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2010年12月 4日 (土)

■ドガ展。切り取られた「一瞬」に込められた我々の認知の広がり。

ドガを見に横浜美術館へ行った。

何と言っても目玉はエトワール。

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エトワール 1876-77年(42歳頃)

■左下からのフットライトを浴びて浮かび上がるエトワール(星)。

背景のパトロンだとか他のダンサーだとかがどうという論評があるのだけれども、そんなことはどうでも良くて、離れて見たときに感じる「空間」というか「広がり」のようなもの。それに惹きつけられるのだ。

構図の魔術師、とでもいうのだろうか。

Photo_3
バレエの授業 1873-76年(39~42歳頃)

■その「広がり」は、この「バレエの授業」でも別のカタチで我々を魅了する。

切り取られたその瞬間にすべてが詰まっている。

ある視点から見た光景なのだけれど、複数の角度からみた情景、さらに、光、音、匂い。といった情報が総合されて一枚の絵となっている。

それが我々の「認識」というものなのだ。

■ドガは当時普及し始めた写真に傾倒したらしいが、それは単なる写実のための道具ではなく、「事象」を客観的に分析し、理解咀嚼するための道具であって、それそのものではない「何か」、我々が認識・認知する「何か」をあぶりだすための手段に過ぎない。

「瞬間」を切り出す写真という道具。

ドガはそれと同時に、あらゆる角度から対象を認識する道具として蝋細工の彫像をいくつも作っている。

ドガが切り取る「一瞬」には我々が感じるすべての情報が織り込まれていなければならないのだ。

Photo_4
浴盤(湯浴みする女) 1886年(52歳頃)

■写実に止まらない認知としての「一瞬」。

その意味で「印象派」そのものの人であるのだけれども、このマニアックさは一種独特のものがあって、それがドガの魅力なのだと思う。

そのドガ自身が感じていたもの、その感覚を垣間見せてくれるのが、この「14歳の小さな踊り子」だ。

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14歳の小さな踊り子 1880~81年(46歳頃)

■ドガが唯一一般に公開したこの彫像作品のオリジナルは、蝋細工の肉体に実際の素材の衣装を着せ、実際の毛髪を頭にかぶせてリボンで結んだものだったという。

この作品は、それをブロンズで複製し、衣装を着せたものではあるものの、それであっても息を呑む迫力を持っている。

そこには光や音、匂いだけではなく、その息遣いや感情までもが詰まっている。

これはドガの心そのものなのである。

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                        <2010.12.04 記>

   

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» 「ドガ展」 [弐代目・青い日記帳 ]
横浜美術館で開催中の 「ドガ展」に行って来ました。 「ドガ展」公式サイト →「ドガ展」開催!! カフェ・ゲルボワの集った画家たちにより1874年の第1回展から第8回展まで開催された「印象派展」。8回開催された「印象派展」にピサロ(皆勤)に次いで多く参加したのがエドガー・ドガ(第7回展のみ不参加)。 印象派の代表的な存在として扱われるルノワールは第4、5、6、8回展の計4回不参加。モネですらも計3回不参加という状況の中、ほぼ皆勤で出し続けたドガは本来であれば印象派の核とな... [続きを読む]

受信: 2010年12月 7日 (火) 21時20分

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