« 2009年10月 | トップページ | 2009年12月 »

2009年11月

2009年11月29日 (日)

■【映画評】エイリアン4部作。オリジナルは唯一無二の傑作だが、続編も3者3様の面白さ。

今回は4本立てで行きましょう。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.37 『 エイリアン4部作 』
          

■『エイリアン ALIEN』(1979年公開)
 監督 リドリー・スコット 脚本 ダン・オバノン
 クリーチャーデザイン H・R・ギーガー
 出演 シガニー・ウィーバー トム・スケリット 他

Photo
■エイリアン (ベストヒット・セレクション) [DVD]

■一番好きな映画は何?

なんて聞かれることがあるが、そういう時は迷った挙句、『ニューシネマパラダイス』とか『生きる』とか無難に答えるのだけれど、実は本当に大好きなのは『エイリアン』なのだ。

これほどにハラハラする映画は無くて、何度見ても同じところでビックリするのだから、驚くべきホラー映画なのである。

ケインがフェイスハガーに襲われる時でしょ、ブレットがビッグチャップに襲われる時でしょ、ダラスが通気口の中でやられるシーンでしょ、アッシュが・・・な時でしょ、それに最高のラストシーン。

■この映画は、CMディレクターだったリドリー・スコットのメジャー映画デビュー作品なんだけど、巨匠といわれる現在と同じか、いやそれ以上に’リドリー・スコットらしい’映画なのである。

滴る水、水蒸気、陰影が強調された画面。

特にブレッドが猫(ジョンジーだっけ?)を探しているときに、上の吹き抜けから水が滴り落ちてきて上を見上げる、あのシーンが最高だ。

■ビッグチャップ(エイリアンの成体)をほとんど見せない手法も、怖さを盛り上げる効果抜群。

初めて見たときにはその姿はほとんど判別できなかったもんな。

’見えない’、けどもしかしたら恐ろしいものがそこにいるかも知れない、という恐怖は原初の昔からDNAによって伝わってきた本能的反応なのだろう。

■ディレクターズカットでは、最後の脱出の場面の途中で、ダラスが繭にされているシーンが差し挟まれてこれも魅力的なのだが、やはりここは劇場公開版の方が私は好きだ。

危機感が盛り上がっていく場面で水がさされる感じがするからである。

そこをカットしたのはプロデューサーらしいのだが、その辺り、映画は監督だけで作るものではないなあ、と思う。

■あと忘れちゃいけないのがH・R・ギーガーのデザイン。

ビッグチャップを筆頭に、異星人の遺棄された宇宙船、その内部、エイリアンエッグと今までには全くなかったエロティックかつグロテスクな世界を作り出している。

■そんなこんなで語りだすとキリが無いのだけれども、ともかくこのオリジナルの『エイリアン』は企画、脚本、演出、デザイン、音楽、もちろん役者の演技を含めて最高の組み合わせであって、いつまでも記憶されていくだろう素晴らしい映画なのである。

      

■『エイリアン2 ALIENS』(1986年公開)
 監督・脚本 ジェームズ・キャメロン
 デザイン シド・ミード 他
 出演 シガニー・ウィーバー ジェニット・ゴールドスタイン他

Photo_2
■エイリアン2 完全版 [DVD]

■今度は戦争だ!というのがキャッチコピー。

『エイリアン』は一匹のビッグチャップの強さが圧倒的であったが、エイリアン2では圧倒的なのはウォーリアー(兵隊エイリアン?)の数。

■海兵隊の重火器にによって次々にエイリアンが殺られるのだけれど、次から次から現れるからどんどんと追い詰められていく。

まさに戦争。

オリジナルの『エイリアン』はあまりに完成度が高いので同じ土俵で戦わなかったジェームズ・キャメロンは正解だったと思う。

■もうひとつの特徴はエイリアン・クイーンを生み出したところ。

リプリーと孤児ニュートの関係とクイーンとウォリアーとの関係がオーバーラップして、’母の強さ’というサブテーマをうまく作り出している。

個人的には前作の’捉われた人間が繭となり、新しい卵になる’というイメージが好きだったのでちょっと残念なのだけれど。

■この映画、劇場公開版は137分、ディレクターズカットでは154分。

大体において私の好みは簡潔な劇場公開版なのだけれども、この映画だけは違う。

その長い上映時間を飽きさせず濃密に話を展開させていくのがジェームズ・キャメロンの本領なのだろう。

   

■『エイリアン3 ALIEN3(1992年公開)
 監督 デヴィッド・フィンチャー
 出演 シガニー・ウィーバー ランス・ヘンリクセン 他

Photo_3
■エイリアン3 完全版 (2枚組 プレミアム) [DVD]

