■【映画評】『沈まぬ太陽』。人間の生き様。ラストシーンの感動が止まらない。
上映時間3時間22分の大作である。
●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
No.36 『 沈まぬ太陽 』
監督: 若松節朗 公開:2009年10月
出演: 渡辺謙 三浦友和 他
■休憩10分をはさんだ3時間半もの長大な映画。集中して見ることができるかどうか、正直あんまり自信が無くて見に行くのをためらっていたのだけれども、そんな心配はまったくの無用。
恩地元というあまりにも真っ直ぐな男の生き様にあっという間に取り込まれてしまったのであった。
■ストーリー■
昭和30年代。巨大企業・国民航空社員の恩地元は、労働組合委員長を務めた結果、会社から10年におよぶ僻地での海外勤務を命じられた。かつて共に闘った同期の行天四郎が組合を抜けてエリートコースを歩みはじめる一方で、恩地は家族との長年にわたる離れ離れの生活で焦燥感と孤独に追いつめられ、本社への復帰を果たすも不遇な日々は続くのだった。そんな中、航空史上最大のジャンボ機墜落事故が起こり…。<goo映画より>
■この作品は、己の信念を曲げないがために僻地をたらいまわしにされる恩地の話と、日航ジャンボ墜落事故とその遺族の話、そして航空会社の腐敗体質にまつわる話が交差しながら進んでいく。
それぞれの話がそれぞれに深くて物語が発散してしまいそうに思えるのだが、それが逆にうまく共鳴しあい、さらに深みを増している。
■そのなかでもやはり御巣鷹山の墜落事故の遺族たちの話がやるせない。
あれから24年も経つというのにあのときのショックが鮮明に蘇る。
特に墜落中に家族に向けたメモを残した父親と、それを読む息子の話は胸がつぶれる思い。
丹念に遺族に取材したのであろう事実がしっかりと背景にあって、だからこそのリアリティであって、だからこその重みなのである。
■その一方で、この映画は実直な恩地元(渡辺謙)と、出世の鬼と化した行天四郎(三浦友和)の歴史を縦糸として物語を織っていく。
明と暗、陰と陽のそのコントラストが素晴らしく、またそのコントラストの強さに関わらず陳腐に落ちないのがまた素晴らしい。
それはもちろん原作と脚本によるものであるけれども、渡辺謙と三浦友和の魂を揺さぶる好演によるところが大。
また、そのコントラストを際立たせる俳優陣の力にもよるのだろう。
何しろそれぞれが主役を張れるような豪華な顔ぶれで、ため息が出るくらいなのだ。
■ラストシーン。
妻に先立たれ、日航機の事故で息子家族を一度に失い、ただひとり残された老人(宇津井健)が四国のお遍路の旅にいる。
その老人に宛てた恩地の手紙が胸を激しく揺さぶる。
こころの奥の底のところでズンと打ち震えるような感動だ。
救いようの無い絶望。
そこにはどんな慰めの言葉も届かない。
それでも生きていこうと思わせるのは、広大な自然に向かって立ち、ちっぽけな自分をいつまでも照らしている夕陽、その瞬間にあるのだ。
<2009.11.07 記>
■【原作】沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上)山崎 豊子 著 新潮文庫 (2001/11)
■STAFF■
原作:山崎豊子『沈まぬ太陽』
監督:若松節朗
製作総指揮:角川歴彦
企画:小林俊一
製作:井上泰一
脚本:西岡琢也
音楽:住友紀人
エンディング・テーマ:福原美穂『Cry No More』
製作:「沈まぬ太陽」製作委員会
製作プロダクション:角川映画
配給:東宝
■航空会社やスポンサーに首根っこを抑えられたテレビ会社の協力を得ずにこれだけの大作を真っ直ぐ作り上げた製作委員会と角川に深い敬意を感じます。
■CAST■
恩地元:渡辺謙
行天四郎:三浦友和
三井美樹:松雪泰子
恩地りつ子:鈴木京香
* * * * * * * *
国見正之:石坂浩二
八馬忠次:西村雅彦
桧山社長:神山繁
小暮社長:横内正
堂本社長:柴俊夫
和光監査役:大杉漣
八木和夫:香川照之
* * * * * * * *
利根川総理:加藤剛
龍崎一清:品川徹
竹丸副総理:小林稔侍
道塚運輸大臣:小野武彦
* * * * * * * *
阪口清一郎:宇津井健
鈴木夏子:木村多江
小山田修子:清水美沙
布施晴美:鶴田真由
* * * * * * * *
恩地純子:戸田恵梨香
恩地克己:柏原崇
恩地将江:草笛光子
* * * * * * * *
国民航空123便操縦士:小日向文世
航空管制官:長谷川初範
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