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2012年1月22日 (日)

■【映画評】告白。教師であること、人間であること。

後味は悪いが、ずしりとくる作品。R15+指定もうなずける生々しさなのである。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.45  『告白
          監督: 中島哲也 公開:2010年6月
      原作:湊かなえ 『告白』 双葉社刊
      出演: 松たか子  岡田将生 他

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■ストーリー■
終業式のホームルーム。中学生の生徒たちを前に、担任の森口悠子が退職することになったと告げる。そこに至る経緯を淡々と語る森口。それはある復讐に関する告白なのであった。

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■一幕劇と思わせる序盤。告白が進むにつれ、緊張感が張り詰め、森口の無表情な語りがその緊張を増幅する。衝撃的な映像が差し挟まれるのは聞き手である生徒たちの想像か、観るものは、生徒たちと共に一気に事件の核心へといざなわれる。

この第一幕だけで独立した短編映画として十分成立するのであるが、語り手を転々と変えながら、この事件を多面的により深くえぐり出していく。

■教師とは何か。

若き熱血教師ウェルテルをあざ笑う、中学生たちの裏の顔。

ずる賢く、きわめて残酷で、それでいて未成熟な浅はかさ。

事件と並走してあぶりだされていく中学生たちの姿は、少しステレオタイプなものであるかもしれないが、それを補ってあまりある迫力がある。

 

   
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■

■松たか子の演技がいい。

旦那がエイズで、犯行を行った生徒の牛乳にその血液を仕込んでおいた、

なんて荒唐無稽な設定を納得させる静かな迫力。

教師であり、母親であり、被害者であり、冷徹な復讐を計画し、実行する者である。その複雑で発散してしまいそうな人間像をひとりの人物としてしっかりと統合させている。

■そもそも、この映画が語りたかったこととは何か。

通り一遍の見方でいえば、不安定な中学生たちの恐るべき狂気、それを裁くすべのない、少年法という不条理ということになるのだろうが、それはあくまでも表層であり、真意はそこには無いのではないかと思われてならない。

■自己顕示欲のかたまりのような少年B、劣等感に押しつぶされそうな少年A、そのふたりの少年の捻じ曲がった存在証明のために担任の幼い娘を殺してしまうという残酷。

そして平然と授業を受け続ける少年AとBの異常。

その犯罪が裁かれないという不条理と、それを自らの手で裁こうという森口の決意は実に分かりやすい。

だがしかし、この映画の重要な点は、その森口悠子の報復行動をどう評価するかという点にあるのではないか。

■少年Aは劣等感の源であった母親を殺す。

少年Bは唯一の理解者になりかけていた美月を殺す。

そして自己顕示欲を満たすための最期のイベントで、一番に認めて欲しかった、その愛を確かめたかった母親を爆死させてしまう(或いは、そう思い込まされてしまう)。

これらは、殺しまでは考えていなかったとしても、森口の策略によるものである。

少年たちに、自分が味わったのと同じだけの悲しみ、絶望を味あわせる。それらすべてを達成した森口はカタルシスを得たのだろうか。

■告白にあたって、森口は黒板に大きく「命」と書いた。

ラストシーンで、森口は「更生」という言葉を使う。

そこには単なる復讐者ではない何かがある。

本人の意識にのぼってはいないのかもしれないが、その行動の底に、人間を諦めきれない何かがある。

そう、信じたい。

でなければ、あまりにも救いが無さすぎる。

 

いずれにしても、重い映画でありました。

                            <2012.01.22 記>

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■STAFF■
監督・脚本:中島哲也
原作:湊かなえ「告白」(双葉社刊)
撮影:阿藤正一、尾澤篤史
主題歌:「Last Flowers」レディオヘッド



■CAST■
森口悠子 - 松たか子
寺田良輝(ウェルテル) - 岡田将生
下村優子(少年Bの母) - 木村佳乃
森口愛美 - 芦田愛菜
桜宮正義 - 山口馬木也
戸倉 - 高橋努
少年Aの母 - 黒田育世
下村直樹(少年B) - 藤原薫
渡辺修哉(少年A) - 西井幸人
北原美月(少女A) - 橋本愛

 

■【原作】告白 (双葉文庫)

 

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●

 

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