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2010年8月28日 (土)

■【書評】『アメリカから<自由>が消える』、堤 未果。自由は与えられるものではなく。

自由の国アメリカ。

その根幹を揺るがす事態が静かに進行しているようだ。

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■アメリカから<自由>が消える (扶桑社新書)

   
■すべての発端は2001.9.11の同時多発テロである。

「テロとの戦い」は姿なき敵との戦いであるが故にその戦線はアメリカを起点とする全世界に拡散してしまった。

それ自体がひとつの恐怖であるわけだが、実はそれと並行してもうひとつの<恐怖>が生み出されている。

本書はその実態を丹念な取材によって描き出している。

そのもうひとつの<恐怖>とは、自分の発言や行動が誰かに監視されている。そして、知らない間に、テロなどとは無縁であるはずの自分が「リスト」に載ってしまっている、そういう恐怖なのである。

■「テロとの戦い」という錦の御旗のもと、「管理」する側の権限がどこまでも拡大していく。

テロの実行を阻止する、という本来の目的からはずれ、「危険思想」、「反社会」という価値観によってどうとでもとれる不確かなものへと焦点がずれていく。

「管理社会」というのは旧ソ連を思い出すまでもなくそういう性質のものであり、ジョージ・オーウェルが描いた「1984年」のディストピアに向かうのは必然である。

管理という権限を与えられればその実行がエスカレートしていくのが人間というものだからだ。

■そのエスカレートする動きを押しとどめるのが、合衆国憲法修正第一条<言論の自由>を守り抜こうとするアメリカ人のアメリカ人たる背骨の部分である。

あなたの意見には反対だが、あなたがそれを主張する権利は死んでも守る。

そういう、主義主張の垣根を越えた思想、哲学である。

著者はアメリカの現状にかなり悲観的ではあるものの、その思想を実行する勇気ある人たちを締め括りの部分で紹介しており、そこに希望の光を見出しているようだ。

■あとがきにいう。

    

「反対意見をいう余地や、市民の自由・選択肢が以前よりも制限されている」と、私たちが少しでも感じるかどうか。

それを感じ取るアンテナの精度は、与えられた情報量とその質に比例する。劇場型のメディアだけにしか触れないのならば、社会で起きていることは皮膚感覚でしか受け止められなくなるだろう。本当に知る必要のあるニュースの大半は、視界から姿を消している。自らの頭で考え、検証し、疑問を持つことをやめてしまえば、真実とそうでないものを選り分けることはとても難しい。

<恐怖>に打ち勝つ一番の方法は、何が起きているかを正確に知ることだ。

  

■それは何もアメリカに限った話ではない。

自分の頭で考えるのやめたとき、それはいつの間にかカタチを変えて、すぐそこまで忍び寄ってくる、そういう性質のものなのだと思う。

社会全体がひとつのことを連呼しはじめたとき、それが注意信号だ。

                         <2010.08.28記>

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