■失敗映画の代表作と評価されてしまう可哀想な映画。

撮影が開始されているにも関わらず脚本の骨格すら定まっていなかったという酷い状態だったらしい。

各所に見られる’何となく落ち着かない感じ’も仕方なし、要するに映画として仕上がっていないまま公開されてしまった、というところか。

■それでも、決して悪い映画ではないと思う。

デヴィッド・フィンチャーが作り出した監獄惑星という独特の世界観は、その雰囲気だけでも味わう価値はあるだろう。

■エイリアン2に登場したアンドロイド、ビショップがこの作品にも登場するのだけれども、終盤、そのオリジナルとおぼしき科学者が登場するあたりからは「物語」としても面白い。

エンディングについては劇場版と完全版で異なるが、好みとしてはリプリーがクイーン・チェストバスターを抱きしめて落ちていく劇場版の方がいいかな。

  

■『エイリアン4 ALIEN:Resurrection』(1997年公開)
監督 ジャン=ピエール・ジュネ
出演 シガニー・ウィーバー ウィノナ・ライダー 他
 

 Photo_4
■エイリアン4 完全版 [DVD]

■副題のResurrectionは死者の復活、よみがえりの意。

その名の通り、前作で死んだはずのリプリーがクローンとして蘇る。

それも体内に宿していたエイリアンの遺伝子が組み込まれていて、驚異の運動能力と超酸性の血液をもった悲しきハイブリッドとして。

■登場するエイリアンの方も今までの’全くの異物’ではなく、怒りの感情を持っていたり、人間たちを罠にかける知恵まで兼ね備えていて共感の余地がある。

そのあたりも新鮮な感覚があって面白い。

あとはリプリーの娘(?)とも言えるニューボーン。彼女の最期は本当に可哀想だったなあ。

■この作品は前作とまったく逆で設定がシッカリしている。

ゆえに安心して見ていられるエンターテイメントなのである。

重要な役割りを担うウィノナ・ライダーも可愛くて華があるしね。

■ラストは劇場公開版と完全版でまったく異なるものになっている。

爽やかな劇場公開版もいいが、新しい物語が後に続きそうな完全版もいい。

完全版の衝撃のラストについては、オープニングに伏線らしきものがあって、そこも面白い。

     

■エイリアン アルティメット・コレクション [DVD BOX]

Photo_5
■エイリアン アルティメット・コレクション [DVD]
■エイリアン1~4の完全版。
エイリアン1と4は劇場公開版も収録。

 

●にほんブログ村●
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

                           <2009.11.29 記>

    
■過去記事■

■【映画評】名画座・キネマ電気羊 <目次>へ

   
■ Amazon.co.jp ■

■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年11月28日 (土)

■NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』第1部。始まるのが待ちきれない。

司馬遼太郎の代表作のひとつ『坂の上の雲』。

高校時代に始めて読んだときは、その面白さにどっぷり浸かったものである。

その『坂の上の雲』、ずいぶん前からNHKでドラマ化されるという話があって、なかなか始まらないなぁ、とやきもきしていたのだが、いよいよついに明日、始まるのだ。

Img_story01_01
■2009.11.29(日)より 20:00~21:30 NHK総合 

■今年から3年に渡って年末に放映される予定だそうで、今回の第一部は日清戦争が終わって秋山真之がアメリカに留学するところまで。

明治維新によって世界に扉を開いた日本が、好奇心旺盛な少年のようにグイグイと成長していくその過程を、秋山好古、真之、正岡子規の3人の青年の成長と重ね合わせて描く、それが今年放映の第1部、ということだろう。

■正岡子規が病床のなかで高浜虚子らと新しい俳句の世界を模索し、その一方でロシアの影が日本に忍び寄り、ついに日露戦争開戦、というのが来年の第2部。

秋山好古、真之兄弟が陸軍、海軍それぞれの立場で、ぎりぎり限界のところでロシア軍を押しとどめる、そのクライマックスが再来年の第3部。

いやー、書いていて何だかもう、わくわくしてきた。

始まる前から待ちきれない感じなのである。

    

