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2013年8月

2013年8月17日 (土)

■【映画評】『パシフィック・リム』。技術の進化と望郷の念。

理屈は不要!

怪獣と巨大ロボットのガチンコ勝負に興奮!なのだ。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.69  『パシフィック・リム』
           原題: Pacific Rim
          監督: ギレルモ・デル・トロ 公開:2013年 8月
       出演: チャーリー・ハナム   菊地凛子 他

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■ストーリー■
それは突然海から現れた。怪獣の襲撃により太平洋湾岸の都市が壊滅的な被害を受ける。数年の歳月をかけて人類はイェーガーという巨大ロボットを開発。二人のパイロットが神経接続をおこなうことで機動するその巨兵は、怪獣を次々と撃退する。だが、怪獣は進化を続け、イェーガーの能力を凌駕していく。さらに海溝から怪獣が現れる頻度は幾何級数的に増加。人類は危機的状況に置かれる。

■オープニングのベケット兄弟の戦いに一気に引き込まれる。画面が暗いので怪獣の全貌がはっきりしない。そこがまたいい。ベケット兄弟の機体が破壊され、コクピットが露わに。そして兄がやられてしまう。満身創痍の巨大ロボット。いきなり負けで始まるところが実にそそる。

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■それから数年。防護壁の現場作業員に身をやつしていたベケットのもとに司令官が現れ、イェーガーの操縦者として復帰。かつて両親を怪獣に殺されたマコとともに最後の戦いに挑む。

ってな筋書きなのだけれども、如何せんドラマとしては薄い。

兄を殺されたイェーガー、両親を殺されたマコ。神経接続でそれぞれの記憶を生の体験として共有するというシステムがキーとなり、二人の結束が深まっていくという、いい小道具を用意しているのだが、生かし切れていないという印象。

もしかすると編集で絞り込み過ぎたのではないか。

確かにドラマを切り捨てることにより、スピーディーな展開になっていて、そこは成功していると思う。

二兎を追うもの一兎をも得ず。

これはこれで良かったのかも知れない。

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■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■というわけで、愛菜ちゃんの名演技を含めてドラマのパートは置いておき、怪獣映画としてのパシフィック・リムを見ていこう。

まずは、怪獣。

巨大である。そして巨大すぎない。

身の丈50メートルくらいであろうか。円谷怪獣も同程度で、人間や街並みに対比して、これくらいの大きさがちょうどいいのかもしれない。

街を破壊しながらのっしのっしと進む姿は’怪獣’そのもの。

難をいうのであれば、どの怪獣も造形が単調で面白くない。リアルを追求していった結果なのかもしれないが、もう少し色気があってもいい。

唯一、ハッとしたのは、香港を襲う怪獣が突如翼を拡げ、イェーガーを抱えたまま、空に飛び立つシーン。

ここはいい。怪獣はこういう意外性を見せるときに強く輝くのである。

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■イェーガーについては、もう、しびれるの一言。

パイロットの二人が乗り込み、スーツの中に液体が注入され、神経接続。なんだか、エヴァンゲリオンみたいだが、そこはご愛嬌。

そのままコクピットがイェーガーにガコンと搭載され、イェーガー機動!

発進のシーンというのはやはり重要です。

■さらにしびれるのは怪獣との格闘シーン。

ともかく、殴る、殴る、殴る。

兵器も搭載されていたりするのだけれど、基本はパンチ。

そのずしんとした手ごたえがたまらない。

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■エンドロールの最後で、レイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎に捧ぐ、と出る。ここでファンはググッとくるのであるが、内容的には彼らの作品にはまだ及ばない。

CGを駆使した素晴らしく洗練された作品なのだけれども、ハリーハウゼンや円谷英二の作品のもつ、肌触りというものが無いのだ。

ハリーハウゼンのストップモーション・アニメーションや円谷英二の着ぐるみのあたたかさ。

これは今のところCGでは作り出せない。

リアルを追求すればするほど、その乖離は拡がるばかり。

ハリーハウゼンや円谷と同じテイストを作り出さなければならないわけではないし、それが正解というわけではないのだが、リアルなCG映画を観れば観るほど、望郷の念に駆られてしまうのである。

                      <2013.08.17 記>

■STAFF■
監督 : ギレルモ・デル・トロ
脚本 : トラヴィス・ビーチャム
     ギレルモ・デル・トロ
原案 : トラヴィス・ビーチャム
製作総指揮 : カラム・グリーン
音楽 : ラミン・ジャヴァディ
撮影 : ギレルモ・ナヴァロ
編集 : ピーター・アムンドソン

■CAST■
ローリー・ベケット : チャーリー・ハナム
森マコ       :  菊地凛子
スタッカー・ペントコスト : イドリス・エルバ
ニュートン・ガイズラー博士 : チャーリー・デイ
ハーマン・ゴットリープ博士 : バーン・ゴーマン
ハーク・ハンセン マックス・ : マルティーニ
チャック・ハンセン ロバート・: カジンスキー
テンドー・チョイ  : クリフトン・コリンズ・Jr 
ハンニバル・チャウ :  ロン・パールマン
ヤンシー・ベケット  : ディエゴ・クラテンホフ 
幼少期のマコ    :  芦田愛菜
タン兄弟      : チャールズ・ルー
           : ランス・ルー
           : マーク・ルー
アレクシス・カイダノフスキー  : ロバート・マイエ
サーシャ・カイダノフスキー : ヘザー・ドークセン

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2013年8月10日 (土)

■【映画評】『風立ちぬ』、宮崎駿。限られた10年。あなたの今に、風は吹いているか?

