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2012年3月18日 (日)

■【映画評】『ぼくのエリ 200歳の少女』。異者を受け入れる私もまた異者となるのだ。

物語は淡々と進み、多くを語らない。語りすぎないからこそ、味わいがある。そこが欧州の映画の良さなのだと思う。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.48  『ぼくのエリ 200歳の少女
           原題: Låt den rätte komma in (スウェーデン映画)
          監督:トーマス・アルフレッドソン 公開:2008年1月
       出演:カーレ・ヘーデブラント  リーナ・レアンデション 他

■ぼくのエリ 200歳の少女 [DVD]

■ストーリー■
ストックホルム郊外に住む12歳の少年オスカーは、内気で友達が居ない、いじめられっ子である。ある日、彼の家の隣にエリという名の同い年の女の子が引っ越してくる。ミステリアスなエリにオスカーは恋心を抱くようになるのだが、同じころ、町では失踪・殺人事件が相次いで発生。やがてオスカーはエリの正体が不老不死のヴァンパイアであり、一連の事件と深い関わりがあることを知る。

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■「ぼくのエリ」というタイトルからは、この映画は読み解けない。

オリジナルのタイトルは「Let the Right One In」、正しき者よ入りたまえ、とでも訳すのか。ヴァンパイアは、その家の者に招き入れられないとその中に入れない、というルールがあるようで、それが原題となっている。

と、同時にそれは、「エリ」という存在を「ぼく」が受け入れるかどうか、という問いでもあるのだ。

■それが、この映画のすべてなのだと思う。

そこには「ぼくの」なんて生易しい言葉では表しきれない、自らの存在をも危うくするような決意がある。

何しろ、部屋に入るのを拒んだだけで体中から血液を滴らせるという恐るべき抗議をするような相手なのである。

これを受け入れるのは並大抵のことではない。

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■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■もちろん、エリがバンパイアであることを知ったオスカーにも心の動揺があって、一度は彼女を突き放す。けれども、すでにエリは彼の心の奥深くまで入り込んでいて消し去ることはできない。

何故か。

それは12歳の心の未発達さによるものだとか、いじめられっ子であることによる心の隙間によるものだとか、いろいろ言い方はあるだろう。

けれども、彼は心の素地として、エリと同種のものをかかえていた、というところに本質があるのではないのだろうか。

■日の光のあたるところで生きていくには、つらい、その素地が初めにあって、オスカーに興味をもち、声をかけるエリにはそこが見えたのではないか。

オスカーが受け入れたのは異者としてのエリであると同時に、自らもまた異者であるということを認める。その事実を受け入れる、ということなのではないか、ということである。

そのヒントは、エリの保護者として殺人を繰り返すホーカンの姿に読み取れる。

彼もまた、同じ心の闇をかかえる者であった、ということであり、それはこれから先にオスカーがたどるであろう悲しき道を指し示すのだ。

■ことの大小はあるにせよ、誰もが心の闇を持つ、という観点に立つのであれば、これを観る私自身もまた、明日のホーカンであり、明日のオスカーとなる可能性をもつ。

問題は、それを認め、受け入れてしまうかどうか、にある。

 

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                      <2012.03.18 記>

■STAFF■
監督 トーマス・アルフレッドソン
脚本 ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
原作 ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
    『MORSE -モールス-』
製作 ヨン・ノードリング
    カール・モリンデル
音楽 ヨハン・セーデルクヴィスト
撮影 ホイテ・ヴァン・ホイテマ
編集 トーマス・アルフレッドソン
    ディノ・ヨンサーテル



■CAST■
オスカー  カーレ・ヘーデブラント
エリ     リーナ・レアンデション
ホーカン  ペール・ラグナル

 

●●● もくじ 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●

 

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