●にほんブログ村● 
にほんブログ村 テレビブログ テレビドラマへ

                           <2009.11.28記>

■Amazon.co.jp■へのリンク

Photo
■坂の上の雲(全八巻)司馬遼太郎 著 文春文庫

  
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

■キャスト■
秋山真之  : 本木雅弘     海軍軍人。日露戦争時の連合艦隊参謀
秋山好古  : 阿部 寛       陸軍軍人。“日本騎兵の父”とよばれる
正岡子規  : 香川照之      俳人・歌人。俳句や短歌の革新を目指す
* * * * * * * * *
山本権兵衛  : 石坂浩二   日露戦争時の海軍大臣。
                                       後に第16・22代総理大臣
東郷平八郎  : 渡 哲也     海軍軍人・日露戦争時の連合艦隊司令長官
高橋是清    : 西田敏行    神田・共立学校の英語教師。後に大蔵大臣、
                                       第20代総理大臣
伊藤博文    : 加藤 剛      初代内閣総理大臣
児玉源太郎  : 高橋英樹    陸軍軍人。日露戦争時の満州軍総参謀長
* * * * * * * * *
夏目漱石  : 小澤征悦        小説家。子規とは親交が深かった
秋山久敬  : 伊東四朗         秋山兄弟の父
秋山 貞   : 竹下景子         秋山兄弟の母
秋山多美  : 松たか子          好古の妻
秋山季子  : 石原さとみ        真之の妻
広瀬武夫  : 藤本隆宏         海軍軍人。海軍での真之の友人
正岡 律   : 菅野美穂        子規の妹。病床の子規を支え続けた
陸 羯南    : 佐野史郎           新聞「日本」主筆。子規の恩人
正岡八重  : 原田美枝子       子規、律の母

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

■過去記事■
■TVドラマ雑感・バックナンバー

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (0) | トラックバック (0)

■紅葉始め。

紅葉を眺めに行った。

まだ葉っぱ全体が真っ赤に染まるところまではいかず、

けれども濃い赤と淡い橙色のグラデーションが

陽の光を浴びて、美しかった。

Img_5733

Img_5743

Img_5739_2

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

                           <2009.11.28 記>

  
■■■ 花の写真 ■■■  
↑カテゴリー・【花の写真】へのリンクです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年11月26日 (木)

■エンジン一部脱落、F-15緊急着陸。

こんなことって起きるんだねぇ。

20091126_f15
25日午後3時20分ごろ、航空自衛隊千歳基地の第2航空団・第201飛行隊所属のF15戦闘機(1人乗り)が北海道の北西の日本海上で訓練中に左側エンジンに異常が生じ、約20分後に千歳基地に緊急着陸した。エンジン2基のうち左エンジンのノズル(直径1.2メートル、長さ2.2メートル、重さ約200キロ)が脱落。洋上に落下したとみられる。同機はほか3機と対戦闘機戦闘訓練中だったが、エンジンの出力を最小にして帰還し、乗員にけがはなかった。同航空団で原因を調べている。<Asahi.comより> 

■F-15は空中崩壊の話もあるし、耐久強度的にそろそろヤバいということだろうか。でも、ベクタースラストでもないのにね。一体どういうことなんだろう。振動?

まあ、だけどエンジン本体は生きてたようで無事生還、良かった良かった。

 
■過去の記事■ 飛行機、宇宙の話など  
    

■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年11月24日 (火)

■【書評】『複雑な世界、単純な法則 ―ネットワーク科学の最前線―』、マーク・ブキャナン著。我々を取り巻く複雑なネットワークが持つ、幾つかの特性。

この世は複雑でまったく予測できないような振る舞いをみせるものである。

が、実はそのなかには単純な仕組みが加速度的に折り重なっていくことで生じるものがあって、それ故に、その複雑な振る舞いの性質を知ったり、予測をすることが可能な場合があるのだ。

それは原子でも細胞でも社会でも、その要素に関わり無くその性質が普遍的であるというのだから面白い。

とても面白い話なので、ここでは、書評、というよりは備忘録として書いてみたい。

Photo
■複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線
マーク・ブキャナン著 草思社 (2005/2/25)

■1960年代、’アイヒマンテスト’で有名な心理学者スタンレー・ミルグラムが面白い実験を行った。

アメリカの片田舎の見知らぬ人からボストンの株仲買人へと知り合い伝いに手紙を送ってもらったところ、何度やっても6人前後で目指す相手に手紙が届いたという。

広大な土地に何億もの人が住むアメリカがこんなにも狭いのか、と世界を驚かせた、世にいう「6次の隔たり」である。

■いやいや、数学的に考えれば、一人に50人の知り合いがいれば、50×50=2500、2500×50=125,000、と繰り返し50を掛けていけば50の6乗は156億2500となって、「6次の隔たり」なんて、当ったり前ジャン、

というのは浅はかな考えで、「知り合い」というものは身近にいるもので、50人の知り合い同士が重複してしまうのが実際の世界なのである。

■身近な知り合い同士がひとつの集団を形作る、それを「クラスター」と呼ぶ。

実は、このクラスターが複雑な系における大事な役割りを担っていて、リンクがひとつふたつ切れたところで近傍でつながっているリンクを伝ってすぐに切れたリンクを補完してしまう性質をもっている。

ちょっとやそっとのことでは崩れない、システムの安定性、強さがそこに生まれるのだ。

■「クラスター」については分かった、じゃあ、何で「6次の隔たり」が起きるのか。

それを幾何学的に解いたのがニューヨーク州コーネル大学の数学者ワッツとストロンガッツ、1998年冬のことである。

円周上に1000の点を打ち、ひとつの点から近傍10個の点をつないでみる(クラスターを作る)。そうして今度は遠く離れたクラスター同士をつなぐ線を何本か追加してみるのだ。