スタジオジブリの映画で泣いてしまったのは初めてかもしれない。(除く、火垂るの墓。)

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.68  『風立ちぬ』
           監督: 宮崎 駿  公開:2013年 7月
       出演: 庵野秀明  瀧本美織 他

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■ストーリー■飛行機の設計技師を目指す堀越二郎は、大学に向かう途中の汽車のなかで東京大震災に遭遇する。そこで出会った少女、菜穂子に心惹かれるものがあったが震災の混乱の中で行方知らずとなってしまう。

飛行機設計技師として三菱に入社した二郎は、その努力と才能により29歳にして七試艦上戦闘機の主任設計士となるも、試験飛行に失敗。失意のもと訪れた軽井沢で、菜穂子との奇跡の再会。二人はこころを寄せ合うのだが、菜穂子は結核の病魔に侵されていたのであった。

■名機、零戦を設計した堀越二郎の半生に、同時代を生きた堀辰夫の人生を重ねた宮崎駿のオリジナル作品。

飛行機好きにとっての神様である堀越二郎は分かるけれど、堀辰夫については全く知識ゼロ。風立ちぬ、と聞けば松田聖子が浮かんでしまうくらい無知だった。

正直、軟弱な恋愛物語になってしまうのではと心配であったのだけれど、さにあらず。生きる、ということの意味を問う。深く、心にささる物語なのであった。

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■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■堀越二郎の声に庵野秀明をあてたことについて、ひどい前評判を聞いていたのだけれども、いやいや、そんなことはない。誠実で、不器用で、芯の通った堀越二郎として違和感なく受け入れることができた。そこに必要であったのは、声優としての技術ではなく、強く、それでいて傷つきやすい、生の人間性であったのだと思う。

この映画のテーマは、生きる、ということ。

設計技師として飛行機にその全身全霊をそそぐ堀越二郎の姿を縦糸に、結核に冒され、残された命を二郎と過ごそうと決意する菜穂子の強さを横糸に紡がれる、昭和初期の苦しい時代を、今、として生きるふたり。

単なる堀越二郎の評伝では語りきれなかったであろうテーマがそこに浮かび上がってくる。

■宮崎駿は、敢えてゼロ戦の物語は描かず、戦争そのものは描かず、菜穂子の死も描かない。

本当の山場はそこにあるはずなのに描かない。

何故か。

それは、必要でなかったから。いや、観る者のこころの動きを縛り付ける、という意味で邪魔であったからではなかろうか。

■この映画は、メッセージである。

この閉塞した時代でも、強く生きよ!

という宮崎駿のメッセージなのである。

観るものそれぞれの人生があって、それぞれの’10年’がある。

ゼロ戦の物語も、菜穂子の死も、東京大空襲も、そこを描いてしまっては、あまりに強烈なその物語は、二郎の、菜穂子のそれとなってしまい、観る者の物語ではなくなってしまう。

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■結果、唐突に現れる焼け野原。

そこに立ちすくむ二郎に語りかけるカプローニ。

君の10年はどうだったか、と。

散々でした、という二郎の背後に飛ぶ零戦たち。

あれが君のゼロか。美しい機体だ、というカプローニ。

■カプローニは、二郎にとってのメフィストフェレスなのだと、宮崎駿は語ったという。

それは、このラストシーンに如実に表れている。

美しいものを追い求め、懸命に生きる10年。

例え、それが不幸な終わりを迎えたとしても、そこには確かに輝くものがある。

時として、人は魂を悪魔に売り渡してでも、その美しいものを追いかける。

時間よ止まれ、汝は美しい。

その美しさに胸を締め付けられるのである。

それは、観るもの、それぞれの胸のうちにある。

                       <2013.08.10記>

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■STAFF■
原作・脚本・監督      宮崎駿
作画監督                高坂希太郎
美術監督                武重洋二
色彩設計               保田道世
撮影監督               奥井敦
音響演出・整音       笠松広司
編集                     山武司
原作掲載              月刊モデルグラフィックス
音楽                    久石譲
主題歌        「ひこうき雲」作詞・作曲・歌 - 荒井由実
制作                    星野康二 スタジオジブリ
プロデューサー      鈴木敏夫


■CAST■
堀越二郎       庵野秀明
里見菜穂子   瀧本美織
本庄             西島秀俊
黒川             西村雅彦
カストルプ      スティーブン・アルパート
里見             風間杜夫
二郎の母      竹下景子
堀越加代      志田未来
服部             國村隼
黒川夫人      大竹しのぶ
カプローニ    野村萬斎

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