■【映画評】『パシフィック・リム』。技術の進化と望郷の念。
理屈は不要!
怪獣と巨大ロボットのガチンコ勝負に興奮!なのだ。
●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
No.69 『パシフィック・リム』
原題: Pacific Rim
監督: ギレルモ・デル・トロ 公開:2013年 8月
出演: チャーリー・ハナム 菊地凛子 他
■ストーリー■
それは突然海から現れた。怪獣の襲撃により太平洋湾岸の都市が壊滅的な被害を受ける。数年の歳月をかけて人類はイェーガーという巨大ロボットを開発。二人のパイロットが神経接続をおこなうことで機動するその巨兵は、怪獣を次々と撃退する。だが、怪獣は進化を続け、イェーガーの能力を凌駕していく。さらに海溝から怪獣が現れる頻度は幾何級数的に増加。人類は危機的状況に置かれる。
■オープニングのベケット兄弟の戦いに一気に引き込まれる。画面が暗いので怪獣の全貌がはっきりしない。そこがまたいい。ベケット兄弟の機体が破壊され、コクピットが露わに。そして兄がやられてしまう。満身創痍の巨大ロボット。いきなり負けで始まるところが実にそそる。
■それから数年。防護壁の現場作業員に身をやつしていたベケットのもとに司令官が現れ、イェーガーの操縦者として復帰。かつて両親を怪獣に殺されたマコとともに最後の戦いに挑む。
ってな筋書きなのだけれども、如何せんドラマとしては薄い。
兄を殺されたイェーガー、両親を殺されたマコ。神経接続でそれぞれの記憶を生の体験として共有するというシステムがキーとなり、二人の結束が深まっていくという、いい小道具を用意しているのだが、生かし切れていないという印象。
もしかすると編集で絞り込み過ぎたのではないか。
確かにドラマを切り捨てることにより、スピーディーな展開になっていて、そこは成功していると思う。
二兎を追うもの一兎をも得ず。
これはこれで良かったのかも知れない。
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■
■というわけで、愛菜ちゃんの名演技を含めてドラマのパートは置いておき、怪獣映画としてのパシフィック・リムを見ていこう。
まずは、怪獣。
巨大である。そして巨大すぎない。
身の丈50メートルくらいであろうか。円谷怪獣も同程度で、人間や街並みに対比して、これくらいの大きさがちょうどいいのかもしれない。
街を破壊しながらのっしのっしと進む姿は’怪獣’そのもの。
難をいうのであれば、どの怪獣も造形が単調で面白くない。リアルを追求していった結果なのかもしれないが、もう少し色気があってもいい。
唯一、ハッとしたのは、香港を襲う怪獣が突如翼を拡げ、イェーガーを抱えたまま、空に飛び立つシーン。
ここはいい。怪獣はこういう意外性を見せるときに強く輝くのである。
パイロットの二人が乗り込み、スーツの中に液体が注入され、神経接続。なんだか、エヴァンゲリオンみたいだが、そこはご愛嬌。
そのままコクピットがイェーガーにガコンと搭載され、イェーガー機動!
発進のシーンというのはやはり重要です。
■さらにしびれるのは怪獣との格闘シーン。
ともかく、殴る、殴る、殴る。
兵器も搭載されていたりするのだけれど、基本はパンチ。
そのずしんとした手ごたえがたまらない。
■エンドロールの最後で、レイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎に捧ぐ、と出る。ここでファンはググッとくるのであるが、内容的には彼らの作品にはまだ及ばない。
CGを駆使した素晴らしく洗練された作品なのだけれども、ハリーハウゼンや円谷英二の作品のもつ、肌触りというものが無いのだ。
ハリーハウゼンのストップモーション・アニメーションや円谷英二の着ぐるみのあたたかさ。
これは今のところCGでは作り出せない。
リアルを追求すればするほど、その乖離は拡がるばかり。
ハリーハウゼンや円谷と同じテイストを作り出さなければならないわけではないし、それが正解というわけではないのだが、リアルなCG映画を観れば観るほど、望郷の念に駆られてしまうのである。
<2013.08.17 記>
■STAFF■
監督 : ギレルモ・デル・トロ
脚本 : トラヴィス・ビーチャム
ギレルモ・デル・トロ
原案 : トラヴィス・ビーチャム
製作総指揮 : カラム・グリーン
音楽 : ラミン・ジャヴァディ
撮影 : ギレルモ・ナヴァロ
編集 : ピーター・アムンドソン
■CAST■
ローリー・ベケット : チャーリー・ハナム
森マコ : 菊地凛子
スタッカー・ペントコスト : イドリス・エルバ
ニュートン・ガイズラー博士 : チャーリー・デイ
ハーマン・ゴットリープ博士 : バーン・ゴーマン
ハーク・ハンセン マックス・ : マルティーニ
チャック・ハンセン ロバート・: カジンスキー
テンドー・チョイ : クリフトン・コリンズ・Jr
ハンニバル・チャウ : ロン・パールマン
ヤンシー・ベケット : ディエゴ・クラテンホフ
幼少期のマコ : 芦田愛菜
タン兄弟 : チャールズ・ルー
: ランス・ルー
: マーク・ルー
アレクシス・カイダノフスキー : ロバート・マイエ
サーシャ・カイダノフスキー : ヘザー・ドークセン
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