すると、遠距離リンクを追加する前の隔たりが約50であったのが、一気に7までに落ちたのである。

■同じように世界人口60億の点もわずか数本の長距離リンク(ショートカット)を追加することで6次に収まることがシミュレーションによって確かめられている。

キモは近傍同志をつないで生じるクラスターの規則性と長距離リンクのランダムさ。

それが世界の60億人を6回でつないでしまう不思議な世界、「スモールワールド・ネットワーク」を生むのである。

■この仕組みは実際の世界にもあって、ホタルの群れの同時点灯、下等動物の神経ネットワーク、巨大な電力供給ネットワークにも見られる構図なのだ。

ひとつの点からのびるリンクの数がほとんど変わらないことから、このモデルを「平等主義ネットワーク」と呼ぶとすると、実はもうひとつスモールワールド・ネットワークのカタチがある。

今、自分が向かっているパソコン。

そこから拡がっていくインターネットのウェブの世界がそれである。

■その特徴は、近傍同士がつながるクラスターという性質はそのままに、そのうち幾つかの点が他より非常に多くの繋がりをもつ、というものである。

その非常に多くの接続をもつ点をハブと呼ぶ。

アマゾンだとか、ヤフーだとか、皆が集中してリンクを張る人気サイトがそれだ。

そのハブの存在によって、インターネットのサイト同士は非常に短い距離で結ばれているのだ。

■このネットワークの面白いところは、自然発生的に生じるというところである。

人気のあるサイトには皆がリンクを張りたがり、ますますリンクの数が増えていく。そうやって極少数の点に多くのリンクがつながっていく構図がある。

その性質から、先の「平等主義ネットワーク」に対して「貴族的ネットワーク」と本書では呼んでいる。

■それはインターネットのウェブサイトが作る世界だけではない。

雨水が流れれば流れるほど地面が削られ流域を拡げていく河川の面積における本流と支流の格差や、金持ちになればなるほど投資する余剰資金が増えていくことで生じる貧富の格差、長い腕ほど多くの氷の粒をつけて伸びていく雪の結晶など、など。

そこにあるのは、金持ちがますます金持ちになるといった(べき乗数に従う)単純な法則であって、一見複雑に見えるけれども、実は簡単な話でなりたっているのである。

■大切なことは、原子、分子や病原菌、歩行者、株の取引から国家に至るまで、その構成要素に関わらず共通の性質を持つ、ということである。

生態系の健全さにおいて最も重要な種は何か、

感染症と戦うにはどんな戦略が有効か、

ウェブのネットワークを守る最善の方法は何か、

企業における業務のネットワークをどのようにすれば、効率的で安定したアウトプットを生む組織を作り出すことができるのか、

そのヒントが、このスモールワールド・ネットワーク共通の性質を知ることで分かってくるのである。

■強靭なネットワークは近傍の集団が強い繋がりで結びついていることにより(クラスター化)、そして世界の広がりを小さくする、効率化するには極少ない要素が多くの弱いつながりを持つ(ハブを持つ)ことである。

逆に言えば、近傍同士のつながりが弱ければシステムは脆弱になり、ハブとなる要素が取りさらわれれば、ネットワークの効率は致命的に弱くなる。

とするならば、先の疑問の答えはおのずと分かってくるだろう。

■もうひとつのポイントは、ハブには物理的限界があるということだ。

最近、羽田空港のからみでハブ空港が話題になっているが、アメリカでは既にハブ空港は管制の限界に至っていて、周囲の中小の空港への分散化が始まっており、一極集中の構図が崩れていっている。

では、その先に何があるかというと、先に示した「平等主義ネットワーク」である。

生物の神経ネットワークや電力供給ネットワークなど、ハブという意味では物理的限界が低いネットワークが平等主義ネットワークに落ち着いているのもうなづける。

■さて、我々を取り巻く複雑なネットワークシステムがもつ特性を幾つか理解したわけだが、これらの知識は何も科学や社会構造の研究の最先端の世界だけに活かせるだけのものではない。

その特性は我々の社会、組織、仕事のやり方にも影響を及ぼしているのであって、実際にそこからいろいろと重要なヒントが得られるのだと思う。

と同時に、実際の世界の丹念な実態調査とコンピューターによる高度なシミュレーションによって初めて分かる部分があるわけで、一般論以上の部分はなかなか素人には手が出せないのも事実だろう。

このあたり、世間に溢れる’予測’と呼ばれるものに対する「正しい見方」を示唆してくれるものなのかもしれない。
 

●にほんブログ村● 
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

                          <2009.11.24 記>

■Amazon.co.jp■へのリンク

Photo_2
■複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線
マーク・ブキャナン著 草思社 (2005/2/25)

