■【映画評】僕の彼女はサイボーグ。視点の転換にググっとくるのだ。
ラストのタネあかしが思い出せず、気になってしまって、再見。
いやー、そう来ましたか。
●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
No.43 『僕の彼女はサイボーグ』
監督・脚本:郭在容(クァク・ジェヨン) 公開:2008年5月
出演 :綾瀬はるか、小出恵介 他
■ストーリー■
僕、ジローは20歳の誕生日をひとり寂しく過ごしていた。そこに不思議な’彼女’が現れて楽しい時間を過ごすが、不可解な言葉を残したまま去ってしまう。
その一年後の誕生日、またしても’彼女’がジローの目の前に現れるのだが、どこかが違う・・・。
■話の組み立てがとてもいい。
映画は、観るものの予測をいい塩梅で裏切る、その加減がひとつの指標だとおもうのだけれども、郭在容(クァク・ジェヨン)は、そこが上手い。
いいエンターテイメントとはそいういうものだと思う。
■前半部は少しテンポが遅いような気もするが、いくつか他の映画のパロディというか、オマージュが散りばめられていて、くすりとさせる。
レストランで彼女が目の前に現れたときのハッピーバースデー(生きる)とか、
一年後の’彼女’の登場シーン(ターミネーター)とか。
タイトルは思い出せないが、どっかで見たなあ、というところもちらほら。
後半部でストーリーは一気に加速するのだけれども、ネタバレになってしまうので、ここでは書くまい。
■作品のテイストは日本映画でありながら、コテコテの韓国味だ。
小出恵介がどうしても韓国の人に見えてしまう。
監督、脚本の力は絶大なのだな、と思う。
■ところで、タイトルの’サイボーグ’。
本来、サイボーグとは生身の人間を改造して機械化したものを指すので、これは間違いである。ロボット、というよりアンドロイドと言ったほうがいい。
が、やっぱり映画はタイトルが命。
「僕の彼女はロボット」、「僕の彼女はアンドロイド」、
ではやっぱり’すわり’が悪かったのだろう。
■■■ 以下、ネタバレ注意 ■■■
■さて、後半部の展開について。
ジローとの生活のなかで’彼女’の人工頭脳が学習し、やっと二人がこころを通わせる、ああこれからだな、というところで突然の大地震。
ビルが、街が崩壊していく、その中でジローを守り抜き、自らを犠牲にして破壊されてしまう’彼女’。
その後の人生のすべてをかけて復元に成功した’彼女’に看取られて幸せにつつまれながら逝くジロー。
それからさらに未来の世界で、自分そっくりの’彼女’に出会う本当の’彼女’。
■ジローの独白のカタチで物語は進行していく。
このやり方は好みなのだが、よくあるパターン。
やられたなぁ、と思うのは’さらなる未来’の段階で、独白の主体が’彼女’に転換するところだ。
■ロボットの’彼女’の記憶を埋め込んで、その切なさを自分のものとした本物の’彼女’。
ジローと初めて出会ったその日を、今度は’彼女’の視点でリフレインする。
しかし、あふれる想いを胸にその場を去らなければならない’彼女’。
ああ、泣ける。これは切ない。
と、いうところでラストのハッピーエンドを用意する心憎さがたまりません。
この感覚は「猟奇的な彼女」でも、味わった気がするな。
郭在容(クァク・ジェヨン)、侮るべからず。
■そういえば、少し前に日テレの土曜日にやっていた「Q10(キュート)」というドラマがあって、結構面白くてはまっていたのだけれども、これは完璧にこの映画から着想を得てますな。
方や恋愛もの、方や青春もの、ということでテーマは少し違うのだけども、ラストはやっぱり泣けます。
<2011.02.05 記>
■STAFF■
監督・脚本:郭在容(クァク・ジェヨン)
■CAST■
彼女 :綾瀬はるか
北村ジロー :小出恵介
ジローの友人 :桐谷健太
教師 :竹中直人
無差別殺人犯 :田口浩正
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