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2012年8月18日 (土)

■【映画評】『遊星からの物体X』。特撮オタクの為の古き良きSFX映画。

CG全盛の現在では作りえない生の感覚があふれている。アナログSFX(スペシャル・エフェクト:特殊効果)の頂点を極めた記念碑的作品である。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.56  『遊星からの物体X
           原題:The Thing
          監督 ジョン・カーペンター 公開:1982年6月
       出演: カート・ラッセル 他

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■ストーリー■
南極。ノルウェー隊のヘリが一匹の犬を追いかけている。犬はアメリカ基地に逃げ込み、ヘリは事故で爆発。搭乗者も銃を乱射したためにアメリカ隊に射殺される。

一体、何が起こったのかとノルウェー基地の調査に行くが生存者なし。そこで人間のカタチをとどめていない、おぞましい遺体を発見し、基地に持ち帰る。

夜。ノルウェー隊に追われていた犬が、犬小屋の中で突如、変態を始め、周りの犬たちを襲う。’それ’は隊員たちによって火炎放射器で焼かれ絶命したが、遺体を調査してみると、’それ’は犬に擬態し始めていたことが分かる。

一方、基地に運び込まれた遺体が溶けだし、隊員を襲う。窓から逃げ出した’それ’は、その隊員に擬態しかかった姿で発見される。’それ’は人間そっくりの姿に擬態できるのだ。

嵐の中で閉ざされた南極基地。その中の隊員たちの中にすでに擬態した’それ’が紛れ込んでいる可能性がある。

果たして誰が本当の人間で、誰が偽物なのか。そして、彼らは生き残ることが出来るのか・・・。

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■1979年。リドリー・スコットの『エイリアン』が公開され、SFホラーのジャンルがメジャー映画として確立された。

その成功を受けて、企画が通った作品である。

だが、本作品は『エイリアン』の二番煎じではない。映画として『エイリアン』を超えることはないが、SFホラー作品として独自の輝きを放つ。

ひとつは、クリーチャーの特撮が極めて独特のイマジネーションにあふれ、かつ完成度が高いこと。

もうひとつは、誰が怪物か分からないという心理劇の要素が組み込まれていることだ。

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■クリーチャーに関しては、変態途中の人間の遺体、変態する犬、最後に登場する巨大な’それ’、といくつも登場するのであるが、何と言っても心臓麻痺をおこした隊員が電気ショックを受けて変態するシーンだろう。

お腹がバカリと空いて、医者の腕を食いちぎる。そして火炎放射器で焼かれた遺体から首がもげて床に落ち、そのアタマから蜘蛛のような足が生えて、こそこそと逃げようとするシーンだ。

ここに至っては、怖い、というよりむしろ’かわいい’の領域に入ってしまっている。

全般に言えることだが、この映画のクリーチャー達は決して恐怖を生むことはない。あるのは、おぞましさ、生理的嫌悪、というところだろうか。

そこに一抹の物足りなさが残ってしまうのが残念なところでもある。

■一方の心理劇的側面の中心は’血液テスト’のシーンだ。

仲間を全員椅子に縛り付けて、その血液を採取。熱した針金をその血液につけて’それ’を見分けようとする。

ひとつひとつ、シャーレに溜まった血液に針金をつけていく。

くるぞ、くるぞ、というロシアン・ルーレット的ドキドキ感がある。

■けれども、怖さ、という意味ではそれまで。

『エイリアン』のような身の毛もよだつ恐怖というものはそこにはない。

閉鎖空間での怪物との対峙、というシチュエーションは同じなのに、何故こうも違うのか。

そこはやはりリドリー・スコットとジョン・カーペンターの実力の違いなのだろう。基本的に見せ方、いや見せなさ加減が違うのだ。

物体Xは目の前でこれでもかこれでもかとその異様な姿をさらす、むしろそこにこの映画の特徴がある。

要するに見世物小屋的なのだ。

真の恐怖は、姿の見えないものに対して生まれてくる。

原作のアイデアも、SFXも抜群であるがために、そこのところが非常に惜しまれる作品である。

                           <2012.08.18 記>

■STAFF■
製作総指揮: ウィルバー・スターク
製作: デイヴィッド・フォスター、ローレンス・ターマン、スチュアート・コーエン
監督: ジョン・カーペンター
脚本: ビル・ランカスター
原作: ジョン・W・キャンベル Jr.(『影が行く』早川書房刊)
撮影: ディーン・カンディ
音楽: エンニオ・モリコーネ
特撮: アルバート・J・ウィットロック、ロイ・アーボガスト、
           リロイ・ルートリー、ミッチェル・A・クリフォード
メイクアップ: ロブ・ボッティン
追加モンスター(ドッグモンスター)製作 :  スタン・ウィンストン

■CAST■
R・J・マクレディ ヘリ操縦士 : カート・ラッセル
ブレア 主任生物学者 : A・ウィルフォード・ブリムリー
ドクター・コッパー 医師 : リチャード・ダイサート
ギャリー 隊長 : ドナルド・モファット
ノールス 調理係 : T・K・カーター
パーマー 第2ヘリ操縦士 機械技師 : デイヴィッド・クレノン
チャイルズ 機械技師 : キース・デイヴィッド
ヴァンス・ノリス 地球物理学者 : チャールズ・ハラハン
ジョージ・ベニングス 気象学者 : ピーター・マローニー
クラーク 犬飼育係 : リチャード・メイサー
フュークス 生物学助手 : ジョエル・ポリス
ウィンドウズ 無線通信技師 : トーマス・G・ウェイツ

●●● もくじ 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●

 

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