  

■過去記事■
■【書評】ひつじの本棚 <バックナンバー>
 

*********************************************

■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年11月20日 (金)

■【書評】『獣の奏者』Ⅰ闘蛇編/Ⅱ王獣編、上橋菜穂子 著。群れの中の個の生き様を描く、ファンタジーの姿を借りた社会論。

NHK教育でやっているアニメ『獣の奏者エリン』の原作である。

なんだ子供向けか、と思ったら大間違い。

大人の心をグイと引き込む力強さをもった作品なのだ。

Photo Photo_2
■獣の奏者〈1〉闘蛇編 ■獣の奏者〈2〉王獣編
上橋 菜穂子 著  講談社文庫(2009/8/12)
 

■作品の世界はいかにもファンタジーらしい世界だ。

崇拝される王がいて、国を守る戦人がいる。

その戦人が操るのが’闘蛇’といわれる竜のような巨大な生物。

主人公のエリンはその闘蛇を育てる闘蛇衆の村に生まれるが生粋の闘蛇衆ではなく、緑の瞳をもつ流浪の民族、’霧の民’を母に持つ。

父は既に亡く、10歳にして目の前でその母を残酷なカタチで喪ったエリンがくじけずに成長していく、そういう物語でもある。

■だが、この物語の力強さの源泉は何かといえば、徹底したリアリズムにある。

ぬらぬらとした粘液に包まれジャコウのような甘いニオイを放つ’闘蛇’の描写から、蜂飼いのジョウンが蜜蜂の巣分けをする場面や、’闘蛇’の天敵である’王獣’のヒナとのコミュニケーションを試みるためにエリンが竪琴を改造する場面。

映像はもちろん、そのニオイ、手触り、音、といった五感のすべてにありありとした手応えをもって現れてくるのである。

そして、そのリアリズムは場面描写だけに留まらず、思わずハッとするような情け容赦のない物語の展開にも現れる。

期待する甘い期待をスパリと切り裂く鋭い刃にリアリティが宿るのである。

■さて、この物語のテーマは何であろうか。

 ― この世に生きるものが、なぜ、このように在るのか、を知りたいのです。

エリンが’獣ノ医術師’の学校の試験で、志望理由を問われたときの答えである。

わたしには、どうもこのあたりに核心があるのでは、と思うのだ。

■決して人に慣れることのないといわれていた王獣とのコミュニケーションにエリンは成功する。

では逆に、何故、何百年もの間、先達たちはひとりも王獣と対話をかわすことができなかったのか。

実は王獣を扱う為の’王獣規範’という厳格な規定があって、それに従う限り、ヒトは王獣とコミュニケーションが取れないように巧妙に仕組まれていたのだ。

■ヒトと獣が本当に分かりあうことは出来ない、そこには相手を制御するための’恐怖’が必要なのだ、とする考え方があって、王獣を制御する唯一の手段が’音無し笛’というもので、それを吹くと王獣は固まったように動けなくなってしまうのである。

それをヒトが作り上げる社会にアナロジーを求めたとき、極めて絶望的な社会の見方へとつながっていく。

■ヒトの世界には掟、戒律というものが、ある。

見えるもの、分かるものもあれば、見えぬもの、気付かぬものもある。

それらは人々が’安全’に暮らしていくために必要なものではあるが、それは同時に実は王獣に対する音無し笛のようなもので、我々のこころを縛りつけ、思考停止に陥らせているのではないか。

思考停止のまま群体として動いていくイメージ。

それを果たして生きていると言えるのであろうか、という作者の問いかけを感じてしまうのだ。

■その究極が蜂の社会であり、それを言いたいが為に、物語の前編において丁寧に丁寧にそれを描いたのではないか。

だからどうだ、とはっきり言わないのが小説の良さである。

ポンと投げたいくつかの小石が、心の水面に波紋を作り、それが重なり合いながら幾重にも拡がっていく。

そこに描かれる模様は、読み手のこれまでの人生によって変わっていくのである。

■だが、己の出自である霧の民の生き方に対して反吐が出る、と血を吐く思いで切り捨てるエリン。

そこに作者の想いが現れている、群れるな、と。

そしてそのとき、個が個として生き始めたとき、

初めて個と個が通じ合うことが出来る。

ラストシーンの感動は、その力強い希望の光なのであった。

    

●にほんブログ村●
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

                        <2009.11.20 記>

■Amazon.co.jp■へのリンク

Photo Photo_2
■獣の奏者〈1〉闘蛇編 ■獣の奏者〈2〉王獣編
上橋 菜穂子 著  講談社文庫(2009/8/12)
■続編として3巻目の<探求編>、4巻目の<完結編>が単行本で出ているけれども、1巻目の<闘蛇編>と2巻目の<王獣編>で話は完結しているので、ここで留めておくのもいいと思う。というより単行本を買うのはちと高いよね、やっぱり。
    

Photo ■獣の奏者 (3)探求編

Photo_2 ■獣の奏者 (4)完結編

 

■過去記事■
■【書評】ひつじの本棚 <バックナンバー>
 

*********************************************

■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年11月14日 (土)

■【書評】『「A」―マスコミが報道しなかったオウムの素顔』、森達也。たとえ理解不能であったとしても。

久しぶりに森達也を読む。

この人の文章は、するすると心に入ってくる。

何故だろうか。

A
■「A」―マスコミが報道しなかったオウムの素顔
森達也 著 2002/01 (角川文庫)

■本書は広報担当、荒木浩を中心に据え、地下鉄サリン事件以降のオウム真理教の内側を描いたドキュメンタリー映画『 A 』の製作記である。

テーマは、オウムの内側から社会を眺めることで日本人のメンタリティを探ること。

結果、そこに立ち上がるのはひとりひとりの人間が組織に組み込まれることで陥ってしまう思考停止。

それは地下鉄サリン事件を引き起こしながらも意識の変化が現れないオウムの信者たちの思考停止と、「社会の敵」と定義されたオウムに対して、相手もまた人間なのだという想像力を失ったマスコミを筆頭にした社会の側の思考停止、その合わせ鏡的な構図である。

■思考方法が根本的に異なる「オウム」と「社会」の狭間に立って、その通訳に当たる広報担当、荒木浩は、「言葉」が通じないその断絶の深さに苦しむ。

そしてオウムの本質を理解しようと、カメラを覗きながら、言葉を投げかけながら理解不能のその断絶の深さに苦悩する森達也。

ここにもまた合わせ鏡が存在し、けれどもその理解不能、通訳不能の苦悩があるからこそ、そこに安易なレッテル張りはなく思考停止から逃れることが出来る。

決して相手を理解できないと分かったとしても、組織を離れたひとりの人間として相手に対面したとき、共に歩いていくことが出来る。

■タイトルの「A」は、『オウム』のA、『麻原』のA、『荒木』のAでもあるのだけれども、それ以上に誰でもない、どこにでもいるA、つまり我々一人ひとりのことだ。

9.11があって、そこでもまた思考停止が蔓延し、未だに戦争状態が続いている。

オウムに限ったことではなく、この世の中、相容れない考え方をする組織同士の争いは止むことはない。

我々一人ひとりが自分のあたまで考えることの重要さに変わりは無く、相互に認め合うことの必要性という意味では、さらに大切な時代を迎えているのだと思う。
  

●にほんブログ村●
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

                          <2009.11.14 記>

■Amazon.co.jp■へのリンク

A_2
■「A」―マスコミが報道しなかったオウムの素顔
森達也 著 2002/01 (角川文庫)

Dvd_a_
■【DVD】A  監督 森達也 1997年
■この本を読んでいて作品の方が無性に見たくなった。
レンタル屋に置いてるかな・・・。

A2dvd
■【DVD】A2 監督 森達也 2001年

  

■過去記事■
■【書評】ひつじの本棚 <バックナンバー>
 

*********************************************

■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年11月12日 (木)

■NHK土曜ドラマ『外事警察』が楽しみなのだ。

『ハゲタカ』のスタッフが今度は諜報の世界に挑戦する。

14(土)から全6回で始まる土曜ドラマ『外事警察』だ。

原作は『宣戦布告』の麻生 幾。

いやー、これは面白そうですな。楽しみ、楽しみ。

                        <2009.11.12 記>

■Amazon.co.jp■へのリンク

Photo
■外事警察 麻生 幾 著 日本放送出版協会 (2009/09)

■スタッフ■
原案 麻生 幾
脚本 古沢良太
演出 堀切園健太郎 他?
音楽 梅林 茂

■キャスト■
渡部篤郎
石田ゆり子
尾野真千子
片岡礼子
遠藤憲一
余貴美子
石橋凌 他

 
■土曜ドラマ『外事警察』番組HP

     

●にほんブログ村●
にほんブログ村 テレビブログ テレビドラマへ

*******************************************

■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2009年11月10日 (火)

■【書評】2日で人生が変わる「箱」の法則。心の戦争、心の平和。

’2日で人生が変わる’っていうのは大袈裟だけれども、確かにものの見方が少し変わったような気がする。

2
■2日で人生が変わる「箱」の法則

■本書はベストセラー『自分の小さな「箱」から脱出する方法』の続編であり、かつエピソードゼロ的本である。

前作で主人公を「箱」の外に導いたルー・ハーバートが今回の主役。

犯罪に手を染めた息子が40日間の矯正キャンプに送り込まれることになるのだが、それを始めるに当たってその親を対象にした2日間のプログラムが実施される。

ルーはそのプログラムで、変わらなければならないのは息子ではなく実は自分自身だったということに、そして自分のこころを閉じ込め苦しめている「箱」の存在について自ら気付いていく、という内容だ。

