■【映画評】『ゴジラ』、最初にして最高の怪獣映画。
言わずと知れた日本怪獣映画の魁である。
●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
No.38 『ゴジラ』
原作:香山 滋 監督:本多猪四郎 特殊技術:円谷英二 公開:1954年
出演: 宝田 明 河内桃子 他
■ストーリー■
水爆実験によって海底の棲みかを追われた古代の巨大生物が東京に上陸し破壊の限りを尽くす。我々人類はその脅威に対抗することは出来るのか。
■ゴジラを見た。
だいたい25年ぶりくらいだろうか。
その後、幾多の怪獣映画を見たが、やはりオリジナルには敵わない。
何故なら、これ以降の特撮怪獣映画は『怪獣』そのものを描くわけだが、この映画は人間の業を描いているからに他ならない。
■その背景には原水爆の脅威があって、直接的にはビキニ島沖での第五福竜丸事件が切っ掛けとなっている。
焼け野原と化した東京の街は、つい10年前の東京大空襲を想起させるが、ゴジラの撒き散らす放射能は目に見えないが故にさらに恐ろしい災厄をもたらす。
被災者収容施設で少年にガイガーカウンターをあてて医師が悲しげに首を振るシーンが事態の深刻さをありありと描いている。
■そんな状況でもなお、この特異な生物を研究の対象として守るべきだと考える山根博士(志村 喬)。
脅威の破壊力をもつオキシジェン・デストリイヤーが政治的に利用される危険性が高いことが分かっていながらそれを完成させてしまう芹沢博士(平田昭彦)。
方向性は違えども、ともに真理を追究せざるを得ないという科学者の業である。
そして、そういった芹沢博士の業によって作り出されたオキシジェン・デストロイヤーでしかゴジラに対抗出来なかった、その悲観がこの映画に深みを与えているのである。
■もちろん怪獣映画としても素晴らしい。
ストップモーションによる人形アニメーションが主流だったアメリカの特撮映画に対して、精巧なミニチュアの街と着ぐるみ怪獣の組み合わせによる新機軸。
CG全盛の現在においても着ぐるみの実写の方がリアリティがある。
未だに廃れないその技術の元祖でありながら既に完成されているところに改めて驚かされる。
■あらを探せば切りが無いし、画面の粗さに助けられている部分もあるだろうけれども、本編と特撮の切れ目が気にならない。
映画に没入するためにはそこが一番キモになる部分なのだと思う。
それはセットやミニチュアを如何に精巧に作るかという、実に地道な作業に支えられているのである。
■このあと『ゴジラ』は怪獣プロレスへの道へと進み、志は急速に曲がっていってしまうのであるが、『クローバーフィールド』とか『グエムル・漢口の怪物』など現代の怪物映画に確実にその志は引き継がれている。
その意味で怪物・怪獣映画の金字塔といって間違いない、不朽の名作なのである。
<2010.01.09 記>
■STAFF■
原作:香山 滋
監督:本多猪四郎
特殊技術:円谷英二
■CAST■
尾形秀人(南海サルベージKK所長) 宝田 明
山根恵美子(山根博士の娘、尾形の恋人) 河内桃子
芹沢大助(科学者、山根博士の愛弟子) 平田昭彦
山根恭平(古生物学者) 志村 喬
■過去記事■
■【映画評】名画座・キネマ電気羊 <目次>へ
■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■
■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント