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2012年8月28日 (火)

■【映画評】『プロメテウス』。新たなる物語の序章。

エイリアンの前日譚としては期待を裏切らない、が、映画作品としてはどうだろう・・・。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.58  『プロメテウス
           原題: Prometheus
          監督: リドリー・スコット 公開:2012年 8月
       出演: ノオミ・ラパス マイケル・ファスベンダー他

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■ストーリー■
人類の起源にかかわる重大な手掛かりを発見した科学者チームが、謎を解明するために宇宙船プロメテウス号に乗り組み、未知の惑星に向かう・・・。

■人類最大の謎、それは≪人類の起源≫。

なんてキャッチコピーで売っているわけだが、実際は、あの『エイリアン』の前日譚である。

なぜ配給元はエイリアンに関わる映画であると宣伝しないのか、それこそ最大の謎だ。

人類の起源に挑む、壮大なSFロマンを期待して見に来たお客さんは、後半のホラーな展開に腰を抜かすことになる。

■まあ、それはそれとして、映画としての『プロメテウス』の評価はどうかというと、これまた微妙なのである。

映像美は抜群。

大自然の空撮も素晴らしいが、何と言っても息を呑むのは3D映像を生かした「エンジニア」(異星人)の宇宙航海図の場面。

さすが、リドリー・スコットと頭を垂れるばかりである。

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■では、何が問題なのかというと、人物造形の薄さ、なのではないだろうか。

今回の探検隊は人数が多すぎるし展開が速すぎて感情移入が追い付かない。人物造形が定まらないままだから、物語を展開していけばいくほど発散する感じなのだ。

その人物造形を一番深く描かれていたのはアンドロイドのデヴィッドだという皮肉。アンドロイドでありながら、その表と裏の表情、そしてその意思を駆動する飽くなき好奇心。

それ故に、彼が出るシーンはそれなりに締まっている。

主人公のエリザベスも描けているといえば、まあまあなのだが、

それに比べて、他のメンバーの空虚たること。

始めの犠牲者となる二人はもちろん、準主役であるチャーリーも薄い。圧倒的に薄い。

彼らの心理描写が薄く、或いは一貫性がないことで観る者の感情移入を拒むのだ。
  


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■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■その感情移入を拒む荒さは、後半に至っても収束しない。

実は、プロメテウス号に乗り込んでました、というウェイランドのじいさんも、「永遠の命が欲しい」という俗物根性丸出しで、その意気込みや良しなのだが、何故、その考えに至ったのか(「エンジニア」=神であり、不死の存在であるという宗教的確信)がまず描かれない。

そして、なんとか「エンジニア」とコンタクトを試みるのだが、あっさりと殺されてしまう。

あっさりと。

■本来なら感涙ものの、キャプテン・ヤネックの特攻シーンも、そこに至る彼の感情を描かないから、そしてこのシーンに至るまでの彼の人間性を描かないから唐突に映る。

ウェイランドの娘だと発覚したメレディスも、いい味を出しかけていたのに、ごろごろ転がる宇宙船につぶされて一巻の終わり。

・・・そう、あっさり過ぎるのだ。

リドリー・スコットも年老いてねちっこさが無くなってしまったのか。『エイリアン』の、『ブラック・レイン』のねちこさはどこへ行ってしまったのだろうか。

それが、ぞくりとする彼のサスペンス、恐怖にとっての必須要素だったのだと思うのだが・・・。

■というわけで、映画としての評価はいまひとつなわけだけれども、それでも楽しめるのは、エイリアン・ファンだから。

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何と言っても、スペース・ジョッキーの人が動いてる!!

しかも、砲台かなにかだと思っていたあの機械はこの宇宙船の操縦席だったのだ!!

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うーん、でもスペース・ジョッキーはもっとでっかかったよな。

今回の惑星はLV-223なのだけれども、エイリアンでの惑星はLV-426と、実は別の惑星なわけで、これも何かのネタがあるのか、単にやり過ごしておくべきなのか、少し迷うところではある。

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■そして、トドメのエイリアン。

ラストで、イカのような巨大なファイスハガーに襲われた「エンジニア」の肉体を破って誕生したヤツ。

LV-223に残った彼は続編で何らかの活躍を見せるのか?

いや、単なるファンサービスなのか?

うーん、私は後者だと思います。

■ところで、話は戻って≪人類の起源≫。

オープニングの「エンジニア」は自らの体を分解して、太古の海に生命の種を注いだ。多分、この後も「エンジニア」たちは地球を訪れて、その生命進化を観察、修正し、ついには自らと同じDNAをもつ≪人類≫を生み出した。

それは何故か?

 

アンドロイドのデヴィッドに問われたチャーリーは、

「それが可能だったから」

と答える。

なぜ、人間はアンドロイドを作ったのか、という問いに対する答えである。

 

実にシニカルだ。

■「エンジニア」たちが≪人類≫を作った理由は、本編では明かされない。

そして、何故、生物兵器をもって滅ぼそうとしたのかも。

その答えを求めて、エリザベスとデヴィッドは「エンジニア」の母星を目指す。

『プロメテウス』は、『エイリアン』という豪華な土台を用いた、単なる序章に過ぎないのかもしれない。

続編『パラダイス』(仮)に向けた壮大な序章。

そして物語はエイリアンから華麗なる離脱を遂げ、新たな伝説を生むのである。

(と、あって欲しい!!)

                        <2012.08.28 記>

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■STAFF■
監督     リドリー・スコット
脚本     デイモン・リンデロフ
        ジョン・スパイツ
製作     リドリー・スコット
        トニー・スコット
        デヴィッド・ガイラー
         ウォルター・ヒル
音楽     マルク・ストライテンフェルト
撮影     ダリウス・ウォルスキー
編集     ピエトロ・スカリア
製作会社  スコット・フリー・プロダクションズ
        ブランディーワイン・プロダクションズ

■CAST■
エリザベス・ショウ     ノオミ・ラパス
若い頃のショウ       ルーシー・ハッチンソン
メレディス・ヴィッカーズ  シャーリーズ・セロン
キャプテン・ヤネック   イドリス・エルバ
デヴィッド         マイケル・ファスベンダー
ピーター・ウィーランド  ガイ・ピアース
チャーリー・ホロウェイ ローガン・マーシャル=グリーン
フォード          ケイト・ディッキー
フィフィールド       ショーン・ハリス
チャンス         エミュ・エリオット
ラヴェル         ベネディクト・ウォン
ミルバーン        レイフ・スポール
ショウの父親      パトリック・ウィルソン

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●●● もくじ 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●

 

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