■前著では、「箱」=自己欺瞞の概念の説明、そこからの脱出方法=相手を人間と見る、というところに重点を置かれていたが、今回はそれをさらに深堀りし、特に、相手を「モノ」ではなく「人間」としてみる、という方を繰り返し繰り返し説いていく。

「優越」、「当然」、「体裁」、「劣等感」。

そういった歪んだものの見方に捉われ、相手に不満をもって接するとき、人間はその相手を「モノ」として見ている。

自分と同じ血の通った人間であると感じることが出来ず、やっかいな「モノ」として扱ってしまう。

■すると相手も同じように自分を「モノ」として扱うようになり、不満が不満を呼ぶ連鎖反応が生じて人間らしい思いやりのある関係が消え去る。

心の戦争状態が生じ、安らかな心の平和が乱されてしまう。

それは家庭や職場で起きることだが、その個々人の心の荒みは民族間の憎しみ、ひいては戦争にまでつながっていく。

それを避けるためには、まず、自分自身、ひとりひとりが「箱」から出る、つまり相手をひとりの人間として捉え、その気持ちに寄り添うこと。そこからすべては始まっていくのだ。

■けれど、それはちょっときれいごと過ぎるのではないか。

そう感じたのは事実である。

世の中には理不尽な、人を人とも思わない嫌なヤツがいて、そんなきれいごとでは済まされないことだってあるだろう。

「箱」から出る=相手を思いやる、いい子ちゃんでいること。

そんなことで問題が解決するなんておとぎ話もいいところだ。

■ところが、読み進めるうちに、そうでもないか、と思えるようになってきた。

こころの中に小さな変化が生まれてきた。

本書の中で主人公のルー・ハーバートを導く役割りを担う二人の講師はユダヤ人とパレスチナ人で、しかも二人ともイスラエルでの民族間の憎悪と戦争の渦のなかで大切な人を失っている。

その二人の体験からは、その根幹に平和への祈りのようなものが流れているように感じとれるのだ。

■世の中にはどうしようもないヤツはいるものである。

こっちが自己欺瞞を乗り越え、冷静に、思いやりをもって対したとしても、そこにつけ込もうとするに違いない、酷いヤツはいる。

けれども、相手が決して変わらないとしても、それでもその相手を人間と見て思いやる。

そこに生まれるのは自分の心の平穏である。

自分の人生に言い訳をしない、真っ直ぐで澄み切った生き方である。

■親鸞がいう悪人正機説「善人なおもて成仏す。いわんや悪人や」というのは、悪人だからこそ罪を背負った苦しみの深さゆえに救われる、というものである。

だが、「救い」というものが自らの心の平穏を意味し、「成仏」とは、祈る者の心の中の悲しみや憎しみが消失することを意味するのであれば、「鬼畜のような相手」と考える自分自身の中にある苦しみ、それこそが救いの対象なのではないか。

「悪人」が救われるのではなく、「悪人」に苦しめられたこちら側の心が救われる、ということではないのか。

そんなことをぼんやりと考えてみるのである。

 

●にほんブログ村●
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ

                          <2009.11.10 記>

■Amazon.co.jp■へのリンク

2
■2日で人生が変わる「箱」の法則
■「自分の小さな「箱」から脱出する方法」の続編ではあるのだが、内容は独立しているのでこの本だけ読むのでもOKだと思います。

   
■関連記事■
■【書評】自分の小さな「箱」から脱出する方法。人間関係がうまくいかない根本原因はどこにあるのか。

■Amazon.co.jp■へのリンク

■過去記事■
■【書評】ひつじの本棚 <バックナンバー>
 

*********************************************

■ Amazon.co.jp ■
■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年11月 7日 (土)

■【映画評】『沈まぬ太陽』。人間の生き様。ラストシーンの感動が止まらない。

上映時間3時間22分の大作である。

●●● 名画座 『キネマ電気羊』 ●●●
    
No.36  『 沈まぬ太陽
          監督: 若松節朗 公開:2009年10月
       出演: 渡辺謙  三浦友和  他 

          001

■休憩10分をはさんだ3時間半もの長大な映画。集中して見ることができるかどうか、正直あんまり自信が無くて見に行くのをためらっていたのだけれども、そんな心配はまったくの無用。

