートレックなのだ。

カーク、スポック、エンタープライズを使い続ける限り、そこからは逃れられないのだ。

監督のJ・J・エイブラムスの次回作はスターウォーズ エピソードⅦらしい。

間違いなく、単なる続編にはとどまらない、新しいフォーマット使った面白いエンターテイメントに仕上がるであろう。

けれど、そこでフォースがどう描かれるのか?

今度は期待を裏切らないで欲しい。

それを切に祈るばかりなのである。

                     <2013.09.16 記>

Photo_2

■補記。

地球へと落下するエンタープライズ。

実に美しい。

SF映画では、大気圏への再突入シーンがしばしば描かれるが、これは屈指の名シーンだと思う。

■STAFF■
監督 J・J・エイブラムス
脚本 デイモン・リンデロフ
    アレックス・カーツマン
    ロベルト・オーチー
原作 ジーン・ロッデンベリー
製作 J・J・エイブラムス
    ブライアン・バーク
    デイモン・リンデロフ
     アレックス・カーツマン
     ロベルト・オーチー
製作総指揮  ジェフリー・チャーノフ
         デヴィッド・エリソン
         デイナ・ゴールドバーグ
         ポール・シュウェイク
音楽  マイケル・ジアッキーノ
撮影  ダニエル・ミンデル
編集  メリアン・ブランドン
     メアリー・ジョー・マーキー

■CAST■
ジェームズ・T・カーク : クリス・パイン
スポック         :  ザカリー・クイント
ジョン・ハリソン / カーン :  ベネディクト・カンバーバッチ
ドクター・レナード・"ボーンズ"・マッコイ :  カール・アーバン
ウフーラ         :  ゾーイ・サルダナ
モンゴメリー・"スコッティ"・スコット  :  サイモン・ペグ
ヒカル・スールー    :  ジョン・チョー
パヴェル・チェコフ   :  アントン・イェルチン
クリストファー・パイク :  ブルース・グリーンウッド
アレクサンダー・マーカス :  ピーター・ウェラー
キャロル・マーカス  : アリス・イヴ
トーマス・ヘアウッド  :  ノエル・クラーク
スポック・プライム   :  レナード・ニモイ

●●● もくじ 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●

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