恩地元というあまりにも真っ直ぐな男の生き様にあっという間に取り込まれてしまったのであった。

  
■ストーリー■

昭和30年代。巨大企業・国民航空社員の恩地元は、労働組合委員長を務めた結果、会社から10年におよぶ僻地での海外勤務を命じられた。かつて共に闘った同期の行天四郎が組合を抜けてエリートコースを歩みはじめる一方で、恩地は家族との長年にわたる離れ離れの生活で焦燥感と孤独に追いつめられ、本社への復帰を果たすも不遇な日々は続くのだった。そんな中、航空史上最大のジャンボ機墜落事故が起こり…。<goo映画より>

 
■この作品は、己の信念を曲げないがために僻地をたらいまわしにされる恩地の話と、日航ジャンボ墜落事故とその遺族の話、そして航空会社の腐敗体質にまつわる話が交差しながら進んでいく。

それぞれの話がそれぞれに深くて物語が発散してしまいそうに思えるのだが、それが逆にうまく共鳴しあい、さらに深みを増している。

■そのなかでもやはり御巣鷹山の墜落事故の遺族たちの話がやるせない。

あれから24年も経つというのにあのときのショックが鮮明に蘇る。

特に墜落中に家族に向けたメモを残した父親と、それを読む息子の話は胸がつぶれる思い。

丹念に遺族に取材したのであろう事実がしっかりと背景にあって、だからこそのリアリティであって、だからこその重みなのである。

■その一方で、この映画は実直な恩地元(渡辺謙)と、出世の鬼と化した行天四郎(三浦友和)の歴史を縦糸として物語を織っていく。

明と暗、陰と陽のそのコントラストが素晴らしく、またそのコントラストの強さに関わらず陳腐に落ちないのがまた素晴らしい。

それはもちろん原作と脚本によるものであるけれども、渡辺謙と三浦友和の魂を揺さぶる好演によるところが大。

また、そのコントラストを際立たせる俳優陣の力にもよるのだろう。

何しろそれぞれが主役を張れるような豪華な顔ぶれで、ため息が出るくらいなのだ。

■ラストシーン。

妻に先立たれ、日航機の事故で息子家族を一度に失い、ただひとり残された老人(宇津井健)が四国のお遍路の旅にいる。

その老人に宛てた恩地の手紙が胸を激しく揺さぶる。

こころの奥の底のところでズンと打ち震えるような感動だ。

救いようの無い絶望。

そこにはどんな慰めの言葉も届かない。

それでも生きていこうと思わせるのは、広大な自然に向かって立ち、ちっぽけな自分をいつまでも照らしている夕陽、その瞬間にあるのだ。

 

●にほんブログ村● 
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

                           <2009.11.07 記>

Photo
■【原作】沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上)
山崎 豊子 著 新潮文庫 (2001/11)
  

■STAFF■
原作:山崎豊子『沈まぬ太陽』
監督:若松節朗  
製作総指揮:角川歴彦
企画:小林俊一
製作:井上泰一
脚本:西岡琢也
音楽:住友紀人
エンディング・テーマ:福原美穂『Cry No More』
製作:「沈まぬ太陽」製作委員会
製作プロダクション:角川映画
配給:東宝

■航空会社やスポンサーに首根っこを抑えられたテレビ会社の協力を得ずにこれだけの大作を真っ直ぐ作り上げた製作委員会と角川に深い敬意を感じます。
   



■CAST■
恩地元:渡辺謙
行天四郎:三浦友和
三井美樹:松雪泰子
恩地りつ子:鈴木京香
 * * * * * * * *
国見正之:石坂浩二
八馬忠次:西村雅彦
桧山社長:神山繁
小暮社長:横内正
堂本社長:柴俊夫
和光監査役:大杉漣
八木和夫:香川照之
 * * * * * * * *
利根川総理:加藤剛
龍崎一清:品川徹
竹丸副総理:小林稔侍
道塚運輸大臣:小野武彦
 * * * * * * * *
阪口清一郎:宇津井健
鈴木夏子:木村多江
小山田修子:清水美沙
布施晴美:鶴田真由
 * * * * * * * *
恩地純子:戸田恵梨香
恩地克己:柏原崇
恩地将江:草笛光子
 * * * * * * * *
国民航空123便操縦士:小日向文世
航空管制官:長谷川初範

■トラックバックさせていただきます■
’映画鑑賞★日記’ さんの「沈まぬ太陽 [映画]」
 

    
■過去記事■

■【映画評】名画座・キネマ電気羊 <目次>へ

   
■ Amazon.co.jp ■

■【書籍】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【書籍】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

■【DVD】 最新ベストセラー情報 (1時間ごとに更新)■
■【DVD】 ↑ 売上上昇率 ↑ 最新ランキング■

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2009年11月 4日 (水)

■夜明け。

久しぶりの早起きです。

20091104

                        <2009.11.04 記>

 
■■■ 空の写真 ■■■  
↑カテゴリー・【空の写真】へのリンクです。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2009年10月 | トップページ | 2009年12月 »